木走日記

場末の時事評論

二階俊博氏と特許庁新システム断念の因果

 5日付けの毎日新聞記事から。

特許庁:新システム断念 支出50億円、計画作り直し 東芝子会社に返還請求へ
毎日新聞 2013年01月05日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/news/20130105dde001010008000c.html

 特許庁が6年前から進めてきた基幹系システムの刷新プロジェクトを中止する方針を固めました。

 政府が策定したレガシーシステムの刷新指針に基づき、特許庁は2004年10月に「業務・システム最適化計画」を策定します。この刷新指針は、特定のITベンダーとシステム保守などを長期契約することによるITコストの高止まりを解消する目的で策定されたものでありました。同庁はさらに、入札に分割調達の仕組みを採用して競争原理を働かせることを目指します。

 要となるシステム設計とシステム基盤の構築については、東芝ソリューションを含め、入札には計3社が参加します、現行システムの開発元であるNTTデータは147億4260万円、一部でシステムに携わつている日立製作所は144億1000万円、そして東芝は94 億500O万円と他社より約50億円低い入札額でありました。

 特許庁によれば、東芝は技術点でNTTや日立より160点以上も下回ったのですが、入札額の低さにより総合評価で落札いたします。

 実は東芝が入札する前にある重要情報を伝えた人物がいます。

 当時二階氏の政策秘書を務めていた小幡一雄氏であります。

 小幡一雄氏は東芝ソリューションに入札直前に、入札提案書のレベルが他社よりも低いことやNTTと日立の見積額などの重要情報を東芝側に伝えた可能性が高いことがTBSが2010年ニュース23の特集で報じています。

 東芝ソリューションが入札予定価格の6割以下の99億2500万円で落札します。ところがプロジェクトが始まると、現行の業務やシステムを理解した職員と技術者が足りない問題が表面化、進行が滞ります、特許庁アクセンチュアと30億円超の契約を結び、同社にプロジェクト管理支援を委託しますが、それでも遅れは防げませんでした。

 特許庁のシステム刷新を巡っては、外部の有識者による「特許庁情報システムに関する技術検証委員会」が、プロジェクト継続の可能性を調査、同委員会が報告書をまとめるかたちでプロジェクトの中止を強く促す内容になり、報告書を受けて、特許庁はシステム刷新の中止を決めたもようです。

 ・・・

 本件に深く関与が疑われているのが二階俊博氏です。

 二階氏は05年10月から06年9月まで特許庁を所管する経済産業相でした、入札は06年11月と二階氏の辞任直後ですが、二階氏の小幡一雄秘書(当時)が入札直前に特許庁に盛んに接触、また東芝ソリューションとも接触していたことが判明しています。

 特許行政のノウハウが全くない東芝ソリューションが落札したのは不自然といえば不自然でしたが、さらに不自然なのが東芝ソリューションのもとでシステム設計に参画したソフトハウス3社の構成にあります。

 まず株式会社Zザクロスと株式会社Oですが、T氏が社長でした。

 実はT氏の父親は二階氏の関西後援会の有力支援者であります。

 また有限会社Iの社長はG氏でありますが、G氏の父親もまた二階氏の関東後援会の有力支援者であります。

 T氏とG氏は二階氏の選挙戦では和歌山の地元で選挙活動を手伝うほどの密な関係にあります。

 この3社はいずれもシステム開発実績がゼロのIT開発とは無縁の会社でしたが、なぜか東芝ソリューションはこの3社と契約を結びます。(正確にはZとOとは直接の契約、Iとは東芝ソリューションの子会社を介しての契約となっています)

 実績のない3社が開発チームの中枢を占めたわけです。

 この事実が特許庁が最終的に新システム断念に追い込まれる事態を招いた一因であることは明らかです。

 まったくのシステム開発実績がゼロの素人の会社が特許庁新システムの設計の中枢にあったのです。

 しかもそのうち4社の中の3社が二階氏の後援会関係者が占めていたのです。

 事実に則して二階俊博氏と特許庁新システム断念の因果を皆様にお伝えするものであります。



(木走まさみず)

<訂正 2013.01.11 14:10>
 一部の社名、個人名を諸事情により伏せました。