木走日記

場末の時事評論

ゾンビ議員数121人、不条理な比率4.67倍、比例復活徹底検証〜このクソのような有権者無視の衆議院重複立候補制度は即刻廃止すべき!!


 当ブログでは今回の選挙前と選挙後の過去二回に渡り、菅直人氏の超人的な政治的「生命力」を称えつつ、「このクソのような重複立候補制度は即刻廃止すべき」と主張してまいりました。

2014-12-08■何度も死んで(落選して)も必ず蘇る(比例復活)ゾンビ議員問題〜ゾンビ議員のセーフティネットと化した衆議院重複立候補制度は即刻廃止すべき 14:13
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20141208

2014-12-15■祝!菅直人氏またしてもの比例復活!!あなたの政治的「生命力」は超人的です!!!〜読者の皆さん。このクソのような重複立候補制度は即刻廃止すべきです。
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20141215

 このシリーズはどうも全面的に菅氏と海江田氏が目立ってしまい、木走による狭量な「菅氏批判・民主党批判」と誤解されたようで、あまり注目もされずネット上での評判が芳しくありません(苦笑)。

 そこで今回は現行の重複立候補制度が我々有権者にとっていかに矛盾に満ちた制度なのか、今回の選挙結果から数値でもって徹底検証し分析したいと考えます。

 まず最初に重複立候補制度は特定の政党に有利・不利が偏在するような制度ではありません。

 各党は本制度を有効利用しているに過ぎないのであって、政党にとって本制度は「よくできた制度」であることは認めるものです。

 この制度は政党にとって便利なかつ「平等な制度」であることは認めたうえで、では小選挙区で投票行為を行う我々有権者にとって有意義かつ「平等な制度」と言えるのかこの一点で当ブログはこの制度を「クソのような制度」と批判しているのです。

 有権者にとり一票の重みが「異常」ともいうべき偏重をもたらすこの制度による「歪み」は、前回、前々回で取り上げた東京ブロックだけに限りません全国各ブロックで発生しているのです。

 今回の総選挙で各地で何が起きたのか、徹底的に選挙結果を検証いたします。

 当エントリーでは選挙区で落選したが比例で復活した議員関連で次のような用語を定義しておきます。

 ゾンビ議員 = 比例復活議員

 比例ゾンビ率 = そのブロックの比例区定数のうちのゾンビ議員の割合

 ゾンビ率 = そのブロックの総議席数のうちのゾンビ議員の割合

 リビングデッド(生きる屍)= そのブロックで最も得票数(得票率)が少なかったゾンビ議員

 最も惜しまれる人間 = そのブロックで最も得票数(得票率)が多かった落選議員

 不条理な比率 = 最も惜しまれる人間の得票 / リビングデッドの得票  

●北海道ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
20 12 08

 北海道ブロックですが、比例定数8のうちゾンビ議員は5人です。

 したがって比例ゾンビ率62.5%、ゾンビ率25%であります。

 小選挙区で落選しなおかつ復活しなかった議員の中で最高得票の人つまり「最も惜しまれる人間」は1区の船橋利実氏(自民)の105,918票(得票率39.6%)であります。

 で比例復活した議員の中で小選挙区で最低得票だった人つまり「リビングデッド(生きる屍)」は2区の松木謙公氏(維新)の56,375票(24.7%)であります。

 したがって「不条理な比率」は105,918/56,375つまり1.88倍であります。

 以下、各ブロックは説明を省き項目を列挙いたしましょう。

●東北ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
39 25 14

・ゾンビ議員数 11人
・比例ゾンビ率 78.6%
・ゾンビ率   28.2%
・最も惜しまれる人間 山形3区の阿部寿一氏(無所属)で78,384票(得票率42.1%)
・リビングデッド   宮城5区の勝沼栄明氏(自民)で34,293票(得票率31.5%)
・不条理な比率 2.29倍 

●北関東ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
52 32 20

・ゾンビ議員数 13人
・比例ゾンビ率 65.0%
・ゾンビ率   25.0%
・最も惜しまれる人間 栃木1区の柏倉祐司氏(民主)で63,332票(得票率32.5%)
・リビングデッド   群馬1区の宮崎岳志氏(民主)で49,862票(得票率26.6%)
・不条理な比率 1.27倍

●東京ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
42 25 17

・ゾンビ議員数 9人
・比例ゾンビ率 52.9%
・ゾンビ率   21.4%
・最も惜しまれる人間 東京1区の海江田万里氏(民主)で89,232票(得票率35.6%)
・リビングデッド   東京12区の池内沙織氏(共産)で44,721票(得票率21.0%)
・不条理な比率 2.00倍

南関東ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
55 33 22

・ゾンビ議員数 16人
・比例ゾンビ率 72.7%
・ゾンビ率   29.1%
・最も惜しまれる人間 千葉4区の木村哲也氏(自民)で67,600票(得票率29.3%)
・リビングデッド   千葉4区の斉藤和子氏(共産)で24,275票(得票率10.5%)
・不条理な比率 2.78倍

●北陸信越ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
30 19 11

・ゾンビ議員数 7人
・比例ゾンビ率 63.6%
・ゾンビ率   23.3%
・最も惜しまれる人間 石川3区の近藤和也氏(民主)で64,940票(得票率45.1%)
・リビングデッド   富山1区の吉田豊史氏(維新)で39,249票(得票率32.9%)
・不条理な比率 1.65倍

●東海ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
54 33 21

・ゾンビ議員数 15人
・比例ゾンビ率 71.4%
・ゾンビ率   27.8%
・最も惜しまれる人間 静岡5区の吉川赳氏(自民)で84,574票(得票率34.6%)
・リビングデッド   愛知4区の牧義夫氏(維新)で47,291票(得票率27.6%)
・不条理な比率 1.79倍

●近畿ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
77 48 29

・ゾンビ議員数 22人
・比例ゾンビ率 75.9%
・ゾンビ率   28.6%
・最も惜しまれる人間 兵庫11区の頭師暢秀氏(自民)で74,562票(得票率41.0%)
・リビングデッド   大阪4区の清水忠史氏(共産)で31,478票(得票率14.8%)
・不条理な比率 2.37倍

●中国ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
31 20 11

・ゾンビ議員数 5人
・比例ゾンビ率 45.5%
・ゾンビ率   16.1%
・最も惜しまれる人間 広島2区の松本大輔氏(民主)で77,234票(得票率39.3%)
・リビングデッド   岡山1区の高井崇志氏(維新)で56,135票(得票率34.8%)
・不条理な比率 1.38倍

●四国ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
17 11 06

・ゾンビ議員数 3人
・比例ゾンビ率 50.0%
・ゾンビ率   17.6%
・最も惜しまれる人間 徳島1区の仁木博文氏(民主)で69,188票(得票率39.1%)
・リビングデッド   愛媛2区の横山博幸氏(維新)で22,677票(得票率19.1%)
・不条理な比率 3.05倍

●九州ブロック

議席総数 小選挙区 比例区
58 37 21

・ゾンビ議員数 15人
・比例ゾンビ率 71.4%
・ゾンビ率   25.9%
・最も惜しまれる人間 福岡2区の稲富修二氏(民主)で83,535票(得票率40.4%)
・リビングデッド   福岡9区の真島省三氏(共産)で26,443票(得票率14.2%)
・不条理な比率 3.16倍

●全国

ブロック 議席(総数) 小選挙区 比例区 比例復活
北海道 20 12 08 05
東北 39 25 14 11
北関東 52 32 20 13
東京 42 25 17 09
南関東 55 33 22 16
北陸信越 30 19 11 07
東海 54 33 21 15
近畿 77 48 29 22
中国 31 20 11 05
四国 17 11 06 03
九州 58 37 21 15
ブロック 議席(総数) 小選挙区 比例区 比例復活
総計 475 295 180 121

・ゾンビ議員数 121人
・比例ゾンビ率 67.2%
・ゾンビ率   25.5%
・最も惜しまれる人間 北海道1区の船橋利実氏(自民)で105,918票(得票率39.6%)
・リビングデッド   愛媛2区の横山博幸氏(維新)で22,677票(得票率19.1%)
・不条理な比率 4.67倍

 ・・・

●まとめ

 今検証した通り、この制度は政党にとって便利なかつ「平等な制度」であることは認めたうえで、では小選挙区で投票行為を行う我々有権者にとって有意義かつ「平等な制度」と言えるのか、この一点でこの制度は「有権者にとりクソのような制度」と言えましょう。

 有権者にとり一票の重みが「異常」ともいうべき偏重をもたらしているわけです。

 この制度による「歪み」は、北海道1区は10万5千票を集めた候補が落選の憂き目にあっているのに、愛媛2区では2万2千票余りの候補が比例復活しているわけです、その「不条理な比率」は4.67倍にも達しているのです。

 政党の都合で比例復活できるこの制度は選挙区の有権者の一票の重みを、政党の都合で自在に歪めていると申せましょう。

 この矛盾に満ちた制度の有権者を完全にバカにした世界的に見ても笑い物の現象まで生れています。

 沖縄の4つの小選挙区では立候補者9名が全員当選してしまったのです。

●沖縄1区(選管確定)

当落 票数 氏名(党)
当選 57,935 赤嶺政賢(共産)
復活 53,241 国場幸之助(自民)
復活 34,328 下地幹郎(維新)


●沖縄2区(選管確定)

当落 票数 氏名(党)
当選 85,781 照屋寛徳(社民)
復活 52,156 宮崎政久(自民)

●沖縄3区(選管確定)

当落 票数 氏名(党)
当選 89,110 玉城デニー(生活)
復活 59,491 比嘉奈津美(自民)

●沖縄4区(選管確定)

当落 票数 氏名(党)
当選 71,227 仲里利信(無所属)
復活 65,838 西銘恒三郎(自民)

 全員が当選するのなら、小選挙で投票する意味がないじゃないですか、アホラシイ。

 ・・・

 ふう。

 読者のみなさん。

 このクソのようなゾンビ議員のセーフティネットと化した有権者無視の衆議院重複立候補制度は即刻廃止すべきだと思いませんか。



(木走まさみず)



(参考サイト・参考記事)

読売新聞 衆院選2014
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/?from=ycnav3

2014.12.16 10:00
衆院選2014】
比例復活の課題浮き彫り 10万票落選×2万票当選
http://www.sankei.com/politics/news/141216/plt1412160020-n1.html