木走日記

場末の時事評論

会員制AVサイトの商流事例など〜ネットビジネスの実態に全く追いつけていない日本の法律

 25日付け日経新聞紙面記事。

ネット配信、消費増税なら外国勢有利 各社、募る不公平感 「国外取引」も課税求める
http://www.nikkei.com/search/?searchKeyword=%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E9%85%8D%E4%BF%A1%E3%80%80%E4%B8%8D%E5%85%AC%E5%B9%B3

 ネット上、有料記事扱いなので引用は避けますが、興味深い記事であります。

 ネット配信事業者が此度の消費税増税で商売にならんと悲鳴を上げているというのです。

 記事によれば、電子書籍の国内配信事業に力を入れる紀伊国屋書店の高井昌史社長が「あまりに不公平なので公正取引委員会にまで苦情を申し入れた」のだそうです。

 電子書籍などを海外事業者からダウンロードすれば消費税はかからないが、同じ本を国内事業者からダウンロードすると課税され、数年後には税率10%となる雲行きだからです。

 ネット商品はサイトなどで価格比較が簡単にできます。

 記事によれば、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースでは、国内勢が価格競争するには「消費税分を吸収しなければならず、利益が減ってしまう傾向がある」(宮川和也代表社員)とあり、別の国内大手出版社の幹部も「米アマゾン・ドット・コムなどが海外から配信してくれば勝負にならない」と強調しています。

 つまりこういうことです。

 ネット配信サービスのサーバーが海外にあれば有料コンテンツをダウンロードしても消費税無し、国内にあれば有料コンテンツをダウンロードすれば消費税課税となるのです。

図1:電子出版の商流と課税・非課税

 これは一言で言えば、日本の消費税関連法規がネットビジネスの現状にまったく追いついてないことから生じている「不平等」です。

 しかし長年IT業界に関わってきた私から言わせれば、何をいまさら感が漂ってしまっている日経記事なのであります。

 私の知っている、読者の皆様に公表できるぎりぎりの範囲である事実をお話しましょう。

 一部のネットビジネスでは上記のからくりを何年も前から利用(?)しています。

 代表的なのが会員制AV(アダルトビデオ)サイトです。

 私が知っているあるサイトでは、サイトの運用はすべて日本で行っていますが、サーバーはロサンゼルスに置いてあります。

 会員は月数十ドルの会費をクレジットカードでドル建てで決済します。

 コンテンツは台湾などの海外ブローカーから購入しています。

 つまりこういうことです。

 サーバーをロサンゼルスに置く目的はただひとつ、日本の法律から逃れるためです。

 ネット上では日本の法律に触れる無修正ビデオを扱いますので、サーバーを海外に置く必要があるわけです。

 結果的に、会費をドル建てで会員から集めるため為替リスクは発生しますが5%の消費税は発生しません。

 なおコンテンツを台湾など海外ブローカーから購入しているのは、日本の合法的なAV(アダルトビデオ)の非合法版(無修正版)がいくつかのヤミのルートによって大量に海外ブローカーの手に渡っているからです。

 図にするとこんな感じです。

図2:会員制AVサイトの商流

 なぜ私がここまで詳しいのか、それは実際のAVサイト運用者から直接、話を聞いているからです。

 したがって本件の情報精度には自信があります(海外ブローカーとのコンテンツの受け渡し手段まで詳細に話してもらいましたが、ここでは話せません)

 法律がネットに全くついていっていないのです。

 そして合法・非合法含めてネットではいろいろなビジネスが(旧態依然とした法律をあざ笑うかのように)法律の目をかいくぐるように展開しているのです。



(木走まさみず)