モバイル無線通信規格はやわかり〜「おサイフケータイ」から「WiFi(ワイファイ)」まで優しく解説してみる
2日付け日経新聞記事から。
新丸ビルで無線LAN「WiFi」無料提供、三菱地所
2011/2/2 4:44三菱地所は1日、新丸の内ビルディング(東京・千代田)の飲食フロアで、公衆無線LANサービス「WiFi(ワイファイ)」の無料提供を始めた。来店客はフロア全体で、高速インターネット接続ができる。ノートパソコンに加えてタブレットと呼ばれる多機能携帯端末の普及で、職場や自宅以外で仕事やウェブ閲覧をしたい人は増えている。利用状況をみて他の施設への導入も検討する。
無料でワイファイが使えるようになるのは、9店の飲食店が集まる7階「丸の内ハウス」。午前11時から午前4時まで営業しており、仕事帰りのビジネスマンやOLに人気の施設だ。簡単にインターネット接続ができる環境を整えて、仕事の打ち合わせなどの需要増を期待する。
接続はワイヤ・アンド・ワイヤレス(東京・港)が同ビルに提供する通信設備を活用し、三菱地所が費用を負担する。来店客は各店舗が配布するカードに記載されたコードを入力して、各機器で接続する仕組み。
一般的なワイファイは有料サービスで、通信会社などへの事前登録も必要。無料で使えるようにする個別の店舗は徐々に増えているが、フロア全体で対応する施設は珍しい。パソコンやスマートフォンの利用が多いオフィス街では、人気サービスとなりそうだ。
うむ、新丸ビルの7Fレストラン街「丸の内ハウス」で公衆無線LANサービスの無料提供が始まったそうでありますが、モバイル機を持ち歩いて仕事で活用しているビジネスマンにとっては、私もその一人ですが、このような無料のホットスポットが増えてくれるのは嬉しい動きですよね。
私は本職で零細IT会社を営みITコンサル業などをしつつ、かたわらで大学でITや通信を教えておりますのですが、仕事で多くの中小企業関係者と接していますが、中小企業の経営者のみなさんは本当に勉強熱心な方が多いのですが、それでも最近のIT技術、中でもワイファイやワイマックスなどの無線通信技術や、iPhoneに代表されるスマートフォンやiPadに代表されるスレートPCなどのモバイル端末の技術の進歩には、なかなか勉強が追いつかないようです、特に年輩の経営者はお手上げみたいですね。
おそらく、この日経記事の内容が理解しがたい読者の方も少なからずいることでしょう。
そこで今回はWiFiなどモバイル機の無線技術やネットワークに関して、ITが専門ではない読者のために「情弱」にならないための、キーワードを整理してできる限りわかりやすくご説明したいと思います。
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携帯電話でもスマートフォンでもスレートPCでもノートPCでもなんでも想定してよいです、あなたの持っているモバイル機が移動中に通信をしたいとします、通信相手にもよりますが主な方法は5、6種類あるのであります。
まずは、3G、つまり携帯電話網を利用した通信が可能です。
今、あなたの持っている携帯電話のモニタに「圏外」ではなくアンテナが立っていれば、あなたの携帯電話はもよりの無線基地局(ビルの屋上などにアンテナがあります)と通信可能の状態なわけです。
この携帯電話網を利用してあなたは音声通話したり友人にメールを送信したりできます。
無線基地局はメーカーごとに全国で何万局もありますが、ひとつの無線基地局でカバーしているエリア(セルといいます)は都会なら小さめでせいぜい数百メートルか1、2キロほど(地下鉄の駅内とかはさらに小さいです)ですが、郊外では10キロメートルぐらいの大きなセルもあります。
ちなみに3Gとは現在の携帯電話が第三世代(サード・ジェネレーション)と呼ばれる通信方式(cdma方式)を採用していることから名づけられています。
次にもしあなたの携帯が「おサイフケータイ」サービスを利用しているならRFID技術を利用した通信が可能です。
RFID技術は無線通信を利用した個体識別技術の総称ですが、実は今日では多くの人が毎日身近に利用しているのです。
定期券やSuicaやPASMOといった乗車カードを駅の改札で毎日通勤で使用してますよね、あのICカード、正確には非接触ICカード、あのカードにはRFタグというチップが入っていますが、これが改札のリーダーとの間で数センチという短い距離ですが、無線で「ビッ」と、通信しておるわけです。
磁気カードとは違って定期券からカードを出さなくても読み込めるのは無線技術だからなのですね。
乗車カードだけでなくエディなどの電子マネーやポイントカード、社員証や学生証など広く普及しています。
で、「おサイフケータイ」の話に戻りますが、携帯電話にもFeliCaチップ(ICチップ)というRFタグを持つことによって、電子マネーと同様に、リーダーがあるコンビニや売店で「ビッ」「ビッ」と買い物ができるということになります。
3Gの場合、数百メートルから数キロメートル電波を飛ばしましたが、このRFIDの場合は数センチと小粒な無線通信なのであります。
3番目にインターネットや社内ネットワークといったPCネットワークに接続したいときに使用する通信方式があります。
この場合接続するネットワークの規模から3つの通信方式が考えられます。
まず小さい規模ではbluetooth(ブルートゥース)と言う通信規格がありまして、せいぜい数メートルの範囲で電波を飛ばす規格であります。
PCと周辺機器の間で無線通信することを想定しています、最近では家庭内でも無線マウスとか無線プリンターが普及してますよね。
あなたの携帯がbluetoothに対応していましたら、PCのそばに持っていけばダイレクトにPCと通信が可能です、PCから音楽データを落とし込んだりできますね、iPodみたいにです。
この規模のネットワークをPAN(パーソナル・エリア・ネットワーク)と呼ぶことがありますが、bluetoothは無線PAN(ワイヤレスPANとかWPANとかとも呼ばれてます)用の通信規格でありまして、IEEE(アイトリプルイー、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)というアメリカ合衆国に本部を持つ電気・電子技術学会が標準化した規格でありまして、bluetoothの本名は実はIEEE802.15.1という通信規格なのであります。
さてもう少し大きいネットワーク、数十メートル規模のネットワークと無線接続する規格が、上の日経記事で登場していますWiFi(ワイファイ)でありまして、アクセスポイントという中継器を通じて有線のLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)と接続可能なのであります。
新丸ビルの7Fレストラン街「丸の内ハウス」にも何台かのアクセスポイントが設置されているはずです。
WiFiも本名はIEEE802.11シリーズという通信規格シリーズでありまして、無線LAN(ワイヤレスLAN、WLAN)用の通信規格であります。
多くのモバイル機がWiFiに対応しています、ニンテンドーDSやPSP(プレイステーションポータブル)などの携帯ゲーム機でも採用されて「通信ゲーム」などが楽しめますね。
最後にもっと広域を対象とした無線ネットワーク、例えばある市街地全体を半径数キロ以内を完全にカバーする無線接続する規格がWiMAX(ワイマックス)であります。
WiFiがせいぜい数十メートルを対象エリアなのに対し、WiMAXは数キロの範囲で電波を飛ばす規格なのであり、やはり本名はIEEE802.16シリーズという通信規格シリーズでありまして、無線MAN(メトロポリタン・エリア・ネットワーク)用の通信規格なのであります。
Wimaxはもともと過疎地対策として規格されたもので、光ファイバーケーブルなどを施工するには人数が少ないとか険しい渓谷や海や川で物理的にケーブルを施工することが困難な地域で無線環境を提供しようとしたものですが、現在は東京23区など都市部でサービスが開始されています。
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3G、RFID、bluetooth、WiFi、WiMAXと、5つの無線通信技術を説明してきましたが、あなたのモバイル機には、この他にも携帯同士で情報交換に使用されている赤外線通信などの手段が用意されているかも知れません。
またアップル社のiPadでは、上位機種では3GとWiFi、下位機種ではWiFiだけしか対応していません、つまりメーカー・機種によってどの通信規格に対応しているのかはスペックを確認しておくことが必要です。
いかがでしたでしょうか、このつたないエントリーが読者の皆様の理解に少しでもお役に立てれば嬉しいです。
(木走まさみず)