木走日記

場末の時事評論

放射能巻き散らかした会社が責任も取らず「国有化」という不条理〜そんなに経産省利権のかたまりである東京電力を守りたいのか?

 朝日新聞電子版速報記事から。

東電、事実上国有化へ 廃炉費用での債務超過避ける狙い

 政府は、東京電力を事実上国有化する方向で調整を始めた。事故を起こした福島第一原発廃炉費用がかさみ、このままでは借金が資産を上回る「債務超過」になって、東電が経営破綻(はたん)するおそれがあるからだ。

 原発事故の賠償支払いを支援する原子力損害賠償支援機構が東電に新たに1兆円規模を出資する。いまの東電の株式の時価総額は約4千億円のため、機構が経営上の大事なことを決める権利(経営権)をにぎる3分の2以上の株式を持つ。

 株式を買うお金は、東電がつぶれたら政府が必ず返すという保証をつけて金融機関から借りる。このため、機構を通じた「国有化」になる。これに合わせて、勝俣恒久会長ら現経営陣は辞任する見通しだ。

http://www.asahi.com/business/update/1221/TKY201112210209.html

 「原子力損害賠償支援機構が東電に新たに1兆円規模を出資」、「株式を買うお金は、東電がつぶれたら政府が必ず返すという保証をつけて金融機関から借りる」、政府は経営破綻(はたん)から東京電力を守るため「国有化」を目指すそうです。

 これは不条理です。

 東電を破綻処理すれば、金融機関からの4兆円の融資や株主資本のカット、東電の資産売却、使用済み核燃料再処理積立金約2.5兆円など、株主や債権者や経営陣、社員が応分の負担をしますから、国民負担はかなり軽減できるのに、そうではなくて政府が検討しているのは新株を発行しての国有化。となれば、金融機関も株主も救済され、東電も現状維持されていくのであり、そのぶんの負担を、私たち国民が税金や電気料金で一方的に負っていくことになります。

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 一般に企業が問題を起こした場合、その企業の利害関係者、いわゆるステークホルダーの責任が問われます。

 経営陣、投資家(株主)、債権者、従業員(社員)、顧客(消費者)、取引先、広義には、地域社会、社会、政府・行政・国民

が含まれます。

 現時点で国営化という形で税金投入という形で政府・行政・国民の負担が「平等」という美名のもとで決められようとしていますが、消費者・国民より当然より重く負担すべきはずの肝心の経営陣、投資家(株主)、債権者、従業員(社員)たちの責任はどこへいったのでしょうか。

 今回の電気料金値上げで東京電力は半減した社員の賞与を元の水準に戻すことを検討しているとの情報もあります。

東電ツラの皮厚すぎ〜!国会、報道、原発作業員に噴飯対応
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110914/dms1109141147008-n1.htm

 また清水正孝前社長は引責辞任のかたちにはなってはいますが、約5億円の退職金を受け取ったとされているうえあらゆる問題は放置のままです、責任放棄のただの敵前逃亡でしかありません。

 経営陣、投資家(株主)、債権者、従業員(社員)は、当然ながら国民よりも重い責任を有しているはずです。

 東京電力は破綻するべきです。

 投資家が所有する東電の株券は紙切れになりましょう、債権者である金融機関は債権放棄となります、これら東電で利益を得てきたステークホルダーたちがリスクを負うのは当然なのです。

 破綻処理をして資産を整理縮小、人件費も圧縮、1円まで搾り出しその金額は賠償費用に当てさせればいいのです。

 経営陣、従業員も応分の負担を負うべきです。

 その上で、それでも足らない分をはじめて消費者・国民が広く負担するべきです。

 そんなことをしたら日本経済が混乱する、電力の安定供給ができなくなるといった意見が経団連などからありますが、JAL破綻の前例があります、経済は混乱しませんし、飛行機の運用も何も支障はでませんでした。

 今問われているのは、原発事故を起こし広範囲の放射能汚染により国土に取り返しのつかないキズを付け、海洋汚染を含め国内外からの膨大な賠償請求が予想されるこの重大な問題を起こした企業の、その責任を消費者・国民以外のスーテクホルダーが誰一人責任を負わず逃げおおそうとしていることです。

 また原発事故で放射能を撒き散らした企業をその責任追及もなさずただ国が延命するという行為は内外に間違ったシグナルを送っていることを政府は気づくべきです。

 「放射能を漏らしてもつぶれない」「責任を問われない」ということがあってはなりません。

 あらためて、「国営化」というモラルハザードを断固認めるわけにはいけません。

 東京電力は破綻するべきです。

 東京電力の経営陣、投資家(株主)、債権者、社員、これら重要なステークホルダーの責任追及無しに、消費者や国民が平等に負担する、このようなモラルの無い不条理を認めてはいけません。

 原発事故を起こした会社のステークホルダー達の責任をいっさい問わず、責任を「国営化」という形式ですべて税負担で国民のみに押し付ける。

 民主党政府によるこの東電救済スキームは愚かで間違っています。

 そんなに経産省利権のかたまりである東京電力を守りたいのか?



(木走まさみず)