木走日記

場末の時事評論

北朝鮮の砲撃で簡単に砕かれた57年間の平和

 24日付け朝日新聞記事から。

「戦争になるかも」韓国全土に衝撃 仁川市長が島へ急行

 【ソウル=稲田清英、箱田哲也】韓国の一般住民が暮らす島を北朝鮮軍が砲撃――。朝鮮戦争休戦後の南北関係史でも前例のない、大延坪島(テヨンピョンド)攻撃は23日、韓国全土に衝撃とともに伝わった。午後のテレビ番組は関連報道一色になった。市民はこれまでになく、強く「戦争」を意識した。

 ソウル北方の韓国・坡州(パジュ)市にある烏頭山(オドゥサン)統一展望台。臨津江の対岸にある北朝鮮の村の様子を双眼鏡越しに見られる人気のスポットだ。だが23日は、通常は午後4時半までの観覧が3時過ぎに打ち切られた。残っていた観光客は、職員の指示ですぐに展望台を離れた。

 「とにかく驚いた」。展望台職員は23日夕、朝日新聞の電話取材に語った。1995年から働いているが「観覧を途中で制限するような事態は今回が初めて」という。

 韓国の主要テレビ各局は、特別番組一色になった。

 韓国KBSが入手した島の監視映像は、着弾の瞬間の強い地震のような揺れと、集落から次々と上がる炎と黒煙をとらえた。

 「頭の上を『シュン』という音が通り過ぎた。何か真っ黒いものだった。集落の方におりてみたら、めちゃくちゃになっていた」。同放送局の電話取材に、島の女性は着弾の様子を語った。別の住民は「何軒か民家から火の手があがっているし、軍部隊でも火災が起きているし、大変なことになった」と、島の惨状をまくしたてた。

 島内に残った住民は23日夜、防空壕(ごう)などの避難所で一夜を過ごした。島は軍統制下にあるため、同島を行政上管轄する仁川市も具体的な住民状況がつかめないとして、宋永吉市長が同日午後9時すぎの船で現場に向かった。同市の担当者によると、避難している人数や被害状況は把握できていない状況という。

 ソウル市内では、緊迫した現場の様子を伝えるソウル駅など街中のテレビの前に多くの市民が集まった。有力紙の東亜日報は号外を発行。市内の会社員(37)は「今までテポドン北朝鮮弾道ミサイル)が飛んでも海上で銃撃戦があっても驚かなかったが、今回は深刻。本当に戦争になるかもしれない」と話した。

 市内の大学教員も「ソウルからそう遠くない場所でこんなことが起こるなんて、今回は戦争の危険すら感じる」。北朝鮮は過去に核実験もしたが、実際に陸地に砲弾が落ちたことへの韓国市民の危機感は別次元のようだ。北朝鮮側は、こうした心理的効果も狙ったものとみられる。

 一方、「生活はいつもと変わらない」と冷静に受け止める会社員もいた。

 予算委員会与野党の論戦が続いていた国会も、砲撃の一報が入ると、ともに緊急の対策会議を開くなど情勢分析と対応策の検討に追われた。

http://www.asahi.com/special/08001/TKY201011230461.html

 「とにかく驚いた」(展望台職員)

 「頭の上を『シュン』という音が通り過ぎた。何か真っ黒いものだった。集落の方におりてみたら、めちゃくちゃになっていた」(島の女性)

 「何軒か民家から火の手があがっているし、軍部隊でも火災が起きているし、大変なことになった」(別の島の住人)

 「今までテポドン北朝鮮弾道ミサイル)が飛んでも海上で銃撃戦があっても驚かなかったが、今回は深刻。本当に戦争になるかもしれない」(ソウル市民)

 「ソウルからそう遠くない場所でこんなことが起こるなんて、今回は戦争の危険すら感じる」(大学教員)

 北朝鮮軍による大延坪島(テヨンピョンド)砲撃により大きな衝撃を受けた韓国市民の声を伝える朝日記事であります。

 今回の北朝鮮の蛮行は東アジアの安全保障を根本的に揺るがす深刻な事態と言えます。

 53年7月27日に朝鮮戦争が休戦して以来57年間、朝鮮半島で、いや東アジアで他国の正規軍が民間居住地に砲撃をおこなったことはありませんでした。

 軍事施設のみならず民間居住地を狙ったその点で、北朝鮮のただならぬ敵意を誰しもが感じたことでしょう、すでに韓国メディアでは「無差別砲撃」と激しい非難がわき起こっています、中央日報では韓国の国民が団結して相応な「報復攻撃」を行う必要性まで強調しています。

 今回の砲撃は今までの軍隊同士の小競り合いや衝突とは全く次元の違う危機を招いたといえましょう。

 今回の北朝鮮の砲撃の意図ですが、金正日政権内部の抗争による一部軍の暴走や、金正恩氏が後継者に決まったことの「ご祝儀」あるいは韓国との軍事的危機をつくり出し3代世襲に対する国内の不満を外に向けようとする意図などの分析がおこなわれていますが、現段階で正確なところはわかりませんが、我々日本人は対岸の危機ではなく教訓とすべきなのは、北朝鮮という国は権力継承固めという内向きな動機でいとも簡単に民間居住区にも砲弾をたたき込むことに何ら躊躇がない危険な国であるということです。

 朝鮮半島有事の際、日本に対して北朝鮮からミサイル攻撃が行われる事態を危機感を持って想定すべきです。

 地政学上、朝鮮半島を取り巻く新たな事態に否応なく日本も巻き込まれるわけです。

 日本政府は本件ではまずは韓国・米国と連携を取りながら中露とも協議が必要ならば話し合うべきです。

 民主党政権は法相辞任などでもたついていますが内政上の失態をこれ以上繰り返して外交をおろそかにすることは許されません。

 57年間守られてきた東アジアの平和は昨日北朝鮮による「無差別砲撃」によって見事に砕かれたのです。

 対中国、対ロシアと、外交上の失政を繰り返してきた民主党政権ですが、こたびの半島情勢では失政は許されません、政権崩壊レベルを超えた国の安全保障・国益がかかっていることを肝に銘じるべきです。

 北朝鮮をこれ以上エスカレートさせないためにも、今回の蛮行を後悔させる必要があります、米韓と連携し断固とした態度で民主党政権は対北朝鮮政策を確立すべきです。


 
(木走まさみず)