木走日記

場末の時事評論

この期に及んで中国毒餃子を日本フグに喩える朝日新聞「天声人語」の無神経な中国びいき

 本日(1日)の朝日新聞コラム天声人語から。

あぶない食べ物の筆頭といえば、古来フグだろう。美味なだけにあきらめきれず、フグは食いたし命は惜しし、となった。江戸期の俳人蕪村もそのくちだったか、〈河豚(ふぐ)汁のわれ生きてゐる寝覚めかな〉と詠んでいる▼その河豚汁を、ギョーザと言い換えねばならないような事態である。正確には中国製冷凍ギョーザ。農薬の混入したのを食べた人たちが、中毒の症状を訴えた。千葉と兵庫両県で、3家族の10人がめまいや嘔吐(おうと)、全身のしびれに襲われた▼うち3人は一時重体に陥った。「スーパーに並ぶ食品で命の危険にさらされるとは思いもしない」と息子が死に瀕(ひん)した母親は憤る。ほかにも不調の訴えが相次いでいる。こんなことでは昔のフグなみに、口に入れるのが「肝試(きもだめ)し」になってしまう▼人件費の安い中国は、今や「世界の工場」と呼ばれる。だがその産品に、輸出先の国々で逆風が吹きつのっている。残留農薬や有毒物質の混入など、消費者を逆なでする問題が後を絶たないからだ▼笑えない話を、中国人ジャーナリストの莫邦富(モー・バンフ)さんが本紙に寄せていた。江蘇省の農婦が農薬を飲んで自殺を図った。病院に運ばれたが、命に別条はなかった。なんと農薬が「偽農薬」だったからだという。粗悪な品が出回る社会を象徴するような悲喜劇だろう▼おりしも中国は、日本の正月にあたる春節が近い。帰省者を迎え、家族がそろって、湯気の立つ水餃子(ギョーザ)に舌鼓を打つのが習わしだ。おいしいものを笑顔で食べたい。その思いに、国の違いなどないはずである。

http://www.asahi.com/paper/column.html

 うーん、コラムとはいえこれはないでしょう、朝日さん。

 農薬の混入した中国製冷凍ギョーザを「こんなことでは昔のフグなみに、口に入れるのが「肝試(きもだめ)し」になってしまう」とのたまっておりますが、これでは話の筋がひどすぎるというものです。

 そもそも天然の状態で毒を有する河豚(ふぐ)と、いかなる原因であれ農薬の混入したことは間違いなく人が介在している点で人災である中国製冷凍ギョーザを同列に扱うというのは、まるで地震などの不可抗力の天災に巻き込まれた被害者と列車事故などの人災に巻き込まれた被害者を同列に扱うようなものでしょう。

 だいいち今回の被害にあわれた方たちは、気の毒にも冷凍ギョーザにまさか毒が混入しているなどとは微塵も警戒してはいなかったはずです。

 ・・・

 おそらく中国で製造段階で農薬が混入されたと推測される冷凍ギョーザを、いくらなんでも古来日本人が珍重してきた「ふぐ」に喩えるとは、「美化」しすぎというレベルじゃなくて、これじゃ「ふぐ」に失礼です。

 ・・・

 ふう。

 まったく、どこまでも中国様に優しすぎる朝日新聞なのであります。

 コラムの結語。

 おりしも中国は、日本の正月にあたる春節が近い。帰省者を迎え、家族がそろって、湯気の立つ水餃子(ギョーザ)に舌鼓を打つのが習わしだ。おいしいものを笑顔で食べたい。その思いに、国の違いなどないはずである。

 「おいしいものを笑顔で食べたい」、「その思いに、国の違いなどないはずである」のはその通りですが、このコラムは何が主張したいのか。

 中国だろうとどこの国であろうと、製造した食品に毒が混入していたならば、それは国の信用をそこなう大問題なのであり、徹底的に原因究明されるべきであり、中国の対応次第では場合によっては日本政府はBSE問題のときのように全面禁輸措置だって辞さない断固たる外交措置を取るべきなのです。

おいしいものを笑顔で食べたい。その思いに、国の違いなどないはずである。

 ・・・

 なんと脳天気な・・・(タメイキ

 ・・・



●「中国の『毒』は日本から」〜昨年8月朝日新聞社週刊誌「AERA」特集記事

 そういえば一年前、朝日新聞社の週刊誌「AERA」では、「中国の『毒』は日本から」という記事を掲載し、中国の農薬問題は日本に責任があるという論説を展開していました。
 そして他ならない朝日新聞と仲良しの人民日報に記事転用され利用されていましたっけ。

中国食品の「毒」は日本から来た

朝日新聞社の週刊誌「AERA」最新号は「中国の『毒』は日本から」というタイトルの記事を掲載した。記事は、日本は中国の食品安全問題に対して、逃れようのない責任を負うと指摘。「商社マン、養鰻業者、養蜂業者は、中国の農薬も抗生物質も、みな日本から来たと証言する」「相次ぐ『中国食品の問題』の中で、問題があるのは中国だけではない」と書いている。

「クロラムフェニコールにストレプトスリシンを加えるような強い副作用を持つ抗生物質の配合を中国に教えたのは誰だ?日本だ」――。最近の中国食品騒動を前にこう話すのは、日中両国の養蜂業に精通する健康食品会社「ジャパンローヤルゼリー」の山口喜久二会長(64)。山口会長は1990年代初め、まだ汚染されていない天然の蜜源を求めて青海省の高原地帯に至り、そこから農薬や抗生物質に汚染されていない高級蜂蜜を持ち帰り、日本で大成功を収めた。

山口会長は「中国の養蜂業者が抗生物質を使用する理由を問うのなら、その原因は品質を無視して、容赦なく値切るだけの日本の商社にある」と語る。山口会長によると、日本の商社は品質よりも生産高を重視する。中国の養蜂業者は彼らの要求を満たすため、あらゆる方法を尽くしてミツバチを働かせるしかなく、ミツバチが過労で病気になる可能性が高まったのだ。日本の商社と農薬生産企業が1980年代後半に中国に持ち込んだ、さまざまな抗生物質が登場したのは、この時だ。

結核治療薬のストレプトスリシンは聴覚障害をもたらしやすく、クロラムフェニコールは血液成分を破壊するおそれがある。日本ではこうした極端な副作用を持つ薬物が広く知られ、畜産業や養蜂業での使用はすでに禁止されている。恐ろしいことに、中国では今なおこうした薬品が使用されているのだ。

山口会長は「もし日本の商社が品質に応じた値段で中国の食品を買うのなら、質朴な中国の農民は彼らの要求に沿って懸命に働くに違いない。だが日本の商社は、価格を中国国内の流通価格の7割、ひどいケースでは5割にまで抑えるので、中国の養蜂業者は積極性を失った。どんなに良い商品を生産しても、狂ったように値切られるだけなので、中国の養蜂業者の品質管理意識は希薄になってしまったのだ」と語る。

もともと中国の養蜂業は、抗生物質とはまったく無縁だったのに、日本の抗生物質が1990年代から急速に蔓延し始めた。こうした食品が、現在はね返って、日本人の食卓の安全を脅かしていることは、この上ない風刺だ。

山口会長は、すべての過程を振り返り「これは現地の養蜂業者が異口同音に言うこと。抗生物質が日本で使用を禁止された時、なお大量の在庫を抱えていた日本の企業と商社は、非常に安い価格で抗生物質を中国に持ち込んだ。中国にしてみれば、抗生物質の使用方法も、抗生物質自体も、みな日本から来たのだ。それなのになぜ日本は、今なおあれこれ騒いでいるのだ?」と語る。(編集NA)

「人民網」2007年8月28日

http://j.people.com.cn/2007/08/28/jp20070828_75927.html

 ・・・

 昨年8月の時点で人民日報に掲載された記事ですが、あまりにも特定の養蜂業者の個人的意見に依拠しすぎていて、当時読んだときも不快な気分になりましたが、参考までにご紹介したまでであります。

 ・・・

 私は別に嫌中派でも媚中派でもないと自負しておりますが この期に及んで、中国毒餃子を日本フグに喩える今日の朝日新聞天声人語」のこの無神経な中国びいきには、ほとほと呆れてしまうのであります。

 ふう。

 ・・・



(木走まさみず)