時事報道が実にクリエイティブ・創造的な韓国メディア
ネットでは宮崎駿さんの最新作「風たちぬ」がいろいろな観点から賛否両論、批評されています。
実在の人物に対してどこまで脚色が許されるのか、とか、ゼロ戦という多くの命を奪った戦争兵器を開発した人間としての葛藤がない、とか、あげくは、主人公はタバコを吸いすぎではないか(苦笑)、といった多くの議論を呼んでいるわけです。
さてです。
今日の全国紙5紙のうち日経を除く4紙(朝日・読売・毎日・産経)が一面で「宮崎駿監督引退」を報じております。
宮崎駿監督が引退、「風立ちぬ」が最後の作品に
http://www.asahi.com/culture/reuters/RTR201309020018.html
宮崎駿監督、引退へ「創造の10年」終わった?
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20130901-OYT1T00615.htm?from=popin
宮崎駿監督:引退 常に「命懸け」製作 「風立ちぬ」試写で初めて涙
http://mainichi.jp/area/news/20130902ddn041200012000c.html
宮崎駿監督が引退、「風立ちぬ」最後に スタジオジブリ発表
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/130901/ent13090122240009-n1.htm
ロイター電や中国やカンヌ発信で多くの欧州のメディアも速報をしています、ニューヨークタイムズでも速報されています。
Hayao Miyazaki, Japanese Animator, Said to Be Retiring
http://www.nytimes.com/2013/09/02/movies/hayao-miyazaki-japanese-animator-said-to-be-retiring.html
うむ、宮崎駿さんはもちろん天才なのでしょうが、その功績の何がすごいといってやはり「日本のアニメ」を「ただの子供だまし」から「オトナも楽しめる世界に冠たる日本発のひとつのカルチャー」にまで昇華せしめたことでしょうね。
たいへん失礼ながらですが(汗)、たかがただの一人のアニメ製作者の引退記事が日本だけでなく世界中のメディアのトップニュースになるということは、宮崎駿さん以前にはちょっと想像もできなかったことではないでしょうか。
引退自体が大きな時事報道となる、やはりすごい人です。
で、2日付けサーチナ記事から。
安倍政権に失望か…韓国メディア、宮崎駿監督の引退理由に注目
アニメーション映画の巨匠、宮崎駿監督が現在公開中の映画「風立ちぬ」を最後に引退することが分かった。複数の韓国メディアは2日、「安倍政権の右傾化に失望したか、自身の政治的発言の波紋に負担を感じたのではないか」などと伝え、引退を決断した背景に注目した。宮崎監督の引退は、イタリアで開催中の第70回ベネチア国際映画祭で1日、スタジオジブリの星野康二社長が明らかにした。6日に東京で記者会見を開くという。
韓国メディアは、「安倍晋三首相の歴史認識を正面から批判した後での引退宣言」と指摘した。宮崎監督が7月に「日本は韓国と中国に謝罪しなければならない。昔の日本政府は自国民すら大切にしておらず、当然他国の人も大事にできなかった」と話していたことなどを紹介し、右傾化する安倍政権に懸念を示していたと伝えた。
宮崎監督の作品は韓国でも人気は高く、同国のファンからは引退を惜しむ声が相次いだ。東亜日報は、「“ジャパニメーションの神”宮崎駿監督が電撃引退」と題した記事で、宮崎アニメの作品群を紹介し、「1985年に設立したスタジオジブリはディスニーやピクサーと並ぶ3大アニメスタジオに数えられる」と評した。(編集担当:新川悠)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0902&f=national_0902_034.shtml
うーん、複数の韓国メディアが「安倍政権の右傾化に失望したか、自身の政治的発言の波紋に負担を感じたのではないか」、つまり、安倍政権に失望したことで宮崎駿監督は引退を決断した、と分析しております。
素晴らしい想像力です、いやたくましいほどです。
宮崎駿監督は安倍政権のせい?、いくらなんでもそれはないと思いますが、さすが韓国のメディアです、眼の着けどころが実にクリエイティブ・創造的(苦笑)であります。
・・・
うーん、ひとつの「安倍政権の右傾化に失望したか、自身の政治的発言の波紋に負担を感じたのではないか」という憶測が、独り歩きして複数メディアを伝播していく、何の根拠も示されないのに、です。
しかしなあ、これはネタではなく本当にまじめな分析なのでしょうか。
単一ではなく複数のメディアが同様の分析をしているとすれば、ネタではないのかも知れませんですね。
韓国メディアのこのクリエイティブな創造的な時事報道姿勢、色々な意味で、すごい能力です。
21世紀の現在の事象でさえ事実からかけ離れ実にクリエイティブな創造的な「記事」が、今も堂々と生産されている、ということであります。
このままですと、先例のように「安倍政権の右傾化に失望したか」、現在は憶測ですがやがて「安倍政権の右傾化に失望」と体言止めになり根拠無き憶測が「事実」と変化するやも知れません。
本件では注意深く韓国メディアの今後の論説を見守っていきましょう。
やれやれです、ふう。
(木走まさみず)