木走日記

場末の時事評論

Xデーは今年9月9日?〜北朝鮮が核実験を強行する可能性

 7月5日の北朝鮮によるミサイル連続発射から20日が過ぎようとしています。

 この間、日米主導による北朝鮮制裁決議案が国連に提案され、結果的には中国・ロシアも含む15ヶ国全会一致の北朝鮮非難決議案が可決されました。

 北朝鮮にとり中国・ロシアの同盟国まで決議案賛成に回ったことは大きな痛手だったのでしょうが、決議案採決45分後には反対の意向を表明するなど。そのかたくなな態度はますます国際的に孤立してきています。

 当ブログでは過去2回に渡りアメリカ大使館筋の情報をご紹介してまいりました。

【7月6日】
■[朝鮮]北朝鮮がロシアにすら事前通告しなかった理由〜金正日中枢部に不気味なある種の軍シフトが起こっている可能性

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060706
【7月9日】
■[国際]北朝鮮制裁決議案採決は日本外交の歴史的勝利か?〜戦後国連外交史上初めて日本が中国にチェックメイトしたという見方

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060709/1152437149

 お伝えした情報筋の話が、その後のメディア報道より一部先行した内容が含められていたことや、結果的にこの情報筋の話の情報精度が高いと判断できるいくつかの事後確認報道もあったために、多くの読者のみなさまの関心をいただきました。

 そこで今回も不肖・木走がスティーブ氏経由でアメリカ大使館筋から新たに間接的に入手した話をご紹介しましょう。

■中国と北外交部のこれまでのチャンネルが無効化して機能していない
北朝鮮は外交的に完全に手詰まりになっているようだが、北の次の一手アメリカ側はどう読んでいるの?」
「それがわかるんだったら逆に教えて欲しいよ(苦笑)。 冗談はともかく米大使館としては楽観視は全くしていない。さらなるミサイル発射の可能性は当面低くなったが、現状では中国の説得工作も目途が立たないようだし6ヶ国協議再開で話し合いによる解決に向かうような兆しは北側の動きからは全く感じられないんだ。」
「中国と北朝鮮の不仲説も日本のメディアでは報じられているけれど真相はどうなの?」
「どうもかなり複雑な事情のようだ。今回のミサイル連続発射が北外交部を無視した「将軍と軍」の暴走の可能性があると君に前に話したが、そのあたりが原因なのか関連は現時点でわからんが中国と北外交部のこれまでのチャンネルが無効化して機能していないフシがある」



■中国が一気に態度を硬化した可能性
「北としては決議案に賛成した中国に対して強い不信感が芽生えたらしいが、それが原因なのか」
「いやいや北が中国に対する不信感が芽生えたのは結果論で、逆になぜ中国が決議案賛成に回ったのか、そこがポイントなんだよ。 実は正規ルートか裏ルートか定かではないが中国は北外交部からではなく北軍部情報として、北がさらなる軍事的強攻策を用意していることを知らされて、(中国は)一気に態度を硬化した可能性があるんだ」



朝鮮戦争停戦合意以来史上初めての全会一致の北朝鮮非難決議案がますます北外交部を弱めている
「さらなる軍事的強攻策って?」
「ずばり核実験だよ」
「核実験? それは北にとって外交的にはリスクが高すぎるんじゃないのか」
アメリカ大使館の一部で真剣に憂慮されている筋書きはこうだよ。北の将軍は軍部の意向を無視できないために今回のミサイル連続試射に踏み切った。その結果外交的には中ソ同盟国まで北を裏切る形で国連決議案賛成に回った。日本ではあまり指摘されていないと思うが、今回の全会一致での北朝鮮制裁決議案は北外交部にとっては痛打となってしまったのだ。朝鮮戦争停戦合意以来史上初めての全会一致の北朝鮮非難決議案だからね」
「外交部の権力はますます弱まっていると」
「今回のミサイル連続試射が外交的には何もえるモノがなかったことで、普通なら外交路線を柔軟に切り替える検討がされるべきなのだが、驚くべきことに北は次の軍事的チャレンジを準備してこのチキンレースエスカレートさせようとしている」



■日米相手に戦争勃発の崖っぷちまで追い込み、いっきに日米の譲歩を引き出す戦術
「それが核実験ということだね」
「戦争の危機を助長し、日米相手に戦争勃発の崖っぷちまで追い込み、いっきに日米の譲歩を引き出す戦術なのかも知れない。彼等は過去の成功を忘れてはいないんだよ。これは、1994年に、戦争一歩手前までいった核危機の時に彼等が使った手なんだ。北朝鮮は結果としてカーター元大統領訪朝とジュネーブ合意を手にしている」
「それにしても今回は当時と状況が違うと思うのだが。ブッシュ政権クリントン政権のような懐柔策を取る可能性は少ないのではないか」
金正日はもはやいまさら弱気な策を取るわけにはいかない可能性がある。軍が収まらないというわけだ。外交的な果実を得るまではこのチキンレースエスカレートしつつ続行される危険があり、そしてその可能性は高い」



■Xデーとして最も危ない日は9月9日だ
「もし北が核実験を強行するとすればいつなの?」
「Xデーとして最も危ない日は、ずばり過去の北の挑発行動から推測して9月9日だ」
「北の建国記念日だね」
チキンレースは互いに正常な精神・判断力があるからゲームとして成立する。もし核実験を北が強行したらブッシュ政権はこのゲームから降りるかも知れない。その時はアメリカの国益のために限定攻撃も選択肢として現実味をもって検討されるだろう」

 今年の9月9日に北朝鮮が核実験を強行する可能性があるという、私たち日本人には看過できない筋書きなのであります。

 現時点では可能性に過ぎませんが、この話の正誤の判断・評価は読者におまかせいたしますが、みなさまのこの問題に対する考察の一助になれば幸いであります。
 


(木走まさみず)



<関連テキスト>
■[朝鮮]北朝鮮がロシアにすら事前通告しなかった理由〜金正日中枢部に不気味なある種の軍シフトが起こっている可能性
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060706
■[国際]北朝鮮制裁決議案採決は日本外交の歴史的勝利か?〜戦後国連外交史上初めて日本が中国にチェックメイトしたという見方
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060709/1152437149