木走日記

場末の時事評論

中国経済急拡大を示すOECD見通し

 20日付け日経新聞紙面記事から。

OECD、日本の成長率見通しを上方修正 デフレは続くと指摘

 経済協力開発機構OECD)は19日夜(日本時間)、エコノミック・アウトルック(経済見通し)を公表した。日本の実質国内総生産(GDP)成長率は2009年がマイナス5.3%、10年は1.8%とし、前回6月の見通しから、それぞれ1.5ポイント、1.1ポイント上方修正した。輸出が持ち直している上、政策効果が雇用悪化や賃金減少の悪影響を抑えていると指摘。11年は2.0%に回復すると予想した。インフレ率は11年までマイナスが続くとしている。
 政策面では「追加的な財政刺激策は、経済の持ち直しや巨額の財政赤字と公的債務残高を考慮すれば正当化されない」と指摘。中期的な財政再建計画の策定を求め、サービス部門の構造改革も促した。
 海外の10年の実質成長率見通しは米国が2.5%、ユーロ圏は0.9%とし、それぞれ1.6ポイント、0.9ポイント上方修正した。加盟30カ国全体については「再び回復を始めている」とし、理由を(1)各国による強力な需要下支え策(2)金融市場への公的介入(3)新興国の回復力の強さ(4)在庫調整の進展――とした。〔NQN〕(19:12)

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091119ATFL1906Q19112009.html

 実際の紙面では主要国の実質経済成長率見通しが表になって示されています。

【表1】OECDの実質経済成長率見通し(%、▲はマイナス)

2009年 10年 11年
日本 ▲5.3 1.8 2.0
米国 ▲2.5 2.5 2.8
フランス ▲2.3 1.4 1.7
ドイツ ▲4.9 1.4 1.9
英国 ▲4.7 1.2 2.2
ユーロ圏 ▲4.0 0.9 1.7
OECD全体 ▲3.5 1.9 2.5
中国 8.3 10.2 9.3
インド 6.1 7.3 7.6
ロシア ▲8.7 4.9 4.2

 年度別成長率としてはこれで見やすいのですが、このままでは各国経済に今回の不況が与えたダメージが読みとりづらいです。

 そこで、2008年を100としてのこの3年間での各国の成長率推移を成長率の高い順に見やすくしてみました。

【表2】OECDの実質経済成長率見通し(08年を100としたときの成長見通し)

2009年 10年 11年
中国 108.3 119.3 130.4
インド 106.1 113.8 122.5
米国 97.5 99.9 102.7
OECD全体 96.5 98.3 100.8
フランス 97.7 99.1 100.8
ロシア 91.3 95.8 99.8
ユーロ圏 96.0 96.9 98.5
英国 95.3 96.4 98.5
日本 94.7 96.4 98.3
ドイツ 95.1 96.4 98.2

 いやこの3年で中国30.4%増、インド22.5%増ですか、この新興国2国とほとんど成長が止まっているOECD諸国との明暗がくっきり出ました。

 また、先進国の中でも、米国やフランスのように経済規模が08年ベースの水準に戻るあるいはそれを越える予測の比較的今回の不況の影響が軽微だった諸国と、英国、日本、ドイツなどのように3年掛けても08年ベースの経済規模に戻れない諸国に分かれていることが見て取れます。

 ここに世界銀行が発表している2008年の各国GDP値があります。

  上位12カ国を抜粋。

Gross domestic product 2008

Ranking Economy (millions of US dollars)
1 United States 14,204,322
2 Japan 4,909,272
3 China 4,326,187
4 Germany 3,652,824
5 France 2,853,062
6 United Kingdom 2,645,593
7 Italy 2,293,008
8 Brazil 1,612,539
9 Russian Federation 1,607,816
10 Spain 1,604,174
11 Canada 1,400,091
12 India 1,217,490

http://siteresources.worldbank.org/DATASTATISTICS/Resources/GDP.pdf

 この値を元に【表2】に当てはめてドル換算で各国のGDP金額の予測推移値を出してみました。

【表3】OECDの実質経済成長率見通しに基づく各国GDP推移(単位:米ドル)

2008年 2009年 2010年 2011年 累積成長率
1 米国 14兆2043億 13兆8492億 14兆1901億 14兆5878億 2.7%
2 日本 4兆9093億 4兆6491億 4兆9326億 4兆8258億 ▲1.7%
3 中国 4兆3262億 4兆7285億 5兆1612億 5兆6414億 30.4%
4 ドイツ 3兆6528億 3兆4738億 3兆5213億 3兆5870億 ▲1.8%
5 フランス 2兆8531億 2兆7875億 2兆8274億 2兆8759億 0.8%
6 英国 2兆6456億 2兆5213億 2兆5503億 2兆6059億 ▲1.5%
9 ロシア 1兆6078億 1兆4679億 1兆5403億 1兆6046億 ▲0.2%
12 インド 1兆2175億 1兆2918億 1兆3855億 1兆4914億 22.5%

 うむ、あくまでOECDの予測での話ですが、今年度にも日本はGDP世界二位の地位を中国に明け渡すことになり、11年にはその差がさらに広がり、中国5兆6414億に対し日本4兆8258億となります。

 予想はしていましたがリアルな数字を改めて目にすると中国の成長ペースにちょっと驚いたしだいです。

 それはさておき、人口減少時代に突入した日本を筆頭に人口増加率が停滞あるいはマイナスの各国(日本、英国、ドイツ、ロシア)のこの3年間の成長率がすべてマイナス値であるのに対し、中国・インドはもちろん、先進国でも人口増加率が健全である米国やフランスがプラスなのは興味深いことです。

 まあ各国GDPのドル換算単純比較がどこまで有意なものか議論もありましょうが、「日本の成長率見通しを上方修正」(日経記事タイトル)といったって、少なくとも日本経済の規模がその成長がほとんど止まっていて世界の中で年毎にそのシェアが小さくなりつつあることだけは単純に推測できるわけです。

 それにしてもこのOECDの予測ですが、中国経済の伸びはすごいですなあ。

 うーん、鳩山政権の東アジア共同体構想ですが、日本が呑気にかまえていると、中国のこの勢いだと軍事面だけでなく経済面でも主導権を中国に取られてしまうのは必定だと思われます、「友愛」だけで対応できる話ではなさそうですぞ、鳩山さん。



(木走まさみず)