木走日記

場末の時事評論

産経新聞驚愕スクープ「河野談話の従軍慰安婦報告を虚構と断定」〜産経が主張する徹底的な事実検証を断固支持する

 16日付け産経新聞紙面にて、一面トップでスクープ記事を掲載、内容は産経が独自に「『河野洋平官房長官談話』の根拠となった、韓国での元慰安婦16人の聞き取り調査報告書を入手」、精査すると「証言の事実関係はあいまいで別の機会での発言との食い違いも目立つほか、氏名や生年すら不正確な例もあり、歴史資料としては通用しない内容」であり、「軍や官憲による強制連行を示す政府資料は一切見つかっておらず、決め手の元慰安婦への聞き取り調査もずさんだったと判明」、「河野談話の正当性は根底から崩れたといえる」と強い口調で断じています。

 トップ記事だけでなく3面全部や社説検証面すべてなど約3ページに及ぶ関連記事の膨大な掲載に驚きを禁じえません。

 石原元官房副長官インタビューや16人の聞き取り調査概要を氏名を伏せつつ個別に表にしてまとめていたり河野談話全文をそのまま掲載、また本件に関する日本の主要メディアの報道姿勢に関して過去に遡って検証するといった、微に入り細に入り稀に見る力の入れようであります。

 全てではないですがネット上にもそのほとんどの記事が公開されていますので、参考までにご紹介。

慰安婦報告書、ずさん調査浮き彫り 慰安所ない場所で「働いた」など証言曖昧 河野談話の根拠崩れる
2013.10.16 08:36
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101608380010-n1.htm

「韓国を信頼し『公正・冷静に語れる人を』と言い韓国は約束した」 石原元官房副長官
2013.10.16 10:16
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101610180011-n1.htm

河野談話」全文
2013.10.16 10:19
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101610190012-n1.htm

「性奴隷の国」の国際評価…計り知れない禍根残す
2013.10.16 12:39
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101612400013-n1.htm

韓国に配慮、まず強制ありき 「事実より外交」のツケ重く
2013.10.16 14:15
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101614160015-n1.htm

「公文書と呼ぶにはお粗末だ」現代史家の秦郁彦
2013.10.16 14:59
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101615020017-n1.htm

「新たな官房長官談話を」西岡力・東京基督教大教授
2013.10.16 15:01
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101615020018-n1.htm

歴史認識慰安婦問題 河野談話「朝毎VS産読」鮮明に
2013.10.16 15:04
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101615070019-n1.htm

河野氏、矛盾点を無視し確認せず
2013.10.16 16:02
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131016/plc13101616020020-n1.htm

 詳細は是非各記事でご確認いただくとして、この産経の一連の派手なスクープ記事ですが、産経の主張は翌17日の普段は2本掲載の社説をあえて一本にしぼった社説にて、まとめられています。

虚構の慰安婦報告 河野氏呼び国会で検証を
2013.10.17 03:17
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131017/plc13101703170006-n1.htm

 社説冒頭、産経の独自調査により「韓国人元慰安婦16人の聞き取り調査結果」は「元慰安婦の名前や出身地、生年すら不明確で、ずさん極まる調査」であり、「河野談話の根拠が大本から覆った」と断じます。

 慰安婦の強制連行を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話の根拠とされた韓国人元慰安婦16人の聞き取り調査結果の詳細が明らかになった。予想されたことではあるが、元慰安婦の名前や出身地、生年すら不明確で、ずさん極まる調査だった。いわれなき対日非難と曲解を招いた河野談話の根拠が大本から覆ったといえる。

 続いて強制連行を認めた河野談話は「その唯一のよりどころが信用性を失ったのだ。談話そのものが虚構だった」と虚構と断定いたします。

 河野談話は「従軍慰安婦」という戦後の造語を使い、募集に「官憲等が直接これに加担したこともあった」と日本の軍や警察による強制連行を認めたものだ。

 しかし、談話発表から4年後の9年、石原元官房副長官の本紙への証言により、日本政府が内外で集めた慰安婦に関する二百数十点に及ぶ公式文書には、強制連行を示す証拠はなく、元慰安婦からの聞き取り調査だけで「強制連行」を認めたことが分かった。

 その唯一のよりどころが信用性を失ったのだ。談話そのものが虚構だったともいえる。

 「政府も与党も、腹をすえて検証作業を行」い、「偽りの見解の作成過程がより明確になれば、速やかに談話を破棄ないし撤回すべき」と、徹底検証のうえ偽りが明確になれば河野談話は破棄・撤回すべきとせまります。

 石破茂自民党幹事長は「(証言を)よく精査したい」と述べ、菅義偉官房長官は「歴史学者らによる学術的な検討が望ましい」と語った。政府も与党も、腹をすえて検証作業を行ってほしい。

 その結果、偽りの見解の作成過程がより明確になれば、速やかに談話を破棄ないし撤回すべきだ。一部識者が指摘するように、検証結果に基づく新たな官房長官談話を出すのも有力な方法である。

 さらに「日本の一部マスコミも慰安婦問題追及キャンペーンを展開」、「慰安婦が「挺身(ていしん)隊」の名で集められたと書いたりする誤報」を指摘、「マスコミにも反省を求めたい」とします。

 当時、日本の一部マスコミも慰安婦問題追及キャンペーンを展開した。この中には、慰安婦が「挺身(ていしん)隊」の名で集められたと書いたりする誤報もあった。

 新聞週間にあたり、マスコミにも反省を求めたい。

 産経社説は「日本の一部マスコミ」と濁していますが朝日新聞を指していることは自明であります。

 社説は「河野談話が招いた誤解は韓国だけでなく、米国をはじめ国際社会全体に広がっている」とし、「安倍政権には、歴代政権が放置した日本の不名誉な歴史を正すため、国際社会に向けた事実に基づく積極的な発信を期待したい。」と結ばれています。

 河野談話が招いた誤解は韓国だけでなく、米国をはじめ国際社会全体に広がっている。

 今年も、国連の拷問禁止委員会が慰安婦を「日本軍の性奴隷」と表記し、日本政府に「関係者の処罰」を求める勧告を出した。7月末には、米グレンデール市で、ソウルの日本大使館前に設置された「慰安婦の碑」と同じ少女像が設置され、日本軍が慰安婦を連行した、と碑文に記された。

 安倍政権には、歴代政権が放置した日本の不名誉な歴史を正すため、国際社会に向けた事実に基づく積極的な発信を期待したい。

 ・・・

 さて、この河野談話従軍慰安婦報告を虚構と断定した産経スクープ記事ですが、さっそく韓国メディアが強烈に反応、「このような報道は最近、談話の破棄、修正を求めている日本国内の保守、右翼勢力の動き」(朝鮮日報)と批判を展開しています。

河野談話「日本の右翼勢力が無力化図る」 本紙報道に韓国メディア
2013.10.17 08:17 [日韓関係]

 【ソウル=名村隆寛】韓国の複数のメディアは16日、「河野談話」をめぐる産経新聞の報道について、記事を引用するとともに、「日本の右翼勢力が談話の無力化を図っている」などと批判した。

 韓国の通信社、聯合ニュースは東京発で、「産経のこうした報道は、河野談話の破棄、修正を要求する日本国内の保守右翼勢力による執拗(しつよう)な河野談話の無力化攻勢にあたる」などと伝えた。

 また、朝鮮日報(電子版)は「日本の保守メディアが韓国人慰安婦被害者の証言に信憑(しんぴょう)性がなくなったと報道した」とする一方、「日本は河野談話が出たとき、最初に軍の慰安婦強制動員の事実を認めた」と前置きし、産経の報道内容を簡潔に報じた。

 その上で、「このような報道は最近、談話の破棄、修正を求めている日本国内の保守、右翼勢力の動き」であると指摘。「日本の右翼勢力は、慰安婦の強制動員の事実を見極める日本政府の資料はないとし、継続的に河野談話無力化への攻勢を展開している」と、聯合ニュースとほぼ同じ表現で警戒感を示した。

 一方、産経の報道に関する韓国政府のコメントなどは出ていない。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131017/kor13101708190000-n1.htm

 ・・・

 まとめです。

 当ブログはいわゆる「従軍慰安婦問題」は悲しき二重の構造を呈しているという認識を有しています。

 一つ目は、従軍慰安婦問題」がここまで国際化したのは一連の朝日新聞捏造報道にあることは疑いようが無い事実であります。

 そして日本政府が「河野談話」を表明するまでに追い詰められたのは、朝日新聞の虚偽の報道によるところが起因していると認識しております。

2012-09-01 「河野談話」の真の生みの親は朝日新聞である
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20120901

 その意味で産経が主張している徹底的な事実検証は絶対に必要であると、これを支持いたします。

 学術者による事実解明、および河野氏朝日新聞関係者などの国会招致も視野に入れた政府による調査を、徹底して行っていただきたいです。

 まずはここです。

 そのうえでこの「従軍慰安婦問題」の2つ目の構造を私達日本人は冷静に見つめる必要があると考えます。

 それは一連の朝日新聞捏造報道が検証されたうえで、軍による強制を示す証拠はないと明らかになったところで、しかし当時のこれら女性達の悲劇的境遇は変わらない、日本軍の組織的関与が否定されたにしろ、国際的には本件で同情は哀れな女性達に集まるのは必然であるという事実です。

 国際的には「従軍慰安婦問題で日本が政治的に勝利することはない」(マイケル・グリーン氏)との見識が主流であることは、しっかりおさえておくべきです。

■[政治]「従軍慰安婦問題で日本が政治的に勝利することはない」〜マイケル・グリーン氏の4年前の忠告
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20111219/1324269081

 マイケル・グリーン元米国国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が4年前日本の新聞のインタビューで示した冷静な発言があります。

 氏はアメリカ共和党きっての知日家でありながくブッシュ政権のブレーンを務めてきた親日家であります。

 リンクはありませんが、2007年3月4日付けの読売新聞紙面から当該部分を抜粋して再掲しましょう。

マイケル・グリーン氏に聞く 「慰安婦」歴史家に任せよ
(中略)
−−−米下院では、民主党のマイケル・ホンダ議員らが慰安婦問題で日本に公式な謝罪を求める決議案を提出し、外交委員会の小委員会で公聴会が行われた。
 「米議会がこの問題に関与するのは大きな間違いだ。特に外交委員会は、北朝鮮の人権侵害、台頭する中国の挑戦など、対応すべき問題が山積している」
−−−日本政府は公式に謝罪しているにもかかわらず、決議が繰り返し米議会に提出されるのは、なぜか。
 「韓国系の住民の多いカリフォルニア州出身議員らが推進しているからだ。反日、反米、親北朝鮮の民間活動団体(NGO)などが絡んでいることもある」
−−−自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が河野官房長官談話の見直しを議論しているのをどう受け止めるか。
 「仮に決議案が採択されたとしても、米国の日米同盟に関する政策に与える影響はゼロだ。米メディアの報道も今のところ低調だ。しかし、日本が反発すれば事態は悪化する。共和党民主党の一部議員が、決議案の問題点に気づき、修正や廃案をめざして動き始めたが、日本の政治家が反発すると収拾が難しくなる。日米とも政治家がこの問題に関与すれば国益を損なう。歴史家に任せるべきだ」
−−−安倍首相は「(旧日本軍の)強制性を裏付ける証拠は無かったのは事実だ」と発言している。
 「安倍政権の外交政策、特に国連での対北朝鮮制裁決議採択や、中韓との関係改善に向けた首相の指導力は、ワシントンでも高く評価されている。ただ、慰安婦問題は、高いレベルが政治介入すればかえって複雑化する。強制性があろうとなかろうと、被害者の経験は悲劇で、現在の感性では誰もが同情を禁じ得ない。強制性の有無を解明しても、日本の国際的な評判が良くなるという話ではない」
−−−昨秋、下院で開かれた公聴会靖国神社問題について証言し、日本の立場に理解を示したが、この問題では批判的なのか。
 「慰安婦問題で議会に呼ばれたら、残念ながら日本を擁護できない。靖国問題慰安婦問題は違う。どの国にも戦争で亡くなった英霊に敬意を表す権利があり、中国に介入する権利はない。クリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』がヒットしたのは、米国人だけでなく日本人の犠牲者に対する同情を呼んだからだ。しかし、慰安婦問題で同情されるのは被害者女性だけで、日本が政治的に勝利することはない」
2007年3月4日読売新聞紙面4面より 抜粋引用

 親日家であるマイケル・グリーン氏の意見ですが、冷静なきわめて妥当な分析であると評価できます。

 当時アメリカ議会で開かれていた従軍慰安婦関係の公聴会そのものは、「米議会がこの問題に関与するのは大きな間違い」であり「反日、反米、親北朝鮮の民間活動団体(NGO)などが絡んでいる」ことを指摘しつつ、慰安婦問題自体は「歴史家に任せるべき」であり、「日米とも政治家がこの問題に関与すれば国益を損なう」と断じています。

 彼によれば、「強制性があろうとなかろうと、被害者の経験は悲劇で、現在の感性では誰もが同情を禁じ得ない。強制性の有無を解明しても、日本の国際的な評判が良くなるという話ではない」のであり、本質的には「慰安婦問題で同情されるのは被害者女性だけで、日本が政治的に勝利することはない」からであります。


 この問題は最終的には政治問題化させるのではなく歴史学者による真摯な事実検証にゆだねるべきでしょう。

 日本政府は、韓国が求めるこの問題における政府間協議に対して、第三国を含む歴史学者の徹底的な事実の検証作業を提案するべきです。

 この問題の解決は本来政治家ではなく学者にゆだねるべきです。

 本件の政治問題化を避けるのは真実の解明、それが唯一の方法だと考えます。

 マイケル・グリーン氏が4年前に冷静に忠告しているように、国際的には「強制性があろうとなかろうと」「慰安婦問題で同情されるのは被害者女性だけで、日本が政治的に勝利することはない」からです。
 2重の構造を呈するこのやっかいな「従軍慰安婦問題」では、まず真実の解明の妨げになっている一連の朝日新聞捏造報道の検証や今回の産経スクープが主張しているように、河野談話従軍慰安婦報告の信憑性の精査、さらには朝日新聞報道などを根拠にしている韓国などの主張への堂々とした反論、これらが必須でありましょう。
 そのうえでです、しかし本質的にはこの問題で国際的に「日本が政治的に勝利することはない」ことを踏まえて、問題の解決は本来政治家ではなく学者にゆだねるべきだと考えます。
 その最初の一歩として、産経が主張している徹底的な事実検証は絶対に必要である、これを断固支持いたします。


(木走まさみず)