木走日記

場末の時事評論

本件で世界で唯一安倍政権を批判する議論が出現している国〜世界に日本政府や日本の国民性に対する称賛の声が広がる中で

 今回の事件では世界各国が日本国並びに日本政府の対応について、連帯・支持・称賛を表明しています。

「自国からはるかに離れた地域の平和と発展に日本が関与することを称賛する」(米オバマ大統領)

「日本国民と団結し、日本政府に可能な限りのあらゆる支援を提供する。テロリストに屈しない日本の姿勢は正しい」(英キャメロン首相)

「この新たな試練に際して、フランスは日本と団結する。中東の平和のため、テログループを撲滅するため、今後も共に行動する」(仏オランド大統領)

「死の狂信者集団の地位を低めるよう、すべての国が全力を挙げることが大事だ」(豪アボット首相)

<参考記事>

「残虐な殺人」「屈しない日本正しい」各国、相次ぎ声明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150126-00000001-asahi-pol
仏大統領「新たな試練に、日本と団結する」
http://www.news24.jp/articles/2015/02/01/10268379.html
豪首相「日本国民に恐ろしい衝撃」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK01H53_R00C15A2000000/

 米英仏豪に続いて、中東・北アフリカ20カ国・地域の駐日大使で構成する在京アラブ外交団も日本国との連帯の意思表明をしています。

 「最大限非難するとともに、強い憤りを覚える」(在京アラブ外交団)

<参考記事>

在京アラブ外交団が非難声明 人質事件に「強い憤り」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H8X_X20C15A1FF1000/

 また、国連安保理も国連加盟国に対して日本に協力するよう求めています。

 「加害者が処罰されるよう、すべての国に対し、国際法安保理決議に基づいて日本や関係する機関に協力するよう求める」(国連安保理

<参考記事>

国連安保理が非難声明を発表
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150202/k10015135891000.html

 普段は日本の安倍政権に対し厳しい姿勢で対峙することが多い中国・韓国ですが、今回は日本国への支持を鮮明にしています。

「このようなテロ行為はいかなる理由であろうとも、正当化できないという立場であることを再確認し、テロ行為を根絶するための国際社会の努力に今後も協力していく。今回のテロ行為により、日本国民が受ける苦痛と悲しみを共にし、日本政府と遺族に深い哀悼の意を表する」(韓国政府)

 中国政府もイスラム武装勢力が後藤さんを殺害したことを強く非難、安倍晋三首相が中東におけるイスラム国と戦う国々への人道支援を約束通り進めていくことに対して支持を表明しています。

「私たちは、国際社会は、国連憲章の原則や、その他の広く受け入れられている国際関係についての基本原則を順守し、連携を強化し、ともに国際的なテロリズムの脅威と立ち向かい、世界の平和と安全を守っていくことを提唱したい」(中国政府)

<参考記事>

韓国政府 後藤さん遺族と日本に哀悼の意=「テロに怒り」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/02/02/2015020203550.html
中国政府、「日本を支持、テロは許さない」<動画>後藤さん殺害を受けて中国政府が表明
http://toyokeizai.net/articles/-/59674

 日本国・安倍政権の対応に対する連帯・支持・称賛が広まる中で、残された日本人家族が表明したコメントにも、世界から称賛の声が挙がっています。

 中でもお隣の韓国では「何でも他人のせいの韓国とは大違い」と自国民の態度と対比して事件の日本人家族の態度に感嘆の声が挙がっているようです。

 他者への配慮に満ちた日本家族たちのコメントに称賛の声をいくつか紹介しましょう。
 
「日本の市民意識は本当にすごい。韓国人も見習うべきだ」

「いつも感じることだが、日本人たちから学ぶ点は、見習わなければ。大事件に遭ったときも、冷静に落ち着いて対応し、自分より他人に配慮する人たちの姿を見るとき−列に並んで秩序を守る姿など。わが国は、大事件が起きれば、大騒ぎし、補償を求め、日本人の姿とは正反対だ」

 韓国だったら絶対政権批判が巻き起こっているだろうとの指摘も多いようです。

「韓国では、大統領や首相、長官の責任だと悪口を言い、ビンタ(バッシング)し、特別法をつくり、ハンガーストライキし、大騒ぎするのに。迷惑を掛けて申し訳ないというあの国民性。あの精神のために日本はおそろしい国なんだ」

「韓国では、よくないことは全て他人のせい、政府のせいのするのに…。セウォル号事故は、船長の責任なのに、青瓦台(大統領府)に行って狼藉(ろうぜき)を働いたり、大統領の弾劾をわめいたり、代行運転手に暴行したりし、遺族にも失望させられたが」

「韓国人がどう考えようと、国民から信頼される日本政府の姿と日本国民の成熟した市民意識が垣間見えた。どこぞの国では、水を掛け、「首相を辞めろ」とわめくだろう」

 日本在住の人の声もあります。

「ここ(日本)の平凡な市民たちは、本当に息が詰まるほど、誠実に暮らしている」

<参考記事>

「日本は…凄い」韓国世論「イスラム国」事件の日本人家族の態度に感嘆「見習うべし」「何でも他人のせいの韓国とは大違い」
http://www.sankei.com/world/news/150203/wor1502030004-n3.html

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 さて、世界で日本国・日本政府への支持や連帯が広がり、事件の日本人家族の態度に称賛の声が挙がっている中で、しかし言論の自由が保障されたこの国では、もちろん政権を批判する声も残念ながらあるわけです。

日本人人質2人を見殺しにした安倍首相の辞任を重ねて要求する
http://blogos.com/article/104800/

 このエントリーはこう結ばれています。

 安倍首相の罪の大きさからすれば首相を辞任しただけでは済まないと思いますが、まずはその座を去ることによって責任を取るべきでしょう。重ねて、事件のきっかけを作っただけでなく、日本人人質2人を見殺しにした安倍首相の辞任を強く求めるものです。

 さて今回の政府の対応についてしっかり検証すべきなのは異論ありません。

 安倍首相らの国会などでの説明によると、湯川さんの拘束事件を受けて昨年8月に首相官邸に情報連絡室などを設置。11月には後藤さんの行方不明を把握し、政府が対応する事案に加えたといいます。

 それでも2人を救出できなかったという現実を直視しなければならないでしょう。

 最初の脅しの映像がネット上に出たとき期限とされた72時間は短かったわけですが、政府が2人の拘束を知ってからでいえば、すでに相当の月日がたっていたのは事実です。

 今回の日本政府の対応について、菅官房長官は会見で「ISILとは接触しなかった」と述べています、それはなぜなのか、また、昨年、新設された政府の国家安全保障局は、どのように機能したか、同じ被害を繰り返さないためにも、政府は事実を最大限公表し、検証する責任があるわけです。

 しっかりとした検証作業の中で国会論戦を通じて、安倍外交に対して批判的意見が出てもよろしいでしょう、政権批判がタブー視されるほうが不健全です、言論を萎縮させてはいけません。

 しかし、本件で最も批判されるべきなのは人質殺害という蛮行を行ったISILなのであり、日本政府ではありません。

 後々の検証作業において今回の安倍外交のどこにミスがあったのか、あるいはなかったのか、将来のためにタブーなく議論することはけっこうですが、現時点で「安倍首相の罪の大きさからすれば首相を辞任しただけでは済まない」との言い切りは、違和感を感じざるを得ません。

 本件で世界で唯一安倍政権を批判する議論が出現している国、それが当事国であるこの日本であること。

 この国が言論の自由が保障されている国であるしっかりとした証明でもあり、しかしまた、以下の韓国民の声を聴くと複雑な心境にもなるわけです。

「韓国では、大統領や首相、長官の責任だと悪口を言い、ビンタ(バッシング)し、特別法をつくり、ハンガーストライキし、大騒ぎするのに。迷惑を掛けて申し訳ないというあの国民性。あの精神のために日本はおそろしい国なんだ」

 ふう。

 大丈夫、日本はそんな恐ろしい国ではありませんよ、と。



(木走まさみず)