木走日記

場末の時事評論

余計なお世話ですが、日本のリベラル勢力はそろそろ政策のライトウィング(右の翼)を広げてみてはいかが?

 社会党時代衆参合わせて250人を超える勢力を誇っていたのも今は昔、辻元氏の離党でついに国会議員10名の小所帯に落ちぶれた社民党なのであります。

 辻元氏は遠からず与党側に加わるという予測がありますが、これも失礼ながら多くの国民にとって別段どうでもよいことに映っておりますでしょう、線香花火の燃えかすのような今の社民党のお家騒動など誰にも相手にはされません。

 社民党分水嶺にあります。

 このまま衰退していくのか、あるいは戦略・戦術を練り直して最後と思われる反転攻勢に出るのか。

 「反戦」「護憲」を唱えるニッチな政党としてこれまでの「平和」な主張を孤高を守り唱え続けるも良しでしょう。

 その場合おそらく現有勢力は減り続けることになりますが、それも主義を護る政党としての美しい生き様でありましょう。

 そうではなく広く国民の支持を獲得できるリベラル政党として勝負にでるのならばここは最後のチャンスとも考えられるでしょう。

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 日本のリベラル勢力、共産党社民党の衰退はいちにもににも、その超「保守的」な政策の硬直性にあるわけで、反戦・護憲を念仏のように唱えているだけでは支持率を維持することさえままならないのは、先の参院選での両党の敗退で証明されています。

 20年も30年も同じ念仏しか唱えないのでは一般有権者から飽きられてしまうのも自明で、支持者の高齢化は進み、無党派層や若年層などの新たなる支持者獲得策もうまくいかず、組織力のある共産党がまだふんばっているのに比し、支持組織が弱体化している社民が先に党崩壊の危機にさらされたということだと思います。

 衆議院小選挙区制になり小党に不利になった面は確かにありますが、両党の低落を選挙制度に理由を求めてもそれは本質論ではないことは、こたびの参院選比例区の結果を分析すれば自明です。

 そこに示された数字は、躍進するみんなの党と特に明暗のコントラストを分けた、同じ消費税増税反対を唱えながら大幅に得票を下げた、共産・社民リベラル勢力の憂うべき退潮傾向であります。

 比例代表の得票数では「みんな」(得票数7,943,650票)に比し、共産(3,563,557票)社民(2,242,736票)2党合わせても580万票ほどで遙かに及ばず、前回に比べ2党合わせて比例代表で120万票もの得票数を落としています。

 菅政権の消費税増税発言はある意味でリベラル両党にとりみんなの党と同様の順風になったはずにもかかわらず、有権者の受け皿としてはみんなの党一人にさらわれてしまったわけです。

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 21世紀のこの時代、日本のリベラル勢力の歴史的使命は終わったと解釈すればこの小論はここで終わりでいいのですが、ここは2大政党による政権交代による政治の安定化を夢見た有権者達が民主党政権の体たらくの惨状にためいきをついている現状をかんがみ、日本のリベラル勢力にももうひとふんばりがんばっていただきたいと思いますのであえて辛口のエールを送りたいと思います。

 私は、共産党社民党の衰退は、その超「保守的」な政策の硬直性にあると思っています。

 「反戦」「護憲」では、票にまったくつながらないことを両党はいい加減気づくべきです。

 それらの主張だけでは年老いた既存支持者の囲い込みすら取りこぼしている現状をシビアに直視すべきです。

 「革新」と言う言葉は日本の政治状況に置いてはもう「死語」に近いのです。

 「反戦」「護憲」の旗を降ろせと主張しているのではありません、政策のプライオリティをダイナミックに洗い出し、もっと有権者にアピールする政策を全面に掲げるべきであると、戦術論をここでは説いています。

 同じ消費税増税反対を唱えながら、「みんなの党」が躍進したのに、社民・共産は得票を減らした事実をどう戦術的に分析するのか。

 「反戦」「護憲」という60年安保から使い回されたすでに国民の多数に飽きられている、つまり心に響かない今日ではニッチな政策を全面に掲げてももはやダメなのです、また「ダメなモノはダメ」という「増税反対」原理主義ももはや時代遅れです、「みんなの党」の成功要因は単に「増税反対」だけはでなくプラスアルファとして「その前にやることがある」と国民にわかりやすく具体策を提示したことです。

 リベラル勢力再生には、その超「保守的」な政策の硬直性を捨て、政策の幅を持たせる、できうるかぎりライトウィング(右の翼)を広げること、この一点が極めて重要だと思っています。

 民主党は、リベラル右派なのか穏健保守左派なのかその政策は正直ごったに状態で私には評価できませんが、保守(自民)と保守もどき(民主)の2大政党があり、保守政権がその長きに渡る体たらくで国民の痛烈な批判にさらされ、保守もどきに政権交代、さすれば日本の政治も変わると期待した国民を裏切り保守もどき政権の体たらくに有権者はさきの参議院選で鉄槌を下したわけです、これは本来ならば、リベラル勢力は実は再生する絶好のチャンスなのです。

 今重要なのは、政策のライトウィング(右の翼)を広げて、リベラル右派・穏健保守派の支持をもたらすような魅力的かつ実現性のある政策を掲げることです。

 多くの国民は日本のリベラル勢力を「労働組合」の政党、つまり一部組織の既得権益擁護勢力「守旧派」と認識しています。

 「労働組合」の組織率の著しい劣化を考えてみてください、現状では選挙においてこのイメージはマイナスにしか作用していません。
 
 多くの国民は公務員組織の改革など行政改革に、日本のリベラル勢力はただの「守旧派」であり改革にさまたげなだけだと、マイナスの「イメージ」が先行しています。

 このイメージの払拭を計ることが重要だと思われます。

 リベラルの立ち位置から自らの組織の改革に積極的に関わるべきです。

 例えば「公務員数の削減」問題では、地方自治体の自治労を抱えている民主党は国家公務員の削減にしか触れられないのですが、国家公務員だけでなく「地方公務員の削減」まで主張している「みんなの党」に現状では都市部を中心に国民の支持が集まっています。

 この問題は中央と地方の予算配分など疲弊する地域経済の問題も絡んでいて複雑な利害関係がありますが、単に地方公務員の人数削減を主張する「みんなの党」に対し、積極的にこの問題に関わりリベラル勢力として具体的な対抗案を示すべきです。

 単に「公務員数削減反対」では国民の支持はあつまりません。

 「大きな政府」と「小さな政府」という原理主義的な主張ではなく、具体的に公務員のあり方を数字で示し親しみやすい改革案を国民にわかりやすく示すべきです。

 一つの方法は地方経済と地方自治サービスの急激な劣化を防ぐために、地方公務員数の削減は新規採用を緩やかに押さえ自然減による中期的な削減案を示す、つまり実現可能な時間軸で語ることも有効でしょう。

 また、公務員の仕事には確かに無駄もあるかもしれませんが、「警察」や「消防」、あるいは「教育」や公的「医療」といった国民生活の維持のために必要不可欠の大切な仕事もたくさんあるわけです。

 それぞれの仕事の持つ崇高な役目を国民に堂々と説明し、なおかつその上で、この分野は確かに合理化可能です、またここは大切な仕事であり合理化は住民サービスの劣化を招くからできません、と個別具体的な提案をする、このように議論を避けず逆に積極的にリベラルの立場から関わることが求められます。

 個別具体的に提示すればそれが国民が納得すれば削減数を緩和することも可能になるでしょう。

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 ここで私が強く言いたいことは、リベラル勢力が今まで主張してきたことを撤回し単に右傾化せよという乱暴な話ではありません。

 今までの主張は大切に貫けばいい、ただそれだけでは支持率は上向くどころか低落してきているのだから、ここは、個別具体的な新しい政策を掲げそのプライオリティを高くして国民に訴えたほうが新たな支持者獲得の近道ですよ、と言いたいわけです。

 そしてその新たな政策は、自分たちのポリシーが許される範囲でいいから、できうる限りライト・ウィング(右の翼)を広げたものが望ましいだろうと思うのです。

 その具体的な一例として、今までリベラル勢力が議論にすら消極的だった公務員改革について、リベラルな立場から積極的に参戦して国民に堂々と具体的政策を掲げてみてはどうですか、と提案しているのであります。

 そうすれば組合員などの既存支持者とは違う、例えば中小零細企業関係者の中からも支持者が創出されるかも、です。

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 「平和」な主張を孤高を守り唱え続けたい人たちからすれば、まあ余計なお世話なんでしょうけど。



(木走まさみず)