木走日記

場末の時事評論

これでいいのか?後期高齢者医療制度で低所得ハケン労働者が負担増

 何かと問題の多い後期高齢者医療制度ですが、そもそも老人保険料の現役世代の負担を減らすことが目的の一つであったはずです。

 しかし、実際には業界・業種によっては、かなりの数の健康保険組合後期高齢者医療制度による負担金増加のために、この4月から保険料値上げを余儀なくされているのが実態のようです。

 しかも今まで加入者が若年層中心で老人医療費負担の比較的軽微だった健康保険組合ほど、今回の制度改正による負担増が顕著にあらわれ、保険料値上げの洗礼を受けているのです。

 つまり、平均所得が必ずしも高くない、しかし加入者平均年齢が若い組合ほど影響は大きいと言えます。

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 ここに、テンプスタッフなど約四百社の人材派遣会社、約四十五万人が加入する人材派遣健康保険組合があります。

はけんけんぽホームページ
http://www.haken-kenpo.com/index.html

 この派遣健保では、4月にこんな悲痛なお知らせを加入者に配布しました。

被保険者・事業主の皆様へ
(人材派遣健康保険組合 H20.4 月)
平成20 年4 月から高齢者医療制度が変わり、健保組合の保険料が急増します

http://www.haken-kenpo.com/topics/h19/koureiiryou2.pdf

75歳以上の高齢者(後期高齢者)や、65〜74 歳の高齢者(前期高齢者)の医療制度内容や医療費を支える枠組みが大きく見直されます。
この制度改革によって、健保組合の財政負担(拠出金)が急増し、平成20 年度以降、被保険者・事業主の皆様にご負担いただく健康保険料が大幅に増加することとなります。

 こんな書き出しで始まるA4サイズ2ページのお知らせですが、2ページ目の最後、『当組合の拠出金の増加及び保険料率の引き上げ』に書かれているその内容は驚くべきモノでした。

4 当組合の拠出金の増加及び保険料率の引き上げ
(1)上記のような新たな拠出金制度の発足により、当組合の拠出金総額は、平成19 年度の約252 億円から平成20 年度においては約465 億円と、約213 億円増加する見通しです。被保険者1 人当たりの拠出金額は、平成19 年度約57,000 円から平成20 年度約97,000円と、1 人あたり約4 万円近い増加が見込まれています。
(2)この拠出金の増加による部分は健康保険の保険料率に換算すると14/1000 に相当する金額であり、特定健康診査・保健指導という新たな保健事業の経費等も含めると、平成20年度には健康保険料率を平成19 年度の61/1000 から76/1000 へと大幅に引き上げることが必要となりました。
(3)被保険者及び事業主の皆様方に大変なご負担をおかけして心苦しいのですが、何とぞ上記の事情をご理解いただき、今後とも当組合の運営にご協力くださいますようお願い申し上げます。

 「被保険者1 人当たりの拠出金額は、平成19 年度約57,000 円から平成20 年度約97,000円と、1 人あたり約4 万円近い増加が見込まれて」いるのだそうです。

 これは、「健康保険料率を平成19 年度の61/1000 から76/1000 へと大幅に引き上げること」を意味しています。

 なぜこのような保険料急増がこの派遣健保に起こってしまうのか、その理由は明確です。

○ 当組合は老人加入率が極端に低いため、従来の老人保健拠出金は、当組合の場合は他健保に比べ軽くすんでいました。しかしながら、後期高齢者支援金は、当組合の加入者数に応じ頭割り計算されるため、従来の老人保健拠出金よりもはるかに重い負担となります。

 組合員数45万人、平均年齢34才のこのハケン健保ですが、その平均年収は280万円という、決して多くはないのが実態です。

 このようなハケン労働者組合で、「被保険者1 人当たりの拠出金額は、平成19 年度約57,000 円から平成20 年度約97,000円と、1 人あたり約4 万円近い増加が見込まれて」しまうのは、「現役世代の負担を減らす」こととは明らかに逆行した現象だと言えましょう。

 上記の「お知らせ」にも書かれていますが、このようないびつな負担増が起こってしまう理由はふたつあります。

 ひとつは、これまで加入者における老人の割合によって決められた拠出金額が、加入者の総数によって計算されるようになったこと、そしてもうひとつは65〜75歳未満の前期高齢者を支えるための負担割合(財政調整)が変わり、組合健康保険の負担金額が急増したことです。

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 結果、後期高齢者医療制度で低所得ハケン労働者が負担増で苦しんでいます。

 はたして、これでいいのでしょうか?



<参考記事・テキスト>
■2008年6月5日(木)「しんぶん赤旗
シリーズ 廃止しかない 後期高齢者医療制度
老いも若きも負担増
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-06-05/2008060503_02_0.html

週刊文春6月26日号
後期高齢者医療制度は「ハケンの保険料」もムシる
http://www.bunshun.co.jp/mag/shukanbunshun/index.htm



(木走まさみず)