木走日記

場末の時事評論

大激戦の埼玉選挙区をシミュレーション予測してみる

 不肖・木走は本業で何人かの政治家のホームページを開発・運用させていただいております。

 で、私の会社のクライアントである政治家のお1人は埼玉県を地盤とされています。

 今3人区の選挙区がアツイのであります。

 今日は私のお客様の政治家秘書からの情報も交えて埼玉選挙区にスポットを当ててみたいと思います。

 その秘書氏曰く「こんなしんどい激戦は初めてですよ」とのことでした。

 以後敬称略させていただきルポ風記事の体裁でエントリーいたします。

 エントリーの構成は前半のルポ部分はネット上の記事(主に読売新聞埼玉版「07参院選 決戦の構図」シリーズ)を部分引用しつつ再構成し私なりの情報を付加、後半のシミュレーション部分はやはりネット上の記事等から過去の数値や最新の電話調査などの情報をそのまま引用し、私の得た票読みをもとに独自に行った予測であります。

 なおエントリーの構成上、参照引用した記事はまとめて最後に列記させていただきました。



●薄氷を踏む民主党の戦術〜「こうなりゃ敵も味方もみんな敵だ」

 民主党党首小沢は6月26日、志木市内で民主党両候補や支持者にこう言って奮起を促した。「政権交代のためには、何が何でも過半数を取らないといけない。全国に29ある1人区と2候補擁立した東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知の1都4県が勝負所だ」。

 定員3人の改選議席で2候補擁立し勝負をかける小沢民主党だが、ここ埼玉選挙区でも山根隆治(現)、行田邦子(新)の2人の支援に力を入れる。

 民主党の描く戦略はこうだ。

 県連は山根を県西部と南部、行田を北部と東部に軸足を置かせた。大票田のさいたま市は両者が自由に競い合うという分割戦略を立てている。

 また、18万人の組合員を擁する連合埼玉や“埼玉都民”を抱える連合東京など党の支持組織は、重点的に山根を支援。若い新人の行田には浮動票を狙わせる。

 この「無謀」と揶揄(やゆ)された2候補擁立の方針は前回2004年の参院選で党本部が打ち出した。当時の県連は消極的で、2人目が決まったのは公示2日前。それでも先に立候補した島田智哉子が82万票でトップ当選。2人目の弓削勇人は落選したものの37万票を獲得、2人で計120万票を集めた。

 今回は党県連の枝野幸男代表も「2人で140万票が目標。80万票と60万票に分ければ2議席も可能だ」と積極姿勢に転じている。前回より20万票の上乗せにも、枝野は「投票率を4%上げて、努力すれば届く」と強気だ。

 4月28日、JR大宮駅西口歩行者通路で行田は1人でマイクを握った。「18年間民間企業で働いて感じた、世の中変だ、本当はこうだ、ということを訴えたい」。

 同じ時間、ここから約100メートル離れたところで開催された連合埼玉のメーデー集会で約5400人を前に山根が支持を訴えていた。

 参加を拒まれた行田が駅頭に立ったのは、集会出席のため会場に向かう組合員らに支持を求めるためだった。

 「小沢一郎です」。7月に入って、行田の選挙カーからは党の小沢一郎代表の声が流れるようになった。「知名度が足りない」と見た小沢の新たな戦術だ。ただ、山根陣営からは、「党首が片方の候補だけを支援するなんてやり方はおかしい」と恨み節も。

 片方の民主党候補支援者は「こうなりゃ敵も味方もみんな敵だ」と声を高ぶらせる。

 ・・・

 最近の世論調査では意外にも行田がトップの支持を集め優位に戦いを進めていることが判明、対して山根は公明の高野博師と最後の一議席を争う苦しい展開となっている。

07参院選:中盤情勢・毎日新聞調査 行田氏、有利な戦い /埼玉

 ◇高野、古川、山根3氏追う−−投票態度未定も3割

 参院選埼玉選挙区は29日の投開票に向け、立候補した7氏が3議席を争っている。毎日新聞は19〜21日の3日間、電話による参院選世論調査(県内回答者1665人)を実施した。調査結果に支局取材を加えた中盤の情勢分析によると、民主の行田邦子氏(41)が県全域で幅広い支持を集めて優位に戦いを進め、公明の高野博師(60)、自民の古川俊治(44)、民主の山根隆治(59)の3氏が、それぞれの組織を固めながら激しく追う展開となっている。共産の綾部澄子氏(48)は共産支持層を固め巻き返しを図る。社民の松沢悦子氏(59)は無党派層への浸透を狙い、国民新党の沢田哲夫氏(43)は知名度アップに懸命だ。ただ、現時点で投票態度を決めていない有権者が3割近くおり、終盤で情勢が大きく変わる可能性もある。一方、安倍内閣の政策については「評価しない」が64%で「評価する」の25%を大きく上回った。【参院選取材班】(全国の情勢は8、9面に)
(後略)
毎日新聞 2007年7月22日
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/area/saitama/news/20070722ddlk11010312000c.html

 民主党が2議席確保できるかは、まさに二人の候補者の票割りに掛かっている。

 3番目の当選者の予想投票数は各陣営とも60万票前後という見方で一致している。

 過去2回の選挙(2001年と2004年)では、いずれも自民・公明・民主で1議席ずつ分け合ってきた。

 自民候補は2004年が718,689票、2001年が704,496票と手堅く約70万票の集票力を有してきた、「ここで1人に絞ればまずは安泰選挙が展開できる」、確かに過去2回では全く余裕の選挙であった。

 一方公明党候補は、2004年が539,417票、2001年が562,370票と約55万票前後の集票力がいっぱいいっぱいである。

 公明党が過去10年間、国政選挙の比例選で獲得した県内の票は約41万〜47万。これが創価学会の集票力だと見られている。

 つまりコアの学会員票+10万票といったところが過去2回の結果なのである。

 民主党の戦略はきわどい。

 仮に民主票の合計が前回同様120万だとして、2候補が60万票前後で平等に票を分けれれば2候補当選は可能だが、70万と50万のような差が生じた場合は公明党候補に勝てないと予想されているからだ。

 結果がどうなるか、まったく余談を許さない。



自民党からなんとしても5万の票がほしい公明党戦術〜「これまでの選挙での貸しを返していただきたい」

 一方、自民党公明党も壮絶な選挙戦を迎えている。

 ただでさえ逆風の吹く中で、限られた票をうまく自公協力で融通しあえるのか、今までどおり自民・公明の2議席を確保できるかは、民主の攻勢の前に実に微妙でシビアな票読みを両陣営に迫っているからだ。

 6月23日、さいたま市浦和区内で、自民党県連の大野松茂会長と深井明幹事長は、公明党県本部の西田実仁幹事長、山本晴造副代表らと向き合っていた。「少なくとも5万票分は協力を。(これまでの選挙での)“貸し”を返していただきたい」。西田らの言葉に大野は黙ってうなずいた。関係者は「協力はイコール後援会などの確実な名簿を渡すということだ」と解説する。

 過去の実績の55万に自民から「少なくとも5万票分は協力」をしてもらえれば、民主が票割りに成功したとしても「60万票」という前後で勝算を得ることができる。

 公明にしてみれば約70万という集票力の過去実績がある自民支持票からどうしても5万は協力してもらいたいのである。

 しかし自民の古川俊治陣営の表情は暗い。

 埼玉では長年保守王国として県議会の3分の2近くの議席を維持してきた。しかし4月の県議選で改選前議席を11も下回る41議席しか獲得出来ず、議長経験者5人を含む現職19人が落選。強固な基盤は民主党支持層の侵食にさらされている。

 またかつて機能してきた自民の集票マシンに今回はかげりが出てきている。

 郵政民営化のあおりでピーク時は家族なども含めて県内で6000人を擁した大樹は、今回選挙で国民新党を支援している。

 「どう見積もっても、この逆風の中で前回までの約70万票という集票力を維持できるはずがない。ヘタすると10万近くの目減りがあるかも知れない」

 そのような現実的な危惧の中でどうして公明に5万の票を流すことができるのか、自民支持者の動きは極めてにぶい。

 自民党には選挙協力して公明に票を分ける余力がないのだ、少なくとも心理的には自民陣営も追い込まれている。

 もちろん公明支持者の危機感は相当なものである。

 創価学会の動きもいつも以上に激しい。6月26日、さいたま市桜区の埼玉文化会館。埼玉地区の創価学会会合に姿を見せた原田稔会長は「3000人収容のホールがいっぱい」(学会幹部)になるほど集まった学会員らを前に「勝利を決するのは自分だ」などと参院選での高野支援を鼓舞した。今春の統一地方選後、原田が県内に入るのは2回目。創価学会県事務局の幹部は「それだけ参院選は厳しいということだ」と説明する。

 関係者によれば、千葉など隣接県から多くの学会員が県内入りし、自民党から提供された名簿などを手に創価学会員以外の有権者を回る、いわゆる「F(フレンド)票」の獲得に躍起だという。

 自民・公明の候補が見事に2候補当選を果たすことができるのか。

 こちらも結果がどうなるか、まったく余談を許さない。



●シミュレーション予測してみる

 過去2回の参議院選挙埼玉選挙区の投票結果を押さえておく。

■2004年

当 嶋田 智哉子  <民主 新>  824,127
当 関口 昌一  <自民 現>  718,689
当 西田 実仁  <公明 新>  539,417
  弓削 勇人  <民主 新>  372,175
  阿部 幸代  <共産 前>  345,168
  日森 文尋  <社民 新>  99,731

確定有効投票総数 2899307票

■2001年

当 佐藤 泰三 <自民党 前> 704,496
当 高野 博師 <公明党 前> 562,370
当 山根 隆治 <民主党 新> 419,181
 阿部 幸代 <共産党 前> 376,501
 小宮山 泰子 <自由党 新> 345,810
  早川 忠孝 <無所属 新> 126,000
  天辰 武夫 <社民党 新> 108,237
  林 寛子 <自由連合 新> 66,676
  小川 卓也 <無所属 新> 24,853
  加藤 盛雄 <無所属 新> 19,568
  山口 節生 <無所属 新> 14,072
  村田 文一 <諸派 新> 12,144
  今沢 雅一 <諸派 新> 5,170

確定有効投票総数 2785078票

 今回の立候補者は7人である。

古川 俊治 44 <自民党 新>
山根 隆治 59 <民主党 現>
行田 邦子 41 <民主党 新>
高野 博師 60 <公明党 現>
綾部 澄子 48 <共産党 新>
松沢 悦子 59 <社民党 新>
沢田 哲夫 43 <国民新党 新>

 過去の選挙結果からおおよそ各政党の集票力が自民約70万、公明約55万、民主約100〜120万、共産約35万、社民10万あたりであることが確認できる。

 過去の選挙結果と直近のメディア調査の結果から、今回の有効投票数が前回の290万票から3.4%UPするとして300万票を各候補に過去実績に按分して振り分けてみる。

 前回より投票率が3%ほど上がった場合、民主に有利と見られるので民主の基礎票を前回の120万から+5万増え、125万という数字を採用してみる。

 自民・公明の与党票総数を125万票、民主票総数も同じ125万票とするのだ。

 これは先に引用した毎日新聞の19〜21日の3日間、電話による参院選世論調査(県内回答者1665人)の政党支持率、民主30%、自民+公明29%とほぼ伯仲している結果にも一致する。

 □政党支持率

 政党支持率は民主30%▽自民20%▽公明9%▽共産4%▽社民1%−−の順。「支持政党なし」が25%で、その半数以上が選挙区、比例代表ともに態度を決めていない。
毎日新聞 2007年7月22日
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/area/saitama/news/20070722ddlk11010312000c.html

 もちろんこれらの数値自体はただの予測値であり結果を保障するものではない、がしかし、私が入手した情報によればある候補の陣営はほぼこの値に近い票読みをしていることは興味深い。

 では具体的に300万票を単純に割り振ってみよう。

■予測1

古川 俊治 44 <自民党 新> 70万 当
山根 隆治 59 <民主党 現> 50万
行田 邦子 41 <民主党 新> 75万 当
高野 博師 60 <公明党 現> 55万 当
綾部 澄子 48 <共産党 新> 35万
松沢 悦子 59 <社民党 新> 10万
沢田 哲夫 43 <国民新党 新> 5万

 このケースでは自民・公明・民主、一議席ずつとなる。

 次に民主の票分けがうまく機能して行田から山根に10万票が動くとする。

■予測2

古川 俊治 44 <自民党 新> 70万 当
山根 隆治 59 <民主党 現> 60万 当
行田 邦子 41 <民主党 新> 65万 当
高野 博師 60 <公明党 現> 55万
綾部 澄子 48 <共産党 新> 35万
松沢 悦子 59 <社民党 新> 10万
沢田 哲夫 43 <国民新党 新> 5万

 このケースの場合民主が2議席確保することになる。

 これに対抗するには自公選挙協力がうまく機能して自民から公明に5万の票が動く必要がある。

■予測3

古川 俊治 44 <自民党 新> 65万 当
山根 隆治 59 <民主党 現> 60万 △
行田 邦子 41 <民主党 新> 65万 当
高野 博師 60 <公明党 現> 60万 △
綾部 澄子 48 <共産党 新> 35万
松沢 悦子 59 <社民党 新> 10万
沢田 哲夫 43 <国民新党 新> 5万

 この場合、結果がどうなるか、まったく余談を許さない。

 もちろん、この3ケースは過去実績とメディア資料にもとづくただのシミュレーションであり、何もこの予想結果を保障するものではないが、これからの数日間で各陣営がどう協力し合うのか、その協力の成否次第で大きく当落が動くことだけは間違いないことだろう。
 ・・・

 実際には選挙は蓋を開けてみなければわからない。

 しかし、埼玉選挙区では、最後の投票日前日まで、敵・味方入り乱れての激戦が続くことは間違いないのだろう。



(木走まさみず)



<参照・引用サイト&記事 一覧>
朝日新聞
〈序盤の情勢〉関東
http://www2.asahi.com/senkyo2007/special/TKY200707200115.html
埼玉新聞
行田氏先行、追う古川氏 埼玉選挙区情勢
http://www.saitama-np.co.jp/news07/22/03p.html
毎日新聞
07参院選:中盤情勢・毎日新聞調査 行田氏、有利な戦い /埼玉
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/area/saitama/news/20070722ddlk11010312000c.html
■読売新聞
自民 逆風の中余裕なし/民主 現新すみ分け課題
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin2007/feature/0010/fe_010_070711_01.htm
≪1≫ 自民 逆風「引き算だらけ」(2007年7月5日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/kikaku/056/1.htm
≪2≫ 公明 推薦見返り 名簿要求(2007年7月6日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/kikaku/056/2.htm
≪3≫ 民主 2人擁立 票割り苦慮(2007年7月9日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/kikaku/056/4.htm
≪4≫ 農業票 自民の牙城 各党食指(2007年7月10日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/kikaku/056/5.htm
≪5≫ 業界団体 「集票マシン」 今は昔(2007年7月11日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/kikaku/056/6.htm
■YAHOO!みんなの政治2007参議院選挙特集
選挙区:埼玉
http://headlines.yahoo.co.jp/specialfeature/sangiin2007/
2004年参議院選挙結果 > 選挙区 埼玉県
http://seiji.yahoo.co.jp/guide/election/sangiin2004/list/saitama/
2001年参議院選挙結果 > 選挙区 埼玉県
http://seiji.yahoo.co.jp/guide/election/sangiin2001/list/saitama/