木走日記

場末の時事評論

かざしも日本の憂鬱(ゆううつ)〜かざかみ中国の大気汚染が過去最悪レベル

 14日付けNHKニュースWEB記事から。

北京 大気汚染の警報が最高レベルに
1月14日 6時55分

深刻な大気汚染が続く中国の北京では、汚染の原因物質の濃度が高まり、気象台は13日、大気汚染に関する警報を初めて最高レベルに引き上げ、外出や車の利用を控えるよう呼びかけています。

中国では今月10日以降、東部や内陸部を中心に、車の排気ガスなどに含まれ大気汚染の原因物質とされる「PM2.5」という極めて小さな粒子の濃度が高い状態が続いています。
13日の北京市内は、多くの車が昼間でもライトをつけて走行し、高層ビルが白くかすんで、よく見えないほどで、中国のメディアによりますと、各地の病院では呼吸器系の疾患を訴える患者が増えているということです。
このため、北京の気象台は、視界が2キロ以下に制限されるほど大気汚染が深刻になっているとして、汚染に関する警報を初めて最高レベルに引き上げました。
北京市の環境当局は、建設工事の中止や公用車の利用を減らすなどの緊急措置を取っています。
気象台は「あすからあさってまでは、大気が拡散しにくく、広い範囲で見通しの悪い状態が続く」として、健康への影響を減らすため、できるだけ外出を控え、外出する際にはマスクを着用すること、そして車の利用を控えることなどを呼びかけています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130114/k10014780531000.html

 うむ、中国の大気汚染が過去最高レベルにまで汚染物質の濃度が高まり北京では市民に外出を控えることを呼び掛けているもようです。

 記事によれば、「13日の北京市内は、多くの車が昼間でもライトをつけて走行し、高層ビルが白くかすんで、よく見えないほどで、中国のメディアによりますと、各地の病院では呼吸器系の疾患を訴える患者が増えているという」という深刻な事態になっているそうですが、対策としては「北京市の環境当局は、建設工事の中止や公用車の利用を減らすなどの緊急措置を取って」いるそうですが、気象台は「あすからあさってまでは、大気が拡散しにくく、広い範囲で見通しの悪い状態が続く」としています。

 大気汚染の進行を止めるための根本的な対策が取れず、「建設工事の中止や公用車の利用を減らすなどの緊急措置」で対処療法を施し、あとは風任せ「大気が拡散しにくく、広い範囲で見通しの悪い状態」を強い風が吹いて拡散するときを待つしかないわけです。

 14日付け日経新聞記事から。

北京五輪期間中の水準が目標 大気汚染深刻化で市の環境当局者
2013/1/14 22:04

 【北京=共同】中国で大気汚染が深刻化している問題で、北京市の環境当局者は14日、記者会見し、2008年の北京五輪開催期間中の大気の質が「今後の努力目標」だと述べた。中国メディアが伝えた。

 五輪開催中は、交通規制や工場の操業停止などの対策を実施し、北京市の大気の質が大幅に改善。市民らからは期間中の大気の良さを懐かしむ声が出ている。

 市当局者は汚染の原因として自動車や工場からの有害物質の排出量が増えていることや、風が弱く汚染物質が拡散しないことなどを挙げている。

 中国各地では14日も学校の屋外活動を中止したり、高速道路を通行止めにしたりする緊急対策が講じられた。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1402A_U3A110C1CR8000/

 うむ確かに5年前の2008年の北京五輪開催期間中には、「交通規制や工場の操業停止などの対策を実施し、北京市の大気の質が大幅に改善」していました、少なくとも北京市内でマラソンは可能でした。

 14日付け産経新聞記事によれば死者も出た模様です。

北京で死者も…中国覆う大気汚染が悪化
2013.1.14 19:58
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130114/chn13011420030005-n1.htm

 専門家は「新しい現象ではない」と冷静を装うが、北京大学環境保護団体グリーンピースの調査によると、北京、上海、広州、西安の4都市では昨年、PM2・5が原因で約8600人が死亡している。今回も各地の病院で呼吸器の不調を訴える患者が急増。北京ではぜんそくの持病を持つ60代の女性が外出後、発作を起こし急死した。

 また、各地で高速道路が封鎖され、空の便でも欠航や遅延といった影響が出ている。同大などの調査では昨年、PM2・5がもたらした経済的損失は10億ドル(約890億円)に上る。

 産経新聞記事によれば、中国外務省の洪磊報道官は14日の定例記者会見で、「中国政府は環境保護を重視しており、積極的にさらなる大気汚染防止策を展開していく」と述べたそうです。

 しかし同記事も指摘するとおり、抜本的に大気汚染を食い止めるには、交通規制や工場の操業停止などの場当たり的対策ではなく、中国政府も国際的な汚染基準を採用して車の排ガス規制や工場の排煙規制を強化するしかないでしょう。

 EICネット環境用語集によれば、中国で問題になっている「PM2・5」は、直径が2.5μm以下の超微粒子のことで、代表的なディーゼル排気微粒子は、発ガン性や気管支ぜんそくなどの健康影響との関連が懸念されている物質だそうです。

PM2.5

 直径が2.5μm以下の超微粒子。微小粒子状物質という呼び方もある。大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が 10μm以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子。
PM2.5ぜんそくや気管支炎を引き起こす。それは大きな粒子より小さな粒子の方が気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きいと考えられている。
代表的な微小粒子状物質であるディーゼル排気微粒子は、大部分が粒径0.1〜0.3μmの範囲内にあり、発ガン性や気管支ぜんそく、花粉症などの健康影響との関連が懸念されている。

http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2234

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 直径が2.5μm以下の超微粒子であるPM2.5ですが、偏西風では風上・中国の風下である日本としては日本への飛来が気になるところです。

 中国から偏西風に乗って日本などに飛来する黄砂ですがその大きさが発生後3,4 日経って到達する日本では 4 μm 前後という、環境省による調査結果があります。

黄砂実態解明調査
http://www.env.go.jp/air/dss/torikumi/chosa/index.html 

 で、黄砂に乗って中国の大気汚染物質も運ばれて来ているという鳥取大の調査結果もあります。

 すでにリンクは切れていますが5年前の毎日新聞記事から。

鳥取大調査>黄砂でぜんそく悪化も 環境汚染物質含み
2008年6月17日4時24分配信 毎日新聞

 中国大陸から飛来する黄砂により、日本のぜんそく患者の症状が悪化している可能性のあることが、鳥取大の調査で分かった。中国から黄砂に乗って飛来する環境汚染物質による日本での健康被害が懸念される中、具体的な調査事例として注目される。神戸市で開かれている日本呼吸器学会で17日に発表する。
 調査は、同大付属病院(鳥取県米子市)を受診した20歳以上のぜんそく患者117人を対象に行った。07年3〜5月に黄砂で同市内の視界が10キロ以下になった計9日間について、翌日以降に電話で聞き取り調査した。
 その結果、3月と4月では27人(約23%)で、せきや痰(たん)が多くなるなどぜんそく症状の悪化がみられた。別の8人(約7%)は、ぜんそくの悪化はなかったが、鼻水が出るなどの症状が出た。
 スギ花粉の影響を除外するため行った5月の調査でも、16人がぜんそく症状の悪化を訴えたという。

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 風上中国の大気汚染が過去最悪レベルで深刻な事態になっています。

 環境汚染に国境はないところに、風下日本の憂鬱があるのであります。

 両国には尖閣諸島などいろいろな問題がありますが、大気汚染を防ぐこの分野では工場の排煙抑制技術や車の排ガス抑制技術などで、日本企業に先駆的ノウハウが蓄積されています。

 環境汚染に国境はない、仕方ありますまい、中国政府はこの問題で日本政府及び民間の協力を仰ぐべきでしょう。

 

(木走まさみず)