木走日記

場末の時事評論

「原爆投下は神の懲罰」不快な韓国紙コラムが犯している愚かな自己否定

 韓国三大紙のひとつ中央日報がとんでもないコラム記事を20日付けで掲載しています。

 キム・ジン論説委員53才による「原爆投下は神の懲罰」であると主張するトンデモコラムです。

【時視各角】安倍、丸太の復讐を忘れたか(1)
http://japanese.joins.com/article/765/171765.html?servcode=100§code=140
【時視各角】安倍、丸太の復讐を忘れたか(2)
http://japanese.joins.com/article/766/171766.html?servcode=100§code=140

 あまりの酷い内容に日本政府は在韓日本大使館を通じて中央日報に抗議、それを産経新聞が記事にしたのが22日です。

韓国メディアの笑えないイチャモン 安倍首相攻撃にあきれるばかり(5月22日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130522/plc13052203080004-n1.htm

 で官房長官も会見で「断じて許されない記事」と批判して事態は急速に拡散、23日になって各局TVニュースでも報道され始めています。

 ネット上、問題の記事が中央日報によっていつ削除されてもおかしくない状況であります、問題の記事を徹底検証しておきましょう。

 まず記事は、「歴史には代表的な神の懲罰が2つある」として、「ドイツのドレスデンが火に焼けた」ことと「日本の広島と長崎に原子爆弾が落ちた」ことを上げます。

【時視各角】安倍、丸太の復讐を忘れたか(1)

神は人間の手を借りて人間の悪行を懲罰したりする。最も苛酷な刑罰が大規模空襲だ。歴史には代表的な神の懲罰が2つある。第2次世界大戦が終結に向かった1945年2月、ドイツのドレスデンが火に焼けた。6カ月後に日本の広島と長崎に原子爆弾が落ちた。

 「これらの爆撃は神の懲罰であり人間の復讐」と主張、「ドイツは精神を変え新しい国に生まれた。だが、日本はまともに変わらずにいる」と日本だけ批判を展開していきます。

これらの爆撃は神の懲罰であり人間の復讐だった。ドレスデンはナチに虐殺されたユダヤ人の復讐だった。広島と長崎は日本の軍国主義の犠牲になったアジア人の復讐だった。特に731部隊の生体実験に動員された丸太の復讐であった。同じ復讐だったが結果は違う。ドイツは精神を変え新しい国に生まれた。だが、日本はまともに変わらずにいる。

 アウシュビッツ収容所遺跡を訪問した話から、報復としてのドイツドレスデン爆撃で「市民は火に焼けた。大人は子ども、子どもはひよこのように縮んだ。合わせて3万5000人が死んだ」と展開していきます。

2006年に私はポーランドアウシュビッツ収容所遺跡を訪問したことがある。ここでユダヤ人100万人余りがガス室で処刑された。どれもがぞっとしたが、最も衝撃的な記憶が2つある。ひとつはガス室壁面に残された爪跡だ。毒ガスが広がるとユダヤ人は家族の名前を呼んで死んでいった。苦痛の中で彼らは爪でセメントの壁をかいた。

もうひとつは刑罰房だ。やっとひとり程度が横になれる部屋に4〜5人を閉じ込めた。ユダヤ人は互いに顔を見つめながら立ち続け死んでいった。彼らは爪で壁面に字を刻みつけた。最も多い単語が「god」(神)だ。

ナチとヒットラーの悪行が絶頂に達した時、英国と米国はドレスデン空襲を決めた。軍需工場があったがドレスデンは基本的に文化・芸術都市だった。ルネッサンス以後の自由奔放なバロック建築美術が花を咲かせたところだ。3日間に爆撃機5000機が爆弾60万個を投下した。炎と暴風が都市を飲み込んだ。市民は火に焼けた。大人は子ども、子どもはひよこのように縮んだ。合わせて3万5000人が死んだ。

 そして日本軍の731部隊にふれていきます、「実験対象は丸太と呼ばれ」、「少なくとも3000人が実験に動員された。中国・ロシア・モンゴル・韓国人だった」と説明していきます。

満州ハルビンには731部隊の遺跡がある。博物館には生体実験の場面が再現されている。実験対象は丸太と呼ばれた。真空の中でからだがよじれ、細菌注射を打たれて徐々に、縛られたまま爆弾で粉々になり丸太は死んでいった。少なくとも3000人が実験に動員された。中国・ロシア・モンゴル・韓国人だった。

 そして「丸太の悲鳴が天に届いたのか。45年8月に原子爆弾の爆風が広島と長崎を襲った」、「ガス室ユダヤ人のように、丸太のように、刀で頭を切られた南京の中国人のように、日本人も苦痛の中で死んでいった」と続きます。

丸太の悲鳴が天に届いたのか。45年8月に原子爆弾の爆風が広島と長崎を襲った。ガス室ユダヤ人のように、丸太のように、刀で頭を切られた南京の中国人のように、日本人も苦痛の中で死んでいった。放射能被爆まで合わせれば20万人余りが死んだ。

 「神の懲罰は国を改造して歴史を変えた」として戦後のドイツは変わったと評価します。

神の懲罰は国を改造して歴史を変えた。ドレスデン空襲から25年後、西ドイツのブラント首相はポーランドユダヤ人追悼碑の前でひざまずいた。しとしと雨が降る日だった。その後ドイツの大統領と首相は機会があるたびに謝罪し許しを請うた。過去に対する追跡はいまでも続いている。ドイツ検察は最近アウシュビッツで刑務官を務めた90歳の男性を逮捕した。

 「ところが日本は違う」、「安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った」と批判します、「安倍の言動は人類の理性と良心に対する生体実験だ。いまや最初から人類が丸太になってしまった。」と意味が不明瞭の論が展開されていきます。

ところが日本は違う。ある指導者は侵略の歴史を否定し妄言でアジアの傷をうずかせる。新世代の政治の主役という人が慰安婦は必要なものだと堂々と話す。安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った。その数字にどれだけ多くの血と涙があるのか彼はわからないのか。安倍の言動は人類の理性と良心に対する生体実験だ。いまや最初から人類が丸太になってしまった。

 「安倍はいま幻覚に陥ったようだ」、「円安による好況と一部極右の熱気に目をふさがれ自身と日本が進むべき道を見られずにいる」と安倍は調子に乗っているといいます。

安倍はいま幻覚に陥ったようだ。円安による好況と一部極右の熱気に目をふさがれ自身と日本が進むべき道を見られずにいる。自身の短い知識で人類の長く深い知性に挑戦することができると勘違いしている。

 で、結語ですが、「日本に対する懲罰が足りないと判断するのも神の自由」と、日本に対する武力攻撃を示唆して論を結んでいます。

彼の行動は彼の自由だ。だが、神にも自由がある。丸太の寃魂がまだ解けていなかったと、それで日本に対する懲罰が足りないと判断するのも神の自由だろう。

これが三大新聞のひとつ中央日報の名物コラムに掲載されたコラム全文です。

 キム・ジン論説委員は53才のバリバリの政治専門記者だそうですが、「安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った」から「原爆投下は神の懲罰」と主張していくこのひどい論理飛躍は、20万に及ばんとする原爆で死んだ一般日本市民を冒涜しているだけでなく、犠牲者には数万人が広島市内で被爆したとされる朝鮮人もたくさん含まれていることを考慮すれば、自国民の死をも冒涜しているといえるでしょう。

 実に無礼で不快な韓国紙トンデモコラムなのであります。

 はっきりさせておきたいのは、当時の朝鮮人はみな「日本人」だったのであります。ですから、実験対象「丸太」に「中国・ロシア・モンゴル・韓国人だった」と韓国人が含まれているのはおかしいのです、「日本人」を実験対象にしたことになってしまいます。

 731部隊に関して事実の検証はここでは避けておきますが、朝鮮系中国人(朝鮮族)ならまだ可能性としてともかく「丸太」に「韓国人」は絶対ありえません、そしてまた、当時の朝鮮半島は日本だったのであり、多くの朝鮮人も広島の軍需工場で働いていたのであり、原爆投下の犠牲者には当時日本人であった朝鮮人も含まれている、その事実ははっきりしているのです。


 この韓国メディアの「原爆投下は神の懲罰」との主張は、自国民を懲罰対象としてしまっているとんでもない自己矛盾を抱えているのです。

 今回は不快な韓国紙コラムが犯している愚かな自己否定を検証しておきました。

 いずれにせよ、こんなとんでもない低レベルの論説が堂々と三大新聞に掲載されていること自体が驚異なのであります。


 
(木走まさみず)