木走日記

場末の時事評論

「慰安婦検証―問題解決の原点に返れ」(朝日社説)だと?〜この問題の真の「原点」は朝日新聞の捏造報道そのものじゃないのか?

 21日付けの朝日新聞社説は「問題解決の原点に返れ」とのタイトルで、河野洋平官房長官談話に関する政府の検証結果発表について取り上げています。

慰安婦検証―問題解決の原点に返れ
2014年6月21日(土)付
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_gnavi

 社説は冒頭で検証結果の概要を「一部は韓国側の意向を受け入れたが、日本政府の独自の調査に基づいてつくった。最終的には韓国側と意見が一致した」とまとめています。

 慰安婦問題をめぐる93年の河野洋平官房長官談話について、政府はきのう、作成過程などの検証結果を国会に示した。

 談話の文言をめぐって日韓両政府間でかなり細かなやりとりがあり、一部は韓国側の意向を受け入れたが、日本政府の独自の調査に基づいてつくった。最終的には韓国側と意見が一致した――。そんな概要である。

 両政府のやりとりからは、双方とも難しい立場を抱えながら問題を解決しようという強い意志が感じられる。検証チームの但木敬一座長も「談話を出すことで未来志向型の日韓関係をつくろうとした」と語った。

 続いて今回検証をした理由を「日本政府が行った元慰安婦の聞き取り調査の信頼性を問題視する声が上がったから」とし、しかし談話原案が固まったのは「元慰安婦からの聞き取りはまだ終わっておらず、彼女たちの証言を基に「強制性」を認めたわけではない」と指摘します。

 この検証が行われたのは、日本政府が行った元慰安婦の聞き取り調査の信頼性を問題視する声が上がったからだ。談話の作成過程を明らかにすることで韓国を牽制(けんせい)する狙いもあったのだろう。

 しかし、報告書は次のように指摘している。資料収集や別の関係者への調査によって談話原案は固まった。その時点で元慰安婦からの聞き取りはまだ終わっておらず、彼女たちの証言を基に「強制性」を認めたわけではない。

 安倍首相は「河野談話の見直しを主張していた」が「国際社会からの強い反発もあって、河野談話を見直さないとの方針に転じた」とし、「もう談話に疑義をはさむのはやめるべき」と強く安倍首相を牽制します。

 安倍首相はかつて、慰安婦への謝罪と反省を表明した河野談話の見直しを主張していた。

 だが、国際社会からの強い反発もあって、河野談話を見直さないとの方針に転じた。

 もう談話に疑義をはさむのはやめるべきだ。

 今回の報告書の内容は「日本側から秘密にしようと持ちかけられていたこと」なのに「それなのに了承もなく、一方的に公表されるのは信義に反する」ことで、韓国政府の猛反発を招いたと指摘します。

 報告書は、河野談話やその後の「アジア女性基金」について、韓国政府が一定の評価をしていたことも明らかにした。

 韓国にすれば、日本側から秘密にしようと持ちかけられていたことである。それなのに了承もなく、一方的に公表されるのは信義に反することになる。

 報告書に韓国政府は猛反発し、せっかく始まった日韓の外務省局長級協議も中断する可能性が出てきた。

 また、韓国政府は「国際社会とともに対抗措置をとる」とも表明した。

 社説は「慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がた」つことにふれ、「もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済である」とし、両国政府は「河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべき」であると結ばれています。

 慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている。

 この間、両政府関係者やNGOなど多くの人々が関わってきた。だが、もっとも大切なのは元慰安婦たちの救済であることは論をまたない。

 韓国政府に登録した元慰安婦の生存者は54人になった。

 日韓両政府に、互いをなじり合う余裕はない。河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。

 この朝日社説の主張のポイントを当ブログなりに整理すると3点あります。

 まずは河野談話に疑義をはさむのはやめるべきと主張しています。

 もう談話に疑義をはさむのはやめるべきだ。

 そして次のポイントは韓国への配慮です、検証内容の公表は韓国に対して「信義に反する」行為だと主張しています。

 一方的に公表されるのは信義に反することになる。

 最後の主張ポイントは結語です、慰安婦問題はもう四半世紀も揉めている、「負の連鎖」を繰り返すな、今度こそ問題解決の原点に返れ、と主張しています。

 慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている。

 河野談話をめぐって「負の連鎖」を繰り返すことなく、今度こそ問題解決の原点に返るべきだ。

 ・・・

 ふう。

 「今度こそ問題解決の原点に返るべき」ですか。

 
 この問題の火付け役である張本人の朝日新聞論説室がよくぞぬけぬけと絵空事のような綺麗事を言えるものです。

 そもそも社説の結語、「問題解決の原点に返るべき」、この問題の原点は、朝日新聞自身です。

 社説の「慰安婦問題が日韓の大きな懸案に浮上して、四半世紀がたとうとしている」との現状認識は当ブログも共有するものですが、斯様な事態を招いたのは従軍慰安婦をめぐる朝日新聞の一連の捏造報道がきっかけであることを忘れてはなりません。

 当ブログでも過去に検証したように、従軍慰安婦問題をここまで国際問題化したのは朝日新聞の一連の捏造報道が原因です。

河野談話」の真の生みの親は朝日新聞である
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20120901

 以下、朝日新聞が如何に問題の「河野談話」に関わりを持ったか、再度検証しておきます。

 本件に関わる捏造報道の始まりは、河野談話が発表される11年前の82年9月2日、朝日新聞は「朝鮮の女性 私も連行」と題する「スクープ」記事を大きく掲載します。

(前略)
  その証言が始まると、大阪の500人の聴衆はしんとして聞き入ったという。
 「当時、われわれは『狩り出し』という言葉を使っていた・・・泣き叫ぶというような生やさしいものではない。船に積み込まれる時には、全員がうつろな目をして廃人のようになっていた・・・」
 これは、昭和18年夏、わずか一週間で朝鮮・済州島若い女性200人を狩り出した吉田清治氏の懺悔だ。吉田氏は女工から海女まで手当たり次第に拉致し、慰安婦に仕上げたという。
(後略)

 これ以後、吉田氏は朝日紙面に何度も登場し、従軍慰安婦の悲惨さを語り尽くします。

 しかしこの吉田証言は完全な作り話でした。証言が本になってすぐに現地の『済州新報』が取材していますが、一つも事実が見つかりませんでした。また韓国の郷土史家は何年も調査し、拉致の事実はなかったと断定、吉田の本を『日本人の悪徳ぶりを示す軽薄な商魂の産物』とこき下ろします。

 つまり、吉田氏は本を売って儲けるため、嘘八百を並べ立てたということです、最後には吉田氏自身が「証言は捏造だった」と認め、朝日新聞も《氏の著述を裏付ける証拠は出ておらず、真偽は確認できない》(97年3月31日付)と、「証拠は出ておらず、真偽は確認できない」ことは認めます。

 しかしこの証言は独り歩きし、その後「日本軍が韓国人女性を性奴隷にした」ことが国際的に広まってしまうきっかけを作りました、吉田氏を祭り上げた朝日新聞の罪は極めて重いといっていいでしょう。

 朝日の大スクープ第二段は、91年8月11日付の《元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀 重い口開く》という記事で、元従軍慰安婦が初めて名乗りを上げたことを報じたものです。

 この記事は『女子挺身隊の名で連行され』と書いてありますが、実はこれは大捏造であり、名乗りを上げた金学順さんは女子挺身隊で連行されたのではなく、母親に40円でキーセンに売られたと明言していることが今ではわかっています。

 問題は、記事を書いた朝日ソウル支局記者の韓国人妻の母が、太平洋戦争遺族会の常任理事だったことです。

 この団体が金学順さんに日本政府相手に裁判を起こすよう勧めるんです。キーセン出身を隠し、しかも身内を利する記事を書いたわけで、悪意に満ちた意図的な捏造報道であります。

 この第二段捏造記事は朝日の狙い通り、国の内外で大反響を起こします、この記事が一つのきっかけになって1991年12月の政府による従軍慰安婦問題調査開始に繋がっているのです。

 さて朝日捏造記事により日本政府は従軍慰安婦問題調査開始にまで追い込まれていったわけですが、ここで朝日新聞は第三弾の記事を1面トップで報道します。

 政府が調査を開始した翌月、すなわち1992年1月11日付の1面トップで《慰安所 軍関与の通達・日誌 募集含め監督・統制》という記事を掲げます。

 この陸軍資料は『慰安婦募集に際して業者が悪どい手口を使うので取り締まれ』という内容なだけなのに、それをあたかも『軍の関与』とさも悪いことのように報じます。

 この記事は当時の宮沢喜一政権にとって最悪のタイミングとなります、宮沢首相が訪韓する5日前で、それまで国の介入を否定していた日本政府に、決定的な「圧力」を加える意図を感じます。

 この記事も大反響を起こし、記事を受け、当時の加藤紘一官房長官は事実調査の前に「お詫びと反省」の談話を発表してしまうのです。

 そしてあわれ宮沢首相は、空港に押し寄せた大デモ隊の罵倒する声に迎えられ、韓国で宮沢首相はなんと8回も謝罪するハメになるのです。

 このような朝日新聞の悪意ある報道により、日本政府はどんどん追い詰められていったわけです。

 そして、93年8月4日、「河野談話」が表明されます。

 検証したとおり、「従軍慰安婦問題」及びこの「河野談話」の真の生みの親は、一連の朝日新聞捏造報道であるといって過言ではないでしょう。

 一連の朝日新聞の悪意ある捏造報道は、国家に対する大罪であると考えます。

 ・・・

 確かに朝日社説のタイトルどおり、「慰安婦検証―問題解決の原点に返」るべきなのでしょう。

 ただし、それは朝日が主張する「元慰安婦たちの救済」には留まりません。

 それより先にしっかりと正すべき「原点」があります。

 この問題の真の「原点」は朝日新聞の一連の捏造報道そのものであります。

 一連の朝日新聞捏造報道の徹底検証こそ、今こそ必要なのではありませんか。




(木走まさみず)