木走日記

場末の時事評論

亀田父子処分問題で系列TBSを擁護する実に珍妙な【毎日社説】

●亀田父子処分問題で一斉にTBS批判する各紙社説

 ここ一両日で主要紙4紙社説が一斉に亀田親子問題を取り上げています。

朝日新聞17日付社説】亀田父子処分―あおった者の責任も重い
http://www.asahi.com/paper/editorial20071017.html
【読売新聞18日付社説】亀田父子処分 ボクシング界はダウン寸前だ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071017ig91.htm
毎日新聞17日付社説】視点 亀田選手処分 視聴率に踊らされた厚化粧ボクサー
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20071017ddm005070156000c.html
産経新聞17日付社説】亀田父子処分 持ち上げた周囲にも責任
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071017/crm0710170319003-n1.htm

 大衆スポーツのボクシングなどには興味がまったくないらしい日経(苦笑)は置いておきまして、各紙社説ですが、揃って、本人達を批判するだけでなく、協会、メディア、中でもTBSへの批判が目立つのが興味深いです。

 各紙社説よりTBS批判部分を抜粋。

朝日新聞17日付社説】亀田父子処分―あおった者の責任も重い

 メディアが果たした役割も見過ごせない。なかでもTBSだ。世界戦を中継するにあたって特別番組や情報番組で繰り返しとりあげるなかで、過剰な演出や配慮を感じさせられた。視聴率優先の無批判な番組作りが、父子の気分をいたずらに高揚させたのではなかったか。

【読売新聞18日付社説】亀田父子処分 ボクシング界はダウン寸前だ

 テレビ局にとっても、亀田父子は、視聴率の取れる存在だった。TBS系で放映された今回の試合の瞬間最高視聴率は関西地区で40・9%、関東地区で37・5%を記録した。

 TBSは、ワイドショーなどで父子を積極的に取り上げ、「父子鷹(おやこだか)」といったイメージを作り上げて、人気をあおってきた。TBSには試合後、「実況が亀田寄りだ」との苦情が殺到したという。

 TBSは、初防衛した内藤選手を番組に登場させ、これまでの苦労を語らせていた。手のひらを返したような番組作りに違和感を覚える人も多いだろう。

毎日新聞17日付社説】視点 亀田選手処分 視聴率に踊らされた厚化粧ボクサー

 ボクシング関係者は、亀田選手のようなスポーツマンとしても未熟な選手を、最高の舞台である世界タイトルマッチのリングに上げたことを深く反省しなければなるまい。人気をあおったマスコミの責任も免れないが、とりわけ今回の対戦を過剰に盛り上げ、試合を放映したTBSの責任は重い。

 TBSだけを批判するつもりはない。かつてボクシングの世界戦は確実に視聴率を稼げるテレビ局のドル箱番組だった。4月、10月の番組改編期には、ライバル局の新番組のスタートに世界タイトルマッチをぶつけるのがテレビ局の常とう手段だった。

産経新聞17日付社説】亀田父子処分 持ち上げた周囲にも責任

 視聴率至上主義のテレビ局にも問題がある。試合を中継したTBSは「親子の絆(きずな)」というストーリーを作り、亀田一家を持ち上げ続けた。昨年8月の興毅選手の世界戦の平均視聴率は42・4%(ビデオリサーチ関東地区調べ)に達し、11日の大毅選手の試合も、アンチ亀田ファンも加わって、平均28%(同)を記録した。

 スポーツ中継の人気番組だったプロ野球・巨人戦の平均視聴率は今季、10%を割り、かつての勢いはない。それに代わる番組を探しているテレビ局にとって、容易に高視聴率をマークしてくれる「亀田一家」は魅力的な商品といえるのだろう。

 だからといって、メディアが意図的にスター選手を作っていいわけではない。スポーツではその力と技に感動したファンが応援してはじめて、真のスター選手が生まれるのである。

 確かにTBSの「視聴率優先の無批判な番組作りが、父子の気分をいたずらに高揚させた」(【朝日社説】)面はあるでしょう、親子で有頂天で舞い上がったおやまの大将になった責任の一端はTBS側にあるといえます。

 そして「TBSは、初防衛した内藤選手を番組に登場させ、これまでの苦労を語らせていた。手のひらを返したような番組作りに違和感を覚える人も多い」(【読売社説】)のも指摘どおりであります。

 プロスポーツは金儲け・興行と言う側面があることを無視するつもりはありません、プロボクシングにおいても、ときに過激な発言も集客力アップのためにある程度認められてきたことは事実です。

 しかし、今回のTBSのショーアップされた一連のボクシング中継は「やりすぎ」のそしりをまぬがれないでしょう、試合後にリングで歌を歌わせるなど一部真摯なボクシングフアンの顰蹙を買っていたわけです。

 実力も伴わない選手をスターへと祭り上げていったTBS。

 【産経社説】の結語にあるとおり、「メディアが意図的にスター選手を作っていいわけではない」のは当然であり、「スポーツではその力と技に感動したファンが応援してはじめて、真のスター選手が生まれるのである」という当たり前の結論が今回の騒動で再認識されたということなのでしょう。

 ・・・



●「TBSだけを批判するつもりはない」〜この期に及んでTBSを擁護する実に珍妙な【毎日社説】

 さて実に珍妙なのが【毎日社説】の以下の部分。

 TBSだけを批判するつもりはない。かつてボクシングの世界戦は確実に視聴率を稼げるテレビ局のドル箱番組だった。4月、10月の番組改編期には、ライバル局の新番組のスタートに世界タイトルマッチをぶつけるのがテレビ局の常とう手段だった。

 おやおや【毎日社説】子さんは、今回の亀田騒動では、独占放送してきた「TBSだけを批判するつもりはない」のだそうです。

 「ライバル局の新番組のスタートに世界タイトルマッチをぶつけるのがテレビ局の常とう手段だった」と他のTV局も50歩100歩じゃないかと言いたいようです。

 さらに【毎日社説】はこう続きます。

 これまで多くの世界チャンピオンを取材してきたが、共通していたのはハングリーな精神と、ストイックな生き方だった。そうしたボクサーのイメージを亀田父子は一変させた。試合前からやくざまがいの言動で対戦相手を挑発し、自分の大物ぶりを誇示しようとしているように見えた。

 興行である以上、話題を提供する意図は分かるが、彼らの振る舞いはボクシングの品位を汚しているようにしか思えなかった。また、そうした行動が若者に支持されているとしたら、その風潮を嘆くべきなのかもしれない。

 「試合前からやくざまがいの言動で対戦相手を挑発し、自分の大物ぶりを誇示」していた本人達を「彼らの振る舞いはボクシングの品位を汚しているようにしか思えなかった」と批判します。

 そのような彼らの行動を煽動するようなTBSの放送姿勢を棚に上げて、「そうした行動が若者に支持されているとしたら、その風潮を嘆くべきなのかもしれない」などと、まるでそんな亀田親子を応援してきた人達が悪いような表現であります。

 よくこういう自グループを擁護する表現ができるものです。

 いくら毎日系列のTV局だとはいえ、TBSだけが悪いんじゃない、TV局全体の問題だ、そして浮かれて応援してた人達も悪い、というこの論調は、これはまったく格好悪い、大新聞の社説としては恥ずかしい主張なのであります。

 この期に及んで系列TBSを擁護する実に珍妙な【毎日社説】なのであります。

 ・・・



(木走まさみず)



<関連テキスト>
2006-08-04 テレビのピエロ・亀田興毅
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060804
■2007-10-13 カメ語(KAME Language)
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20071013