「対日中ロ領土同盟」は菅政権が生みの親
アメリカのクリントン国務長官は27日の日米外相会談後の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島が「日米安全保障条約の適用対象」と断言、中国をにらんで日米の強固な連携をアピールしました。
参考記事(28日付け時事通信)。
対中国で連携アピール=尖閣、レアアースに言及−米国務長官
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201010/2010102800939
これに対し中国は首脳会談を土壇場でキャンセル、メディアを介して前原外相を「外交用語にはない挑戦的な言葉で中国を非難し」、「(その)言動が関係改善を図ろうとする両国指導層の雰囲気を壊した」と批判し始めています。
参考記事(02日付け朝日新聞)。
中国紙、前原外相を1面埋め批判「改善の雰囲気壊した」
http://www.asahi.com/international/update/1102/TKY201011020222.html
中国政府の首脳会談キャンセルというこの子供じみた非礼外交は、もちろん国内保守派と世論の圧力を受ける現中国政府の立場として日本に強気なポーズをとり続ける必要があるという中国の国内事情がからんでいるわけです。
さらに中国は、日米安保適用は「完全な誤り」であるとアメリカにも噛みつきます。
参考記事(02日付けロイター通信)。
尖閣問題、日米安保適用は「完全な誤り」=中国外務省
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17957820101102
中国外務省の馬朝旭報道官は2日、米国政府の動きを、日米安保条約の適用範囲に尖閣諸島(中国名:魚釣島)を含めるのは「完全な誤りだ」と指摘、「魚釣島は中国の領土であり、それをめぐる中国と日本の争いは2国間だけの問題だ」と非難しています。
日本との首脳会談をキャンセルし、日本とそれを支持するアメリカに対して強硬に批判を繰り返す中国ですが、28日から29日にかけ、中国の温家宝首相は、南シナ海での領有権問題を抱えるベトナムをはじめ、カンボジア、ラオス、シンガポール、インドと相次いで個別の首脳会談を行い、ASEAN諸国との会話を露骨に優先します。
参考記事(29日付け産経新聞)。
中国、ASEAN優先で日本牽制? ベトナムとも個別会談
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/101029/asi1010291917004-n1.htm
南シナ海の南沙諸島(英語名・スプラトリー)諸島の領有権問題をかかえるベトナムのグエン・タン・ズン首相には、「南シナ海の問題を適切に扱うことは、中越関係の堅実かつ安定的な発展のために重要だ」(温家宝首相)と日本に対するのとは真逆で実に優しい対応を示しています。
中国の手口はいつもこうです。
自分たちが実効支配していない尖閣諸島では極めて強圧的な外交を行いますが、スプラトリー諸島のように中国実効支配が完了すれば、「2国間でよく話し合おう」と優しく提案するのです。
チベット・ウイグルの両自治区を実効支配したやり方とまったく同じことを繰り返してるわけです。
「力」で実効支配した後で優しく微笑むのですから偽善外交そのものです。
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尖閣諸島の問題で外交力の無さを露呈した菅民主党政権なのでありますが、タイミングを逃さず北の「ヒグマ」がすかさず動き出しました。
2日付け産経新聞電子版記事から。
露大統領 ツイッターに国後島訪問の感想つぶやく「なんと美しい場所」「地域管理は大統領の責務」
2010.11.2 11:03北方領土の国後島を訪れたロシアのメドベージェフ大統領は2日、簡易ブログ「ツイッター」に、「ロシアにはなんと美しい場所が多くあるのだろう」と訪問の感想をつぶやき、自らが撮影したとみられる国後島の写真を紹介した。
ツイッターには同時に3つの書き込みがあり、他にも「最も遠隔地にある場所を含め、すべてのロシアの地域の発展を管理するのは大統領の責務だ」として、北方領土は自国の領土である認識を改めて示した。また、「今日、初めて国後島を訪れた。住民と語り合い、地熱発電所も訪れた」とも記した。
メドベージェフ大統領は大統領府の公式サイトにブログを開設しているほか、今年6月に、米ツイッターのオフィスを直接訪れ、ツイッターのアカウントも取得。つぶやき回数は300回以上になり、読者にあたる「フォロワー」は11万人以上が登録している。(佐々木正明)
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101102/erp1011021112006-n1.htm
北方領土の国後島から「ロシアにはなんと美しい場所が多くあるのだろう」とツイッターにつぶやいたロシアのメドベージェフ大統領なのでありますが、日本人の国民感情を逆撫でするような発言にはまったく呆れてしまいます。
このロシアの動きに日本政府は駐ロシア大使を一時帰国させることを決定します。
2日付け朝日新聞電子版記事から。
駐ロシア大使を一時帰国へ 前原外相
前原誠司外相は2日午後の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪問したことを受け、「事情を聴くために近く河野雅治駐ロシア大使を一時帰国させる」と発表した。
http://www.asahi.com/politics/update/1102/TKY201011020302.html
今回のロシアのメドベージェフ大統領の国後島初訪問でも、アメリカ政府は即「日本支持」を表明します。
2日付け産経新聞記事から。
【露大統領北方領土訪問】「日本を支持」と米高官 オバマ政権発足後、支持明言は初めて
【ワシントン=佐々木類】クローリー米国務次官補(広報担当)は1日の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を初訪問したことについて「北方領土に関しては米国は日本を支持している」と述べた。その上で、「米国は長年、日本とロシアに平和条約交渉を促してきた」とし、対話に向けた努力を求めた。
米政府の基本的な立場は北方4島の返還を求める日本の主張を支持するものだが、オバマ政権に入って政府高官が支持を明言したのは初めて。
クローリー氏は、北方領土問題について「十分に認識している」と述べた。
横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議直前のこの時期に、メドベージェフ大統領が北方領土初訪問に踏み切った背景については米政府高官は、「説明はメドベージェフ大統領に任せる」と述べるにとどまった。http://sankei.jp.msn.com/world/america/101102/amr1011020754002-n1.htm
中国が日本が実効支配している尖閣諸島で国際的な騒動を繰り広げているまさにそのタイミングで、北方領土に大統領が初訪問したロシアのこの動きでありますが、九月下旬に ロシアと中国は北京で歴史問題で共闘、ロシアには中国の対日強硬姿勢に便乗し日本との領土問題を優位に運ぼうとの思惑もあるようです。
一月前に中国網日本語版(チャイナネット)にて、「熊」のロシアと「ドラゴン」の中国が連携して「海老」の日本を追い詰めるという記事が掲載されていましたが、まさにその記事が裏付けられたような今回のロシアの動きなのであります。
10月9日付け中国網日本語版(チャイナネット)記事から。
「海老」の日本、「熊」のロシアと「ドラゴン」の中国の連携を懸念
イギリス「タイムズ」サイトの4日付けの文章「日本は中ロの連合を懸念」
日本は戦略的な悪夢に遭遇するだろう。すなわち、中露は共同戦線を結び、「熊」のロシアと「ドラゴン」の中国は、西太平洋地域で「海老」の日本を追跡するということだ。
香港「亜洲時報」の10月5日付けの文章「ロシアは中国の車に乗る」
ロシアと中国の指導者が9月下旬、北京で会談した。それと同時に、中国が日本の漁船拘留に抗議する事件が進展している。この二つの出来事に関係があるという証拠はないが、この二つには同じ手がかりがあり、まったく関係ないわけではないと感じさせられる。
歴史問題をはっきりさせることを旨とする共同宣言が調印されることで、ロシアの北方四島に対する所有権は強化され、また中国は釣魚島に関心を寄せている。長年の交渉があったが、ロシアと日本は北方四島の問題を解決する上で何の進展もなく、この問題を解決できる可能性が見えてこないことを中ロ共同声明は示している。
ロシアが日本を犠牲にし中国の応援者になったことは、無論北京にとっては嬉しいことだ。
(後略)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年10月9日
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2010-10/09/content_21089425.htm
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中国とロシアが領土問題で連携して日本を追い詰める図式ですが、21世紀の現代で、この東アジアで前時代の帝国主義的領土紛争に私たちの日本国が完全に取り囲まれていることを強く自覚できたことは意義があると言っていいでしょう。
こと領土に関しては国家というものは外交舞台でいっさい妥協をしないし、相手が非力と見ればどこまでも強気に攻めてくる、すきあらば実効支配を強めようとするものです。
この対日中ロ領土同盟とでも名付けましょうか、一連の動きですが、尖閣諸島問題で国際的に晒された菅民主党政権の外交力の非力さがロシアを動かしたと見ることはできるでしょう。
さらにアメリカは盛んに同盟国日本支持を表明していますが、この動きにも裏の面があることを我々日本人は忘れてはなりませんでしょう。
尖閣では「日米安保」の対象地域であるとクリントン長官が再三表明、北方領土でも国務次官補が「日本支持」と公式表明、もちろん、これらはアメリカの国際戦略に従い中国とロシアの動きをけん制するためでもありますが、これらのメッセージは同時に日本に向けられていると考えて間違いないでしょう。
日本にとって日米軍事同盟はかけがえのない国家安全保障の生命線であることを、日本政府、日本国民にわからせるには、今は絶好の機会でもあります、米軍の思いやり予算も普天間基地問題もアメリカの要求通りにすすめるためにこの機を利用している側面も否定できません。
日本はアメリカに依存せず、独自の外交力を身につけるべきです、尖閣諸島に海上保安庁の基地を建設し実効支配を強化、北方領土問題でも毅然として日本固有の領土であることを堂々と主張すべきです。
中国が相手であろうとロシアが相手であろうとこと領土問題ではしっかりと自己主張し妥協しないことが肝要です。
日本自らが自分の領土を守る、その気概を持ち行動する覚悟を持った上で、日米軍事同盟は初めてその効力を発揮するのであり、日本自らが血を流す覚悟がなければ、他力本願ではアメリカは「白馬の騎士」にはなってくれないでしょう。
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それにしても民主党政権はこの国難を乗り越えることができるのでしょうか。
外交戦略無き民主党・管政権に打開する能力と覚悟があるとは、私にはとても思えないのです。
中国とロシア、両国の打算の産物でにわかにできた「対日中ロ領土同盟」ですが、この生みの親は非力な菅政権であるとも言えましょう。
しかしおそらく管首相は今の事態を自分たちの非力が招いた側面など考えも及んでいないでしょう。
やれやれです、ふう。
(木走まさみず)