木走日記

場末の時事評論

武部の麻生人格攻撃で表出する自民党のパーティー・ガバナンス劣化は見るに耐えない

 14日付朝日新聞電子版記事から。

衆院、内閣不信任案を否決 自民議員に造反なし

2009年7月14日14時54分

 衆院は14日午後の本会議で、民主、共産、社民、国民新の野党4党が共同提出した内閣不信任決議案を与党の反対多数で否決した。首相に批判的な自民党議員も「野党にはくみしない」との意向で反対したと見られ、造反の動きはなかった。

 民主党鳩山代表は、不信任案の趣旨説明で「こそくなことはやめ、今こそ、衆議院は解散され、民意が問われるべきときだ」と述べ、麻生首相にただちに衆院を解散するよう求めた。

http://www.asahi.com/politics/update/0714/TKY200907140254.html

 衆議院本会議にて野党提出の内閣不信任案は粛々と否決されました。

 自民党で欠席した議員は3人だけ、すでに離党届を提出した長崎幸太郎衆院議員と天皇陛下に同行中の福田元首相はやむを得ないでしょう、あと一人は中川元財務大臣でありますが理由は体調不良(熱があるとか)とのことでありますが、まさか二日酔いではありますまいが、あいかわらず間の悪いお方であります。

 いずれにしても、自民議員から一人の造反者もなく、まずは粛々と否決されたのであります。

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 国会で麻生政権の内閣不信任決議案が否決された翌日に麻生首相への痛烈な批判がメディアを通じて報道されます。

 15日付け産経新聞電子版速報記事から。

衆院解散】自民・武部元幹事長「麻生首相は徳がない」
2009.7.15 11:04

 自民党武部勤元幹事長は15日朝、TBSの番組に出演し、「次期衆院選前に新しい党総裁を選ぶべきだ。新総裁のもとで政策を発表し、国民に信を問うべきだ」と述べ、麻生太郎首相は退陣し、ただちに新総裁を選ぶべきだとの考えを強調した。
 そのうえで、武部氏は「失礼な言い方になるが、麻生首相が一番問われているのは徳がないということだ。人を愛する心、謙虚な心、恥を知る心、それから、正しい判断をする心(が問われている)」と強い調子で批判。“ポスト麻生”について「徳性の高い方を選びたい」と語った。
 ただ、総裁選の前倒しにつなげるための両院議員総会の開催には、党則35条の規定で党所属国会議員の3分の1(128人)の署名が必要だが、「まだ確保できていない」と説明。総会が開かれない場合、反麻生派の議員らと離党し、新党を作るとの見方が流れていることについても「そのほうがわかりやすいが、そうではない。侃々諤々(かんかんがくがく)、議論百出が自民党の歴史だ」と、慎重な発言に終始した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090715/stt0907151105005-n1.htm

 で、同じく15日付けの時事通信電子版速報記事から。

「徳性ない」「恥知らず」=武部氏が首相を痛烈批判

 自民党武部勤元幹事長は15日昼、同党の若手議員らとつくるグループ「新しい風」の会合であいさつし、一連の大型地方選での自民党の敗北に関し「トップの責任は非常に重い。(麻生太郎首相に)徳性がないと言われてもしょうがない」と首相を痛烈に批判し、退陣を重ねて求めた。
 武部氏はまた、「(首相には)恥を知る心がない。正しい判断をする心がない。何回もぶれにぶれていることが国民の皆さん方に失望感を与えている」とも指摘した。 (2009/07/15-13:22)

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2009071500404

 15日、朝のTBS「朝ズバ」において、さらに昼には自ら率いる政策グループの会合において、麻生首相には「徳がない」と痛烈な批判を繰り返す武部勤元幹事長であります。

 しかし、具体的な政策批判ならまだしも、仮にも自民党元幹事長という要職経験者が現役自民党総裁を「人を愛する心、謙虚な心、恥を知る心、それから、正しい判断をする心」これらが麻生首相にはないなどという、これは明らかに”人格攻撃”でありますが、このような批判をTVメディアなども利用して繰り返すのは、これはいただけません。

 国会で自ら野党提出の内閣不信任決議案に反対の一票を投じたくせに、その翌朝のTV出演しての麻生総理への”人格攻撃”とは、いったい「恥を知る心がない。正しい判断をする心がない」(武部氏)のは、どちらのほうかとも失礼ながら思えてしまいます。

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 ここまで自分の所属する党の総裁の人格攻撃を、公共の電波を通じて行うとするならば、昨日の段階で堂々と内閣不信任に賛成し、離党するべきです。

 国民には理解できないどころか、このような過激なメディアを通じた”人格攻撃”は、発言者自身の”人格”が疑われるのではないでしょうか。

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 ふう。

 それにしても自民党のパーティー・ガバナンスはどうなっちゃったのでしょう。

 組織論で言わせていただければ、この暴走気味の武部発言は組織構成員としては完全にアウトでしょう、ふつうなら間違いなく除名処分相当でしょう。

 組合であれ、会社であれ、政党であれ、それぞれに内部から体制批判はあってしかるべきでしょうが、政党組織である限りルールを守って具体的政策でもって批判の論陣を張るべきです。

 この「偉大なるイエスマン」氏の人格はここでは論じませんが、組織としての自民党の統治能力、パーティー・ガバナンスの劣化が、見るに耐えない悲しいレベルにまで進行していることが、この武部発言で見事に表出しているのであります。



 自民党よ、最後までしっかりしてください。



(木走まさみず)