木走日記

場末の時事評論

芳ばしい(胡散臭い)記事内容を見事に「無臭化」に成功している朝日新聞記事を徹底検証〜当ブログでは朝日新聞による『臭いものにはフタ』報道技法と名付けたい

 さて8日付けの朝日新聞の小さな記事を今回取り上げたいと思います。

 大変地味な記事ですが、長年ネット上でメディア評論を続けてきました当ブログの鼻がヒクヒクとこの地味な記事にある種の”芳ばしさ”を感じたからであります。

 メディアリテラシー的にこの記事を徹底的に分析・検証いたします。

 当該記事は後藤遼太記者による小さな記名記事です。

(ウォッチ安保国会)100歳の覚悟、悔恨胸に
2015年7月8日05時00分

 「政権は積極的平和主義などと美辞麗句を並べて国民を馬鹿にしている。安保法制には反対だ」。100歳のジャーナリストむのたけじさんは語気を強めた。

 7日に都内で開かれた記者会見。安保関連法案に危機感を抱く市民団体が「戦争につながる一切のものを拒否する」という「民衆談話」を発表した。むのさんは筆頭賛同人。体調を崩し、さいたま市の自宅から電話で「戦前と今と状況は変わらない」と会場に声を響かせた。

 戦中の悔恨を胸に、受話器を握った。1942年、従軍記者としてジャワに行き、戦場を見た。兵隊が死に、女性や子どもが苦しんでいた。しかし、「メディアが萎縮していた。国民に戦争の本当の姿を伝えられなかった」。自責の念に駆られ、敗戦の日朝日新聞を退社した。

 安保法制は他国の戦争に日本を巻き込むものと感じる。国際情勢に翻弄(ほんろう)されて戦争へ突き進んだ当時の日本と重なって見える。「70年前に反省すべきをしなかった結果、今の政策がある。今度こそ、とことんやりぬく覚悟だ」

 (後藤遼太)

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11846859.html

 さて元朝日記者で100歳のジャーナリストむのたけじさんが筆頭賛同人である、「安保関連法案に危機感を抱く市民団体が「戦争につながる一切のものを拒否する」という「民衆談話」を発表した」という内容です。

 この記事で固有名詞は「むのたけじさん」しか登場しません。

 肝心の「民衆談話」を発表した「安保関連法案に危機感を抱く市民団体」の団体名が明らかになっておりません。

 その団体の代表者名も関係者・支持者の名前も、朝日記事からは全て伏せられています。

 さてそれはさておきこのような「謝罪・反省を盛り込んだ戦後70年談話」の朝日新聞記事は、すぐに多くの韓国メディアに取り上げられることになります。

 代表して中央日報記事から。

日本市民団体、謝罪・反省を盛り込んだ戦後70年談話を発表
2015年07月09日10時43分
[ⓒ 中央日報日本語版] comment21hatena0

日本のある市民団体が過去の歴史に対する反省と被害者に対する謝罪を盛り込んだ「民衆談話」を発表した。

8日、朝日新聞など日本メディアによると、ジャーナリストのむのたけじさんら埼玉県民によって構成された「戦後70年・民衆談話の会」は7日に都内で記者会見を開き「民衆談話」を発表した。

「戦後70年・民衆談話の会」はこの談話の中で「日本政府は‘国際紛争を武力で解決する国’を目指す政策を次々と推し進めています」と指摘した。

また、談話は「日本政府がいま為すべきことは、歴史の事実を素直に認め、侵略への深い反省と、被害者に対して誠実、かつ真摯に謝罪することであり、歴代内閣の平和への指針を一歩たりとも後退させてはなりません」としている。

「戦後70年・民衆談話の会」はこの談話を日本内閣府や駐日韓国大使館、駐日中国大使館などにも届けた。

http://japanese.joins.com/article/903/202903.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp|main|top_news

 韓国メディア記事から団体名が、埼玉県民によって構成された「戦後70年・民衆談話の会」なる謎の団体であることがわかります。

 レコードチャイナ記事によれば、別の韓国メディアでは「戦後70年を迎えるに当たって、日本の市民団体が相次いで談話を発表している。これは、日本の首相である安倍晋三が“村山談話”など歴代首相の核心的な視点を避けようとしているからである。市民が安倍政権をけん制しているのは、“良心の宣言”と言うことができる」と、この宣言を“良心の宣言”と評価しているようです。

(参考記事)

「戦争の最大の被害者は民衆だが、政治の暴走を許したのも民衆」、日本の市民団体が70年談話を発表=韓国メディアは「良心の宣言」と評価
http://www.recordchina.co.jp/a113488.html

 さて、いつものようにある種の朝日新聞記事が、韓国メディアに意図的に拡散し、「日本の良心派」の動きとして評価され、そして安倍政権批判に利用される、という典型的な報道パターンを押さえた上でです。

 謎の「戦後70年・民衆談話の会」って、何者なのでしょうか。

 ヒントは中央日報によれば、「ジャーナリストのむのたけじさんら埼玉県民によって構成された」とあります。

 6月20日付けの地元ローカル紙である埼玉新聞の記事がヤフー経由でヒットしました。

民衆の「戦後70年談話」 県民ら草案作成、賛同人募集
埼玉新聞 6月20日(土)10時30分配信 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150620-00010000-saitama-l11

 このローカル記事から会の代表者やむのたけじさん以外の賛同人の名前が特定できました。

 会の共同代表の松永優さん(68)=鴻巣市=は「政府談話は期待を裏切るものになるだろう。ならば市民一人一人の気持ちが表れたものを」と説明。「民衆談話が全国から湧き上がることを期待している」と賛同を呼び掛けている。

 賛同人には、100歳のジャーナリストむのたけじさん、東京大学名誉教授大田尭さん、元沖縄知事大田昌秀さん、ルポライター鎌田慧さんらが名を連ねている。

 賛同人には、

 元沖縄知事大田昌秀さん。
九条の会」傘下の「九条の会・さいたま」呼びかけ人を務めている東京大学名誉教授大田尭さん。
 「九条の会」傘下の「マスコミ九条の会」呼びかけ人を務めているルポライター鎌田慧さん。
 大田尭さんに鎌田慧さん、うーん、やれやれまたしてもこの人たちの関係した芳ばしい団体、それが「戦後70年・民衆談話の会」の正体なのであります。

 で、ここが不思議と思うのは元沖縄知事大田昌秀さんがなぜ賛同人に含まれているのか、です。

 その答えは会の共同代表の松永優さん(68)が握っています。

 この元左翼系過激派である松永優さんは、44年前の沖縄県で起こった抗議行動ゼネストなどで行動していました。

(参考サイト)

沖縄ゼネスト警察官殺害事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%96%E7%B8%84%E3%82%BC%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%88%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E5%AE%98%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 ・・・

 さて最初に取り上げた朝日新聞記事です。

 これだけの芳ばしい面々が関係する「戦後70年・民衆談話の会」なのに、むのたけじさん以外の固有名詞は一切出現していません。
 団体名さえ伏せられています。
 この朝日新聞独特の一部登場人物を隠ぺいしての報道技法を、当ブログでは『臭いものにはフタ』報道技法と名付けたいのです。
 本来たいへん芳ばしい(胡散臭い)記事内容を見事に「無臭化」に成功しています。

 朝日新聞、お見事です。

 ふう。



(木走まさみず)