木走日記

場末の時事評論

麻生さん、このままでは日本が「世界で最初にこの不況に本格突入する」国になってしまいます

●景気の現状「がけから落ちるよう」 日銀総裁が講演

 27日日経記事から。 

景気の現状「がけから落ちるよう」 日銀総裁が講演

 日銀の白川方明総裁は27日都内で講演し、景気の現状について「がけから落ちるという比喩がまさに当てはまるような急激な落ち込み」との認識を示した。「昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻を契機とする国際的な金融危機の高まり」を最大の原因として取り上げた。

 白川総裁は金融市場の混乱から学ぶべき教訓として「(金融機関は)流動性の枯渇の可能性を意識する必要がある」と指摘。レバレッジ(テコの原理)を利用し、自己資本に見合わない過大な借入金に頼る経営手法に懸念を示した。

 日銀の対応策として「金融システム全体としてリスクがどこに内在するのか見ていく」と述べた。また金融機関への考査やモニタリングを通じて「金融機関の個々の状況を的確に把握することが重要」との考えを示した。 (27日 22:30)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090127AT2C2701W27012009.html

 日銀の白川方明総裁が「がけから落ちるという比喩がまさに当てはまるような急激な落ち込み」と公演で発言したそうですが、まさに各種報道や発表される統計指標等の数値は日本の実態経済はこの一ヶ月で急速に「がけから落ちるよう」に戦後最悪のペースで悪化しています。

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●わが国の実体経済の急速な悪化を伝える深刻な内容が並ぶ30日の日経紙面

 30日の日経紙面記事を目を通してみても本来なら一面トップを飾るに値するようなわが国の実体経済の急速な悪化を伝える深刻な内容の記事が並んでいます。

 トヨタが最終損益も初の赤字に転落するショッキングな一面トップ記事から。

トヨタ、今期営業赤字4000億円 再び下振れ

 トヨタ自動車の2009年3月期の連結業績(米国会計基準)は本業のもうけを示す営業損益が4000億円前後の赤字となる見通しだ。従来予想は1500億円の赤字だった。トヨタは昨年末に業績予想を下方修正したばかり。世界的に販売が減速しわずか1カ月で赤字幅が2000億円程度拡大する。最終損益も初の赤字に転落する見込みだ。

 最終赤字に転落するのは最終損益の公表を始めた1963年11月期(旧トヨタ自動車工業)以来初めて。新車販売の落ち込みを受け、売上高も従来予想の21兆5000億円(前期比18%減)をさらに下回りそうだ。(07:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090130AT2D2902T29012009.html

 わずか一ヶ月前の予測が1500億円の赤字だったのに、4000億円前後と一気に2000億以上の赤字拡大をこの一ヶ月で見直したわけですが、これは尋常なペースではない極めて異例な事態といえましょう。

 次の記事は、12月の鉱工業生産指数が過去最悪の減少率を記録したことを報道しています。

12月の鉱工業生産指数、9.6%低下 過去最大の減少率

 経済産業省が30日発表した2008年12月の鉱工業生産動向(速報)によると、生産指数(2005年=100、季節調整済み)は前月比9.6%低下の84.6で、減少率は過去最大。3カ月連続の低下になった。同時に発表した製造工業生産予測調査では、1月が9.1%低下した後、2月は4.7%低下を予測。同省はこうした生産の動向について「急速に低下している」との判断を維持した。

 出荷指数は同8.0%低下の86.0で、在庫指数は同0.1%上昇の110.5、在庫率指数は同6.5%上昇の135.3。〔NQN〕(10:03)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090130NTE3ITZ0129012009.html

 経済産業省は「急速に低下している」と判断を維持しているそうですが、起こっていることは「急速に低下し続けていてその減少率も急速に悪化している」のであります。

 で、結果としていよいよ統計値に表出してきた失業率の悪化でありますが、12月の失業率が41年ぶりに過去最大の悪化幅を記録しました。

12月の失業率、0.5ポイント上昇 67年と並ぶ過去最大の悪化幅

 世界的な景気後退で、国内の生産活動や雇用情勢の悪化が加速している。総務省が30日発表した2008年12月の完全失業率は4.4%と前月に比べて0.5ポイント悪化、41年ぶりの大幅な悪化幅となった。企業の減産や工場閉鎖などが相次ぎ、非正規労働者を中心に職を失う人が増えている。物価の上昇には歯止めがかかってきたが、デフレ懸念も生じている。日本経済の情勢は一段と厳しい局面に入ってきた。

 総務省が30日発表した12月の完全失業率(季節調整値)は、1967年3月と並ぶ過去最大の悪化幅となった。厚生労働省が同日発表した12月の有効求人倍率(同)は0.72倍と前月を0.04ポイント下回った。企業のリストラによる失業が急増。雇用削減の動きが非正規社員から正社員へと波及してきている。

 完全失業率は15歳以上の働く意思のある人のうち、職に就いていない人の割合を示す指標。自己都合による求職が5万人増だったのに対し、企業の倒産などによる「勤め先都合の求職」が25万人増えた。完全失業者は前年同月に比べて39万人増え、270万人となった。(11:26)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090130AT3S3000S30012009.html

 日銀総裁がナショナルバンクの責任者としては国民を不安感を煽るような描写でいささか配慮に足らないかなと思われる日本経済の現状を指した「がけから落ちるよう」との表現ですが、残念ながらこれら報道で見る限り、日本の実体経済はこの一ヶ月で正に垂直落下(フリーフォール)的に悪化してきているようです。

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IMF欧米より日本の景気後退が深刻と予測を大幅に修正

 世界同時不況と言われる中で、昨年秋口まではまだ欧米より日本は傷口が浅かった模様ですが、11月ごろからここ3ヶ月で、主要国の中で日本の経済が一番の最悪の落ち込み方を示しはじめました。

 世界経済の動向を見守るIMFも日本の見通しを急遽大幅修正したようです。

 29日AFP記事から。

世界経済、09年の成長率は戦後最悪の0.5% IMF見通し

【1月29日 AFP】国際通貨基金International Monetary FundIMF)は28日、最新の世界経済見通しを発表した。世界経済の成長率は金融危機の影響を受けて、ゼロ近くにまで鈍化しつつあり、09年の成長率は、戦後最悪のわずか0.5%に減速するとの見方を示した。

 09年の世界経済の成長率は、前年11月に発表していた当初の見通しから約1.75ポイントも下方修正したことになり、IMFは「世界経済は深刻な景気後退に直面している」と危機感を示した。

 09年の各国・地域の成長率見通しについては、金融危機の「震源地」となった米国は当初見通しから0.9ポイント減のマイナス1.6%、日本は当初のマイナス0.2%から大幅修正のマイナス2.6%、ユーロ圏も当初のマイナス0.5%から下方修正のマイナス2.0%となった。(c)AFP

http://www.afpbb.com/article/economy/2565407/3734816

 昨年の11月では、震源地の米国がマイナス0.7ポイント、ユーロ圏が0.5%なのに比べ、日本は比較的軽微のマイナス0.2%とIMFは予測していましたが、わずかここ2ヶ月で米国マイナス1.6%、ユーロ圏マイナス2.0%と予測を悪化させた中で、日本はマイナス2.6%と欧米を抜いた形で深刻な景気後退が起こると予測を大幅に修正したのです。

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●「世界で最初にこの不況から脱出する」(麻生首相の施政方針演説)〜麻生さん、このままでは日本が「世界で最初にこの不況に本格突入する」国になってしまいます

 麻生首相の施政方針演説を伝える28日産経記事から演説の一部を抜粋。

【施政方針演説全文】(2) (1/3ページ)
2009.1.28 15:58
(前略)

景気対策・雇用対策)

 私は、「当面は景気対策、中期的に財政再建、中長期的には、改革による経済成長」と、申し上げております。まず急がねばならないこと。それは、景気対策であります。

 世界が同時に、かつてない不況に入りつつあります。日本もまた、この世界不況から逃れることはできません。しかし、大胆な対策を打つことで、世界で最初にこの不況から脱出することを目指します。異常な経済には、異例な対応が必要です。

(後略)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090128/plc0901281559009-n1.htm

 日本が「世界で最初にこの不況から脱出する」ことを目指すそうですが、「異常な経済には、異例な対応が必要」とは、言い得て妙ではあります。

 まさか、真っ先に不況から脱出するために、「異例な対応」として真っ先に日本経済を不況に深く突入しようと努力しているのか・・・

 崖から転げ落ちる勢いを増せば反対側の崖を上り切るのも早いということでしょうか。

 よもやそんなことはお考えではないでしょうが・・・

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 日本の実体経済が、ここ3ヶ月で主要国の中でどこよりも悪化しつつあります。 

 麻生さん、このままでは日本が「世界で最初にこの不況に本格突入する」国になってしまいます。



(木走まさみず)