さきに辞任すべきは冬柴鉄三国交相じゃないのか〜産経・FNN合同世論調査結果から「民意」を考えてみる
産経新聞電子版記事から。
内閣支持率初めて3割切る フジ「報道2001」の世論調査
2008.2.25 00:24
フジテレビ「報道2001」の世論調査(21日調査)で、福田内閣の支持率は27・8%(前回比5・2ポイント減)となり、昨年9月の内閣発足以来、初めて3割台を下回った。イージス艦の衝突事故と、その後の防衛省の対応の不備や、福田康夫首相が改革に消極的だとみられていることが影響しているようだ。
政党支持率は自民党は前回比1・6ポイント減の20・6%。これに対し、民主党は同5・4ポイント増の30・0%で、10ポイント近く差が開いた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080225/plc0802250022000-n1.htm
産経・FNN合同世論調査で福田内閣の支持率が初めて3割を切ったそうでありますが、この記事ネット上では比較的地味な扱いですが、紙面の方では本日(26日)の産経新聞一面トップにて『内閣支持30%割る 海自事故対応「評価せず」7割超』という見出しで、はでに報道されております。
まあメディアの世論調査などは誤差も付き物でありますし、その数値を細かく取り上げてもなんなんでしょうが、確かに福田政権の支持率は下がっているのでしょう、今更30%を割ったとされても驚くものでもないのであります。
そうはいうものの今回の調査結果、いくつかのユニークな質問の興味深い結果も踏まえ、実に示唆に富む「民意」が表出されているようです、今回は、この最新の産経・FNN合同世論調査の結果を取り上げてみたいです。
●「継続してもいいが、期間や税率を見直すべきだ 58.1%」〜現時点では賢明にもこの国の「民意」は、自民案にも民主案にも支持を出していない
今回の世論調査ですが、まあネット上でいくつかの解説記事は載っておるようですが、例によって残念なことにその質問と回答の詳細は紙面でしか確認できません。
(産経新聞さん、ネットの特性を理解しているならこの当たりもネット上での公開を検討して下さいネ)
で、産経新聞【2月26日 総合15版 5ページ】に掲載させている世論調査結果の詳細から、気になる結果のいくつかをピックアップしてみましょう。
まずは内閣支持率。
■産経・FNN合同世論調査 質問と回答
<問>福田内閣を支持するか
・支持する 28.7%(36.6%)
・支持しない 52.2%(47.3%)
・わからない、どちらとも言えない 19.1%(16.1%)
28.7%ですか、われらが福田政権に黄色信号でありますネ。
で、最近の話題から、石破茂防衛相の責任について。
<問>イージス艦と漁船の衝突事故をめぐる石破茂防衛相の責任について、最も近い考えは
・責任を取って今すぐ辞任すべきだ 6.5%
・再発防止策などにメドがついたら辞任すべきだ 32.0%
・辞任せず、防衛省の体制見直しなどを続けるべきだ 59.5%
・わからない、言えない 2.0%
うん、産経らしいこだわりの質問とも言えるわけですが、「責任を取って今すぐ辞任すべきだ」はわずか6.5%、「辞任せず、防衛省の体制見直しなどを続けるべきだ」が59.5%なわけです。
この世論調査によれば、「民意」は石破茂防衛相の引責辞任を求めてはいないようです。
もうひとつ、最近の話題から中国産の食品について。
<問>食品の安全に関連し、次に挙げる考え方や行動はあてはまるか<<中国産の食品はなるべく避ける>>
・思う 88.3%
・思わない 9.4%
・わからない、どちらとも言えない 2.3%<<中国産食品の輸入は、多少不便を感じても厳しく制限すべきだ>>
・思う 87.8%
・思わない 9.3%
・わからない、どちらとも言えない 2.9%
うーん、予想はしていましたが、「<<中国産の食品はなるべく避ける>>」人が88.3%、「<<中国産食品の輸入は、多少不便を感じても厳しく制限すべきだ>>」とした人が87.8%ですか。
中国政府はしっかり捜査結果を公表しないとこれはなかなか信頼は回復しないであろうと思わせる、厳しい深刻な数字であります。
で、私が一番関心を持っていた揮発油(ガソリン)税暫定税率について。
<問>揮発油(ガソリン)税に上乗せされている暫定税率について近い考えは
・地方の道路網などのため、継続すべきだ 7.7%
・継続してもいいが、期間や税率を見直すべきだ 58.1%
・原油高などの状況を踏まえ、廃止すべきだ 32.1%
・わからない、どちらとも言えない 2.1%
「継続してもいいが、期間や税率を見直すべきだ」が58.1%と、自公政権の押し進める「地方の道路網などのため、継続すべきだ」(7.7%)や、民主の主張している「原油高などの状況を踏まえ、廃止すべきだ」(32.1%)を、押さえておりますね。
興味深いことであります。
賢明な民意は官僚べったり既得権益擁護丸出しの自民案にもNO、「ガソリン値下げ隊」などという愚かな大衆迎合戦術で見事に民意からそっぽを向かれた民主案にもNOという意志を示しているともとれそうです。
うがった見方をすればですが、これは当初ガソリン値下げに6割以上の国民が賛成していたことを考えるとこの一ヶ月で国民も報道等で言われ続けてきた「地方の道路財源をどうする」という継続派の意見にだいぶなびいてしまった、と見ることもできるかも知れません。
民主党の愚かな子供だましの戦術ミスや国民的人気の高い宮崎県知事による継続支持発言が影響したのかも知れません。
こと道路特定財源と暫定税率問題では、結果として現時点では賢明にもこの国の「民意」は、自民案にも民主案にも支持を出していないと言うことであります。
スバラシイ。
・・・
●この国の「民意」は、政治家として冬柴鉄三国交相をまったく評価していない
さて、産経・FNN合同世論調査が不肖・木走が大好きな理由のひとつは、この世論調査特有のえげつない(失礼)政治家人気度調査が毎回楽しみなのであります。
はい、一挙13人の政治家評価結果を紹介。
<問>次に掲げる閣僚や知事らを評価するか<<町村信孝官房長官>>
・評価する 29.5%
・評価しない 51.1%
・わからない、どちらとも言えない 19.4%<<渡辺喜美行革・金融担当相>>
・評価する 41.2%
・評価しない 36.9%
・わからない、どちらとも言えない 21.9%<<鳩山邦夫法相>>
・評価する 16.7%
・評価しない 68.8%
・わからない、どちらとも言えない 14.5%<<舛添要一厚労相>>
・評価する 72.3%
・評価しない 18.4%
・わからない、どちらとも言えない 9.3%<<高村正彦外相>>
・評価する 35.0%
・評価しない 40.2%
・わからない、どちらとも言えない 24.8%<<石破茂防衛相>>
・評価する 43.1%
・評価しない 40.8%
・わからない、どちらとも言えない 16.1%<<冬柴鉄三国交相>>
・評価する 14.1%
・評価しない 67.3%
・わからない、どちらとも言えない 18.6%<<安倍晋三前首相>>
・評価する 21.5%
・評価しない 65.3%
・わからない、どちらとも言えない 13.2%<<小泉純一郎元首相>>
・評価する 57.0%
・評価しない 33.2%
・わからない、どちらとも言えない 9.8%<<麻生太郎前自民党幹事長>>
・評価する 52.9%
・評価しない 26.9%
・わからない、どちらとも言えない 20.2%<<小沢一郎民主党代表>>
・評価する 26.5%
・評価しない 58.2%
・わからない、どちらとも言えない 15.3%<<橋下徹大阪府知事>>
・評価する 42.5%
・評価しない 27.9%
・わからない、どちらとも言えない 29.6%<<東国原英夫宮崎県知事>>
・評価する 85.2%
・評価しない 7.9%
・わからない、どちらとも言えない 6.9%
なんで安倍晋三前首相を混ぜているのか、その痛ましい辞任劇と調査結果の評価しない(65.3%)を考えると、当面は調査対象から外して差し上げたくなるのですが、それはともかく、高評価順に上位ベスト5を並べてみますと、
<<東国原英夫宮崎県知事>>
・評価する 85.2%
・評価しない 7.9%<<舛添要一厚労相>>
・評価する 72.3%
・評価しない 18.4%<<小泉純一郎元首相>>
・評価する 57.0%
・評価しない 33.2%<<麻生太郎前自民党幹事長>>
・評価する 52.9%
・評価しない 26.9%<<石破茂防衛相>>
・評価する 43.1%
・評価しない 40.8%
いやいや東国原英夫宮崎県知事の85.2%は立派としかいえませんが、第2位が舛添要一厚労相(72.3%)なのはいいとして、第三位が小泉純一郎元首相(57%)って昔の人が入っているのは、福田政権の現役閣僚達は立場ないんじゃないでしょうか(苦笑
まあ当然ですがこの5人は「評価する」が「評価しない」を上回っているのでございますが、さて悲惨なのは・・・
評価ポイント低い順にワースト5を並べてみるとこれが実に興味深いのです。
<<冬柴鉄三国交相>>
・評価する 14.1%
・評価しない 67.3%<<鳩山邦夫法相>>
・評価する 16.7%
・評価しない 68.8%<<安倍晋三前首相>>
・評価する 21.5%
・評価しない 65.3%<<小沢一郎民主党代表>>
・評価する 26.5%
・評価しない 58.2%<<町村信孝官房長官>>
・評価する 29.5%
・評価しない 51.1%
まあここに福田政権の支持率28.7%を入れてしまうと見事にワースト4に入ってしまうのですが、それはさておき、注目したいのはこの政治家の評価です。
道路特定財源の問題で国会質疑で野党の追及にその無能さをさらけ出し、官僚べったり既得権益擁護の発言を愚かにも繰り返した結果がこの評価でありましょう。
上述の結果でもありましたが、国民は自公案の「暫定税率10年継続」案などまったく支持していないのであります。
・・・
まあ、不人気4位の小沢一郎民主党代表がありますので、確かに国民は福田政権を支持していませんが、それが決して野党民主党支持には積極的に動いてはいないことは明白です。
道路特定財源に関しても、官僚べったりの福田政権、なかでも担当相である冬柴鉄三氏にはこの世論調査で見る限り国民はかなり厳しい目で見ているわけですが、かといって子供だましのようなガソリン値下げ隊などという大衆迎合策を掲げ、具体的対案も出さないような野党民主党、中でも小沢一郎代表を支持しては決していないことがうかがえます。
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・・・
この産経・FNN合同世論調査ですが、当然ですがここに示された数字は一つの参考として扱うべきであり、その数字を絶対視しては危険でしょう。
しかし、おそらく冬柴氏の評価する(14.1%)評価しない(67.3%)が、他のメディアの世論調査で大きく傾向が逆転するということはありえないでしょう。
つまり、この国の「民意」は、政治家として冬柴鉄三国交相をまったく評価していないのであります。
この結果を踏まえれば、「民意」に従うならば、石破国防相より先に辞任すべきは、冬柴鉄三国交相ということになりましょう。
(木走まさみず)
<関連テキスト>
■[行政]現状はまさに「道路特定財源」ではなく「国土交通省道路局特定財源」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20080215/1203054946