自ら掲げた政策マグナカルタの地球温暖化対策に完全に逆行している「火の玉」民主党の「ガソリン値下げ隊」
●火の玉となって、政治決戦で勝利する〜「政治生命かけ政権交代」小沢代表が党大会で決意表明
読売新聞記事から。
「政治生命かけ政権交代」小沢代表が党大会で決意表明
民主党の小沢代表は16日、横浜市のパシフィコ横浜で開いた定期党大会で、政治生命をかけて次期衆院選で政権交代を実現する決意を表明した。
しかし、新テロ対策特別措置法が再可決された衆院本会議の採決を棄権した問題では批判を浴びており、今後頼みとする世論の支持をどう拡大するのか、戦略は不透明だ。
小沢氏はあいさつで、18日召集の通常国会について、「『ガソリン値下げ国会』と位置づけ、地方の道路整備の財源を確保しながら、揮発油税の暫定税率を廃止する活動を国会で行い、国民に示す。火の玉となって、政治決戦で勝利することを約束する」と宣言した。
そのうえで、「今年の総選挙決戦で政権を代え、『国民の生活が第一』の政策と、日本に(政権交代できる)本当の議会制民主主義を定着させる、という二つの政治課題実現のため、政治生命をかけることを誓う。政治家として最後の戦いだ」と表明。大会後の記者会見では、勝敗ラインについて「野党で過半数を取ることができなければ負けたことになる」と述べた。
しかし、小沢氏が掲げた「野党で過半数」へのハードルは低くない。
民主党の公認内定者はまだ231人にとどまり、野党の選挙協力が正式に決まったのも4選挙区に過ぎない。党財政も「選挙があったら、借金するしかない」(佐藤泰介財務委員長)という厳しい状況だ。
国会での野党共闘も、新テロ特措法をめぐってぎくしゃくした後遺症があり、楽観視できない。
民主党が政府・与党を追い込む最大のテーマと位置づけている揮発油税の暫定税率については、参院で統一会派を組む国民新党が、民主党と正反対の「税率維持」を主張し、平行線のままだ。国民新党の綿貫民輔代表は大会の来賓あいさつで「民主党は大人になった、大丈夫だという実績を示してほしい」とクギを刺した。
(2008年1月16日21時1分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080116i215.htm?from=main2
そうですか、民主党の小沢代表は「『ガソリン値下げ国会』と位置づけ、地方の道路整備の財源を確保しながら、揮発油税の暫定税率を廃止する活動を国会で行い、国民に示す。火の玉となって、政治決戦で勝利することを約束する」と宣言したそうであります。
「火の玉」ですか、うむ豪気でけっこうなことであります。
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●民主・ガソリン値下げ隊「次の国会はガソリン国会であり、ガソリン解散にする」
15日付け朝日新聞記事から。
民主・ガソリン値下げ隊、若手60人で発足
2008年01月15日19時40分民主党は15日、予算関連法案に盛り込まれるガソリン税の暫定税率延長を阻止するため、中堅・若手衆院議員約60人による「ガソリン値下げ隊」(責任者・川内博史衆院議員)をつくった。同党は暫定税率を撤廃し「ガソリン値下げ」の実現を訴えるのぼりをすでに作製。17日には、大阪府知事選さなかの大阪市内の繁華街を練り歩き、世論に直接訴える。
15日に開かれた結成式では、菅直人代表代行が「衆院における与党の圧倒的多数の横暴を許さない」と再議決を牽制(けんせい)。山岡賢次国会対策委員長が「次の国会はガソリン国会であり、ガソリン解散にする」と訴え、気勢を上げた。
http://blog.goo.ne.jp/cobatch/e/fe157a624617907e8d9520228ef2e2c4
中堅・若手衆院議員約60人による「ガソリン値下げ隊」ですか、「次の国会はガソリン国会であり、ガソリン解散にする」ですか、豪気なことです。
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過去最高に高騰するガソリン・灯油価格に対し、暫定税率を撤廃し「ガソリン値下げ」の実現を訴える民主党なのであります。
スバラシイです。
来るべき衆院選挙に備え都市部有権者受けを狙っての大衆迎合施策であることはミエミエですが、確か民主党は「道路特定財源」である暫定税率の「一般財源」化を主張していたと記憶しておりましたが、いつのまにか「暫定税率を撤廃」方針に変わってしまったようでありますネ(苦笑
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しかしなあ、「ガソリン値下げ隊」をひっさげて「ガソリン国会」を「ガソリン解散」するために「火の玉」となって闘う民主党なのであります。
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引火しないでね(爆
●30年以上も、「緊急措置」として、本則より2倍も高い税率を暫定的に自動車ユーザーに課してきた事実
実は不肖・木走も暫定税率廃止論者でありますが、頭の悪そう(失礼)な民主党の「ガソリン値下げ隊」とは距離を置かせていただきたいです(苦笑。
私は全国7800万人の自動車ドライバー(納税者)の立場から、「道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率を廃止すべき」であると主張してきました。
一昨年の当ブログエントリーから抜粋。
(前略)
●道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率を廃止すべき
私は赤字垂れ流しの地方自治体や既得権益擁護を露骨に主張する政治家達の意見に与するものでは断じてありませんが、今回の道路特定財源の一般財源化問題においては、全国7800万人の自動車ドライバー(納税者)を軽視しているという点では、自動車業界の主張には強く賛同するモノであります。
そもそも自動車ユーザーが負担している自動車重量税やガソリン税などの道路特定財源は、国が法律と国会において「使い道を道路整備に特定する」と約束し、課税しているものであります。
しかも1954年以来現在に至るまで、戦後の荒廃から資源なき日本を技術立国として立て直すために日本列島の道路を欧米並に充実させ物流インフラを整備するためにと、本来の税率の2倍以上に引き上げられた暫定税率をも容認し続けてきたわけです。
自動車ユーザーは道路整備のために、30年以上も本来の税率を大幅に上回る税金を負担してきたのであります。
税制 元々の税率(本則) 現在の税率(暫定が30年以上継続) 倍率 自動車取得税※ 3% 5% 1.7倍 自動車重量税※ 2,500円/0.5トン 6,300円/0.5トン 2.5倍 揮発油税 24.3円/リットル 48.6円/リットル 2.0倍 地方道路税 4.4円/リットル 5.2円/リットル 1.2倍 軽油引取税 15.0円/リットル 32.1円/リットル 2.1倍 石油ガス税 17.5円/kg 17.5円/kg − ※自家用乗用車の場合。自動車重量税の0.5トン未満端数は切上げ。
(例)自動車重量税は、1台当り本来22,500円で済むところ、現在はなんと56,700円も負担しているのです。(1,800ccの標準的な車両重量1,100kgの場合、3年間)
https://www.jaf.or.jp/enquete/signature/200601sig_index.htm(中略)
●この問題はインプットとアウトプットを分けて議論するべきだ
この問題は朝日社説のように「安倍首相が、大盤振る舞いを求める自民、公明両党の要求に屈した」などと単純化すべきではありません。
また財政逼迫の折り時代遅れで税金無駄使いの象徴となっている特定財源を一般財源化すべしという大儀だけで議論するのは反対です。税を誰が負担してきたのかというインプットの問題とどのように使われてきたのかというアウトプットの問題を冷静に分けて議論するべきだと思います。
需要を無視した愚かな本州四国連絡橋や誰も利用しない高速道路の乱立などアウトプットの問題は大いに議論し徹底的に無駄を省くことは大賛成です。
道路を増やしても経済効果のない地域にはこれ以上無意味な地域業者を潤すだけのばらまき行政はこれを契機に遮断すべきであると考えます。
しかしその議論と税を誰が負担してきたのかというインプットの問題を混在させるべきではありません。
道路特定財源制度は、日本の高度経済成長期の「道路需要」に応えるため、緊急措置として、本則より2倍も高い税率を暫定的に自動車ユーザーに課してきた事実を忘れてはいけません。
その経緯を無視して道路の為に集めた税金を、別なものに使うのであれば、まず暫定税率は廃止すべきなのです。
(後略)
■[メディア]道路特定財源問題:日本のメディアスクラムにあえて反論してみる〜一般財源化するならばまず暫定税率を廃止するのが筋だ より抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20061208
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●ガソリン税値下げで「エネルギーの需要」を「喚起」してどうする〜自ら掲げた政策マグナカルタの地球温暖化対策に完全に逆行している民主党「ガソリン値下げ隊」
さて、有権者に聞こえの良い暫定税率撤廃を主張、「ガソリン値下げ隊」をひっさげて「ガソリン国会」を「ガソリン解散」するために「火の玉」となって闘う民主党なのでありますが、本当にこんな理論武装も何もしないで財政措置の裏付けもない場当たり的非論理的政策を主張しているといつか国民にそっぽを向かれちゃうと心配になります。
今回の民主党の主張がいかに自己矛盾を抱えているのか一点だけ指摘しておきましょう。
民主党の政権公約を見てみると「V . 世界に誇れる環境国家をめざす」でこんな方針を示されています。
V . 世界に誇れる環境国家をめざす
= 環 境 =(前略)
3.地球温暖化対策を強力に推進
国内における温室効果ガス削減の長期目標を設定した上で、エネルギーの需要抑制、省エネ対策の一層の推進、再生可能エネルギーの普及促進、排出権取引の法的枠組整備などの対策を強力に推進する。自ら京都議定書の目標達成を図ると共に、諸外国との環境対話を積極的に進め、ポスト京都議定書に向けた新たな国際的枠組みに対する主導的な役割を果し、地球温暖化対策で世界をリードする。
(後略)
政権政策の基本方針(政策マグナカルタ)2006年12月 より抜粋
http://www.dpj.or.jp/governance/taikai/magunacarta2006.html#05
「国内における温室効果ガス削減の長期目標を設定した上で、エネルギーの需要抑制、省エネ対策の一層の推進」するとしていますが、ガソリン税値下げで「エネルギーの需要」を「喚起」してどうするのでしょう。
せめて暫定税率を撤廃し「環境負荷税」として新税を設定するというのならば、まだ理解できます。
低炭素社会を実現するために「エネルギーの需要抑制」を政策公約しておきながら、地球温暖化対策が重要な政治課題となりつつある今日の諸外国でも例を見ない「ガソリン税値下げ」を主張するとは、どう理屈付けるのでしょう。
それとも地球温暖化対策が重要なテーマとなる七月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で、ホスト役の福田さんに恥をかかせようとでも考えているのでしょうか。
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「ガソリン値下げ隊」をひっさげて「ガソリン国会」を「ガソリン解散」するために「火の玉」となって闘う民主党なのでありますが、こんな場当たり的主張を繰り返しているとそのうち有権者からそっぽを向かれちゃうことにはならないでしょうか。
自ら掲げた政策マグナカルタの地球温暖化対策に完全に逆行している「火の玉」民主党の「ガソリン値下げ隊」なのであります。
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(木走まさみず)
<関連テキスト>
■[メディア]道路特定財源問題:日本のメディアスクラムにあえて反論してみる〜一般財源化するならばまず暫定税率を廃止するのが筋だ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20061208