木走日記

場末の時事評論

遺族代表の感謝の話に涙し、民主党政府の陳謝の話に呆れた一日

 東京都千代田区国立劇場で11日行われた「東日本大震災1周年追悼式」で述べられた式辞や遺族の言葉全文が毎日新聞電子版で掲載されています。

東日本大震災:1周年追悼式 言葉全文
天皇陛下のお言葉
野田佳彦首相の式辞
岩手県遺族代表・川口博美さん(63)
宮城県遺族代表・奥田江利子さん(47)
福島県遺族代表・村岡美空(みく)さん(14)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20120312ddm010040037000c.html

 天皇陛下のお言葉はとても素晴らしいです。

 野田佳彦首相の「みっつの誓い」もまあ無難でしょう。

 しかし、やはり被災地遺族代表の3名の方々の悲しい経験を当事者として語るお話がずしりと重く、どうしても我が身、我が家族に置き換えて考えてしまい、読むうちに犠牲となられた皆様の悔しさと無念さ、残された家族の悲しみを思うと、涙せずにはいられませんでした。

 未読の読者はどうかお読みいただくことをお勧めします。

 特に福島県遺族代表・村岡美空(みく)さん(14)の話ですが、地元の消防団員だった美空(みく)さんの父が行方不明となり、数日がたったある日、変わり果てた姿で、家族のもとへ帰ってくる下りがあるのですが、ここが読むのがつらかったです。

 私も父と連絡が取れず心配でたまりませんでした。

 数日がたったある日、父は、変わり果てた姿で、私たち家族のもとへ帰ってきました。人の役に立つ事が好きで、優しかった父。学校行事も積極的に参加し、小学校の時には、バレーボールも教えてくれました。私はこんな父が大好きでした。

 捜索にあたっていただいた皆さん、父を見つけ私たち家族のもとへ届けてくれた皆さん、ありがとうございました。

 1年がたっても、いまだ行方不明の方がいることに心が痛みます。

 天皇、皇后両陛下はじめ、たくさんの方々のお見舞いや励まし、ご支援ありがとうございます。

 大好きなお父さんが変わり果てた姿で帰ってきてさぞや辛かったでしょうに、この私の娘と同世代である14歳の少女は、「父を見つけ私たち家族のもとへ届けてくれた皆さん、ありがとうございました。」と感謝しています。

 なんと切ない、そして悲しい、しかし日本人らしい清らかな感謝の心なのでしょう。

 そして彼女は自らの不幸を抑えて「いまだ行方不明の方がいること」に心を痛めています。

 さらに「天皇、皇后両陛下はじめ、たくさんの方々のお見舞いや励まし、ご支援」にも感謝の意を示します。

 こういう文章を読むのは辛いですね、想像を絶する災害の中で大切なかけがえのない家族を失ったこの少女の心痛はいかばかりでしょう、それなのにこの人は周りの人や支援してくれた人々に感謝の意を示すことを忘れません。

 まだ14歳だというのに頭が下がるおもいです。

 被災地にあの大災害で起こったであろうあまた多くの悲しい経験のひとつではあるのでしょうが、この3名の遺族代表の話はひとつひとつがやはり重いです。

 大震災の1周年追悼式としては、やはり震災の教訓を未来に伝え語り継いでいくことが重要なのであり、これらの遺族の方々のお話はしっかりと胸に焼き付けておこうと思ったしだいです。

 ・・・

 で、話はここで日本政府の話に変わります。

 このどんなときにも「感謝」の心を忘れないすばらしい日本人の心情なのですが、野田首相も「みっつの誓い」の三番目に取り上げていました。

 三つ目は、私たちを取り結ぶ「助け合い」と「感謝」の心を忘れないことです。

 被災地の復興には、これからも、震災発生直後と同様に、被災地以外の方々の支えが欠かせません。また、海外からの温かい支援に「恩返し」するためにも、国際社会への積極的な貢献に努めていかなければなりません。

 「「感謝」の心を忘れない」ことも「海外からの温かい支援に「恩返し」する」ことも重要ですが、どうもあいかわらず言ってることと行動が伴わないわけです。

 産経新聞記事から。

追悼式で台湾冷遇、指名献花から除外 首相が陳謝
2012.3.12 21:03 [野田首相

 政府が11日に主催した東日本大震災の一周年追悼式典で、台湾代表として出席した台北駐日経済文化代表処の羅坤燦(らこんさん)副代表が指名献花から外されるなど冷遇されたことが分かった。12日の参院予算委員会世耕弘成氏(自民)が明らかにした。

 野田佳彦首相は「台湾の皆さまに温かい支援をいただいた。その気持ちを傷つけるようなことがあったら本当に申し訳ない。深く反省したい」と陳謝した。藤村修官房長官は「十分にマネジメントできていなかったことについてはおわびしたい」と述べた。

 世耕氏によると、政府は約160の国と国際機関の代表に会場1階に来賓席を用意したが、羅氏は「民間機関代表」と位置付け、2階の企業関係者などの一般席に案内。指名献花からも外し、羅氏は一般参加者と献花したという。

 世耕氏は「台湾の友情に応えるべきではないか。一人の日本人として台湾の皆さまにおわびしたい」と政府の対応を強く批判した。

 台湾は、大震災の際、世界最大規模の約200億円の義援金を寄せた。政府は昭和47年の日中国交正常化後、台湾を国として承認していないが、代表処は事実上の大使館にあたる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120312/plc12031221040009-n1.htm

 中国に対する配慮は理解しますが、ここは政治色とは関係ない追悼式典です。

 世界最大規模の義援金を寄せてくれた台湾の代表を冷遇するとはなんという「恩返し」なのでしょう。

 オリンピックなどもそうですがこのような政治色のない追悼式典において、台湾代表を国家並みの扱いで迎えることは何の問題もありません。

 もし中国が文句を言うようならば彼らの非礼・非常識こそ国際的な批難の対象となることでしょう。

 なんというか、とてもみっともない日本政府になってしまって恥ずかしい限りです。



(木走まさみず)