木走日記

場末の時事評論

口パクぐらい許してあげてよ〜ここまでの強制はエレガントなやり方じゃない

 私は自他共に認める悪声、そうオンチです。

 その昔の話ですが、私の義妹の結婚式はカソリックの教会で行われましたが、例によって式の中で参加者全員が起立して賛美歌を歌うわけです。

讃美歌312番
(What a Friend We Have in Jesus)

いつくしみ深き 友なるイェスは
罪科(つみとが)憂いを 取り去り給う
心の嘆きを 包まず述べて
などかは下ろさぬ 負える重荷を

http://www.ylw.mmtr.or.jp/~johnkoji/hymn/312.html

 これとかですね。

 で、私の隣には義理の姉がおりましてこの人、もと中学の音楽の先生だったのです。

 オルガンの伴奏とともにそうですね100人ほどの出席者が歌いだしたわけですが、もういきなり隣の姉がオペラ歌手並みのソプラノをぶちかましたのでビックリ(苦笑)しました。

 声楽家顔負けの迫力ある声量で賛美歌を歌うわけです。

 一方、私のほうは別にキリスト教徒でもなし、賛美歌なぞ歌うこと自体不慣れでありそもそもの悪声であります、もう姉の横で口パクでしのぎました、もちろん祝福の心を込めての愛ある口パク(?)です。

 みんなで斉唱するといえば、昔懐かしい戦争映画バルジ大作戦のこのシーンです。

映画「バルジ大作戦」"BATTLE OF THE BULGE" 戦車兵の唄
http://www.youtube.com/watch?v=QU9l_Ead9c8&feature=related

 ドイツ戦車兵達が「Panzerlied」(パンツアーリート)という軍歌を歌うシーンですが、ドイツ軍将校へスラー大佐(ロバート・ショウ)のなんとカッコイイことか、実はロバート・ショウはイギリス人で映画の中でなぜかすべて英語で話している(苦笑)わけですが、この歌はドイツ語で歌っています、ただし途中で老兵の歌声が小さいので「ラウダー(大きく)」と指示する時は英語ですけど。

 さて、大阪の国旗国歌条例がネット上で議論になっております。

 条例の中身を押さえておきます。

大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例
平成二十三年六月十三日
大阪府条例第八十三号
大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例を公布する。
大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例
(目的)
第一条 この条例は、国旗及び国歌に関する法律(平成十一年法律第百二十七号)、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び学習指導要領の趣旨を踏まえ、府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱について定めることにより、府民、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において「府の施設」とは、府の教育委員会の所管に属する学校の施設その他の府の事務又は事業の用に供している施設(府以外の者の所有する建物に所在する施設及び府の職員の在勤する公署でない施設を除く。)をいう。
2 この条例において「教職員」とは、府立学校及び府内の市町村立学校のうち、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校に勤務する校長、教員その他の者をいう。
(国旗の掲揚)
第三条 府の施設においては、その執務時間(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十四条第一項に規定する公の施設にあっては、府民の利用に供する時間)において、その利用者の見やすい場所に国旗を掲げるものとする。
(国歌の斉唱)
第四条 府立学校及び府内の市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする。ただし、身体上の障がい、負傷又は疾病により起立、若しくは斉唱するのに支障があると校長が認める者については、この限りでない。
2 前項の規定は、市町村の教育委員会による服務の監督の権限を侵すものではない。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。

http://www.pref.osaka.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k2011553001.html

 要約するとポイントはこの2点ですね。

 第三条 府の施設においては、その執務時間において、その利用者の見やすい場所に国旗を掲げるものとする。

 第四条 府内の学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする。

 最初に私の立ち位置を明確にしておきますと、一言で言えば、このような国旗掲揚や国歌斉唱を条令で強制することは、あまりエレガントな方法ではないな、と思っています。

 私自身は国を愛する心は大切であると考えている一人で子供の卒業式などでは国歌掲揚には礼を持って起立いたしますし、国歌斉唱には喜んで(しかしほぼ口パクで)参加いたします。

 ただ、国を愛する心というのは強制してもろくなことにならないと考えるわけです。

 もし私が大阪の教師だったら、口パクまでチェックされたらアウトですもの、こんなに愛国心があると自負しているのに。

 口パクチェックまではやりすぎでしょう。

 反対派がよく取り上げているのが、東京都教育委員会委員を務める米長邦雄さんが2004年秋の園遊会に招待された際、今上天皇に対し「日本中の学校において国旗を掲げ国歌を斉唱させることが、私の仕事でございます」と発言したら、米長のこの発言に対し、今上天皇は「やはり、強制になるということでないことが望ましいですね」と述べたエピソードですね。

 やはり、強制するのはエレガントではないと私も考えるわけです。

 ただ、府議会で多数決で議決された条令です、日本は「形式的法治主義」だろうが「実質的法治主義」であろうが、法治国家であるのは間違いありません。

 少しその運用を柔軟にしてもらいたい、それが私の希望です。

 個人には諸事情がある、口パクぐらい許してよ、というのが私の想いです。

 あと反対派の人に言いたいのは本件で今上天皇の上述のお言葉を根拠に反論するのは止めたほうがいいと思います。

 この平成の時代、象徴天皇制の時代、天皇の心情で法の是非を論じてはいけません。

 戦前じゃないんですから、それこそ「全体主義的主張」になってしまいます。



(木走まさみず)