木走日記

場末の時事評論

M5ロケットを「負け組」にするな〜地味な研究を「負け組」に追いやらない政策こそ求められる

●固体燃料による主力ロケット開発の歴史に幕〜読売記事

 土曜日(23日)の読売記事から・・・

M5ロケット予定軌道へ、衛星は「ひので」と命名

太陽観測衛星「ソーラーB」を搭載して打ち上げられたM5ロケット7号機(鹿児島・肝付町内之浦宇宙空間観測所で) 宇宙航空研究開発機構は23日午前6時36分、鹿児島県肝付町内之浦宇宙空間観測所から、太陽観測衛星を搭載したM5ロケットの7号機を打ち上げた。

 ロケットは約9分後の同6時45分に衛星を分離、予定軌道への投入に成功した。

 M5の打ち上げは今回が最後。1955年にペンシルロケットとして産声をあげて以来、多くの衛星を宇宙に送り届けた固体燃料による主力ロケット開発の歴史に幕が下りた。今後日本の基幹ロケットは、液体燃料のH2Aに一本化する。

 太陽観測衛星は、太陽研究の新時代を開くとの期待から、「ひので」と命名された。ひのでは、打ち上げ約34分後に太陽電池パネルを展開。3週間後には高度630キロの極軌道に入り、2か月後から本格的な観測を始める。

 ひのでは、太陽観測用として世界最大の50センチ口径の可視光・磁場望遠鏡と、X線、紫外線対応の望遠鏡を擁し、太陽表面の爆発現象などを多角的に観測する。太陽を取り巻く超高温ガス層(コロナ)の秘密に迫る成果などが得られそうだ。

 M5は、打ち上げ費用が約80億円と割高なことなどが支障となり、今年7月に廃止が決まった。M5の技術は、2010年度を目標に開発する低コストの小型ロケットに引き継ぐ。

(2006年9月23日20時6分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060923i202.htm

 純国産のM5ロケット最後の打ち上げを報じる読売記事であります。

 読者のみなさまもご存知と思いますが、このM5ロケットは日本独自の技術で開発されてきた固体燃料ロケットとしては世界最大の中型ロケットでありまして、その性能は世界が認めるモノだったのであります。

 が、いかんせん「打ち上げ費用が約80億円」と重量当たり費用がアメリカやソ連などに比し倍近くかかるわけでして、「割高」というよりは「バカ高い」のでありました。

 費用面でまったく国際競争力がないのですから、JAXA宇宙航空研究開発機構)としてもM5打ち切りはやむを得ない選択だったのでしょう。

 JAXA宇宙航空研究開発機構)は、03年に文部省と科学技術庁が統合され文部科学省になったのを契機に、旧文部省管轄のISAS(宇宙科学研究所)と旧科学技術庁管轄のNASDA(宇宙開発事業団)、NAL(航空宇宙技術研究所)等が統合され誕生した日本の宇宙開発を担う独立法人であります。

 で、固定燃料かつ純国産技術にこだわり続けたこのM5ロケットは、旧文部省管轄のISAS(宇宙科学研究所)の流れを汲むモノで、旧科学技術庁管轄のNASDA(宇宙開発事業団)が取り組んできた液体燃料かつ積極的に海外技術を移植してきた大型の主力ロケットH2Aと2本立てで日本のロケット技術を支えてきたわけです。

 まあJAXAに統合されるまでは、M5とH2Aで担当省庁も違い予算も別々に奪い合い互いの技術交流もほとんどなく縦割り行政の弊害などと批判されてきたのでした。

 ・・・

 M5(ミューファイブ)の打ち切りは、東京大学の故糸川英夫博士が1955年に行われたペンシル・ロケットの発射実験にはじまり、1970年に固体燃料を用いたL−4Sロケットによって、日本初の人工衛星おおすみ」を軌道に送ってきた、日本の固体燃料ロケットの輝かしい歴史を振り返ると実に惜しいのであります。

 しかし、このM5ロケット打ち切りですが、不肖・木走には、技術立国日本の抱えるハイテク優先の陰で進む基盤技術の弱体化を、ある意味で象徴している出来事のように思えてなりません。

 今日はこのM5ロケット打ち切りに象徴されている日本の抱えるハイテク優先の陰で進む基盤技術の弱体化の問題を取り上げてみたいと思います。



●メディアの矛盾めいた論説〜M5ロケット打ち切りは当然だが技術はしっかり継承していけ

 さて日曜日(24日)の主要紙社説は、日経を除いて純国産のM5ロケット最後の打ち上げについて取り上げていました。

【朝日社説】ロケット 必要なものに絞って
http://www.asahi.com/paper/editorial20060924.html
【読売社説】[最後のM5]「迷走するロケット開発政策」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060923ig91.htm
【毎日社説】M5ロケット 宇宙探査支える技術継承を
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060924ddm005070131000c.html
【産経社説】最後のM5 固体ロケットの技術保て
http://www.sankei.co.jp/news/060924/edi001.htm

 各紙の社説の主張はおおむね同様でして、全体としてはコスト面からM5ロケット打ち切りは当然だが、日本独自の固体燃料ロケット技術はしっかり継承していけという論調であります。

 代表して【朝日社説】から抜粋。

(前略)

 その結果、M5のかわりに低コストの小型固体ロケットを新たに開発することになった。大型の主力ロケットH2A、官民で開発中の中型の液体ロケットGXと合わせ、大中小の3種類のロケットを持つ計画だ。

 米国や欧州並みの豪華な品ぞろえだが、果たしてそこまでする必要性や財政の余裕があるのか、大いに疑問がわく。

 主力ロケットとしてのH2Aのほかにもう1種類、扱いが簡単で、小さい衛星の打ち上げに向く固体ロケットを持つことは必要だろう。それで足りない分は、ロシアなど外国に打ち上げてもらうこともできる。その方が安上がりでもある。衛星に応じて、柔軟に考えるべきだ。

 新型ロケットの開発は、決して容易ではない。過去に失敗した例もある。GXの開発は難航しており、当初計画より5年遅れる見通しだ。宇宙開発委員会が計画を再評価することになっているが、開発中止も含めて見直す必要がある。

 ロケット技術も大事だが、肝心なのは、衛星を使って宇宙空間を活用したり、科学観測をしたりすることだ。そのためにどんなロケットがどれだけあればよいか、納税者の視点で見極めなければならない。

 長年の研究と開発経費をかけたM5ロケットの技術も、しっかり生かしてもらいたい。

 財政危機のおり、「米国や欧州並みの豪華な品ぞろえだが、果たしてそこまでする必要性や財政の余裕があるのか、大いに疑問がわく」のは当然でありましょうし、「どんなロケットがどれだけあればよいか、納税者の視点で見極めなければならない」のもごもっともでしょう。

 しかし、社説の結語、「長年の研究と開発経費をかけたM5ロケットの技術も、しっかり生かしてもらいたい」は、かなり過酷な要求に思えます。

 矛盾したとまではもうしませんが、片方で「ロシアなど外国に打ち上げてもらうこともできる。その方が安上がりでもある」などと厳しく「納税者の視点」で「開発中止も含めて見直す必要」を述べていながら、片方で「長年の研究と開発経費をかけたM5ロケットの技術」を「しっかり生かしてもらいたい」とは、これでは技術者達が気の毒なのであります。

 朝日だけではありません、他紙の社説でも例えば産経はこのように結んでいます。

M5廃止の背景には、同機で科学衛星を打ち上げてきた宇宙科学研究所宇宙開発事業団と統合され、宇宙航空研究開発機構JAXA)になった事情がある。事業団のH2Aロケットと比べて、M5は割高であったのだ。

 JAXAはM5の後継で、小型の固体ロケットを開発するとしているが、実用性と信頼性の高さが必要だ。

 小惑星イトカワに到達した「はやぶさ」など、科学衛星による宇宙研究は日本のお家芸である。ポストM5においても、その伝統は保持したい。

 メディアのこのような矛盾めいた論説、「外国に打ち上げてもらう」方法も含めて「安上がり」にしろといいつつ「しっかり技術は継承しろ」「その伝統は保持」しろというのは、長年ギリギリの予算で他国との競争にさらされながらも世界に互するロケットを開発してきた科学者や技術者達の現場の意見を無視した暴論と言えましょう。

 ・・・



●いかにも貧弱なJAXAの年予算には一切触れず国際競争力を求める日本メディア

 そもそもアメリカ、ロシア、中国、イギリスなどの日本以外の諸外国のロケット開発は、いうまでもなく軍事利用と密接に結びついております。

 全備重量139トンというM5ロケットの大きさは、同じ三段式固体燃料ロケットを採用したアメリカ空軍の最新のICBMであるLGM-118ピースキーパー(88.5トン)やロシアのSLBMであるR−39(90トン)をしのぎ、世界最大級の固体燃料ロケトとなっています。

 しかし、日本のM5ロケットは膨大な軍事予算で大量生産できる諸外国のミサイルやロケットとは異なり、一機一機が衛星・探査機に合わせて組み立てられた特注品であり、積荷にあわせた仕様に調整することができますが、その分大量生産による部品の共有化や低価格化も図れなく高値であることが弱点であるわけです。

 つまり、ロケット開発に携わる各国の開発現場の中で、日本はコスト面で二つの意味で極めて不利な立場に立たされているのです。

 1:日本の宇宙開発は平和利用に限られているので軍事予算とは別に予算化されるためにライバル国に比し慢性的に予算不足にある。

 2:日本の宇宙開発は兵器としての量産が計れないために実射データや不具合データ検出の機会が圧倒的に他国に比し少なく、かつ量産効果による部品の調達価格の低額化が困難である。

 誤解のないようにあえて付記しておきますが、ここで何も日本の宇宙開発も軍事利用に門戸を開いて予算を厚くしろと単純な主張を展開しようというのではもちろんありません。

 そうではなく、平和利用に限定して努力してきた日本のロケット技術に対して、その不利な立場を承知の上で、国際競争力を求めながら、M5ロケットを打ち切りつつ既存の固定燃料技術を継承せよ、と無理難題を押しつけるならば、諸外国にも開発力でまけないような最低限の予算は確保すべきであるのです。

 公式サイトによれば、JAXA宇宙航空研究開発機構)の年度予算は1792億円(04年実績)に過ぎません。

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構http://job.mycom.co.jp/07/pc/visitor/search/corp52326/outline.html

 わずか1800億の年予算で、液体燃料の主力ロケットH2Aの開発と安定的な打ち上げをこなしつつ、打ちきった固定燃料ロケットの技術を後継機種に活かしながら両者とも国際競争力を確保せよとは酷な話であります。

 貴重な税金を投入するという意味では、1800億と言う数字が決して小さな数字ではないことは理解しておりますが、それにしても21世紀の日本の先進技術の一端を担うロケット開発技術に与えられた予算としてはいかにも少ないのであります。

 これは国際比較だけでなく日本国内の他部門との予算比較からも検証可能であります。
 例えば日本の防衛費は、政府予算案で年予算4兆8139億円であり、さらに旧軍人恩給費9072億円を加えた数字、5兆8039億円が国際的な意味で使われる軍事費になりますが、日米共同で来年度から着手予定のMD(ミサイルディヘンス)システム開発費だけでも日本側の負担は3千億から1兆円という試算があります。

 また昨年来から沖縄米軍グアム移転費の日本側負担分が騒がれましたが、一連の米軍移転費の日本側総額負担は3兆円という数字が試算されておるわけです。

■日本政府はアメリカのせいにするな
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060524
■マスメディアは何故「田舎芝居」を報道しないのか?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060503/1146640369
■負担3兆円は試算済みでも「不快感」表明する日本政府の「田舎芝居」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060427
■米軍グアム移転日本分担59%に異議あり
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060424

 日本政府の一貫性のない建前と縦割り行政に雁字搦めの硬直した予算編成では、日本独自のロケット技術は低予算で押さえ込んで、それとは別にアメリカとのMD構想ではせっかくの日本独自技術をまったく活用することなく何千億という予算を割いてアメリカ技術の移植だけを考えているありさまなのです。

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 日本のメディアは、M5ロケットの打ち切りは当然だ、しかしその技術はしっかり継承しろと主張します。

 これは技術屋から考えたら無理難題です。

 限られた予算の中で開発を打ちきられた高度技術をスキルキープせよというミッションは、使わない技術ノウハウは時と共に劣化していく事実を考えれば不可能です。

 いかにも貧弱なJAXAの年予算には一切触れず、国際競争力だけを求める日本メディアの主張は科学技術の開発現場からすれば暴論に近いモノです。

 このような論が、技術立国日本の基盤技術の弱体化を後押ししてしまっていることに気付いて欲しいものです。



●地味な研究を「負け組」に追いやらない政策こそ求められる

 今回のM5ロケット打ち切りと分野は違いますが、全く同様な基盤技術の弱体化を生んでしまった例を、私たちは実は最近破損した中部電力浜岡原子力発電所5号機のタービンのケースに見ることができます。

 少し長いですが、ニッケイネットの興味深い記事から・・・

ハイテク優先の陰で進む基盤技術の弱体化(9/22)

 政府が進める科学技術政策は、バイオやナノテクなど夢のありそうなハイテク、特にイノベーションの期待できそうな技術に力点を置いている。将来の経済成長にハイテクによるイノベーションが重要なのは確かだが、一方でハイテクを下支えするはずの地味な技術はこのところ軽視され続け、弱体化の兆しが見えている。自民党新総裁に選ばれた安倍晋三氏は格差是正を絡めて再チャレンジ推進を政策の柱の1つに掲げているが、弱者たる地味な研究にも陽を当てないと日本のハイテクの基盤が崩れかねない。

原発タービン破損が示す技術の死角

 中部電力浜岡原子力発電所5号機で6月に起きたタービン破損は、原子力界にとってはショックな出来事だった。長期の信頼性を求められるタービンで運転開始からわずか1年半で破損が起きたからだ。今年3月に運転を開始した同型の北陸電力志賀原子力発電所2号機も点検の結果、破損まではいっていないものの、タービンの羽根にひびが見つかり、最新鋭原発にも技術陣が見落とす死角があったことを改めて浮かび上がらせた。

 この問題は、製造元の日立製作所の技術陣の力不足、ミスが原因と片づけてしまうこともできるだろう。だが、底流には国内全体で原子力分野の技術力の陰りというもっと深刻な問題が潜んでいる。タービンなどは社会インフラにかかわる基盤的な技術と言えるが、最近は大学や研究機関でこうした地味な研究を軽視する傾向が強くなり、研究者は隅に追いやられている。

 資源エネルギー庁は最近、原子力の人材強化策をまとめたが、その背景として研究者が情報通信やナノテクなど花形の分野になびき、基盤技術に絡む研究者の層が薄くなっていることを強調している。大学などでは浜岡原発の問題などを扱うはずのタービン工学の講座、それに溶接工学などの講座は消滅し、金属材料分野でも腐食などの分析分野が衰退しているとし、危機感を募らせている。

 米国では1979年にスリーマイル島原発での事故後に発注済みの原発建設が次々にキャンセルされ、新規原発の発注も止まっていた。最近になってようやく発注機運が出てきたが、空白期間は20年以上もある。それにも関わらず、米国では原子力産業界はそれなりに技術力を維持している。海外のプラント受注もあるが、国内でも原子力空母や原子力潜水艦など海軍の原子力利用があるためで、原発の新規発注がなくても国ぐるみで技術力を維持・継続する仕組みを持っている。

 これに対して日本では世の中の原子力離れや、電力会社の原発発注の先細りに伴って、大学では「原子力学科」をなくしたところが出るし、周辺技術の関連学科も勢いを失っている。メーカーも最近は国内市場だけでは技術陣を維持できないと輸出に目を転じ、技術力維持に懸命だ。ただ、技術力の維持・向上はメーカーだけで解決できる問題でなく、日本全体で考えるべき課題でもある。

 政府は今年度から5カ年計画で始めた第3期科学技術基本計画で原子力に関して高速増殖炉を国家基幹技術と位置づけて重点的に研究開発投資をする方針を示している。原子力委員会が昨年まとめた原子力政策大綱では高速増殖炉の実証炉開発をあいまいにしているほどだから、高速増殖炉が国家基幹技術に選ばれた理由は釈然としないが、軽水炉の技術基盤が揺らいでいるのに先ばかり急ぐのは足腰が弱ったまま疾走しているのに近い。

 官僚は見てくればかり優先した政策を展開したがるが、現状から見れば国家基幹技術とすべきは高速増殖炉の前に軽水炉、あるいはそれを支える基盤技術だろう。資源エネルギー庁は「原子力立国」を掲げた政策の一環として次世代軽水炉の開発に取り組む姿勢を見せているが、それを国家基幹技術として位置付けるよう働きかけた節はない。原子力の技術強化策は現状をもっと踏まえて進めるべきではないか。

縁の下の技術を大事にせよ

 官僚や政治家はとかくパフォーマンスを優先し、地味な仕事、研究に対する目配りを欠く。官僚は3年もたてば持ち場が変わるし、その場しのぎや時流に合わせて聞こえのよい政策を進める傾向も強い。だが、陽の当たらない地味な研究をおろそかにすれば、日本の技術力がじわじわと低下するのは目に見えている。

 ビジネスにつながるような研究開発なら、国が少しだけ手助けすればいい。企業が自ら製品化し、離陸させればいい。国がやるべき重要な役割は、ビジネスにつながりにくい地味な分野の技術力の維持・発展である。地味な研究を負け組に追いやらない政策は、日本の科学技術の足腰を磐石にするために重要である。

http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu/20060921nd99l000_21.html

 ロケット開発とは分野は全く違っていますが、この原発タービン破損事故は、生産を伴わない技術力をキープするのがいかに難しいかを示すいい例です。

 また、原子力の平和利用に特化している日本が、「世の中の原子力離れや、電力会社の原発発注の先細りに伴って、大学では「原子力学科」をなくしたところが出るし、周辺技術の関連学科も勢いを失っている」のに対し、「米国では原子力産業界はそれなりに技術力を維持している。海外のプラント受注もあるが、国内でも原子力空母や原子力潜水艦など海軍の原子力利用があるためで、原発の新規発注がなくても国ぐるみで技術力を維持・継続する仕組みを持っている」ことも、ロケット開発現場で起こっていることと極めて相似しているといっていいでしょう。

 ・・・

 固体燃料ロケット技術も原発タービン技術も、それぞれを平和利用という縛りで括る限り、日本はまともにやっては軍事利用している国には競争で勝てるわけはありません。

 そして放置すれば競争に負け縁の下の技術は失われていくのです。

 この記事にもあるとおり、官僚や政治家はとかくパフォーマンスを優先し、地味な仕事、研究に対する目配りを欠きます。

 官僚は3年もたてば持ち場が変わるし、その場しのぎや時流に合わせて聞こえのよい政策を進める傾向も強いのです。

 くわえて日本のメディアは国際競争力の無い無駄と思われる技術に対しては極めて冷淡であります。

 しかし、陽の当たらない地味な研究をおろそかにすれば、日本の技術力がじわじわと低下するのは目に見えているのです。

 ビジネスにつながるような研究開発なら、国が少しだけ手助けすればいいのです。

 しかし競争相手国が軍事予算を投入してくるような基盤技術に於いては、国がやるべき重要な役割は、ビジネスにつながりにくい地味な分野の技術力の維持・発展にあります。

 地味な研究を「負け組」に追いやらない政策こそ求められるのではないでしょうか。



(木走まさみず)