木走日記

場末の時事評論

振り込め新名称 「母さん助けて詐欺」に香ばしく漂う「E電」臭〜「お上」の意思がその決定に関与すると微妙に間が抜けてしまうネーミング事例

 12日付け読売新聞記事から。

母さん助けて詐欺…警視庁が「振り込め」新名称

 「振り込め詐欺」の新名称を募集していた警視庁は12日、1万4104件を審査した結果、「母さん助けて詐欺」を最優秀作品に決定したと発表した。

 今後は、優秀作品になった「ニセ電話詐欺」「親心利用詐欺」とともに防犯イベントなどで紹介する。同庁は「振り込め詐欺」も使いつつ、新名称を広げていく。

 同庁は、先月10日までの3週間に郵送や簡易投稿サイト「ツイッター」で寄せられた作品を62候補に絞り、東京都豊島区巣鴨で高齢男女139人に示したところ、「母さん助けて詐欺」に高い支持が集まった。

 最終審査した同庁幹部も、振り込め詐欺被害の大半を占める「おれおれ詐欺」の被害者の約8割が女性で、息子を装った犯人が「金をなくした」などと切実な声で訴える手口が的確に表現されていると評価した。

(2013年5月12日21時12分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130512-OYT1T00604.htm

 うむ、「振り込め詐欺」の新名称として「母さん助けて詐欺」を厳正な審査のうえ決定した警視庁なのであります。

 「母さん助けて詐欺」ですか、うーむ、今後ニュースなどでTVのアナウンサーもこの呼称を使用するのでしょうか、個人的にはどうも少し緊張感に欠ける「語呂」という印象があるのですが、いやどうなんでしょう。

 このような大々的公募のうえの新呼称をお上が決定した例として、26年前の国鉄民営化にともなう名称変更、「国電」改め「E電」を思い出したオヤジは私1人ではございますまい、結局しっくりこなくて誰もその呼称を使用しなかったわけですが、今回はどうなるのでしょう。

 今回の「母さん助けて詐欺」決定までの選考過程が、「E電」決定過程と酷似しているのが気になるところです。

 wikipediaによれば「E電」は5万通の公募の中では20位だったとのことです。

 当時、「国電」という言葉が広く使われていたが、国鉄民営化により"国鉄電車"でなくなったため、意味上のずれが生じることになった。そこで、「国電」に代わる新たな呼称が分割民営化直後の4月下旬に公募されることとなり、約5万通の応募の中から小林亜星らによる選考委員会によって、2位の「首都電」、9位の「JR電」、20位の「E電」の3つにしぼり込まれた。ちなみに1位は「民電」だった。

(後略)
http://ja.wikipedia.org/wiki/E%E9%9B%BB

 で、結局選考委員によって絞り込まれて5万票に及ぶ人気投票結果は反映されず、結果20位の「E電」に決定されたわけですが、今回の「振り込め詐欺」新名称の決定も実は「E電」決定の経緯と酷似しています。

警視庁が2013年3月21日から「振り込め詐欺」新名称の募集を開始いたしますが、ツイッターで応募できるということもあり、募集開始直後からネット上でツイートが殺到、真面目なものから「ネタ」のようなものまで寄せられ、さながらネット「大喜利」のような盛り上がりを見せました。

 募集開始当時の様子を伝えるj-castニュース記事。

「サギノミクス」「込め込め倶楽部」… 振り込め詐欺「新名称」に珍回答続出
2013/3/22 16:32
http://www.j-cast.com/2013/03/22170743.html?p=all

 思わず苦笑してしまうのがその他応募作品なのであります。

その他応募作品

なりすまし詐欺、金クレ詐欺、助けて詐欺、サギノミクス、パニック詐欺、おサギとピーポ ふりーこみゅこみゅ、だましTEL詐欺、すねかじり詐欺、りょうしん(両親・良心)つけこみ詐欺 青いうサギ、クレクレ詐欺、AKB(あんた金ぶっこみなよ)詐欺、MT(まさかの展開)詐欺 オロオロ詐欺、事故やミスはそんなにないサギ、三文芝居詐欺 ・・・

 個人的には「サギノミクス」とか「ふりーこみゅこみゅ」とかいい味出してると思ったわけですが、それはともかく、今回も読売記事によれば、1万通以上の候補作の中から62候補に絞り、巣鴨で高齢者の意見を参考に最終決定したようです。

 同庁は、先月10日までの3週間に郵送や簡易投稿サイト「ツイッター」で寄せられた作品を62候補に絞り、東京都豊島区巣鴨で高齢男女139人に示したところ、「母さん助けて詐欺」に高い支持が集まった。

 うむ、最終選考において民意は反映し難かった「母さん助けて詐欺」なのでありまして、どうも「お上」の意思がその決定に関与すると、「E電」同様、微妙に間が抜けてしまう、という感が否めないのであります。

 「お上」の意思がその決定に関与すると微妙に間が抜けてしまうネーミング事例、といってよいでしょうか。

 なんとも、振り込め新名称 「母さん助けて詐欺」に香ばしく漂う「E電」臭なのではあります。



(木走まさみず)