木走日記

場末の時事評論

支持率20%はこの国の政権のイベント・ホライゾン

 26日付け日経紙面一面記事から。

(本社世論調査)内閣支持24%、12ポイント下落 普天間問題「未決着なら退陣」57%
2010/4/26付日本経済新聞 朝刊

 日本経済新聞社テレビ東京が23〜25日に共同で実施した世論調査で、鳩山内閣の支持率は24%となり、3月の前回調査から12ポイント下落した。不支持率は11ポイント上昇の68%だった。

 うむ、4月17、18日に実施した朝日新聞の調査でも鳩山内閣の支持率は25%となり、初めて3割を切ったと報じられていましたが、時事通信日本テレビの最新の世論調査でも軒並み支持率が2割台の結果が相次いでいるわけです。

 時事通信4月16日更新の記事から。

◎内閣支持、続落23.7%=56.5%が不支持−4月時事世論調査

時事通信社が9〜12日に実施した4月の世論調査によると、鳩山内閣の支持率は前月比7.2ポイント減の23.7%となり、政権運営の「危険水域」とされる2割台に落ち込んだ。不支持率は同8.0ポイント増の56.5%だった。小沢一郎民主党幹事長らの「政治とカネ」の問題に加え、米軍普天間飛行場移設問題で鳩山由紀夫首相が「5月決着」を公言しながら進展していないことなどへの批判が背景にあるとみられる。
 調査は、全国の成人男女2000人を対象に個別面接方式で実施。回収率は67.1%だった。
 参院選比例代表の投票先では、民主が17.7%(同3.4ポイント減)、自民が16.8%(同3.7ポイント減)とほぼ拮抗(きっこう)。みんなの党は7.2%(同4.0ポイント増)となり、5.2%の公明を抜いて「第3党」に躍進した。
 鳩山内閣への評価を支持政党別にみると、支持政党なしの無党派層は、「支持」が17.4%にとどまり、「不支持」は57.6%だった。民主支持層では、支持が64.5%、不支持が23.8%。一方、連立を組む社民支持層は、不支持53.8%が支持30.8%を上回った。
 不支持の理由(複数回答)は、「期待が持てない」が35.0%(同9.1ポイント増)に急増。「リーダーシップがない」32.1%(同5.6ポイント増)、「政策が駄目」21.0%(同6.1ポイント増)が続いた。支持する理由は「他に適当な人がいない」8.4%、「政策が良い」4.8%、「首相の属する党を支持している」4.6%の順。
 小沢氏の進退については、「幹事長を辞めるべきだ」が46.2%(同2.3ポイント減)、「幹事長だけでなく衆院議員も辞めるべきだ」が29.7%(同1.6ポイント減)と、合わせて75.9%(同3.9ポイント減)が幹事長辞任を求めている。

それによると、前回調査の3月13、14日の32%から大幅に下落。不支持率は、前回の47%から61%にまで達した。その理由として、57%が実行力の問題を挙げている。首相の仕事ぶりについても、「期待外れ」が53%も占めている。
米軍普天間飛行場の移設問題では、5月末決着ができない場合に首相は「辞任するべきだ」が51%にもなった。ただ、自民支持率は14%と依然低く、無党派層が54%にも上っている。

http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_cabinet-support-cgraph

 まあ世論調査には誤差も付き物ですから、これらの数字をどう捉えるべきか、この人に言わせればこんなもの「あたったことないよ」と一言でばっさり(苦笑)であります。

 12日付け朝日新聞記事より抜粋。

世論調査は、あたったことないよ」小沢幹事長会見

 ――テレビ朝日世論調査では、参院選比例区でどの党に投票するかという質問に、民主党が23%、自民党が24%と逆転した。残り3カ月で逆転される現状に、どう巻き返すか。

 「全然心配しておりません」

 ――それは、どうしてですか。

 「君もよく勉強してから、そういう質問はしてもらいたい。今まで新聞やテレビの世論調査は、あたったことないよ、ほとんど」

http://www.asahi.com/politics/update/0412/TKY201004120328_02.html

 ・・・

 さて、内閣支持率が20%代に落ち込んだ鳩山政権ですが、この数字が「危険水域」と呼ばれているのは、ずばり支持率が20%を割ると政権が持たないからです、その事実をあらためて歴代政権の内閣支持率の推移と最低支持率と政権転覆の相関に関して徹底的に数字で検証いたしましょう。

 さいわい時事通信社は調査開始した1960年7月以来内閣支持率を50年間毎月報じております、統計的分析をするには一番扱いやすいので、この時事通信社世論調査の数字に基づいて過去50年間のこの国の歴代政権について検証していきます。

 まず、時事通信内閣支持率を調査開始した1960年7月以来の歴代の23の内閣の、在職期間と最低支持率、最低支持率を記録した時期について表でまとめてみます。

内閣 (在職期間) 最低支持率 (最低支持率記録年月)
池田内閣 (1960.07〜1964.10) 31.1% (1964.07)
佐藤内閣 (1964.11〜1972.06) 17.3% (1972.06)
田中内閣 (1972.07〜1974.11) 10.6% (1974.11)
三木内閣 (1974.12〜1976.12) 19.4% (1976.12)
福田内閣 (1977.01〜1978.11) 22.7% (1978.06)
大平内閣 (1978.12〜1980.06) 20.9% (1979.10)
鈴木内閣 (1980.08〜1982.11) 15.8% (1982.11)
中曽根内閣 (1982.12〜1987.10) 24.7% (1987.04)
竹下内閣 (1987.11〜1989.05) 04.4% (1989.05)
宇野内閣 (1989.06〜1989.07) 10.1% (1989.07)
海部内閣 (1989.08〜1991.10) 27.5% (1989.08)
宮沢内閣 (1991.11〜1993.07) 10.3% (1993.07)
細川内閣 (1993.08〜1994.04) 46.2% (1994.04)
羽田内閣 (1994.05〜1994.05) 40.9% (1994.05)
村山内閣 (1994.06〜1995.12) 28.1% (1995.11)
橋本内閣 (1996.01〜1998.07) 23.4% (1998.07)
小渕内閣 (1998.08〜2000.03) 19.4% (1998.11)
森 内閣 (2000.03〜2001.04) 09.6% (2001.04)
小泉内閣 (2001.05〜2006.09) 34.0% (2002.04)
安倍内閣 (2006.10〜2007.09) 22.6% (2007.08)
福田内閣 (2007.10〜2008.09) 15.6% (2008.09)
麻生内閣 (2008.10〜2009.09) 13.4% (2009.09)
鳩山内閣 (2009.09〜       ) 23.7% (2010.04)

 最低支持率20%割れした内閣だけを最低支持率低い順に抜き出してみますと、直近の麻生内閣を含め全部で11内閣あることがわかります。

内閣 (在職期間) 最低支持率 (最低支持率記録年月)
竹下内閣 (1987.11〜1989.05) 04.4% (1989.05)
森 内閣 (2000.03〜2001.04) 09.6% (2001.04)
宇野内閣 (1989.06〜1989.07) 10.1% (1989.07)
宮沢内閣 (1991.11〜1993.07) 10.3% (1993.07)
田中内閣 (1972.07〜1974.11) 10.6% (1974.11)
麻生内閣 (2008.10〜2009.09) 13.4% (2009.09)
福田内閣 (2007.10〜2008.09) 15.6% (2008.09)
鈴木内閣 (1980.08〜1982.11) 15.8% (1982.11)
佐藤内閣 (1964.11〜1972.06) 17.3% (1972.06)
三木内閣 (1974.12〜1976.12) 19.4% (1976.12)
小渕内閣 (1998.08〜2000.03) 19.4% (1998.11)

 これらの内閣の崩壊時期と最低支持率記録時期を比較すると、興味深いことに任期途中で死去された小渕内閣を除いては、一度20%割れするとその一年以内に内閣は確実に倒れていることがわかります、そして悲惨なのは小渕内閣を除いては、やはり転がる石のように支持率は低迷し続け辞任する直前月に最低支持率を記録し内閣が倒れているわけです。

 最初に20%割れしてから1年近く粘る森政権のような猛者(もさ)もいれば、20%割れしたその月に政権を潔く手放した三木政権まで、末期を迎える時間には政権により差がありますが、池田内閣以来過去50年のこの国の政権は、一度20%割れすると余命一年ないことがわかります、最近の福田政権や麻生政権も例外ではありませんです。

 つまり、任期中に死去された小渕政権を例外とすれば次の事実が成立します。

 1.一度20%割れした政権は余命1年ない。
 2.一度20%割れした政権は、その後末期までの期間に差はあるものの、ころがる石のように支持率は低下していき、最後最低支持率を記録して末期を迎える。

 ・・・

 この宇宙には光でさえ吸い込まれる「ブラックホール (Black hole)」があります。そしてブラックホールの周りにはここから先は近づいたら最後、二度と戻ることはできない「事象の地平面 (event horizon)」があります。

 ところで実際のブラックホールはもしそれがある程度大きいと、そばを航行中のロケットの宇宙飛行士はそれに気付かず「事象の地平面 (event horizon)」を越えてしまうことがあるそうです。

 そこに明確な線が見えているわけでもない、ですがいったん超えてしまえば後はブラックホール中心の特異点に吸い込まれていくだけです、どうあがこうとこちら側に戻ってくることは不可能なのだそうです。

 過去のデータで検証するかぎり、支持率20%も「事象の地平面 (event horizon)」に似ているかも知れません。

 この50年歴代政権で支持率20%割れという「事象の地平面 (event horizon)」を越えた政権はすべて内閣崩壊という「ブラックホール (Black hole)」に吸い込まれています、生きて生還したモノはいません。

 さて4月時事世論調査で政権支持率23.7%と「危険水域」に突入した鳩山政権ですが、ここはふんばりどころです。

 でも鳩山操縦士は自らの政権が「事象の地平面 (event horizon)」の近傍にいる危機を認識しているのでしょうか、そこがはなはだ心配であります。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
■2008-05-02 支持率20%割れした歴代政権の悲惨な末期
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080502