木走日記

場末の時事評論

チベット問題でおもいきり中華思想を表出している肌寒い中国当局発言〜「中国人民の感情を傷つける」「あらゆる民族の憤激と非難を呼び起こした」

●ステージで「チベット独立」叫んだ歌手ビョーク、当局激怒で法的手段に―中国

 10日付けYahooニュースから。

ステージで「チベット独立」叫んだ歌手ビョーク、当局激怒で法的手段に―中国

3月10日7時19分配信 Record China

2008年3月7日、世界中で熱狂的なファンを持つアイスランドの女性歌手ビョークが中国公演のステージ上で「チベット独立」を叫んだ事件で、事態を重く見た中国文化部は彼女に対し法的措置をとると発表した。

今月2日に上海市で行われたコンサートで、ビョークはステージ上で中国当局から許可を得ていない楽曲「Declare Independence(独立宣言)」を歌い始め、突然「チベットチベット!」と叫んだという。これには中国の聴衆も驚き、事件は瞬く間に内外に報道された。

中国文化部スポークスマンは、政府は国際的文化交流活動を積極的に奨励しているが、国内で活動する海外のアーチストや団体は国家の「営業性演出管理条例」を遵守しなければならないと強調。この規定に違反して個人的な芸術活動を政治利用し、中国人民の感情を傷つけるアーチストは歓迎しない、と強い不満の意を表明。ビョークには法的措置をとると述べたうえで、今後中国を訪れる海外のアーチストや団体の芸術活動について、より厳しいチェックを行うことを明らかにした。(翻訳・編集/本郷)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080310-00000002-rcdc-cn

 うーむ、なんと勇気あるアイスランドの女性歌手ビョークさんなのでしょう、中国公演のステージ上で、中国当局から許可を得ていない楽曲「Declare Independence(独立宣言)」を歌い始め、突然「チベットチベット!」と叫んだのだそうです。

 「これには中国の聴衆も驚き、事件は瞬く間に内外に報道された」のだそうですが、少し考えさせられたのが中国文化部スポークスマンのこの言葉、「中国人民の感情を傷つけるアーチストは歓迎しない」ですか、「中国人民の感情を傷つける」ねえ。

 中国政府により長年蹂躙され傷つけられてきたチベット民族の感情なんてのは、中国文化部スポークスマンには眼中にないようであります。

 ふう、やれやれ。

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人民解放軍チベットの僧院を包囲〜中国当局ダライ・ラマが計画と非難

 昨日(14日)から今日(15日)にかけて世界を揺るがす報道が伝わってきました。

人民解放軍チベットの僧院を包囲

【3月14日 AFP】中国のチベット(Tibet)自治区の中心都市ラサ(Lhasa)で、人民解放軍が市内3大僧院を包囲した。米ワシントンD.C.(Washington, DC)を拠点とするチベット支援団体「チベットのための国際キャンペーン」(International Campaign for Tibet、ICT)が14日、明らかにした。

 ラサでは中国のチベット統治に抗議するデモが連日行われており、当局が厳しい取り締まりに出るのではとの懸念が高まっている。

 ICTによると、ラサでの抗議行動3日目に、僧侶ら数百人がデモに参加したことから、中国当局は、市内で最も大きな3つの僧院を包囲した。ICTはさらに、ラサのセラ(Sera)僧院で、ハンガーストライキが行われているほか、自治区の中心から離れた地域の2か所の僧院にも抗議行動が広がっていると伝えている。

(後略)

http://www.afpbb.com/article/politics/2364481/2735600

チベットの抗議活動、治安部隊の発砲で2人死亡か

【3月15日 AFP】(写真追加)中国のチベット(Tibet)自治区の中心都市ラサ(Lhasa)で14日、暴動に発展した中国のチベット統治への抗議活動に対し、治安部隊が発砲した。人権団体などが明らかにした。

 米政府系放送局「ラジオ自由アジア(Radio Free Asia)」によると、発砲で少なくとも2人が死亡したと報じているほか、ラサの救急医療センター関係者もAFPに対し、同日の抗議活動では数人が死亡し、負傷者も多数でていることを明らかにした。

 この事態を受け、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世は同日、チベット亡命政府があるインド北部のダラムサラ(Dharamshala)で、抗議活動は中国が50年以上にわたってチベットを「暴力的に」支配してきたことに対する住民たちの怒りの結果だと語った。

(後略)
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2364667/2738802

 人民解放軍まで投入してデモ弾圧、死者も出ている模様ですが、当然ですが中国当局からの事件の詳細の発表は全くないようです。

 で、中国国外でもチベット人の抗議デモは広がりを見せている模様。

NYの国連前で抗議デモ チベット人、6人逮捕
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200803150249.html
亡命チベット人 印で約100人逮捕 中国批判でデモ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008031402095242.html
インドで中国大使館に突入図る、チベット人30人拘束
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080315-OYT1T00321.htm?from=navr

 でようやく事件を取り上げた中国国営新華社によれば、中国当局は今回の暴動は、ダライ・ラマ一味が首謀者だと非難したそうです。

ダライ・ラマが計画と非難 ラサ騒乱でチベット当局者
2008年3月15日 10時03分

 【北京15日共同】中国チベット自治区の当局者は14日、「ラサで起きた破壊行為を(チベット仏教の最高指導者)ダライ・ラマ(14世)一味が組織、計画し背後から操った十分な証拠がある」と述べ、ダライ・ラマを非難した。国営新華社の取材に答えた。

 同当局者は「殴打、略奪などの行為は社会秩序を乱し住民の生活と財産を危険にさらした」と批判。「破壊行為はチベットのあらゆる民族の憤激と非難を呼び起こした」と述べた。発言は、ダライ・ラマとの対話を求める欧米政府などの呼び掛けに対し、従来の敵視政策を変えない姿勢を強調したものといえる。

 一方、ラサにいる英誌エコノミストのジェームズ・マイルズ記者は共同通信の電話取材に対し、抗議デモに参加した住民らのほとんどが15日未明までに帰宅、市内が落ち着きを取り戻したことを明らかにした。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008031501000141.html

 「殴打、略奪などの行為は社会秩序を乱し住民の生活と財産を危険にさらした」のは、本当に「破壊行為はチベットのあらゆる民族の憤激と非難を呼び起こした」のでしょうか、新華社は当然伝えていないでしょうが、彼らデモに参加した僧侶やその賛同者達が破壊した店舗は、現地に進出しているおもに漢族経営の店が対象であったとされます。

 彼らはチベット国旗を高々と掲げ、かわりに中国国旗を燃やして、チベット族の独立の悲願を抗議したといいます。

 暴力行為はもちろんいけないですが、欧米諸国が本件でチベット人に極めて同情的なのは、長年に渡る中国の不当な少数民族に対する人権蹂躙に敏感になっているからなのであります。

 中国当局者の発言、「破壊行為はチベットのあらゆる民族の憤激と非難を呼び起こした」ですか。

 「あらゆる民族」じゃなくて、不当にも経済侵略しチベット族を支配している「漢族だけ」の憤激と非難を呼び起こしただけじゃないのですか。

 ふう、やれやれです。

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 チベット独立と発言することは「中国人民の感情を傷つける」のだそうです。

 チベット人デモは「あらゆる民族の憤激と非難を呼び起こした」のだそうです。

 少数民族の苦悩を無視したおもいきり中華思想を表出している肌寒い発言であります。

 こんな国を相手にしては毒餃子問題の真摯な解決など望めないと思ってしまうのですが、どうでしょうか、福田さん。



(木走まさみず)