北朝鮮ミサイルは準日本製?〜決議案を厳しく守るべきなのは実は提案国日本自身だ
●北朝鮮決議1695に唱われた「ミサイル関連の品目、物資、商品、技術が移転されることを阻止」
国連安全保障理事会が15日採択した北朝鮮決議1695の本文は次の通り。
【本文】
一、国際平和と安全の維持に対する安保理の特別の責任の下で行動する。
一、現地時間の06年7月5日の北朝鮮による複数回の弾道ミサイル発射を非難。
一、弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を凍結し、ミサイル発射を凍結するという既存の確約の再公約を要求。
一、加盟各国の法律と国際法に従い、北朝鮮のミサイルや大量破壊兵器開発に、ミサイルやミサイル関連の品目、物資、商品、技術が移転されることを阻止するために必要な措置を、加盟国に要求する。
一、加盟各国の法律と国際法に従い、北朝鮮からのミサイルやミサイルに関連する品目、物資、商品、技術の調達を禁じ、北朝鮮のミサイルや大量破壊兵器開発に関連したいかなる金融資産の移転も阻止するために必要な措置を、加盟国に要求する。
一、北朝鮮に対し、自制を示すことと緊張を激化させる行動を控えることの必要があることと、政治的、外交的努力で不拡散問題に取り組み続ける必要性を強調する。
一、北朝鮮に対し、前提条件なく6カ国協議に即時復帰し、05年9月19日の6カ国協議共同声明の迅速な履行に向けて行動することを強く要求。特に、すべての核兵器と進行中の核開発計画を放棄し、早期にNPTへの復帰とIAEAの査察を受け入れることを強く要求する。
一、安保理は6カ国協議を支持し、早期再開を求め、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定と、検証できる形での朝鮮半島の非核化を平和的手段で達成する目的を持った、05年9月19日の6カ国協議共同声明の完全な履行に向け、協議参加国が努力を強めることを求める。
一、この問題に引き続き取り組むことを決定する。
産経新聞(共同)
(07/16 09:44)
http://www.sankei.co.jp/news/060716/kok034.htm
言うまでもなくこの北朝鮮決議1695のミサイル技術流出阻止のポイントは第四項と第五項にあり、特に第四項により国連加盟国は北朝鮮に「ミサイル関連の品目、物資、商品、技術が移転されることを阻止」する義務を負わせているわけです。
一、加盟各国の法律と国際法に従い、北朝鮮のミサイルや大量破壊兵器開発に、ミサイルやミサイル関連の品目、物資、商品、技術が移転されることを阻止するために必要な措置を、加盟国に要求する。
しかしこの第四項にこれまで抵触してきた疑念のある最たる国のひとつが本決議案提出国の日本であることを私たちは忘れてはいけません。
北朝鮮が現在有する核技術はともかく、ミサイル発射技術全般(ミサイル本体と発射台(ランチャー)と誘導システム)においては、日本の高度電子技術・軍事技術が流出し移植されてきた疑念があります。
なぜか日本のマスメディアはこの点をあまり報じていませんが、再発を防ぐためにも北朝鮮のミサイル開発に日本の技術が流出してきた疑惑の軌跡を検証してみましょう。
●ミサイル部品の90%が万景峰号で日本から輸入されていた〜亡命ミサイル技師、米公聴会で3年前に証言
3年前の東京新聞記事から・・・
新潟港に九日入港予定だった朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が北朝鮮・元山港からの出航を取りやめたことが分かった。北朝鮮側は、日本が前例のない厳戒態勢を敷いたのが理由とし「不当な策動」と日本政府を非難。今後の日朝関係に影響を与えそうだ。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の南昇祐副議長は八日、東京都内の中央本部で記者会見し「日本の当局は非友好的な措置をあらためるべきだ」と当面運航を見合わせる意向を示した。運航再開は未定という。
政府関係者は(1)安全検査が強化された(2)入港が日本国内で大きな騒ぎとなった−ことが取りやめの理由との見方を示した。政府は運航が再開された場合でも厳格な検査を実施する方針。
拉致被害者の家族らは九日朝、新潟港で運航再開反対と北朝鮮への経済制裁を訴えた。
万景峰は一月の入港以来約五カ月ぶりに九日午前、新潟港に入る予定で、六月二十三日の次回入港以降、九月までに計九回の運航を計画していた。
国土交通省は船舶の安全性を検査する「ポートステートコントロール」(PSC)を十年ぶりに実施する方針で、安全基準を満たしていないとして航行停止命令を出す可能性があった。
船長から八日午後零時半ごろ「出航せず」の電報が船舶代理店に届き、朝鮮総連は乗船を予定していた朝鮮大学校の学生や祖国訪問団の約二百五十人に運航見合わせを伝えた。
万景峰をめぐっては、北朝鮮の元技師が米議会で「ミサイル部品の90%は万景峰を通じて運ばれていた」と証言。対韓国工作活動の舞台になった疑いもあり、国交省、海上保安庁、東京入国管理局、東京税関などが過去最大の約三百七十人で立ち入り検査を予定。警察当局も機動隊員ら約千五百人を動員し右翼の抗議行動に備えていた。
◆ポートステートコントロール(PSC) 海上人命安全条約などの国際条約に基づき、安全航行や海洋環境保護の観点から外国船舶に対して寄港国が行う検査。外国船舶監督官が船内に立ち入り、船体の構造や設備に問題がないか調べ、海図や各種証書、救命ボートを備えているかチェックする。主に新造船や老朽船が対象とされる。欠陥が発見された場合には、修理など是正を命じることができ、是正されない場合は出港を差し止めることもできる。
(2003年6月9日)
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/niccho/s030609.shtml
3年前のこの東京新聞記事ですが、当時の日本政府の「ポートステートコントロール」(PSC)を十年ぶりに実施する方針を受け、万景峰号が入港中止に追い込まれたことを報じています。
日本政府が当時10年ぶりに監視強化を踏み切ったのは、記事にもあるとおり、一月前に、北朝鮮の元技師が米議会で「ミサイル部品の90%は万景峰を通じて運ばれていた」と証言したからでした。
当時の共同通信記事から・・・
【ワシントン20日共同】米上院政府活動委員会の小委員会は二十日、北朝鮮の麻薬密輸と兵器輸出に関する公聴会を開催、米政府高官や亡命した元北朝鮮高官らが証言した。証人の一人で、北朝鮮の弾道ミサイル開発に携わった元技師は、ミサイル部品が「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を通じ(北朝鮮と日本を結ぶ貨客船)万景峰号によって三カ月ごとに運ばれていた」と証言した。
公聴会が開かれたのは金融管理・予算・国際安全保障小委員会(フィッツジェラルド委員長)。北朝鮮の麻薬密輸疑惑に絡み米議会の公聴会が開かれるのは初めて。
証言した元技師は一九九七年に中国に脱出。この日は頭に黒いベールをかぶり「李福九」の偽名でついたてに囲まれて証言した。同技師は、十五日にもワシントン市内で会見し「ミサイル部品の90%が日本から輸入されていた」などと述べていた。二十日の証言でも「急ぐときは自分たちで港まで部品を取りに行った」などと語った。
朝鮮総連幹部は二十一日、共同通信に対し「そんなことは全くあり得ない」と全面否定した。
公聴会ではまた、北朝鮮の元高官が「北朝鮮は国ぐるみで麻薬密輸にかかわっている」と証言。政府証人の米国防総省のホリス副次官補(麻薬対策)は、北朝鮮による麻薬売買は「米安全保障に対する潜在的脅威だ」と指摘し、北東アジアの麻薬密輸を取り締まるため「地域各国を支援する用意がある」と述べた。
(了) 05/21
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/niccho/news/0521-381.html
この証言によれば「ミサイル部品が「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)を通じ(北朝鮮と日本を結ぶ貨客船)万景峰号によって三カ月ごとに運ばれていた」うえで、「ミサイル部品の90%が日本から輸入されていた」とあります。
このミサイル技師が亡命したのがテポドン一号が試射される一年前の1997年ですから、この証言が事実だとすれば、ノドンやテポドンの電子部品の多くが日本製パーツにより構成されている可能性が高いことを意味しています。
記事にもあるとおり、当然ながら当時「朝鮮総連幹部は二十一日、共同通信に対し「そんなことは全くあり得ない」と全面否定した」のでありますが、その後この問題はうやむやのまま追求されることなくマスメディアでは報道されなくなります。
●テポドン1号に大きく技術貢献した『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』
ここに在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』(東京都文京区)という団体があります。
在日本朝鮮人科学技術協会
在日本朝鮮人科学技術協会(科協)は、祖国光復後に自然科学の専攻分野別に組織された科学者、技術者の団体を網羅して1959年6月に創立された。
科協は、創立から今日にいたる活動をつうじて、12の支部と7つの専門委員会に著名な学位・学職、名誉称号の保有者をはじめ有能な科学者、技術者と生産業者を網羅した権威ある在日朝鮮科学技術団体として発展している。
科協は、傘下の科学者、技術者がりっぱな科学技術成果を達成するよう尽力しており、かれらの科学技術研究成果が祖国の建設と在日同胞社会の発展に資するよう活動している。また、6.15共同宣言発表後、共同宣言の基本精神にもとづいて北と南の科学者、技術者との共同研究を積極的に推進して、民族の科学技術発展に寄与している。
在日朝鮮科学者、技術者と生産業者が団体を組織して祖国と民族のため貢献していることは、崇高な祖国愛、民族愛の発露として高い評価を受けている。
科協は、1967年2月に世界科学者連盟に加盟した。日本と世界の学術団体と著名な科学者、海外同胞科学技術者との学術交流と親善、連帯を強化するための活動を積極的に進めており、世界各国で開催される国際学会、会議にも参加している。
科協はまた、機関雑誌『科学技術』を出版し、共和国の自然科学論文集『学術通報』などを定期的に普及している。
こんにち共和国の院士と70余人の学位・学職、名誉称号の保有者、150余人の日本の学位・学職保有者を網羅している。
http://www.chongryon.com/j/cr/10-15.html
彼等はこれまで長らく「北朝鮮の軍事産業を支える産業スパイ集団」として北朝鮮研究者たちの間では確信を持って語られてきました。
科協が祖国に送り続けたのは、輸出規制品である戦略物資や電子部品などだけではなく、ときに貴重な軍事データや科学文献なども含まれてるのであります。
テポドン1号発射の翌年の99年3月、平壌の人民文化宮殿で「全国科学技術者大会」が開催されました。
日本から総連科学者代表団(科協)も参加したこの大会で、北朝鮮のチェ・テボク書記はこう演説しています。
「100%我々の力、我々の技術で人工衛星の打ち上げに成功したのは、我が国の最新科学技術のもっとも誇らしい、貴重な成果である。在日本科学者・技術者たちは、社会主義祖国の富強発展と祖国統一のために愛国的な活動を活発にくり広げ、主体朝鮮の公民になった栄誉を胸深く刻み、祖国の科学者、技術者たちと経済建設に大きく尽くした」
ここでいう人工衛星とはテポドン1号のことであり、つまりミサイル発射に科協が大きく貢献したと発言しているのです。
●防衛庁の最新型地対空ミサイルシステムに関するデータ流出〜今年1月24日産経新聞記事
『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』の暗躍は過去の話ではありません。
今年になっても彼等の疑惑の活動が報じられています。
今年の一月、陸上自衛隊の最新型地対空ミサイルシステムに関する研究開発段階のデータが「科協」に流出した疑惑が浮上します。
「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』(東京都文京区)が、陸上自衛隊の最新型地対空ミサイルシステムに関する研究開発段階のデータなどが記載された資料を入手していたことが23日、警察当局の調べでわかった。データはすでに北朝鮮に送られているとみられ、警察当局は資料の流出経路などについて捜査を進めている」(産経新聞06年1月24日付け)
最新型地対空ミサイルシステムとは、「03式中距離地対空誘導弾システム」(略称=中SAM)を指す。領土に侵入してきた航空機などを打ち落とすために地上から発射されるミサイルだが、陸上自衛隊は、03年度からその最新システムの配備を進めていた。記事によれば、その開発データが科協を通じて北朝鮮に渡っていた疑いがあるという。
科協が入手した資料とは、三菱総合研究所が戦術弾道弾(TBM)への対処能力の性能などを検討するために作成していたシミュレーションソフトに関するものだった。自衛隊法上の丸秘案件に相当し、中SAMの展開・運用構想、要撃高度、要撃距離、援護範囲などに関する数値や、戦闘爆撃機に対する性能数値なども記載されていた。
このシステム開発には、三菱電機や三菱重工、東芝など国内の大手防衛関連企業が関わっていたが、三菱電機はこの研究を関連会社の三菱総合研究所に依託。そして同研究所は、その報告書作成業務の一部を孫受けのソフトウエア会社に依託していた。そして、この会社が、昨年10月に逮捕された科協幹部2名が役員を務める、科協関連の企業だったのである。
防衛庁は、データの流出によってミサイルの運用に直接の影響はないとしているが、「長年に渡り、このような軍事情報を含む日本の重要機密が科協を通じて北朝鮮に流れていたのは、間違いない事実」(総連関係者)である。
もしこの「長年に渡り、このような軍事情報を含む日本の重要機密が科協を通じて北朝鮮に流れていたのは、間違いない事実」(総連関係者)であるならば、これは到底看過できるモノではありません。
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3年前の米上院政府活動委員会小委員会の公聴会での亡命元北朝鮮ミサイル技師の発言「ミサイル部品の90%は万景峰を通じて運ばれていた」の真相はいまだに究明されていません。
また、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)、およびその傘下の『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』が高度電子部品や軍事機密の流出にどこまで関わってきたのかは、闇のベールに包まれています。
しかし、今検証したとおり、何年も前から多くのミサイル関連のパーツや情報が『在日本朝鮮人科学技術協会(科協)』を通じて、日本から北朝鮮に流出してきたことを示唆する関係者の証言があるのです。
ノドンやテポドンの中には日本製パーツがぎゅうぎゅうに詰まっている可能性があるわけです。
今回ノドンやテポドンが落下したと想定される日本海の海域では、米軍や自衛隊の懸命な情報収集作業が続いています。
もしかしたらたくさんの日本製電子部品がすでに回収されている可能性もあるのです。
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今回の決議案を厳しく守るべきなのは実は提案国日本自身なのかも知れません。
(木走まさみず)