木走日記

場末の時事評論

中国の家畜加工業者が豚の小腸から粗製品を作っている〜日本の抗凝固薬ヘパリンは安全なのか?

kibashiri2008-03-03




 アメリカで死者21人を出しているある薬害事件を報道する2月29日付けの米ニューヨークタイムス記事です。

Blood Thinner Might Be Tied to More Deaths
By WALT BOGDANICH
Published: February 29, 2008
http://www.nytimes.com/2008/02/29/us/29heparin.html?_r=1&scp=3&sq=+F.D.A.+&st=nyt&oref=slogin

 さっそくこの記事を取り上げています1日付け朝日新聞記事から。

中国産材料の薬で死者相次ぐ 米国で製品回収
2008年03月01日19時56分

 米国で中国産材料を使った薬を注射された人の死亡が相次ぎ、米製薬会社バクスターは製品の自主回収を始めた。米食品医薬品局(FDA)が中国の工場に調査官を派遣して原因特定を急いでいるが、米紙ニューヨーク・タイムズは原材料の豚の小腸が不衛生に扱われた可能性を指摘した。

 問題の薬は、人工透析時や手術後などに血液が固まるのを防ぐのに使う抗凝固薬ヘパリン。バクスターが製造・販売する注射薬の一部で、1月ごろから重い低血圧などの副作用報告が急増した。

 米メディアによると、1月以降の副作用報告は全米で400件以上、死者は21人に達した。バクスターは2月28日、副作用報告のないものも含めて、ほぼすべてのヘパリン製品の回収を決めた。

 問題のヘパリンは、中国の家畜加工業者が豚の小腸から粗製品を作っている。米企業が保有する上海近郊の工場で加工後、バクスターが輸入して最終製品にしている。

 FDAは、工場に不衛生な点があったことや手続きミスでFDAが工場の検査をしていなかったことを認めたが、「原因はまだわからない」としている。

 一方、ニューヨーク・タイムズは、中国で昨年、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)と呼ばれるウイルス病が流行して豚の値段が急騰した際に、工場が不衛生な零細農家などから安く粗製品を購入したとする専門家の見方を報じた。

    ◇

 日本の厚生労働省医薬食品局は、問題になっている中国産材料が使われたバクスターのヘパリン製品は、日本には輸入されていないとしている。

http://www.asahi.com/international/update/0301/TKY200803010253.html

 「人工透析時や手術後などに血液が固まるのを防ぐのに使う抗凝固薬ヘパリン」を製造する米製薬会社バクスターの製品が、「1月以降の副作用報告は全米で400件以上、死者は21人に達した」のであります。

 で、問題なのはこのクスリ、原材料が「豚の小腸」なのであり「中国の工場」で不衛生に扱われた可能性が指摘されているのであります。

「問題のヘパリンは、中国の家畜加工業者が豚の小腸から粗製品を作っている。米企業が保有する上海近郊の工場で加工後、バクスターが輸入して最終製品にしている」のであります。

 ・・・

 アメリカにおいて、この2ヶ月で副作用報告400件以上、うち死亡確認が21人と深刻な被害が報告されておりますが、当然ながらアメリカメディアは本件に関してかなり神経質な報道がなされています。

 例えばこちらのWSJ(ウオルストリートジャーナル)電子版2月21日付けの記事では、「中国の家畜加工業者が豚の小腸から粗製品を作っている」現場写真を掲載しております。(スライド式で何枚か見ることができます、衛生面で関心のある読者は必見です)

Where a Drug Begins
http://online.wsj.com/article/SB120352438415380201.html

 ・・・

 この問題、冷凍食料品と医療薬品の違いはあるものの、この抗凝固薬ヘパリンの問題、製造会社はアメリカとはなっているものの原材料製造元の中国の工場において衛生上の問題が発生した可能性が大きいという点で、日本の毒餃子問題とその構造が酷似しておるわけです。

 これはアメリカ版「中国開発輸入製品」問題と考えられます。

 朝日記事では、「日本の厚生労働省医薬食品局は、問題になっている中国産材料が使われたバクスターのヘパリン製品は、日本には輸入されていないとしている」と結んでいますが、では日本の病院で使用されているヘパリンはどこから輸入されているのでしょうか?

 我々日本人としてはアメリカで死者が出ている現状から、日本の抗凝固薬ヘパリンは安全なのか、大丈夫なのかという、当然の危惧を持つわけです。

 ・・・

 ・・・

 私が某大学病院勤務医に取材したところ、日本では数社がヘパリン系製品を製造または販売しているそうですが、現在のところ当然ながらアメリカのような薬害問題は確認されていないということですが、日本のヘパリン系製品もほとんどが中国現地法人からの輸入である点は留意すべきだと指摘していました。

 日本のヘパリン系製品もやはり中国からの原料輸入品が大半であると医療関係者は証言しています。

 この事実は、ネット上でも容易に確認できます。

 例えば下記PDFファイルの【製造販売業者及び製造業者の氏名又は名称及び住所等】欄を見ていただければ製造(輸入先)が中国の有限公司であることが容易に確認できます。
 (※1:ネットで輸入元が中国であることが確認できるのでご紹介していますが、この会社あるいは製品にはまったく問題はないことはご留意して下さい。)

http://www.nipro.co.jp/concern/docu_new/s001.pdf

 我が厚生労働省は、とかく問題が多いお役所であり薬害問題では対応が遅れて国民・関係者からそのお粗末な行政手腕がいつも批判されてきた点を考慮すると、この中国製ヘパリン問題、日本国民としてはとても心配なのであります。

 厚生労働省は、対岸の火事などと静観するのではなく、国民の不安を取り除くためにも担当行政部門として、責任を持って日本製品の安全性をしっかり検証し説明していただきたいです。

 ・・・

 日本の抗凝固薬ヘパリンは安全なのでしょうか?



(木走まさみず)