木走日記

場末の時事評論

自衛隊は『防衛装置』である

 国会における最初の「自衛隊暴力装置」発言は、その場で自民党の抗議を受けて「実力組織」と言い換え「自衛隊の皆さんには謝罪する」と発言を撤回したはずの仙谷由人官房長官なのでありますが、その後の記者会見で「装備や人員構成などから見て、自衛隊は実質上、軍事組織であることは間違いない」との考えを明らかにしてしまっています。

 18日付け日経新聞記事から。

仙谷官房長官自衛隊は実質上、軍事組織」 暴力装置発言に
2010/11/18 16:50

 仙谷由人官房長官は18日午後の記者会見で、同日午前の参院予算委員会自衛隊を「暴力装置」と表現したことについて「装備や人員構成などから見て、自衛隊は実質上、軍事組織であることは間違いない」との考えを示した。

 そのうえで「存在をしっかりとシビリアンコントロール文民統制)できなければならず、法規制でも政治的な中立性を確保できなければならない」と述べた。

 自衛隊行事での政治的発言を事実上制限する防衛事務次官名の通達を出したことについては「自衛隊が政治的な中立性から一歩踏み出すのではないかという誤解を国民から受けてはならず、それを確保するためのもので検閲には当たらない」と述べ、問題はないとの認識を示した。〔日経QUICKニュース〕

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381949EE3EAE2EB8B8DE3EAE3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO0195166008122009000000

 うむ、私は国会における最初の「自衛隊暴力装置」発言をすぐに「実力組織」と言い換え「自衛隊の皆さんには謝罪する」と撤回したのは、「自衛隊暴力装置=普通の軍隊」という方程式を認めてしまうとこれはこれまでの日本政府の自衛隊に対するスタンスから逸脱する恐れがある微妙な問題が浮上するのを防ぐためだったと思ってました。

 つまり、自衛隊は侵略的攻撃兵器をいっさい有さない専守防衛部隊であり、いわゆる普通の軍隊ではない、憲法九条との絡みもあるしこれまでの政府答弁もあるし、自衛隊を軍隊と認めちゃう「暴力装置」発言はさすがにちょっとやばいと。

 ところがその後の記者会見で「装備や人員構成などから見て、自衛隊は実質上、軍事組織であることは間違いない」との考えを強調、前言を撤回・謝罪するどころか「自衛隊=軍事組織」論を展開しちゃっています。

 まず「暴力装置」という特殊な用語がTV中継もされている国会という国民が見守る公の場で「自衛隊」を形容するのに使ったことは官房長官という要職の立場ではたして適切だったのか、シビリアンコントロールを言うならば、自衛隊を管制する最高文民責任者である内閣総理大臣をサポートする立場にある人が自衛隊暴力装置と素人にはきつい表現した場合の国民の受けるイメージ、あるいは自衛官のメンタル面を考えての損得勘定はなかったのか、このあたりがはなはだ理解不能なのであります。

 で、一歩譲ってマックス・ウェーバーの述べたところの「軍隊とは暴力装置である」ことを認めたとして、専守防衛の日本の自衛隊の持つ特殊な事情、憲法九条との兼ね合い、この当たりの微妙な問題をあっさりと「自衛隊は実質上、軍事組織であることは間違いない」と認めてしまう「気っぷの良さ」はいかがなものでしょうか。

 せっかく「実力組織」と言い替えたのに、その後の会見で「軍事組織」に格上げ(?)してはしょうがないなあ、と思うわけですが、いかがなものでしょう。

 せめて、「自衛隊は『防衛装置』である」ぐらいの機転をきかせればよかったのにね。

 若かりし日の社会主義を夢見ていた頃よく使った単語なのでしょうか、しかしこの人はある意味で頑固というか、ブレないんですねえ。



(木走まさみず)