木走日記

場末の時事評論

数字を大切にしない民主党政権から世界は数学的に美しい話まで(オマケ付き)

 前原誠司政調会長は、「名目成長率3%、実質成長率2%の達成を条件として付則に入れるべきだ」との反対派の意見に「数値を入れて(消費増税の)条件にすることは反対だ」と述べたようです。

「成長率前提には反対」 前原氏が見解 消費増税修正案
2012年3月26日7時1分
http://www.asahi.com/politics/update/0326/TKY201203250452.html

 うーん、消費増税法案の付則の景気条項に数値を入れないってことですが、数値を示さない成長戦略なんてあるわけないのであって、こんなのなら付則の景気条項なんかいらないわけです。

 具体的数値を示さない目標など目標ではないです。

 どうも民主党政権になって数字を大切にしないあいまい政治の傾向が強くなった気がします、鳩山、菅と2代工学部出身首相が続いたわけですが、どうも数字を大切にしないだけでなく、不遜な言い方になりますが、この人数字に弱いのじゃなかろうかと疑わせる閣僚が多すぎる感じがします、固有名詞は避けますが。

 政治家でなくとも一般人でも「数字に弱い」人っていますよね。

 私は現在も本業のかたわら大学などで「ネットワーク工学」などを教えていますが、高校の数学をマスターできていない学生が多くて、授業で数式がでてくると大きく講義の進捗が落ちます、高校数学から復習することにしていますので。

 そうしないと授業にならないしそれでも少なからずの学生が理解できずにいます。

 そんな彼らと話していると、異口同音に「中学でも高校でも数学を勉強してもちっとも楽しくなかった」、「苦痛だけだった」と述べます、ようするに「数学嫌い」なんですよね。

 私は別に教育専門家でもなんでもないですが、やはり学習意欲を向上するためには、ある種の「感動体験」が必要だと思っています。

 数学なら数学で学習していて、初めて知って理解することで「感動」するような体験ですね。

 映画やドラマを見て「感動」するのとほとんど同じだと思っています。

 そういう「感動体験」を持つ学生はその科目が好きになりますよね。

 ・・・

 もう何十年も前に話です。

 私が工学部の貧乏学生だった頃、ウェイターから縁日のテキヤの手伝いとか、塾の講師や家庭教師など色々なバイトをしましたが、一番印象にあるアルバイトだったのがある私立病院の理事長婦人の家庭教師でした。

 この方結婚されて小学生になるお子様もおられる中で私立医学部の学生として通われていました。

 で、物理学がぜんぜん理解できないということで、毎週提出しなければならない物理レポート(クイズ)の提出を指導してほしい、とのことでした。当時私がバイトしていた塾の紹介で半年間、週に1回、その方に物理学を教えることになったのですが、これがしんどかったです。

 まず、大学のレポートの微分方程式が解けない。で、なんでかと分析してみるとそもそも高校で習った微分積分からさっぱり忘れているわけです。

 で、さらに例えば物体の自由落下が描く放物線を式にできない。

 二次関数が理解できていないんですもの、導関数とか微分などわかるはずもないんですね。

 私は覚悟を決めて、結局、中学の数学の教科書を持ち出して中学の数学からのお勉強と相成りました。毎週課題のクイズのほうは私が解いたのを丸写しという手抜きをしつつです。

 で、彼女に変化が現れたのは中学の数学を勉強し始めてしばらくたってからです。

 なんというか、勉強への取り組みが意欲的になってきたわけです、おそらく今まで数学への苦手意識があったのでしょうが、さすがに中一の教科書から丁寧に復習してますから、彼女にも理解ができて今まで解けなかった問題も正答できるようになってきて、数学に対する苦手意識がすこしづつ解消されていったのかもしれません。

 そんなある日、三平方の定理ピタゴラスの定理)の証明を教えていました。

 まあ、ピタゴラスの定理の証明方法はたくさんあるのですが、これが一番教えやすかったのですが、これを理解した彼女が「ああ、世界って数学的に美しいんだね」みたいなことを言ったんですよね。

 なにか教えていて少し嬉しかったのを覚えています。

 やはり、数学にしても物理にしても、学習して理解を深めることによるある種の「感動体験」が必要ですよね。

 やがて学習内容は中学から高校の数学にうつり、最後には大学で出された課題を自力で解けるところまでになりました。

 もちろん、家事と子育てをしながらの勉強です、彼女の努力は素晴らしいものでした。

 その後も物理系の勉強には苦労されたようですが、無事卒業されて今では医師としてバリバリ働かれておられます。

 ・・・

 ここから「オマケ」です。

 最後に数字の美しさを「感動体験」してもらって終わりにします。

 我々の生活では10進数が使われていますが、そんな10進数の性質がいかに美しいか、ほんの一例です。

 10は(1×9+1)と表現できます。
 同様に110は(12×9+2)と表現できます。
 これをどんどん繰り返したのが下のピラミッドのような数式です。

 これは十進数の中の一番大きな数字である9の性質を利用していますが、まだ感動できませんか。
 
 ではちょっとこの数式をいじってみますと、こうなります。

 うむ、世界は数学的に美しいのであります。



(木走まさみず)