木走日記

場末の時事評論

地域格差拡大否定論を統計的に批判検証してみる

東京都区部で新築マンション暴騰前年同月比14.0%上昇〜日本経済新聞記事より

 13日日経電子速報記事から。

7月の首都圏マンション、15年ぶり高値・都区部で3億ション

 不動産経済研究所が13日発表した7月のマンション市場動向調査によると、首都圏の新築マンションの平均分譲価格が前年同月比12.6%上昇の5305万円、東京都区部では同14.0%上昇の7109万円だった。それぞれ5000万円、7000万円を上回るのは、バブル経済の余韻が残る1992年11月以来、約15年ぶりという。東京都区部で3億円を上回る「3億ション」が出るなど高額物件の供給が増え、平均価格を押し上げた。

 7月の新築マンション発売戸数は前年同月比10.0%減の6409戸と、7カ月連続で前年実績を下回った。地価上昇が見込まれる中で都心部の物件供給を後にずらす動きがあるほか、郊外では在庫を減らすために新規物件の発売を絞る傾向が続いている。〔NQN〕(17:31)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070813AT3L1303S13082007.html

 7月のマンション市場動向調査によると、東京都区部で新築マンション価格が暴騰、前年同月比14.0%の上昇、3億円を上回る「3億ション」が出るなど高額物件の供給が増えているそうであります。

 首都東京で最近過熱気味のマンション販売でありますが、まさかバブルの再燃を狙っているわけでもないでしょうが「地価上昇が見込まれる中で都心部の物件供給を後にずらす動きがある」などバブル期を彷彿とさせるような一部業者の値上がり期待の売り惜しみの動きすらあるそうです。

 ・・・

 この全国平均を突出した、東京都区部での新築マンション価格の暴騰ぶりなのでありますが、「いざなぎ越え」と戦後最長の好景気だと報道では伝えられているわけですが、日本経済の好調さの一端を示す事象なのではありましょう。

 しかし、東京で「3億ション」が売りに出されるなど、全国の多くの国民にとり他人事であり、その「好景気」の実感が伴っていないのは、正社員と非正社員における所得格差、東京一極集中の中で広がる都市部と地方の所得格差、富の分配がかつて無いほど偏在し始めているという、いわゆる日本において深刻な「格差拡大」、中でも特に地域格差が拡大している証(あかし)なのかも知れません。

 ・・・

 今回の参議院選における民主党圧勝・自民党惨敗においても、年金問題・政治とカネの問題とともに、地域格差に対する「一人区の反乱」「地方の反発」が評論されているところであります。

 今回はこの『日本の「地域(所得)格差」は拡大している』という多くの国民の格差意識は正しいのか、統計的実態を徹底的に検証してみましょう。



●「地域格差」は拡大しているか 統計的実態と格差意識の乖離が示唆するもの〜内閣府記者クラブにて昨年配布された民間シンクタンクの小レポート

 まずは「地域格差」拡大はいまだ顕在化してはいないという、代表的な意見を検証しておきましょう。

 ここに昨年9月ある民間シンクタンク(株式会社日本総合研究所)による日本の地域格差に関する全8ページよりなる小レポートがあります。

 このレポートは実は資料として内閣府記者クラブにて配布されたものであり、私はあるメディア関係者から昨年末頃コピーを入手いたしました。

 ネット上では以下に公開されています。

地域格差」は拡大しているか
統計的実態と格差意識の乖離が示唆するもの〜

2006年9月27日

株式会社日本総合研究所
調査部 マクロ経済研究センター
http://www.jri.co.jp/press/2006/jri_060927.pdf

 大変興味深いこの小レポートですが、副題『統計的実態と格差意識の乖離が示唆するもの』が示すとおり、レポート自体はその要旨として国民の格差意識と統計的実態には乖離があり、国民が思っている程度には「地域格差拡大」は生じていない、という結論なのであります。

 全文は是非あちらにて確認いただくとして、その要旨をレポート2ページ目より抜粋引用いたします。

 【レポートの要旨】
1. いわゆる格差問題についての議論が盛り上がるなか、とりわけ「地域格差」が焦点の一つとして浮上している。日本経済全体は息の長い景気拡大を続けているものの、「大都市圏好調・地方圏不振」の声は根強く、地域格差が「悪い方向に向かっている」という意識を持つ人が急増している。

2. 雇用・所得面での「地域間格差」について検討すると、有効求人倍率の動きでみれば、ここ数年格差が広がる傾向が窺われる。しかしながら、長期的にみれば、直近のバラツキは歴史的にはなお小さく、むしろ求人倍率の底上げ傾向がみられる。失業率の地域区分別の格差をみても、一方的な拡大傾向は認められない。
 所得面について、名目賃金の過去10年の動きを都道府県別にみる限り、格差が拡大する傾向ははっきりとは確認できない。また、近年、生活保護世帯をはじめとする貧困世帯が増加しているが、この面でも地域間格差の拡大は歴史的にはなお限定的にとどまっている。つまり、所得・雇用面での統計から見る限り、地域間格差はここ数年拡大の兆しがみえるものの、やや長い目で見れば格差拡大を必ずしも断定できない。

3. このように、人々が感じているほど、統計的には地域間格差の拡大傾向を明確には認められない理由としては、所得水準の格差自体は拡大していなくとも、「所得が増えている地域」と「所得が減っている地域」へと二極化することで、格差拡大が強く意識されているという事情が指摘できる。
 もう一点、格差拡大が強く感じられる背景として、「地域内格差」の問題が指摘できる。すなわち、同じ都道府県内でも、中核都市部と周辺都市・町村との格差が拡大している可能性であり、「地域内格差」が「地域間格差」としてすりかえられて論じられているとの構図が想定される。

4. 雇用・所得面に比べ、2000年代に入ってから生産面(企業活動面)での地域間格差は拡大の方性がより明確に認められる。こうした所得面・生産面での違いの背景には、労働分配率の引き下げに向けて人件費抑制スタンスが維持されてきたことの影響を指摘できる。今後、生産面での地域格差拡大が続けば、徐々に生産好調地域での賃金の上昇傾向が強まり、所得面でも地域間格差の拡大が明確化していく可能性がある。
 加えて、既に顕在化し始めている「地域内格差」は、人口増減率の違いにより発生している面が大きいと考えられるだけに、今後、人口減少の本格化に伴って一段と大きな問題になっていく可能性が指摘される。また、貧困世帯が雇用悪化の見込まれる地方で顕著に増加していくリスクもある。
 
5.以上みてきたように、雇用・所得面での中央と地方の格差拡大は、これまでところなお限定的といえ、この面からみる限りは、小泉政権下で推進された「公共事業削減」や「三位一体改革」を“地方を切捨て”と断定し、「構造改革路線」を否定する論拠にすることには慎重であるべきであろう。
 その一方で、人口減少の進展やグローバルな産業再編の影響から、先行き、様々なレベルで地域格差の問題が明確化していく可能性があり、この問題が本格化するのはむしろ今後であるといえる。
 中央と地方の役割分担の議論はこれからが本番であるが、議論の前提として、これまでの構造改革路線に対する冷静な評価がまずは欠かせない。加えて、将来的な地域格差拡大の可能性を踏まえつつ、印象論を退け、地方主権ナショナルミニマムの関係等、基本的な考え方についての議論を深めたうえで、適切な対応策を講じるというスタンスが求められている。

 このレポートは小論ながら丁寧に根拠となる統計指標(数値)を示している点で、またそれをわかりやすくグラフで明示しているのも親切で、たいへんわかりやすいレポートであると評価できます。

 さてここで【レポートの要旨】の中で統計実態を述べている第二項目に注目してみましょう。

2. 雇用・所得面での「地域間格差」について検討すると、有効求人倍率の動きでみれば、ここ数年格差が広がる傾向が窺われる。しかしながら、長期的にみれば、直近のバラツキは歴史的にはなお小さく、むしろ求人倍率の底上げ傾向がみられる。失業率の地域区分別の格差をみても、一方的な拡大傾向は認められない。

 所得面について、名目賃金の過去10年の動きを都道府県別にみる限り、格差が拡大する傾向ははっきりとは確認できない。

 また、近年、生活保護世帯をはじめとする貧困世帯が増加しているが、この面でも地域間格差の拡大は歴史的にはなお限定的にとどまっている。

 つまり、所得・雇用面での統計から見る限り、地域間格差はここ数年拡大の兆しがみえるものの、やや長い目で見れば格差拡大を必ずしも断定できない。

 有効求人倍率、失業率、名目賃金生活保護世帯の各指標に基づき「地域間格差はここ数年拡大の兆しがみえるものの、やや長い目で見れば格差拡大を必ずしも断定できない」と結論付けているわけであります。

 ・・・

 このレポートは正しいのでしょうか?

 私は統計の専門家ではありませんが工学系技術者として統計理論はよく利用しています。

 特に個人的に違和感を覚えたのは、ズバリ核心的指標である名目賃金つまり所得に関してであります。

 名目賃金(現金給与総額)に関してはレポートの4ページ目に以下のように説明されています。 

雇用・所得面での「地域間格差」拡大は断定できず

ロ)次に、所得面について、名目賃金(現金給与総額)の最高値(2005年時点)である東京都と最小値(同)である沖縄県の格差の過去10年の動きをみても、年々の変動は大きいものの、格差が拡大する傾向は明確には確認できない。東京都と賃金水準下位5県(2005年時点)の平均との格差をみても、近年拡大の兆しはみられるものの、10年単位でみれば必ずしも拡大傾向は明確ではない。

 そして『(図表4)現金給与総額の県別格差の推移』で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」にもとづき、たとえば東京/沖縄の賃金格差が1995年の1.61倍ほどから2005年の1.70倍ほどまでジグザグはありながら10年スパンで考えればあまり変化がみてとれないことが折れ線グラフで示されています。

 これによれば確かにこの10年、東京の現金給与総額と沖縄の現金給与総額の比率は1.6〜1.7倍と格差は確認できますがそれが「拡大」しているとは読み取れません。

 しかし、私が調べた限り、この結論は間違いとは言いませんが、かなり恣意的な統計数値の用い方をしている点で賛同はできかねるのであります。

 

●統計で「地域格差」を「もみ消す」のは簡単である〜現金給与総額「1人当たり雇用者報酬」は「地域間格差」をただしく示す指標ではない

 内閣府により政府公式統計資料『平成16年度県民経済計算について』がネット上で公開されています。

1.統計資料
平成16年度県民経済計算について

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/main.html

 いくつかの統計資料がありますが、上記レポートの現金給与総額ですが、該当する資料としては下記の都道府県別1人当たり雇用者報酬が相当いたします。

8.1人当たり雇用者報酬(42KB)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/8_skenmin.xls

 原表には平成8年から16年まで9年分の推移が示されていますが、ここでは、平成8年と平成16年の値、およびその間の数値の伸び率を併記してみました。

【表1:1人当たり雇用者報酬】(単位:千円)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 4,610 4,533 -1.67%
02 青森県 4,047 3,934 -2.79%
03 岩手県 4,089 3,995 -2.30%
04 宮城県 4,767 4,456 -6.52%
05 秋田県 4,036 3,753 -7.01%
06 山形県 4,247 3,952 -6.95%
07 福島県 4,378 4,213 -3.77%
08 茨城県 4,777 4,552 -4.71%
09 栃木県 4,924 5,019 +1.93%
10 群馬県 5,000 4,746 -5.08%
11 埼玉県 5,676 5,150 -9.27%
12 千葉県 5,183 5,059 -2.39%
13 東京都 6,646 6,581 -0.98%
14 神奈川 5,561 5,387 -3.13%
15 新潟県 4,313 4,226 -2.02%
16 富山県 5,137 4,932 -3.99%
17 石川県 4,275 4,111 -3.84%
18 福井県 4,254 4,162 -2.16%
19 山梨県 4,898 4,825 -1.49%
20 長野県 4,861 4,435 -8.76%
21 岐阜県 4,649 4,245 -8.69%
22 静岡県 4,907 4,546 -7.36%
23 愛知県 5,124 4,987 -2.67%
24 三重県 4,724 4,701 -0.49%
25 滋賀県 4,692 4,443 -5.31%
26 京都府 5,188 4,757 -8.31%
27 大阪府 5,885 5,804 -1.38%
28 兵庫県 5,232 4,895 -6.44%
29 奈良県 5,265 5,432 +3.17%
30 和歌山 5,028 4,551 -9.49%
31 鳥取県 4,312 4,118 -4.50%
32 島根県 4,368 4,249 -2.72%
33 岡山県 4,855 4,540 -6.49%
34 広島県 5,040 4,871 -3.35%
35 山口県 4,619 4,415 -4.42%
36 徳島県 4,772 4,487 -5.97%
37 香川県 5,314 5,310 -0.08%
38 愛媛県 4,274 4,162 -2.62%
39 高知県 5,047 4,572 -9.41%
40 福岡県 4,747 4,600 -3.10%
41 佐賀県 4,522 4,332 -4.20%
42 長崎県 4,175 3,920 -6.11%
43 熊本県 4,455 4,233 -4.98%
44 大分県 4,445 4,147 -6.70%
45 宮崎県 4,660 4,357 -6.50%
46 鹿児島 4,459 4,092 -8.23%
47 沖縄県 4,084 3,732 -8.62%
* 全県計 5,147 4,941 -4.00%
* ブロック別
01 北海道・東北 4,417 4,262 -3.51%
02 関東 5,689 5,476 -3.74%
03 中部 4,896 4,685 -4.31%
04 近畿 5,469 5,229 -4.39%
05 中国 4,788 4,582 -4.30%
06 四国 4,763 4,587 -3.70%
07 九州 4,522 4,278 -5.40%
* 政令指定都市
01 札幌市 5,018 4,391 -12.50%
02 仙台市 5,088 4,887 -3.95%
03 千葉市 5,576 5,533 -0.77%
04 横浜市 5,601 5,388 -3.80%
05 川崎市 5,857 5,547 -5.29%
06 名古屋 5,452 5,042 -7.52%
07 京都市 4,996 5,273 +5.54%
08 大阪市 6,526 6,414 -1.72%
09 神戸市 5,555 5,096 -8.26%
10 北九州 5,352 4,783 -10.63%
11 福岡市 5,089 4,502 -11.53%
* 都市計 5,539 5,236 -5.47%

 この表に基づけば、平成8年時では東京都6,646千円に対し沖縄県4,084千円で1.63倍、平成16年においては東京6,581千円に対し3,732で沖縄県1.76倍であります。

 13ポイント増と微増傾向にはあるかもしれませんが、その比率が「拡大」しているとは、確かに読み取ることはできません。

 しかし、実はこの指標『1人当たり雇用者報酬:現金給与総額』でもって地域比較する限界を私達は気付くべきであります。

 いうまでもなくこの指標は分母は「現在雇用されている人」総数による平均給与であるということです。

 失業中の人や所得のない人は分母に入っていません。

 これでは地域経済そのものを比較する指標としては十分とは言えません。

 たとえば、極端な例で考えて見ましょう。

 A県では失業率が極めて高く100人の就労可能者のうち99%が失業中で残るたった一人の雇用者報酬が「500万円」であったとして、一方B県の地域が失業率が1%で99人の雇用者報酬が「750万円」だったとした場合、それぞれの平均1人当たり雇用者報酬でもってその差は750万/500万=1.5倍に過ぎないとしているようなものです。

 失業者も加味して、就労可能者一人当たり報酬というより公正な物差しで考えれば、

     500万 / 100人 : 750万 * 99人分 / 100人
     = 1 : 148.5

 実際上記A県では就業可能者平均年収はわずが5万円、B県では同742.5万円、つまり地域総所得という概念で考えれば、148.5倍もの格差になるわけです。

 これを単純に1.5倍と表現できてしまう『1人当たり雇用者報酬:現金給与総額』がいかに地域経済を比較する指標としては限界があるかご理解できますでしょうか。

 このような不適当な指標で比較すれば、統計で「地域格差」を「もみ消す」(目立たなくする)のは簡単なのであります。

 ・・・



●同じ時期の統計で地域格差を正しく「目立たせて」みる

 ここで言葉の定義をきちんとしておきます。

 そもそも地域の経済の比較を『1人当たり雇用者報酬』という、地域経済を比較するには分母に問題のある指標を使用したから上記のような歪んだ問題が発生してしまうのです。

 そもそもある県の総所得は次の単純な式で示せます。

 県民総所得(A) = 一人当たり県民所得(B) * 県の人口総数(C)

 式の意味は単純です、ある県の総所得(A)を増やすためには、一人当たりの所得(B)を増やすかその県の人口(C)を増加させればよいわけです。

7.1人当たり県民所得(42KB)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/7_skenmin.xls

 もちろん1人当たり県民所得では、失業者どころかそれこそ乳幼児から介護老人までが分母に加わりますから、少なくとも『1人当たり雇用者報酬』よりも地域比較には適している指標といえましょう。(県民総体としての所得が読み取れるという意味でです)

【表2:1人当たり県民所得】(単位:千円)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 2,794 2,535 -9.27%
02 青森県 2,476 2,152 -13.09%
03 岩手県 2,572 2,363 -8.13%
04 宮城県 2,812 2,530 -10.03%
05 秋田県 2,491 2,297 -7.79%
06 山形県 2,604 2,411 -7.41%
07 福島県 2,897 2,712 -6.39%
08 茨城県 3,148 2,929 -6.96%
09 栃木県 3,314 3,062 -7.60%
10 群馬県 3,034 2,828 -6.79%
11 埼玉県 3,324 2,956 -11.07%
12 千葉県 3,116 2,976 -4.49%
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%
14 神奈川 3,576 3,174 -11.24%
15 新潟県 2,898 2,688 -7.25%
16 富山県 3,316 3,027 -8.72%
17 石川県 2,979 2,790 -6.34%
18 福井県 2,930 2,832 -3.34%
19 山梨県 2,896 2,548 -12.01%
20 長野県 2,980 2,733 -8.29%
21 岐阜県 2,999 2,701 -9.94%
22 静岡県 3,357 3,247 -3.28%
23 愛知県 3,723 3,440 -7.60%
24 三重県 3,015 2,988 -0.90%
25 滋賀県 3,529 3,235 -8.33%
26 京都府 3,034 2,849 -6.10%
27 大阪府 3,534 3,039 -14.01%
28 兵庫県 3,301 2,651 -19.69%
29 奈良県 2,968 2,599 -12.43%
30 和歌山 2,601 2,525 -2.92%
31 鳥取県 2,621 2,371 -9.54%
32 島根県 2,549 2,425 -4.86%
33 岡山県 2,844 2,578 -9.35%
34 広島県 3,184 2,943 -7.57%
35 山口県 2,899 2,817 -2.83%
36 徳島県 2,784 2,808 +0.86%
37 香川県 2,844 2,630 -7.52%
38 愛媛県 2,637 2,309 -12.44%
39 高知県 2,437 2,171 -10,92%
40 福岡県 2,792 2,570 -7.95%
41 佐賀県 2,597 2,453 -5.54%
42 長崎県 2,380 2,190 -7.98%
43 熊本県 2,460 2,366 -3.82%
44 大分県 2,690 2,653 -1.38%
45 宮崎県 2,415 2,340 -3.11%
46 鹿児島 2,276 2,207 -3.03%
47 沖縄県 2,050 1,987 -3.07%
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%
* ブロック別
01 北海道・東北 2,746 2,508 -8.67%
02 関東 3,556 3,427 -3.63%
03 中部 3,374 3,171 -6.02%
04 近畿 3,321 2,868 -13.64%
05 中国 2,935 2,730 -6.98%
06 四国 2,678 2,460 -8.14%
07 九州 2,529 2,391 -5.46%
* 政令指定都市
01 札幌市 3,025 2,700 -10.74%
02 仙台市 3,300 2,935 -11.06%
03 千葉市 3,472 3,348 -3.57%
04 横浜市 3,579 3,110 -13.10%
05 川崎市 3,643 3,281 -9.94%
06 名古屋 3,940 3,241 -17.74%
07 京都市 3,148 2,911 -7.53%
08 大阪市 4,106 3,311 -19.36%
09 神戸市 3,136 2,773 -11.58%
10 北九州 3,048 2,510 -17.65%
11 福岡市 3,338 3,109 -6.86%
* 都市計 3,510 3,052 -13.05%

 過去9年の『1人当たり県民所得』とその成長率ですがどうでしょう。

 この指標で過去9年の統計をまとめてみると、『1人当たり雇用者報酬』では見落としてしまっていたいくつか興味深い結果が示されています。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%
都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%

 まず平成8年から16年までの9年間で全国平均では3,188千円から2,978千円と-6.59%も平均所得が下がっている中で東京だけが突出して増加傾向にあることがわかります。

* ブロック別
ブロック 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道・東北 2,746 2,508 -8.67%
02 関東 3,556 3,427 -3.63%
03 中部 3,374 3,171 -6.02%
04 近畿 3,321 2,868 -13.64%
05 中国 2,935 2,730 -6.98%
06 四国 2,678 2,460 -8.14%
07 九州 2,529 2,391 -5.46%

 またブロック別の統計では、近畿ブロックの所得減少が激しく地域経済の地盤沈下が他地域よりもより悪化してきていることが読み取れます。

 さて、上記シンクタンクのレポートでは、1.6〜1.7倍で格差「拡大」は認められないとした東京/沖縄所得格差はどうなっていましょう。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%
47 沖縄県 2,050 1,987 -3.07%

 そもそも平均報酬では1.6〜1.7倍とされたその差は「1人当たり県民所得」で比較すると、平成8年の2.09倍から平成16年の2.29倍と、2倍以上の差が開いてしまいます。

 しかも平均報酬では13ポイント増なのが20ポイント増と、各年の比較から格差が「拡大しつつある」傾向がより顕著に示されているのであります。

 各都道府県の人口の大小に影響されない『1人当たり県民所得』で過去9年の統計資料を検証してみましたが、上記のとおり所得の上でも「東京一極集中」がはっきり数値で表されているのです。

 ・・・



●「県の人口総数(C)」の動向を押さえておく

 一人当たり県民所得(B)でも顕著に「東京一極集中」傾向が出ましたが、言葉の定義に戻りたいと思います。

 県民総所得(A) = 一人当たり県民所得(B) * 県の人口総数(C)

 人口の増減も影響する県民総所得(A)について検証していきましょう。

9.総人口
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/9_skenmin.xls

 それがためには参考までに「県の人口総数(C)」の動向を押さえておきましょう。

【表3:県別総人口】(単位:人)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 05,697,386 05,644,356 -0.93%
02 青森県 01,483,081 01,452,200 -2.08%
03 岩手県 01,420,381 01,394,821 -1.80%
04 宮城県 02,338,263 02,371,338 +1.41%
05 秋田県 01,209,580 01,159,022 -4.18%
06 山形県 01,254,940 01,223,485 -2.51%
07 福島県 02,134,473 02,105,657 -1.35%
08 茨城県 02,966,295 02,988,961 +0.76%
09 栃木県 01,990,502 02,012,570 +1.11%
10 群馬県 02,008,599 02,033,093 +1.22%
11 埼玉県 06,803,670 07,046,838 +3.57%
12 千葉県 05,817,204 06,039,208 +3.82%
13 東京都 11,808,423 12,378,384 +4.83%
14 神奈川 08,278,802 08,732,485 +5.48%
15 新潟県 02,490,314 02,451,649 -1.55%
16 富山県 01,124,658 01,116,505 -0.72%
17 石川県 01,180,973 01,178,583 -0.20%
18 福井県 00,828,258 00,824,628 -0.44%
19 山梨県 00,884,597 00,885,602 +0.11%
20 長野県 02,203,152 02,211,355 +0.37%
21 岐阜県 02,104,184 02,109,688 +0.26%
22 静岡県 03,745,383 03,794,768 +1.32%
23 愛知県 06,897,120 07,192,464 +4.28%
24 三重県 01,846,478 01,863,820 +0.94%
25 滋賀県 01,298,231 01,371,607 +5.65%
26 京都府 02,634,483 02,638,471 +0.15%
27 大阪府 08,806,777 08,813,801 +0.08%
28 兵庫県 05,421,331 05,586,970 +3.06%
29 奈良県 01,437,405 01,430,735 -0.46%
30 和歌山 01,079,491 01,050,002 -2.73%
31 鳥取県 00,614,511 00,609,135 -0.87%
32 島根県 00,769,713 00,748,620 -2.74%
33 岡山県 01,950,956 01,952,404 +0.07%
34 広島県 02,881,396 02,877,579 -0.13%
35 山口県 01,550,084 01,504,176 -2.96%
36 徳島県 00,831,259 00,813,451 -2.14%
37 香川県 01,026,659 01,017,974 -0.85%
38 愛媛県 01,504,979 01,477,348 -1.84%
39 高知県 00,816,197 00,803,316 -1.58%
40 福岡県 04,952,441 05,058,319 +2.14%
41 佐賀県 00,884,303 00,869,571 -1.67%
42 長崎県 01,540,284 01,495,219 -2.93%
43 熊本県 01,860,936 01,851,639 -0.50&
44 大分県 01,229,790 01,215,044 -1.20%
45 宮崎県 01,176,600 01,161,651 -1.27%
46 鹿児島 01,793,175 01,769,129 -1.34%
47 沖縄県 01,281,722 01,358,967 +6.03%
* 全県計 125,859,439 127,686,608 +1.45%
* ブロック別
01 北海道・東北 18,028,418 17,802,528 -1.25%
02 関東 42,761,244 44,328,496 +3.67%
03 中部 17,727,054 18,080,456 +1.99%
04 近畿 20,677,718 20,891,586 +1.03%
05 中国 07,766,660 07,691,914 -0.96%
06 四国 04,179,094 04,112,089 -1.60%
07 九州 14,719,251 14,779,539 +0.41%
* 政令指定都市
01 札幌市 01,774,540 01,872,703 +5.53%
02 仙台市 00,980,952 01,025,714 +4.56%
03 千葉市 00,859,520 00,918,364 +6.85%
04 横浜市 03,320,087 03,555,473 +7.09%
05 川崎市 01,209,212 01,306,021 +8.01%
06 名古屋 02,151,084 02,202,111 +2.37%
07 京都市 01,465,560 01,468,401 +0.19%
08 大阪市 02,600,058 02,624,775 +0.95%
09 神戸市 01,434,572 01,519,878 +5.94%
10 北九州 01,017,733 01,003,267 -1.42%
11 福岡市 01,296,308 01,390,480 +7.26%
* 都市計 18,109,626 18,887,187 +4.29%

予想通り東京中心に関東圏の人口集中が顕著なのでありますが、増加率ベスト10。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
47 沖縄県 01,281,722 01,358,967 +6.03%
25 滋賀県 01,298,231 01,371,607 +5.65%
14 神奈川 08,278,802 08,732,485 +5.48%
13 東京都 11,808,423 12,378,384 +4.83%
23 愛知県 06,897,120 07,192,464 +4.28%
12 千葉県 05,817,204 06,039,208 +3.82%
11 埼玉県 06,803,670 07,046,838 +3.57%
28 兵庫県 05,421,331 05,586,970 +3.06%
40 福岡県 04,952,441 05,058,319 +2.14%
04 宮城県 02,338,263 02,371,338 +1.41%

 ここでもトリッキーな話なのでありますが、過去9年における人口増加率トップは沖縄県なのであります。

 とすれば、

 県民総所得(A) = 一人当たり県民所得(B) * 県の人口総数(C)

 公式のCの値が伸びているのでありますから、実は一人当たり県民所得(B)が伸び悩んでいても、結果として人口減少県が多数の他県に比べて沖縄県の県民総所得(A)は健闘していてもおかしくはありません。

 実はこの後示しますが過去9年間における県民総所得の伸び率は、事実として沖縄県は東京都に次ぐ第二位なのであります。

 ・・・



●県民総所得(A)の絶対額と成長率を比較とすれば格差は「拡大」していると表現できる。

 最後に県民総所得を検証いたしましょう。

4.県民 所得
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/4_skenmin.xls

 例によって過去9年間の成長率も添えておきます。

【表4:県民総所得】(単位:百万円)/span>

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 15,917,641 14,307,836 -10.11%
02 青森県 03,672,175 03,124,967 -14.90%
03 岩手県 03,653,464 03,296,373 -9.77%
04 宮城県 06,575,373 05,999,655 -8.76%
05 秋田県 03,012,988 02,662,414 -11.64%
06 山形県 03,267,854 02,949,941 -9.73%
07 福島県 06,184,023 05,711,396 -7.64%
08 茨城県 09,339,233 08,755,614 -6.25%
09 栃木県 06,596,756 06,162,016 -6.59%
10 群馬県 06,093,121 05,749,033 -5.65%
11 埼玉県 22,616,982 20,833,208 -7.89%
12 千葉県 18,129,290 17,972,057 -0.88%
13 東京都 50,566,029 56,432,950 +11.60%
14 神奈川 29,605,014 27,719,739 -6.37%
15 新潟県 07,218,042 06,589,115 -8.71%
16 富山県 03,729,620 03,379,491 -9.39%
17 石川県 03,517,791 03,287,848 -6.54%
18 福井県 02,426,762 02,335,684 -3.75%
19 山梨県 02,561,629 02,256,419 -11.91%
20 長野県 06,564,916 06,042,616 -7.96%
21 岐阜県 06,311,310 05,698,464 -9.71%
22 静岡県 12,574,424 12,320,452 -2.02%
23 愛知県 25,676,691 24,741,048 -3.64%
24 三重県 05,567,735 05,568,527 +0.01%
25 滋賀県 04,581,320 04,437,170 -3.15%
26 京都府 07,992,683 07,516,999 -5.95%
27 大阪府 31,125,100 26,789,134 -13.93%
28 兵庫県 17,895,659 14,811,872 -17.23%
29 奈良県 04,265,842 03,717,869 -12.85%
30 和歌山 02,807,419 02,651,025 -5.57%
31 鳥取県 01,610,929 01,444,215 -10.35%
32 島根県 01,962,374 01,815,230 -7.50%
33 岡山県 05,549,118 05,032,478 -9.31%
34 広島県 09,175,300 08,469,831 -7.69%
35 山口県 04,493,690 04,237,106 -5.71%
36 徳島県 02,314,497 02,283,882 -1.32%
37 香川県 02,919,891 02,677,454 -8.30%
38 愛媛県 03,968,920 03,411,798 -14.04%
39 高知県 01,988,976 01,743,856 -12.32%
40 福岡県 13,827,524 12,998,472 -6.00%
41 佐賀県 02,296,832 02,132,954 -7.13%
42 長崎県 03,665,271 03,274,427 -10.66%
43 熊本県 04,578,433 04,380,958 -4.31%
44 大分県 03,308,390 03,223,697 -2.56%
45 宮崎県 02,841,270 02,717,745 -4.34%
46 鹿児島 04,082,044 03,904,582 -4.35%
47 沖縄県 02,627,405 02,699,838 +2.76%
* 全県計 401,257,750 380,269,455 -5.23%
* ブロック別
01 北海道・東北 49,501,560 44,641,697 -9.82%
02 関東 152,072,970 151,923,652 -0.10%
03 中部 059,804,333 057,331,514 -4.13%
04 近畿 068,668,023 059,924,069 -12.73%
05 中国 022,791,411 020,998,860 -7.87%
06 四国 011,192,284 010,116,990 -9.61%
07 九州 037,227,169 035,332,673 -5.09%
* 政令指定都市
01 札幌市 05,368,674 05,056,513 -5.81%
02 仙台市 03,236,806 03,010,880 -6.98%
03 千葉市 02,983,827 03,074,424 +3.04%
04 横浜市 11,881,219 11,057,801 -6.93%
05 川崎市 04,405,484 04,285,454 -2.72%
06 名古屋 08,475,477 07,136,938 -15.79%
07 京都市 04,613,204 04,274,009 -7.35%
08 大阪市 10,675,821 08,691,350 -18.59%
09 神戸市 04,499,389 04,215,242 -6.32%
10 北九州 03,101,978 02,517,860 -18.83%
11 福岡市 04,327,147 04,322,638 -0.10%
* 都市計 63,569,026 57,643,109 -9.32%

 ため息しか出ない苦しい数値が全国自治体を覆っていることが良く理解できます。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 401,257,750 380,269,455 -5.23%

 平成8年から平成16年までの9年間で、全国所得は-5.23%も減少していたわけです。

 ここで日本のGNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)がこの期間そこまで減少していなかった事実と比較してみると興味深いです。

 国民総生産(こくみんそうせいさん、GNP:Gross National Product)とは、ある一定期間にある国民によって新しく生産された財(商品)やサービスの付加価値の総計でありまして、企業の生産を中心に計数化されていきますが、今回検証してきたのはあくまでも国民一人当たりの「所得」の動きであります。

 平成8年から平成16年までの9年間、いかに個人所得が厳しい減少傾向にあったかが、数字で裏付けられたというだけのことであります。

 さて総所得が9年間で成長率で伸びているのはわずか3県だけであります。成長率ベスト3。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
13 東京都 50,566,029 56,432,950 +11.60%
47 沖縄県 02,627,405 02,699,838 +2.76%
24 三重県 05,567,735 05,568,527 +0.01%

 東京の突出振りはいかがでしょう。

 次に10%以上の減少、つまりこの9年で総所得が一割以上減少したワースト11。

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
28 兵庫県 17,895,659 14,811,872 -17.23%
02 青森県 03,672,175 03,124,967 -14.90%
38 愛媛県 03,968,920 03,411,798 -14.04%
27 大阪府 31,125,100 26,789,134 -13.93%
29 奈良県 04,265,842 03,717,869 -12.85%
39 高知県 01,988,976 01,743,856 -12.32%
19 山梨県 02,561,629 02,256,419 -11.91%
05 秋田県 03,012,988 02,662,414 -11.64%
42 長崎県 03,665,271 03,274,427 -10.66%
31 鳥取県 01,610,929 01,444,215 -10.35%
01 北海道 15,917,641 14,307,836 -10.11%

 兵庫・大阪・奈良などの関西圏の凋落振り、北海道・東北や中国・四国・九州といった首都圏から距離のあるブロックでも所得縮小が著しいことがわかります。

 ・・・

 ここで検証したのは、県別総所得の絶対額の単純比較により「地域格差」を証明しようとしたのではありません。

 上記表で私達が最も注目しなければならない事実は、平成8年度においてすでに絶対額でダントツであった東京都(50,566,029)がその後の9年で47都道府県の中で唯一+11.60%という高い成長率を示している事実であります。

 つまりマラソンで言えば、独走していたトップランナーがさらにスピードを加速して失速している他の集団を横目にリードを広げているという単純な事実です。

 つまり、県民総所得(A)の絶対額とその成長率、あるいは一人当たり県民所得(B)の絶対額とその成長率、いずれの指標を比較しても、東京一極集中、地域格差の「拡大」以外の表現はないのであります。

 ・・・



●結論:統計実態として地域格差拡大が起きていることは自明


 そもそもある県の総所得は次の単純な式で示せます。

 県民総所得(A) = 一人当たり県民所得(B) * 県の人口総数(C)

 そして今検証したとおり、一人当たり県民所得(B)も県民総所得(A)も、平成8年から16年の9年間で全国平均で減少を余儀なくされわずかに、全県の人口総数(C)だけが微増したのであります。

【一人当たり県民所得(B)】(単位:千円)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%

【県の人口総数(C)】(単位:人)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 125,859,439 127,686,608 +1.45%
13 東京都 011,808,423 012,378,384 +4.83%

【県民総所得(A)】(単位:百万円)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
* 全県計 401,257,750 380,269,455 -5.23%
13 東京都 050,566,029 056,432,950 +11.60%

 そしてまさに同時期に東京都だけは、上述のとおり突出して一人当たり県民所得(B)も県民総所得(A)も増やしてきたのであります。

 個々で重要なのは、一人当たり、県総額の所得の絶対額だけでなくその伸び率まで、東京都が突出していることです。

 つまり繰り返しの表現になりますが、マラソンで言えば、独走していたトップランナーがさらにスピードを加速して失速している他の集団を横目にリードを広げているという単純な事実です。

 以上のことから、結論として、平成8年から16年までの過去9年間でこの国に「地方(所得)格差」が「拡大」してきたこと、統計実態として東京一極集中が起きていることは自明だと思われます。

 ・・・

 最初のシンクタンクレポートのこの結論。

東京都と賃金水準下位5県(2005年時点)の平均との格差をみても、近年拡大の兆しはみられるものの、10年単位でみれば必ずしも拡大傾向は明確ではない。

 『1人当たり雇用者報酬:現金給与総額』を用いて地域経済を比較することは、本当に統計処理として最適なただしいやり方なのでしょうか。

 これによれば確かにこの10年、東京の現金給与総額と沖縄の現金給与総額の比率は1.6〜1.7倍と格差は確認できますがそれが「拡大」しているとは読み取れません。

 しかし、私が調べた限り、この結論は間違いとは言いませんが、かなり恣意的な統計数値の用い方をしている点で賛同はできかねるのであります。

 私は経済学の専門家でも統計学の専門家でもありません。

 しかしながら、すべてとは言いませんが、地域格差拡大否定論者の統計処理には疑問が多いのです。



(木走まさみず)



<関連サイト>
■1.統計資料
平成16年度県民経済計算について
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h16/main.html
■(原データ)
都道府県別年平均失業率(%)
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/7360.html
■「地域格差」は拡大しているか
統計的実態と格差意識の乖離が示唆するもの〜
http://www.jri.co.jp/press/2006/jri_060927.pdf
■統計でみる都道府県のすがた 2007
http://www.stat.go.jp/data/ssds/zuhyou/5-31.xls



<関連テキスト>
■[社会]「一人当たり所得」統計的日米比較検証〜おそらく相対としてアメリカよりも「地域(所得)格差」は「拡大」している可能性が高い
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070817