木走日記

場末の時事評論

日本列島が見えない〜世界地震震央分布と世界原発マップを重ねてみた

 日本列島は環太平洋火山帯に属しています。

■図1:環太平洋火山帯

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Pacific_Ring_of_Fire.svg

 環太平洋火山帯は、太平洋の周囲を取り巻く火山帯のことで、火山列島や火山群の総称であり、太平洋プレートを中心とする太平洋の海洋プレートが、その周辺の大陸プレートや海洋プレートの下に沈み込むことによって火山列島や火山群が形成されます。

 当然ながら地震の多発地帯となっているわけです。

 気象庁サイトより。

■図2:1990年から2000年までの世界の地震の震央分布(マグニチュード4.0以上、深さ50kmより浅い地震

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/2-1.html

 日本列島が見えません。

 この図を見れば歴然ですが、太平洋プレートがせり上がってくる南北アメリカ大陸側よりも、プレートが沈み込む日本側のほうが地震の発生頻度がより多いことが見て取れます。

 で、日本列島近傍の地震分布図はこちらです。

■図3:1990年から2000年にかけての 日本付近で発生した地震の震央分布図

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/2-1.html

 ここに世界トップシェアを誇る再保険会社、ミュンヘン再保険会社があります。

Munich Re
http://www.munichre.co.jp/

 このホームページによれば、設立130年の老舗であり、世界160カ国 5,000 社に及ぶ保険会社と取引があるそうです。

長年にわたる日本市場との関係

ミュンヘン再保険会社は、元受保険会社の再保険部門としてではなく、再保険専門会社として、1880年に設立されました。リスクマネジャーとして、当時より、元受保険会社が引受けたリスクの一部を再保険として引受けるなど、保険業界のバリューチェーンにおいて、再保険会社と元受保険会社は相互に補完的な役割を担ってきました。

設立後まもなくして、国外へと事業を拡大。1886年より欧州各地に事務所を、1899年には米国に支店を開設しました。その後、1912年に日本の保険会社との最初の契約を締結し、1967年に東京事務所を開設しました。今日、世界160カ国 5,000 社に及ぶ保険会社から、私たちの専門知識や財務力に信頼が寄せられています。2008年度の正味収入保険料の内訳は、約67%が損害保険、約33%が生命・医療保険となっています。

 再保険とは、簡単に言えば「保険会社のための保険」であり、保険会社単独ではリスクが大きくそのリスクを分散したいときにその一部または全部を再保険会社にしかるべき保険金を払って負ってもらうわけです。

 当然ながら再保険会社はプロである保険会社が負荷分散したいような厄介なリスクを扱うことが多いので、優れたリスク分析能力を持ち合わせなければ商売が成り立ちません。

 世界トップのミュンヘン再保険会社も世界中のあらゆる再保険対象となる事案のリスク分析に余念がありません。

 ここに少し古いですが平成15年作成の消防庁のレポートが公開されています。

 地域の安全・安心を実現するために
〜 自主防災組織の新たな在り方について 〜
http://www.fdma.go.jp/html/new/1512_tiiki.html

このレポートの中で世界の大都市圏の自然災害リスクをミュンヘン再保険会社が指数化したマップが紹介されています。

■図4:ミュンヘン再保険会社による世界の大都市圏の自然災害リスク

http://www.fdma.go.jp/html/new/1512_tiiki.html

 消防庁の説明から。

  ミュンヘン再保険会社によれば、ハザード(Hazard:その地域を襲う災害)×エクスポーズド・バリュー(Exposed Value:その地域の経済的価値)×バルネラビリティーVulnerability:その地域でとられている防災対策)により得られる災害リスク指数は、東京・横浜において格段に大きいとされている。積算方法については、議論の余地もあるが、いずれにしても当該地域に政治・経済・社会的機能が集中し、外国からの投資が期待されていることに鑑みれば、このようなリスクと戦う必要性は極めて大きい。

 特に危険な都市圏ワースト4はすべて環太平洋火山帯の上にある都市が占めています。

■表1:世界都市圏自然災害リスクワースト4

ワースト順位 都市圏 自然災害リスク指数
1 東京・横浜 710.0
2 サンフランシスコ 167.0
3 ロサンゼルス 100.0
4 大阪・神戸・京都 92.0

 日本の東京圏が断トツで危険とみなされている訳ですが、環太平洋火山帯の上にある都市は、他の安定した土地の都市よりも火山・地震津波などの自然災害が多く発生しますので、この保険会社の評価も妥当だろうと思います。

 で、ここまでは自然災害リスクの話。

 世界から自然災害リスクで世界一危険と東京が見なされているように、日本列島は環太平洋火山帯リング西端の世界有数の「地震の巣」の上にあるわけです。

 そして日本は、アメリカ(103基)、フランス(59基)につぐ世界三位の原発大国(54基)であります。

 世界の原発の分布図をウィキペディアより。

■図5:世界原発マップ
List of nuclear power stations

http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_nuclear_power_stations

 この図5ですが、■図2の世界地震震央分布と見比べてみてください。

 環太平洋火山帯上に50基もの原発があるのはもちろん日本だけです。

 アメリカに注目すると103基のほとんどが安定している東部に立地していますね、西部には5基稼動しているだけです。

 図2の世界地震震央分布と世界原発マップを重ねてみましょう。

 両者とも赤のドットで分布が示されておりただ重ねても見づらいので、図2の地震マップを画像処理をしてネガ反転し地震分布を示すドットを水色にした上で、図5の原発マップを位置調整、倍率調整したうえで透過して重ねて見ましょう。

図6:世界地震震央分布と世界原発マップを重ねた図

 いかかでしょうか。

 日本列島が完全に赤と水色のドットで隠れてしまいました。

 これだけの基数の原発地震発生地帯の上の領域に集中してあるのは日本だけです。

 今回は世界地震震央分布と世界原発マップを重ねてみました。

 読者のみなさんの参考になれば幸いです。



(木走まさみず)