木走日記

場末の時事評論

韓国政府、従軍慰安婦を「ユネスコ遺産」申請へ〜これ以上韓国の国際社会を巻き込んだ愚行を許すな

 世界の記憶(せかいのきおく、英: Memory of the World)は、ユネスコが主催する事業の一つです。

 危機に瀕した書物や文書などの歴史的記録遺産を最新のデジタル技術を駆使して保全し、研究者や一般人に広く公開することを目的とした事業でありまして、俗に世界記憶遺産とも呼ばれています。

 最新の2011年5月25日時点(第10回定期総会終了時点)では268点が登録されています。

 主な登録は、『グリム童話』『アンネの日記』『共産党宣言及び資本論初版第1部』『ベートーヴェン交響曲第9番の自筆楽譜』などの文書で、日本では、炭鉱記録画家・山本作兵衛が描き残した『筑豊の炭鉱画』、『慶長遣欧使節関係資料』、平安時代の貴族の摂政太政大臣藤原道長が著した日記である『御堂関白記(みどうかんぱくき)』の三点の文書が登録されています。

 ユネスコのオフィシャルウェブサイトで、ユネスコに公認された“Memory of the World”(世界記憶遺産)の全登録物件の一覧が閲覧できます。

UNESCO
Memory of the World
http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/full-list-of-registered-heritage/registered-heritage-page-1/

 さて登録手続ですが、選定基準は世界歴史に重大な影響をもつ事件・時代・場所・人物・主題・形態・社会的価値を持った記録遺産を対象とします。

 記録遺産の申し込みは原則的に政府および非政府機関を含むすべての個人または団体ができます。

 まず、申請者はユネスコ本部内の一般情報事業局に申込書を提出して1次検討を受け、最終決定は2年ごとに開かれる国際査問委員会定期総会で下されます、認定を受ければユネスコから給付金が支給されます。

 一次検討の選定基準は以下。

1. 影響力
2. 時間
3. 場所
4. 人物
5. 対象主題
6. 形態及びスタイル
7. 社会的価値
8. ほか

 最終決定の選定基準は以下。

1. 元の状態での保存
2. 希少性
3. ほか

 ・・・

 さて15日付けで韓国から興味深い報道がもたらされました。

韓国、「日本軍の慰安婦記録」を世界記憶遺産に登録推進
2014年01月15日10時55分
[ⓒ 中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/604/180604.html?servcode=A00§code=A10

 このニュースはすぐに中国のメディアでも報じられます。

韓国政府、従軍慰安婦を「ユネスコ遺産」申請へ=中国報道
http://news.searchina.net/id/1521075

 続いて日本のマスメディアでも取り上げられています。

【TBSニュース】
慰安婦記録を世界記憶遺産に、韓国政府が計画
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2103640.html
【読売新聞】
世界記憶遺産に「慰安婦」申請準備…韓国
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20140116-OYT1T00294.htm
産経新聞
慰安婦 記憶遺産に」 韓国、2017年登録を計画
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140115/kor14011507140001-n1.htm

 一番詳しく報じている産経新聞記事から。

 【ソウル=加藤達也】韓国の女性家族省は14日、日本統治時代の先の大戦中に慰安婦だった女性らに関連する資料を整理し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録する計画を進めていることを明らかにした。

 女性家族省によると、2017年の登録を目指しており、韓国以外にも中国や東南アジアのほか日本に所在する関連記録物の保存状況を調査。15年中に目録を完成させ、韓国政府の推薦候補として選定されることを目標に、韓国文化財庁に申請するという。

 韓国の聯合ニュースによると、女性家族省関係者は「国家間の利害関係がかかった問題であり、韓国が独自に申請するよりも他国との共同申請が有利」との見方を示し、韓国政府は関係国政府と共同で登録を目指すためのタスクフォース設置も検討している。

 慰安婦問題をめぐり、韓国側は官民一体で国際社会に働きかけて日本に圧力を加える戦略を推進している。今回の動きも、日本に「謝罪と反省」を要求するための国際連携の強化につなげる考えとみられる。

 韓国政府は遺産への登録の雰囲気作りのため、各国の女性問題や歴史に関係する学会や活動団体などとともにシンポジウムなどの広報活動を強化する。今月30日にフランスで開幕する国際漫画祭にも慰安婦を題材とした一方的な主張に基づく作品の展示を計画。漫画という媒体を使って幅広い年齢層への浸透を図ろうとしている。

【用語解説】記憶遺産

 歴史的に貴重な文書、書籍、絵画、映画、音楽などの記録の保護を目的に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が1992年に創設した。世界遺産無形文化遺産と並ぶユネスコの遺産事業。これまでに「アンネの日記」(オランダ)、「マグナカルタ」(英国)、「人権宣言」(フランス)などのほか、日本からは炭鉱絵師、山本作兵衛の記録画など3件が登録されている。

 うむ、記事にあるとおり、「女性家族省によると、2017年の登録を目指しており、韓国以外にも中国や東南アジアのほか日本に所在する関連記録物の保存状況を調査」し、「国家間の利害関係がかかった問題であり、韓国が独自に申請するよりも他国との共同申請が有利」との見方を示し、韓国政府は関係国政府と共同で登録を目指すためのタスクフォース設置も検討する模様です。

 この動きに対して日本政府の対応ですが、例によって菅義偉官房長官が「慰安婦問題を含め、日韓関係の財産請求権問題は日韓請求権協定で完全に、最終的に解決済みというのがわが国の一貫した立場だ」と表明します。

官房長官慰安婦問題解決済み強調 韓国の記憶遺産登録計画を牽制
2014.1.15 19:05
 菅義偉官房長官は15日の記者会見で、韓国が慰安婦に関する資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録する計画を進めていることについて「慰安婦問題を含め、日韓関係の財産請求権問題は日韓請求権協定で完全に、最終的に解決済みというのがわが国の一貫した立場だ」と強調し、韓国側を牽(けん)制(せい)した。

 菅氏は「わが国は主張すべき点はしっかり主張しながら、冷静に毅(き)然(ぜん)として対応していきたい」とも述べた。

 記憶遺産は、歴史的に貴重な文書などの保護を目的に1992(平成4)年に創設された。韓国の女性家族省は14日、日本統治時代に慰安婦だった女性らに関連する資料を整理し、2017(平成29)年の記憶遺産登録を目指していることを明らかにしていた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140115/plc14011519050016-n1.htm

 うむ、「わが国は主張すべき点はしっかり主張しながら、冷静に毅(き)然(ぜん)として対応していきたい」(菅官房長官)のは理解しますが、冷静に毅然としてどのように何を対応するのか、例によって具体策は述べません、また韓国系団体によるアメリカにおける慰安婦像設置のときのように、ただ傍観しているだけなのでしょうか、「冷静に毅然として対応」の中身が意味不明であります。

 古田博司筑波大学人文社会科学研究科教授は、北朝鮮政治、韓国社会論、朝鮮中世史が専門で韓国滞在が長くその体験と研究を下地にした韓国論を複数出版していますが、古田教授は1年前の新聞での論考で、日本は韓国の甘えを断ち切れと主張しています。

筑波大学大学院教授・古田博司 竹島を「聖地」にした韓国の甘え
2013.2.22 03:21
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130222/kor13022203220000-n1.htm

 「助けず教えず関わらず」の3か条で韓国の甘えを断ち切れと喝破しています。

(前略)

 ≪南には助けず教えず関わらず≫

 貿易面で対中依存、安保面で対米依存が減じれば、韓国は済州島の海軍基地の完成後、中国船舶を引き入れる可能性がある。バッファーゾーンであるよりもバランサーでありたいという意識が、欠損を埋めようとするからである。

 韓国の最も大きな誤認は、地図上の大国に事大主義で仕えている限り、日本を敵に回しても構わないという甘えであり、この甘えが日本の防衛、ひいては、東アジア全域の安全保障に重大な危機をもたらすということがあり得る。

 従って日本は、あくまでも韓国をバッファーゾーンに固定するように施策を練る必要がある。とりあえず、「助けない、教えない、関わらない」という3カ条で、韓国の甘えを断ち切り、バランサーが夢であることを自覚させることから始めたい。経済で困っても助けない、企画や技術を教えない、歴史問題などで絡んできても関わらない。これが日本にはなかなかできない。努力が必要である。

(後略)

 この論考は「ウソも通ればめっけ物」の国であり「うっかり深く付き合ったり共生したりしてはならない」と結ばれています。

 北朝鮮には、金王朝発祥の地で民族の聖地である白頭山(中国領は長白山)がある。韓国には長く聖地がなかったが、日本からもぎ取った竹島を、不当にも、「独島(ドクト)」と改名して反日の聖地とした。聖地には、北でも南でも詣でる人々が引きも切らない。「ウソも通ればめっけ物」の国々である。うっかり深く付き合ったり共生したりしてはならない。

 ・・・

 今、韓国の女性家族省は、日本統治時代の先の大戦中に慰安婦だった女性らに関連する資料を整理し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録する計画を進めていることを明らかにしました。

 2017年の登録を目指しており、韓国以外にも中国や東南アジアのほか日本に所在する関連記録物の保存状況を調査をすすめる意向です。

 さらに、女性家族省関係者は「国家間の利害関係がかかった問題であり、韓国が独自に申請するよりも他国との共同申請が有利」との見方を示し、韓国・中国・東南アジア諸国政府と共同申請を目指すとしています。

 事実に基づいて調査が進められるとはとても判断できません。

 以前、当ブログで検証したとおり、韓国系団体がアメリカに設置している慰安婦像石碑の内容は「史実」からほど遠いデタラメな内容だからです。

 以前のエントリーより当該箇所を抜粋。

 そもそもすでに全米で慰安婦像および碑文が4ヶ所設置されてしまっているのですが、韓国系市民団体の計画では今後新たに20箇所の設置が計画されているのです。

 問題なのはトニー・マラーノさんも指摘しているように碑文の内容が不正確なだけでなく明らかに日本を悪意を持ってターゲットにしていることです。

 ここは原点に戻って、グレンデール市の慰安婦像の碑文の内容を正確にご紹介しましょう。

Peace  Monument
In memory of more than 200,000 Asian and Dutch women who were removed from their homes in Korea, China, Taiwan, Japan, the Philippines, Thailand, Vietnam, Malaysia, East Timor and Indonesia, to be coerced into sexual slavery by the Imperial Armed Forces of Japan between 1923 and 1945.
And in celebration of proclamation of “Comfort Women Day” by the City of Glendale on July 30, 2012, and of passing of House Resolution 121 by the United States Congress on July 30, 2007, urging the Japanese Government to accept historical responsibility for these crimes.
It is our sincere hope that these unconscionable violations of human rights shall never recur.
July 30, 2013

平和の記念碑
1923年から1945年の間、大日本帝国軍によって強制的に性奴隷にされた、朝鮮、中国、台湾、日本、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、東ティモール、そしてインドネシアの、それぞれの家から強制連行された20万人以上のアジアとオランダの女性を偲ぶ。
2012年7月30日のグレンデール市による「慰安婦の日」宣言と、2007年7月30日に合衆国下院においてこの犯罪の歴史的責任を日本政府が受諾することを要請する121条決議案が議会を通過したことを祝す。
私たちの真摯な望みはこの並外れた人権侵害が二度と再び繰り返されないことである。
2013年7月30日
(訳:木走)
Comfort Women Monument Unveiled in Glendale
http://www.ncrr-la.org/news/comfortwomenmonument/comfortwomenmonument.html

 まず「朝鮮、中国、台湾、日本、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、東ティモール、そしてインドネシア」と10カ国が列挙されていますが、これは単に日本軍の慰安施設が設置されていた国々という事実なだけであり、この国々ですべて慰安婦が「それぞれの家から強制連行された」と誤読されるように文章は意図して構成されていますが、これはまったく事実に即していません、根拠はありません。

 悪徳業者が介在していた可能性はありますが、日本軍が直接組織的に強制連行した事実は、インドネシアでの一部の犯罪行為以外では、ほとんどの国で証明されていません。

 さらに慰安婦数ですが、"more than 200,000"つまり「20万人以上」と碑に刻まれているわけですが、この数字にはまったく根拠はありません。

 20万人という数値は学者による数ある当時の慰安婦数の推定値のひとつに過ぎません。

2万人と推定の慰安婦 韓国が人数多く見積もり20万人一人歩き
2014.01.06 07:00
http://www.news-postseven.com/archives/20140106_234560.html

 正確な数を今日明らかにすることは不可能なのですが、上記記事にもあるとおり、「昨年11月5日、韓国の国会議員は「韓国政府が推定する日本軍慰安婦の被害者は8万〜20万人だが、確認できているのは243人のみだ」と、女性家族省の資料を基に明らかにした」わけです。

 韓国政府ですら慰安婦と認定できたのはわずか「243人」だけなわけで、しかも日本軍が直接強制連行に関与したことは一人として証明できていません。

 何の根拠もなく数字だけが韓国の思惑どおり膨らんでいつの間にか慰安婦数が「20万人以上」と「事実化」して全米各地で石碑に刻まれようとしているのです。

 後世に残る記念碑を作るならばせめて碑文の内容は事実に基づかなければなりませんが、今検証したとおり、事実は誇大に湾曲されています。

 でたらめに近いのです。

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140107

 ・・・

 古田博司筑波大学大学院教授は「助けず教えず関わらず」の3か条で韓国の甘えを断ち切れとしています、「ウソも通ればめっけ物」の国とは「うっかり深く付き合ったり共生したりしてはならない」のだと。

 しかしながら自分たちの「ウソも通ればめっけ物」を国際的に広めて他国を巻き込みながら、国連教育科学文化機関(ユネスコ)という国際的権威の格付けを悪用し「ウソ」を国際的「真実」に昇格させ日本を貶めようとするこの戦略を日本として放置していてよいのでしょうか。

 日本の国家としての品位を汚すような韓国と同等の低レベルの下劣な対抗手段を打つべきではありませんが、事実に即した毅然とした反駁・反論はしっかり行なっていくべきでしょう。

 日本が今まで特に歴史問題で慰安婦像設置など韓国のやりたい放題に嫌なことに「関わらず」と放置してきたことが韓国の愚行を助長してきた面は否めないでしょう。

 これ以上韓国の国際社会を巻き込んだ愚行を日本政府が傍観することは許されません。

 日本政府には、冷静に毅然として、そして具体的に対応していただきたいです。



(木走まさみず)