自民党はすでに『チェックメイト』だ〜反麻生勢力は時勢を俯瞰できていない
●「 自民党よ、負けるなら潔く負けよ 民主党と議論を戦わせて 」〜保守派評論家の論説の一部に顕著な変化
いずれにしても衆議院議員の任期は9月までであり、近々の選挙は避けられない。そんなときに総裁を代えるのは無意味だと、総裁選挙を主張する人たちは考えないのか。安倍晋三、福田康夫両首相がおのおの、1年で辞任したとき、自民党はそれなりに考えてわずか20人の小派閥の麻生氏を選び党の運命を託したはずだ。支持率急落だからといって、またもや次の人物を選ぶ心算(つも)りか。
だが、新総裁を選んでも、自民党は負けるだろう。誰が次の総裁になっても、勝てないだろう。時の流れと、国民の心を読み取ることのできる人には、十分にわかるはずだ。敗北が避けられない自民党にとって、今、最も重要なのは、いかにきちんとした負け方をするかということだと。きちんとした負け方とは、敗北の後の自民党の再生につながる負け方である。
自民党への国民の信頼は、その大部分が失われている。総裁一人を取り換えただけで信頼も支持率も回復すると考えるのは間違いだ。国民が自民党に問うていることは、もっと、根深い。ある時点から、まともな国づくりに失敗してきた自民党への失望は、自民党議員が考えるより、はるかに深いのだ。
「新総裁を選んでも、自民党は負けるだろう」と言い切り、ならば「敗北が避けられない自民党にとって、今、最も重要なのは、いかにきちんとした負け方をするかということ」であると、自民敗北を予言し自民内の麻生降ろしの動きを「総裁一人を取り換えただけで信頼も支持率も回復すると考えるのは間違いだ」と一刀両断しています。
すでに「自民党への国民の信頼は、その大部分が失われている」のであり、「国民が自民党に問うていることは、もっと、根深」く、「ある時点から、まともな国づくりに失敗してきた自民党への失望は、自民党議員が考えるより、はるかに深いのだ」と、この期に及んで「麻生降ろし」などの醜悪な狼狽ぶりを示す一部自民党議員のその浅はかさを見事に喝破しています。
この際自民は下野すべきと考える不肖・木走としてはこのテキストにまったく異存なく同意するものでありますが、驚くのはこの文章が保守の論客である櫻井よしこ氏によるものであることです。
櫻井よしこブログ
「 自民党よ、負けるなら潔く負けよ 民主党と議論を戦わせて 」
http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/2009/07/11/「 自民党よ、負けるなら潔く負けよ 民主党と/
『週刊ダイヤモンド』2009年7月11日号に寄せたものを自身のブログに転載されたようですので、この文章を起こしたのは7月11日以前となりましょう、だとすれば自民が歴史的敗北を期した都議選投票日の前であり、それ以降のここ最近の自民党議員の周章狼狽振りは知るはずもないのに書かれたわけで、ここ数日の自民のドタバタ劇を予期したような、その見事な政局観にも驚かされるわけです。
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この櫻井氏のテキストに代表されるようにここに来て、それまで小沢氏や鳩山氏の疑惑問題などを痛烈に批判してきた保守派とカテゴリーされてきた評論家の論説に、一部顕著な変化が見受けられるようになりました。
その変化とは民主党の批判から、自民党への批判と軸が微妙に置き換わり、さらには、ことここにいたっては自民は「麻生降ろし」や「解散延ばし」などの姑息な悪あがきはやめて潔く覚悟を決めて選挙による国民の信を問うたほうがよい、中にはこのテキストのように、いっそ下野して一からやり直せ、という論説も少なからず見受けられるようになりました。
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●「署名は落選予定者のリストだ」〜「麻生降ろし」の動きを否定的に報道する産経記事
17日付け産経新聞朝刊紙面に載った加納宏幸記者の記名記事から。
【衆院解散】同床異夢の署名議員 多くは選挙区の事情?
2009.7.16 20:57
自民党では16日、中川秀直元幹事長らが、両院議員総会開催に必要な党所属国会議員の3分の1(128人)を超える賛同が集まったとして署名を提出。執行部は「虚偽記載の疑いがある」として精査という名の切り崩しで対抗した。署名議員に中川氏ら麻生降ろしをねらう議員から、東京都議選の敗北で首相にモノ申したいだけの議員まで温度差があるためだ。一方、首相支持派からは、「署名は落選予定者のリストだ」(町村派中堅)と見透かした声も出ている。(加納宏幸)
(後略)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162059015-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162059015-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162059015-n3.htm
この記事を読んで驚かされるのは、今回の両院議員総会開催を希望する議員の著名リストに対して、記事のリード部分で「署名は落選予定者のリストだ」という町村派中堅議員の声に触れていることです。
保守派の産経新聞において、この日は、一面トップの、
署名「満たず」 自民、両院総会見送り 21日に議員懇、解散へ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090717/plc0907170740002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090717/plc0907170740002-n1.htm
という記事から、3面の
【衆院解散】自民最終攻防 反麻生の「敗戦」濃厚 水面下で何が…
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162359016-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162359016-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162359016-n3.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090716/plc0907162359016-n4.htm
という記事から、最初にご紹介した5面の記事まで、この両院議員総会開催をめぐる自民党議員のドタバタ劇を詳報しているのですが、各記事を読めば一目、産経の論調が「麻生降ろし」の動きを否定的に報道していることが明らかに見て取れるのです。
もうこれ以上党内抗争しても無駄でありかえって国民の目から見れば保身のための悪あがきにしか映らないのでは、といった産経記者の有する疑念が、「署名は落選予定者のリストだ」(町村派中堅)という発言を記事冒頭・リード部分に出しているあたりに強く感じられます。
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●自民党はすでに『チェックメイト』だ〜反麻生勢力は時勢を俯瞰できていない
この「麻生降ろし」の動きですが、どちらが正義で不正義なのか、二元論で語るほどの崇高な政策論などではありますまい、どちらかといえばそれぞれの選挙区事情のなせる業であり、産経記事の「署名は落選予定者のリストだ」は少々いいすぎかもしれませんが、この逆風下選挙地盤の弱い自民党議員達が保身のため狼狽して急ぎ麻生降ろしに動いているのもまた実態のいっぺんなのでしょう。
さらに、中心となっている中川氏と加藤氏など、小泉政権の評価に対しては親小泉と反小泉で真逆なのでありますし、それもあって肝心の次の候補の名前すらいっこうに出てきてはいません。
おそらくこの一連の反麻生勢力の動きも沈静化されることとなるでしょう。
多くの国民はもはや自民党の党内抗争には辟易していますし、保守評論家や産経新聞ですら、今回の反麻生勢力の醜悪な動きには批判的なわけです。
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反麻生勢力には、もはやこれまで、という時勢を俯瞰する胆力ある政治家はいないようです。
櫻井氏が喝破したとおり、大勢は不可逆的に自民敗北に流れています。
私も自民党は今回の総選挙のこの局面では、すでに万策つきたと考えます。
この局面において、麻生だ、いや新総裁だと次の一手を騒いでいるのは愚かしい。
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チェスゲームでたとえれば、もうすでに自民党は詰んでいます。
すでに『チェックメイト』(詰み)です。
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次のゲームの作戦を練った方がいい。
(木走まさみず)