犯罪的・狂気的な東京電力収益構造〜1ワット時当りの利益が家庭と大企業で16.5倍も違うのはなぜだ?
23日付け読売新聞記事から。
東電利益9割は家庭から…電力販売4割弱なのに
電気料金の値上げを巡って、東京電力が経済産業省に提示した料金の収益構造の概要が22日分かった。
それによると、2006〜10年度の5年間の平均で電気事業の利益の9割強を家庭向けなど「規制部門」から稼いでいる。
家庭向けの料金制度は発電コストを積み上げた原価を元に料金が決まるが、算定方法の見直しを求める声が改めて強まりそうだ。
23日に開かれる「電気料金審査専門委員会」の第2回会合で提示される資料によると、東電が販売した電力量2896億キロ・ワット時のうち家庭向けは38%、大口向けが62%だ。
売上高でみると、電気事業収入4兆9612億円のうち家庭向けは49%、大口向けは51%とほぼ同じ比率だ。
だが、1537億円の利益のうち家庭向けは91%、大口向けは9%になっている。つまり、電力量で4割弱を販売している家庭向けから9割の利益を稼ぎ出している構図だ。
東電管内は、ガス会社や石油元売りなどが特定規模電気事業者(PPS=新電力)として電力小売りを手掛けており、大口向け市場は比較的、競争が激しい。値下げを強いられるため、家庭向けで利益を確保しようとしていたとみられる。
(2012年5月23日08時17分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120522-OYT1T01659.htm
うむ、記事によれば東京電力は「2006〜10年度の5年間の平均で電気事業の利益の9割強を家庭向け」から稼いでいることがわかったそうです。
つまり電力販売量は家庭向けは38%、大口向けが62%にもかかわらず、
電気事業収入としては、家庭向けは49%、大口向けは51%とほぼ同じ比率になり、
で、利益は家庭向けは91%、大口向けは9%と比率が大逆転すると。
電力量で4割弱を販売している家庭向けから9割の利益を稼ぎ出している構図が浮かび上がりました。
円グラフにしても異様としかいえない東電の収益構造が一目瞭然です。
本件に関するメディアの報道は甘いです。
起こっていることはもっと犯罪的・狂気的です。
この読売の記事ではサマリー的、全体的に何が起こっているのかは理解できます(それだけでもかなり異様な収益構造です)が、当ブログでは起こっていることをブレークして細部を分析・検証して見ましょう。
単位売上、単位原価、単位利益、すなわちワット時当りの売上、原価、利益を大口、家庭双方で洗い出しましょう。
各数値で表をおこします。
■表1:東電の大口・家庭別各項目構成(%)
項目 | 総計 | 家庭(%) | 大口(%) |
---|---|---|---|
販売電力量(キロ・ワット時) | 2896 | 38 | 62 |
売上高(億円) | 49612 | 49 | 51 |
利益(億円) | 1537 | 91 | 9 |
%ではなく具体的数値に直します。
■表2:東電の大口・家庭別各項目構成(金額)
項目 | 総計 | 家庭 | 大口 |
---|---|---|---|
販売電力量(キロ・ワット時) | 2896 | 1100.48 | 1795.52 |
売上高(億円) | 49612 | 24309.88 | 25302.12 |
利益(億円) | 1537 | 1398.67 | 138.33 |
ここで売上高、利益を販売電力量で割れば、1ワット時当りの売価、利益が割り出され、その上で1ワット時当りの売価から利益を引けば原価も算出できます。
■表3:東電の1ワット時当りの大口・家庭別の売価・利益・原価
項目 | 総計 | 家庭 | 大口 |
---|---|---|---|
単位売上(円) | 17.13 | 22.09 | 14.09 |
単位原価(円) | 16.60 | 20.82 | 14.01 |
単位利益(円) | 0.531 | 1.271 | 0.077 |
まず1ワット時当りの大口・家庭の売価を比較して見ましょう。
■図4:1ワット時当りの売価大口・家庭比率(東電06〜10年平均)
まずそもそも一般家庭や小売業では大企業などの大口団体に比べて、1.57倍、57%も高い電力を買わされていることが理解できます。
次に1ワット時当りの大口・家庭の原価を比較して見ましょう。
■図5:1ワット時当りの原価大口・家庭比率(東電06〜10年平均)
一般家庭や小売業では大企業などの大口団体に比べて、電力の単位原価も1.49倍、49%も高い原価が計算されています。
ここはぜひその算出根拠を東京電力は開示していただきたいです。
小口のほうが電力の分配や課金に頭数が多い分、大口よりも手間が掛かることは理解します、しかし発電源は大口も小口も同じ商品であるはずの「電力」の原価が、顧客によって1.5倍も差がつくのでしょうか。
最後に1ワット時当りの大口・家庭の利益金額を比較して見ましょう。
■図6:1ワット時当りの利益金額大口・家庭比率(東電06〜10年平均)
1ワット時当りの利益が家庭と大口で、16.5倍、1650%も違います。
これはもう同じ商品ではない。
犯罪的、狂気的な価格設定です。
電力自由市場の大口からは原価も抑え利益も押さえ、その分地域独占の家庭から原価負担も含め、利益を集中して回収していたことは自明です。
このような体質の会社が電力の地域独占をしていてよいのでしょうか。
東電はやはり一度破綻させるべきではないでしょうか。
(木走まさみず)