日本は対ISILに関して旗色を鮮明にするべき〜日本は国際的には既に対ISIL有志連合の主要構成国と認知されている
基本的な事実を押さえておきます。
昨年9月19日に米国務省の公式ページに米国主導の対ISIL有志連合参加国が公表されています。
Building International Support to Counter ISIL
Media Note
Office of the Spokesperson
Washington, DC
September 19, 2014
http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2014/09/231886.htm
その初期のメンバーである57の国・機関には日本国が参加していることがリストアップされています。
Albania
Arab League
Australia
Austria
Bahrain
Belgium
Bulgaria
Canada
Croatia
Cyprus
Czech Republic
Denmark
Egypt
Estonia
European Union
Finland
FranceGermany
Greece
Hungary
Ireland
Iraq
Italy
Japan
Jordan
Kosovo
Kuwait
Latvia
Lebanon
Lithuania
Luxembourg
Macedonia
Montenegro
Moldova
Morocco
NATOThe Netherlands
New Zealand
Norway
Oman
Poland
Portugal
Qatar
Republic of Korea
Romania
Saudi Arabia
Serbia
Slovenia
Slovakia
Spain
Sweden
Turkey
Ukraine
United Arab Emirates
United Kingdom
5日付けJBPRESSの北村淳氏のレポートによれば、昨年12月のアルジャジーラの特集記事では、有志連合主要35カ国の中に日本は含まれています。
失礼して当該箇所を引用。
例えば、アルジャジーラの特集記事(2014年12月16日英文ウェブ版「Countries countering ISIL」)によると有志連合参加国は35カ国で、次のように分類されていた。
・軍事支援と人道支援を実施する有志連合:17カ国
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、イタリア、デンマーク、カタール、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エストニア、ハンガリー、チェコ、ブルガリア
・軍事支援だけを実施する有志連合:4カ国
・人道支援だけを実施する有志連合:14カ国
日本(シリアとイラク領内の難民に対しておよそ2550万ドルの人道支援)、韓国、クウェート、トルコ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スペイン、アイルランド、スイス、オーストリア、ルクセンブルグ、スロバキア、グルジア
つまり国際的には昨年9月発足の時点より日本は対ISIL有志連合の主要構成国と認知されているのであり、「・人道支援だけを実施する有志連合:14カ国」の一員なのであります。
従って、日本国内の一部メディアが主張するように1月の安部首相のイスラエルはじめ中東歴訪と「IS対策としての2億ドル拠出」によって日本が反ISの立場を明確にした、と理解するのはまったく時系列を無視した誤りです、そのような内向きの屁理屈は日本国内でしか通用しません。
ご覧のとおり、すでに昨年9月にアメリカ主導でIS支配地域に対する航空攻撃が開始された当時から、アメリカ政府の説明では、日本も60カ国の「有志連合」に含まれていたのであり、それは昨年12月のうちアルジャジーラなどのアラブ系メディアでも広く認知されていた国際的「常識」なのであります。
当然です、日本は対ISILのためにヨルダンに人道支援だけを実施するわけですが、それによって浮いた予算でヨルダンは対ISIL軍事オプションの予算を増やすことが可能です。
ISILにしてみれば日本がISILに敵対行動をしていることは自明です。
日本は法律上軍事支援を行うことができないだけで、立派な対ISIL有志連合の主要構成国だったのであり、その事実は1月の安部首相の中東歴訪とは何の因果もありません、既定路線だったわけです。
すでに昨年から日本は有志連合参加国でありISILに敵対していたという国際的事実を踏まえないと、この週刊朝日の田原総一朗氏のような頓珍漢の記事が出るわけです。
田原総一朗「イスラム国に『絶好の機会』を与えてしまった安倍外交」
http://dot.asahi.com/wa/2015020400060.html
今一度、ISILのビデオ声明文を読み返してみましょう。
「日本の首相へ。日本はイスラム国から8500キロ以上も離れていながら、進んで十字軍に参加した。われわれの女性や子どもを殺害するのに、そしてイスラム教徒の家を破壊するのに、得意げに1億ドルを提供した。従って、この日本人の命には1億ドルかかる。そしてまた、イスラム国の拡大を止めるために、イスラム戦士と戦う背教者を養成するのに1億ドルを提供した。それで、こっちの日本人の命には別にもう1億ドルかかる」
日本が「イスラム国から8500キロ以上も離れていながら、進んで十字軍に参加した」のは昨年9月対ISIL有志連合に参加した時点が起点です。
1月の安部首相の中東歴訪は起点でも何でもないのです。
安部首相の中東歴訪がなかったら、ISILにこの機会に日本人人質のビデオ映像をネットで公開することは遅らせられたかもしれません。
しかし、それはきっかけに過ぎないのであり、遅かれ早かれ日本が本件で巻き込まれることは避けれ得なかったことでしょう。
なぜなら日本は昨年の9月時点ですでにISILに敵対しているからです。
その意味で1月の安部首相の中東歴訪は、ISILにとって『絶好の機会』でもなんでもなかったのです。
日本と日本人は対ISILに関して、覚悟を決めて旗色を鮮明にするべきです。
いまさら部外者顔しても国際的には通用しないのです。
(木走まさみず)