木走日記

場末の時事評論

コリア・パラドックスに陥った破綻寸前の韓国・朴政権の外交〜自業自得の八方美人の『コウモリ外交』

 韓国のメディアの論調が大きく変わってきました。

 例えば3日付けの中央日報のソン・ホグン・ソウル大教授のコラムです。

【コラム】不吉な亡国の予感=韓国
2013年12月03日10時36分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
http://japanese.joins.com/article/979/178979.html?servcode=100§code=120
http://japanese.joins.com/article/980/178980.html?servcode=100§code=120

 これは韓国メディアのコラム記事としては珍しくなかなかの良記事です、未読の読者は一読をおすすめします。

  「今日の韓国の状況は旧韓末の亡国当時と正確に一致する」、「その時よりもっと劣悪だ」と主張するソン・ホグン・ソウル大教授でありますが、なかなかの格調高い名文調でこう続けます。

(前略)

それでも信じられなければ、中国・日本が設定した防空識別圏に狭まれた海とそこに閉じ込められた韓国を見ればよい。4強力学がどう作動するかを。防空識別圏をめぐる競争は溶岩のようにうごめく極東情勢に潜在する一つの象徴的な事件にすぎない。韓国は2つの分離線が重なる位置にある。韓中と日本を分ける「歴史対峙線」、韓日米と中朝を分ける「軍事対峙線」が、韓国の地政学的な住所を矛盾させた。情勢変化によって周辺国の表情を見なければならない状況だ。日本の右傾化は矛盾のジレンマを増幅させる。安倍政権は歴史対峙線の中枢神経である領土紛争を起こし、直ちに米国の後ろに隠れたが、韓国は中国と慰労酒を交わした後、うかうかと軍事対峙線に復帰しなければならない状況だ。済州道南側の上空に新鋭戦闘機が乱舞しても、韓国は見物するだけで、これといった方法はない。宮廷に閉じ込められて“正義の大国”が来ることを待ち望んだ高宗と、隙間戦略も駆使できない今日の韓国の何が違うのか。“乱暴な北朝鮮”が膨らみ、ここに領土紛争が重なれば、韓国の運命は強大国の力学に左右される。

(後略)

 なるほど、「韓中と日本を分ける「歴史対峙線」、韓日米と中朝を分ける「軍事対峙線」が、韓国の地政学的な住所を矛盾」させているという見立てはなかなかうまいです。

 「情勢変化によって周辺国の表情を見なければならない状況」であり、「ここに領土紛争が重なれば、韓国の運命は強大国の力学に左右される」とあります。

 韓国メディアのコラムと言えば反日に偏った感情論や誇大妄想的に自国の実力を高めた表現の空想論が多いのですが、このコラムは地に足がついている感じで冷静に自国の立場を捉えていると好感を持ちました。

 このコラムに代表されるようにここへ来て韓国のメディアは歴史問題や経済分野で関係を密にしている中国と軍事同盟関係にあるアメリカとの狭間に挟まれた韓国外交の危うさを憂う論調が増えています。

 11月29日付けの朝鮮日報の以下の記事では、この韓国外交の抱えた矛盾・ジレンマを「コリア・パラドックス」と表現しています。

韓国の安保・経済戦略、米中対立で危機に直面

韓米日三角安保同盟−韓国に積極的参加求める米、反発する中国
韓米西海演習−中国、西海の米空母に不快感…武力アピールなど衝突の可能性も
韓中軍事協力強化−韓国、対北朝鮮抑止力確保のため推進…米、直接・間接けん制の動き

 中国の一方的な防空識別圏設定に触発された中日の確執が米中の確執に拡大し、いわゆる「G2」(米中2大国)に挟まれた韓国は軍事安保に頭を痛めている。安保同盟関係にある米国と、最大の貿易市場である中国というG2のはざまでジレンマに陥っているというわけだ。専門家らはこれを「コリア・パラドックス」と呼んでいる。

(後略)

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/11/29/2013112900893.html

 記事に「中国の一方的な防空識別圏設定に触発された中日の確執が米中の確執に拡大し、いわゆる「G2」(米中2大国)に挟まれた韓国は軍事安保に頭を痛めている」とありますが、日本メディアから見れば、朴槿恵(パク・クネ)政権による米中双方にいい顔をする「コウモリ戦術」は破綻寸前だと辛辣(しんらつ)な表現になります。

 2日付けzakzak記事。 

韓国・朴政権の外交は破綻寸前 中国側から見下され、ネットでも「打倒韓国」
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131202/frn1312021810007-n1.htm

 同記事によれば中国世論も「反韓国」「打倒韓国」で盛り上がっているようです。

(前略)

 さらに同30日には、中国軍が韓国軍に対し、東経124度の西側で活動しないよう要求していたことも発覚。「東経124度」は中国が北朝鮮との間で取り決めた海上境界線で、中国が韓国を北朝鮮と同様に“支配下”に置こうとしている実態が明らかになった。

 中国のネット世論も「反韓国」「打倒韓国」で盛り上がっている。

 「韓国人をやっつけて、朝鮮半島を統一してしまえ」

 「安重根の記念碑をぶち壊せ! 朴槿恵を怒り狂わせろ!」

 こうした過激な意見に加え、中国国営新華社通信系の情報サイトは同28日、「日本に向けての措置なのに、なんで韓国がしゃしゃり出てくるんだ?」などと、あけすけに韓国を蔑視するネットユーザーの声を紹介した。


(後略)

 ジャーナリストの室谷克実氏は朴氏の外交は「結局は『コウモリ外交』だ。だが、そのコウモリは、どこに向かって飛べばいいか分からなくなっている」と辛辣(しんらつ)に批判しています。

 本紙で『新悪韓論』を連載するジャーナリストの室谷克実氏は「朴氏は、米中の間で中立を維持したいと思っている。しかし、韓国は米国と同盟関係にあるので、そんなことできるはずもない。結局は『コウモリ外交』だ。だが、そのコウモリは、どこに向かって飛べばいいか分からなくなっている」と分析する。

 そもそも北朝鮮と軍事的に対峙している韓国が北朝鮮の唯一の同盟国であり後ろ盾である中国に接近を試みる外交姿勢自体が最初から致命的な矛盾・パラドックスを抱えていたと考えます。

 今回の中国の一方的な防空識別圏設定で、そもそも内包していた矛盾が表出されただけなのです。

 中国を批判すれば中国から嫌われ、中国に媚を売れば米国から警戒されてしまう、結局日米中三国いずれからも、韓国・朴政権の外交姿勢は信用されなくなりつつあると言って良いでしょう。

 八方美人の『コウモリ外交』のすえコリア・パラドックスに陥った、破綻寸前の韓国・朴政権の外交なのであります。

 「韓国の地政学的な住所を矛盾」とソウル大学教授は韓国のポジションが宿命的にパラドックスを抱えていると論説していますが、その側面も認めながらですが、朴政権の外交が破綻寸前に追い込まれたのは、自分で蒔いた種、つまり自業自得ということでしょう。



(木走まさみず)