木走日記

場末の時事評論

福島県の面積に匹敵する放射能「汚染地域」を抱えた日本〜文部科学省モニタリングレポート検証

 文部科学省は29日、航空機を使って測定した放射性セシウムの蓄積量について、千葉県と埼玉県の汚染マップを公表しました。
 ネット上でも以下のPDFファイルで確認ができます。

文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果について
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/09/1910_092917_1.pdf

 まだ東京などが未計測でありますが、原発事故から半年以上経過しての政府による公式の汚染状況発表であります、遅きに失した感は否めませんが、大変重要な情報であり、今回はこの文科省が発表した放射性セシウム汚染分布情報を徹底検証したいと思います。

 文科省によれば、今回は航空機(ヘリコプター)モニタリング、「地表面への放射性物質の沈着状況を確認するため、航空機に高感度で大型の放射線検出器を搭載し、地上に蓄積した放射性物質からのガンマ線を広範囲かつ迅速に測定する手法」を用いたとのことです。

1.当該モニタリングの実施目的
文部科学省は、これまで、広域の放射性物質による影響の把握、今後の避難区域等における線量評価や放射性物質の蓄積状況の評価のため、東京電力(株)福島第一原子力発電所から100kmの範囲内(福島第一原子力発電所の南側については120km程度の範囲内まで)及び近隣県について航空機モニタリング※を実施してきた。
これに加えて、本モニタリングは、より、広域の放射性物質の影響を把握するため、これまでに航空機モニタリングを実施していない埼玉県及び千葉県について、航空機モニタリングを実施したものである。
なお、埼玉県の航空機モニタリングについては、応用地質株式会社の航空機モニタリングシステムを搭載可能な専用の民間ヘリコプターを活用し、応用地質株式会社の社員及び(独)日本原子力研究開発機構の職員が測定を実施した上で、(独)日本原子力研究開発機構がその結果について解析を実施した。
また、千葉県の航空機モニタリングについては、民間ヘリコプターにオーストラリアのフグロ・エアボーン・サーベイ社が所有する航空機モニタリングシステムを搭載して、フグロ・エアボーン・サーベイ社の社員及び(独)日本原子力研究開発機構の職員が測定を実施し、(独)日本原子力研究開発機構がその結果について解析を実施した。
※航空機モニタリング:地表面への放射性物質の沈着状況を確認するため、航空機に高感度で大型の放射線検出器を搭載し、地上に蓄積した放射性物質からのガンマ線を広範囲かつ迅速に測定する手法

 今回の調査では主に2つのマップを作成する目的があります、ひとつは「地表面から1m高さの空間線量率の分布状況を示したマップ」、そしてもうひとつは「土壌表層への放射性セシウムの沈着状況を示したマップ」であります。

 「土壌表層への放射性セシウムの沈着状況」ですが、半減期が2年のセシウム134と半減期が30年のセシウム137のそれぞれの汚染分布の詳細が初めて公表されたわけですが、文科省のレポートにあるそれぞれの分布図を見る限り、ほぼ同等の濃度と面積に分布しておるようですので、セシウム134とセシウム137の割合はほぼ1対1と推測できます。

 だとすれば、勝川俊雄氏の試算によれば下図のように減少していき、。最初は半減期が短いセシウム134が急激に減り、セシウム134がほぼ無くなった後は、セシウム137の崩壊でなだらかに減ることになり、放射性セシウムの総量が半分になるのに、6年かかる計算になります。


勝川俊雄公式サイトより
http://katukawa.com/?p=4670

 で、セシウム134、137の沈着量の合計は文科省レポートより以下のとおり。

(参考2)文部科学省による埼玉県及び千葉県の航空機モニタリングの測定結果
について(文部科学省がこれまでに測定してきた範囲及び埼玉県
及び千葉県内の地表面へのセシウム134、137の沈着量の合計)

 大変貴重な情報ですが、これは少しいただけない分布図となっています。

 凡例に注目してください。

 3000kベクレル/平方M以上を「赤」、1000k−3000Kベクレルを「黄」と暖色系で目立つように表現しているのは結構なのですが、600k−1000kを緑、300k−600k、100k−300k、60k−100kと、水色から青と冷色系を使用、30k−60kではくすんだ青緑色、10k−30k、と10k以下では黄土色と茶色を用いています。

 30k−60kは図で見ればかなり広範囲に分布していますが、くすんだ「青緑」で示されているためにあたかも汚染被害が黄色や赤よりもまったく軽微であるかのような印象を与えています。

 しかし30k−60kとは、1平方メートル当たり3万ベクレルから6万ベクレルという異常値でありこれを「青緑」で表現するのは、印象操作している感は否めません。

 なぜなら「汚染地域」という言葉は、チェルノブイリ事故の場合、セシウム137の地表汚染密度が1平方km当り1キュリー以上のところをさして用いられています。

 1平方km当り1キュリーとは、1平方m当りにすると1マイクロキュリー、これはすなわち3万7000ベクレルに相当します。

 したがってチェルノブイリ基準でいえば、図の「30k−60k」すなわち「青緑」色で示された分布の大部分が37kを超えていると推測される「汚染地域」になるわけです。

 これはとんでもない面積が汚染されていることを示しています。

 汚染レベルが「30k」以上の地域をすべてピンクで、30k未満を白で見やすくして「汚染地域」である可能性の大きい地域を見やすくするように、元地図を画像処理してみました。

 ここで示された地域は、チェルノブイリで「汚染地域」と指定されている、3万7000ベクレル/平方メートルに近いか、それを上回る放射能の汚染された土地であるということです。

 文科省の凡例は、3万7000ベクレルを閾値として使用していないために推測になりますが、分布図を見る限り福島県とほぼ同等の面積(13,782平方キロメートル)が今回の原発事故で「汚染地域」となっていると思われます。

 これは深刻な数字であるとともに、広く国民に知ってもらう必要があると思います。

 この調査情報が正確だとすれば、事実として日本はチェルノブイリ基準で福島県の面積にほぼ匹敵する 放射能「汚染地域」を抱えたことになります。



(木走まさみず)