木走日記

場末の時事評論

スカスカな宇宙〜9月12日は日本の「宇宙の日」にちなんで

 たまには宇宙のことを考えて見ましょう。

 9月12日は日本の「宇宙の日」なのだそうです。

宇宙の日とは?

  1992年は、世界中が協力して宇宙や地球環境について考えようという国際宇宙年(ISY)でした。日本においても、この国際宇宙年をきっかけに末永く宇宙の普及活動を行おうと考え、一般の方々から「宇宙の日」にふさわしい日を公募しました。その結果、1992年、毛利衛宇宙飛行士がスペースシャトルで初めて宇宙へ飛び立った日、「9月12日」が選ばれました。

http://www.jsforum.or.jp/event/spaceday/about.html

 なるほど、「毛利衛宇宙飛行士がスペースシャトルで初めて宇宙へ飛び立った日」が由来ですか、知りませんでした。

 たまには時事を離れて宇宙のことを考えるのもいいと思い、今回は少し見方をユニークに宇宙について触れたいと思います。

 地球の大きさをパチンコ玉に縮尺してちょっと太陽系とか宇宙の規模を考察してみたいと思います。

 地球は赤道半径が6378kmですから直径は1万2756Kmです、でパチンコ玉の大きさですが、「国家公安委員会規則」の「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」において構造・材質が厳密に規定されていまして、サイズは直径11mm ・重量 :5.4g以上5.7g以下で鋼製で均一の材質であることとされているそうです。

 直径1万2756Kmの地球を直径11mmのパチンコ玉にたとえますので、これからのお話は現実の宇宙を11億6千万分の1にぎゅっと縮めた超ミニ宇宙でのお話であります。

 で今この直径11mmのパチンコ玉を我等の地球だとしますと、太陽はどのぐらい離れていてどのぐらいの大きさなのでしょうか。

 地球・太陽間の距離は1億5千万Km、太陽の直径は139万Kmですので、それぞれを11億6千万分の1しますと、地球(パチンコ玉)から129.3m離れた地点に太陽はあり、その大きさは直径118cmほどの球体となります、運動会の大玉を小粒にしたぐらいですかね。

 うむ、わずか1.1cmのパチンコ玉が118cmの大玉の周りを半径約130mの円を描いて公転しているわけです。

 うむ、太陽系のなんてでかいことか、そして宇宙空間のなんと空疎なことか、ほとんど物質が無いのでありますね。

 で、太陽系の大きさなのですが、土星の軌道半径が14億kmで一番外の冥王星の軌道半径59億kmですから、それぞれ1206mと5085mとなります、うーむ冥王星など大玉から5キロも先を回っているということになります。

 ちなみに太陽圏界面、いわゆる太陽系圏は半径約1000億Kmといわれておりますがこれはなんと86kmの先にまで大玉(太陽)が影響を及ぼしていることになるわけです。

 ううむ地球をパチンコ玉に縮めても太陽系は直径170キロの広大な空間なのであります、その広大な領域を大玉ぐらいの太陽を中心にパチンコ玉(水星、金星、地球、火星など)からバスケットボール(木星土星など)ぐらいの惑星たちがそれぞれの軌道を回っているわけです。

 宇宙はスカスカなのであります。

 さて、地球と太陽系の規模感をおおよそ掴んだところで、さらに広大な宇宙に旅立ちましょう。

 太陽系から最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリは、4.22光年(39.9兆Km)の距離にありますので、11億6千万分の1しますと、3万4400km、なんと赤道から静止軌道への距離に匹敵するわけです。

 うーむ地球をパチンコ玉に縮めて考察しても太陽系から一番近い隣人までの距離は3万キロ以上離れているのであります。

 ほんと宇宙は広大でスカスカなのであります。

 ・・・

 パチンコ玉の例え話はこれぐらいにして、今度は別の角度から宇宙について考察してみたいと思います。

 広大でスカスカな宇宙なのですが、瞬間でとらえれば静的ですが、実際は全宇宙的には膨張し続け、局所的には相互作用により複雑な動きをしています。

 9.11テロから10年ということでメディアやネットでは盛んに取り上げられていますが、この十年という月日の間、私たち人類を乗せた地球は宇宙空間をどのような「軌跡」で運動してきたのかを考えます。

 10年という物差しの前に1秒で考えて見ましょう。

 まず地球の自転。

 東京にいる人で例えますと、その人がじっとしていても地球は自転していますので、けっこう高速で運動していることになります。

 地球の自転速度は赤道直下で1700km/毎時、緯度θ°で1700cosθkm/毎時となりますから、東京なら緯度35.6度ですので、計算すると毎時1381Km、秒速ですと384m/秒という高速で自転していることになります。

 次に地球の公転。

 地球は1年365日掛けて太陽の周りを公転していることになりますから、半径1億5000万km*2*3.14=9億4200万Kmの円周を365日で1回転しますので、

 9億4200万キロ/365日=258万0822km/日
258万0822km/24時間=10万7534km/時
10万7534km/60分=1792km/毎分
1792km/60秒=29.87Km/秒

 秒速ですと29.87Km/秒の高速で地球は公転軌道を移動していることになります。

 次に太陽系自体の動き。

 私たちの太陽系は銀河系(天の川銀河)に属していますが、この銀河系は渦を巻いて自転しています。

 太陽の位置は銀河の中心からの距離は約2万5千光年でありどちらかといえば外側に近く、オリオン腕と呼ばれている腕(腕状の星の集団)に位置しています。

 で、銀河の自転周期は約1000億年であり、半径方向の回転速度は理論値と比べ周辺部でかなり速いようです、周辺部に近い所にある太陽は秒速200kmで回っていると言われています。

 次に銀河系自体の動き。

 私たちの銀河系 (天の川銀河)は宇宙の中でポツネンと単独で存在しているわけではありません、近傍の銀河とグループを形成しています、私たちの銀河系が属している銀河群は局部銀河群と呼ばれ、40個以上の銀河が含まれています。

 宇宙全体は膨張し続けていますので基本的には銀河と銀河の距離は離れ続けていますが、局部銀河群の中では相互作用により互いに近づいていたり複雑な動きを見せています。

 私たちの銀河系もお隣のアンドロメダ銀河と相互に影響を与えているようです。

 アンドロメダ銀河のスペクトルは青方偏移を持ち、その偏移から計算すると我々の銀河系に対して秒速約300Kmで接近していることがわかっています。

 遠い将来、約30億年後にはこの2つの銀河は衝突して合体し、1つの巨大な楕円銀河を形成すると予想されています。

 アンドロメダ銀河が我々の銀河系に秒速約300kmで「接近」と表現しましたが、これは銀河系を基準にした見方であり、我々の銀河系が秒速約300kmアンドロメダ銀河方向に移動していると表現しても差し支えありません。

 でこの私たちの銀河系の属する局部銀河群自体もある方向に動いているわけですが、私たちの局部銀河群は大きなおとめ座銀河団に引き寄せられているという見方があります。

 切りが無いのでこのへんでまとめてみます。

 私たちが地球上の日本で平穏に生活しているその瞬間、たった一秒の間に私たちはものすごいスピードで宇宙空間を移動しているわけです。

 秒速384mで自転(東京基準)しつつ、秒速29.87Kmで太陽の周りを公転しています。

 そしてその太陽系は銀河中心の周りを秒速200kmで回っており、その銀河系は局部銀河群の中で秒速約300kmでアンドロメダ銀河方向に移動しているわけです。

 さらに我々の銀河系の属する局部銀河群もより大きなおとめ座銀河団方向に引き寄せられいて、さらにさらにその銀河団もある方向に動いているはずです。

 ・・・

 我々は本などで太陽系など宇宙の様子を見聞きしていますが、たとえば太陽系の各惑星の説明図などでは1ページに収まる形で各惑星が並べて描かれていますが、星の大きさに比べ太陽との距離はえらく縮められて表現されているわけです。

 最初のパチンコ玉の比喩でもわかるとおり実際の距離比では地球など小さすぎて紙では表現できないわけですね。

 宇宙は私たちの頭の中で想像する星がひしめくイメージとは裏腹に、えらくスカスカで寂しい空間であるのです。 

 それでも広大な宇宙空間から比べれば、約40の銀河が属する局部銀河群にある銀河系の中のオリオン腕に属する太陽系は物質が集まっている局所的存在であり、宇宙全体ではボイドと呼ばれる何も存在しない空間のほうがはるかに大きいのです。

 このスカスカな宇宙の中で、それでも物質が集まっているほうの太陽系第三惑星地球上にいる私たちは実は無自覚のうちに宇宙の作用、すなわち惑星の自転、公転、銀河の自転、銀河間の相互作用、銀河群の相互作用、これらの影響下にあり、今この瞬間も数百キロ/毎秒というとてつもない高速で、すべての要素の速度ベクトルを合成するとおそらくかなり複雑な「らせん状」の軌跡を残して動いていることでしょう。

 10年前の9.11の地球の位置からは現在の地球の位置はどれぐらい移動してきたのでしょうか。

 1秒の移動距離を仮に300kmとすれば、

 300km*60秒*60分*24時間*365日*10年、と概算できます。

 96兆6080946億kmという移動距離になります。

 この距離は4.22光年(39.9億km)離れた太陽系から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリに往復しておつりがくる膨大な距離なのであります。
 
 もちろんこの宇宙に絶対的な座標軸は存在しませんので、このような絶対座標系での考察は頭の中だけの話ではあります。

 「宇宙の日」にちなんで、地球をパチンコ玉にたとえて考察してきたのですが、、こうして考えてみると広大でスカスカな宇宙空間の中で、太陽系第三惑星である地球は、本当に小さな存在であることが良く理解できます、と同時にこの星で生命が誕生した「奇跡」に神に感謝せずにはいられませんね、地球って本当に「奇跡の星」なのだと思います。
  


(木走まさみず)



<テキスト修正>2011 9/13 21:53
計算ミスの指摘をいただきました。該当箇所を訂正しました。