北朝鮮制裁決議案採決は日本外交の歴史的勝利か？〜戦後国連外交史上初めて日本が中国にチェックメイトしたという見方
●日本提出の国連北朝鮮制裁決議案に中国がお困りのようです
今日（９日）の産経記事から。
唐氏「北制裁は逆効果」 ミサイル発射問題
≪事前通報なしには不満≫【北京＝福島香織】中国の唐家セン国務委員は８日、北京を訪問中の自民党の逢沢一郎幹事長代理と会談、北朝鮮のミサイル発射問題について「制裁による紛争解決を支持しない。制裁は北朝鮮のような国にとっては逆効果」として、日本が国連安全保障理事会に提出した制裁決議案に反対する姿勢を示した。
中国が制裁決議案に拒否権を行使するかどうかについては、「中国は責任ある大国として適切な判断を行う」と述べるにとどめた。
唐国務委員はさらに「北朝鮮から事前通報はなかった」と不満を漏らし、「中国の立場としては北朝鮮のミサイル発射を支持しない。東アジアの平和に役立つものではない。どのようなマイナスの影響があるか注視している」と懸念を示した。
唐国務委員は１０日からの武大偉外務次官の訪朝にも言及、「中国の厳しい見方を改めて伝える」と語った。しかし「中国は北朝鮮に対してコントロールしようとか君臨しようとかいう立場に立とうというのではない」とも述べた。
(07/09 01:02)
http://www.sankei.co.jp/news/060709/kok006.htm
中国がお困りのようです。
友好国に対してさえ事前通告無しにミサイル連続試射してしまった北朝鮮に対しては「北朝鮮から事前通報はなかった」と不満を漏らし、１０日からの武大偉外務次官の訪朝時に「中国の厳しい見方を改めて伝える」としていますが、日本が国連安全保障理事会に提出した制裁決議案に対しては反対としながら「中国は責任ある大国として適切な判断を行う」と拒否権を行使するかどうかについてはお茶を濁しているようです。
前々回のエントリーでアメリカ大使館筋のこぼれ話を情報提供してみましたが、その話の中の「中国にもロシアにも今回は事前通知がなかったようだ」という情報ですが、この記事にもあるように表向き公式には中国にも「北朝鮮から事前通報はなかった」ようでありますので、今のところ否定する事実は出てきていません。
前々回のエントリーで北朝鮮中枢部が軍シフトしている可能性があると紹介したその正誤はいまだわかりませんが、このアメリカ大使館情報筋の情報精度がけっこう高そうな気がしますので、今回も情報提供者スティーブ氏との意見交換を無責任にご紹介したいと思います。
長年の読者はご存知と思いますが私とスティーブは実は同業者でありましてなおかつ毎週のように一緒にお酒を飲んでいるビール大好き日米友好中年デブ仲間なので、取材はいつでもＯＫなのです（苦笑
今回は日本提出の国連北朝鮮制裁決議案についてのこぼれ話です。
●国連北朝鮮制裁決議案採決は日本外交の歴史的勝利〜戦後外交史上初めて日本が中国にチェックメイト
■日本政府の行動はアメリカ政府にとってはシナリオどおり
木走「やはり君の情報のとおり中国にもロシアにも事前通知はされていなかったようだね。」
スティーブ「アメリカ大使館の情報網をなめないでほしいね（苦笑 もっとも、両国政府とも外交では狸のようなタフガイプレイヤーだから、公式にはともかく水面下では知らなかったのかどうかあやしいがね」
木走「ところで今回の日本主導の北朝鮮制裁決議案についてはアメリカ大使館側ではどう評価してるの？ 中国の議長表明案を突っぱねるなど、いつになく日本が国連の場で強硬に出ている印象もあるのだけれど」
ス「アメリカメディアではある種の驚きを持って今回の日本のスピーディーで毅然とした行動を見てるのは事実だね。今までの国連における日本のイメージはお金を出すけど意思表明は苦手な国、「無口な金づる（silent financial supporter）」だったからね。アメリカメディアだけでなく関連諸国も今回の日本の行動力には驚きを隠していないようだね」
木「アメリカ政府にとっても驚きであったの？」
ス「いやまったく驚いてない（笑 日本のメディアがどこまで報道しているのか知らないが、先月下旬頃には日米両国の間、具体的には日本の首相官邸とアメリカ大使館の間でだが、かなり細かい段取りまで決定していたんだ。テポドンが試射された場合には、即刻日本政府が９項目の制裁を表明すること、日本が北朝鮮制裁決議案を国連に提出しアメリカがそれを支持すること、今回の日本政府の行動はアメリカ政府にとってはシナリオどおりだと思うよ」■現時点で対中国日本外交の歴史的勝利だ
木「なるほど、日米両政府の間ではそこまで事前に決まっていたのか・・・ ところで、理事国１５ヶ国の中で反対の意向を示しているのは中ロ二ヶ国だけだそうだが、ともに拒否権を持っている常任理事国だよね。日米側に制裁決議案を可決する勝算はあるのだろうか？」
ス「僕個人は、中国は拒否権を使用するかも知れないがロシアは棄権か欠席にまわる可能性が高いと読んでいる」
木「するとやはりこの決議案は否決される可能性の方が高いんだね」
ス「それはそうだが見方が甘いなあ、実は、手ぬるい中国議長表明案をけって１０日に制裁決議案を採決することを強行して決めた時点で、この件は歴史的日本外交の勝利だと評価していいんだぜ」
木「え？ 現時点で歴史的日本外交の勝利だと？」
ス「現在の安保理事国は、米英仏中露の５大国に、非常任は日本、デンマーク、スロバキヤ、ギリシャ、アルゼンチン、カタール、コンゴ、ペルー、タンザニア、ガーナの１０ヶ国だが、この内中ロを除いた１３ヶ国が日本の北朝鮮制裁決議案に賛成しているわけだ」
木「なるほど」
ス「おそらくロシアが棄権か欠席に回れば、中国としては棄権か欠席すればこの制裁決議案は可決してしまい外交的敗北になり、日本の外交的勝利となる。もし万が一中国が拒否権を使って反対すれば安保理でただ一国だけ北朝鮮を擁護した常任国として国際世論から北朝鮮と共倒れして徹底的に批判を受けることになるだろう」■日本が中国に外交史上初めてチェックメイトをしかけたのはコイズミが勝因
木「つまり現時点で中国は棄権・欠席しても拒否権を使って阻止しても、外交的には敗北が見えていると」
ス「そうだよ。日本のメディアがどう伝えているのか知らないが、国連の場では日本は見事に中国に外交的王手（checkmate）をしかけたんだ。中国はどっちに逃げても外交的には極めて厳しい状況に追い込まれているんだ」
木「そうか日本外交が中国外交にチェックメイトをかけていたのか」
ス「日本のこの勝因は４つ。ひとつは日本は事前にアメリカとシナリオを用意して準備万端であったのに対し、中国とロシアは事実上無策でここまで来てしまったこと。中国が時間的余裕を確保できなくてコンゴ、タンザニア、ガーナなどのアフリカ諸国などに根回しすることができなかったこと。３つ目はロシアが半月後のサミット開催国であり先進国の中で突出することに躊躇せざるを得ないこと。」
木「最後の４つ目の勝因は？」
ス「コイズミだよ。今回日本がここまで強気に行動したのも、ブッシュ・コイズミの友好関係に裏打ちされた過去にない蜜月の日米関係がなければ不可能だっただろうし、ここまで首相官邸主導で国連外交を展開したのも、おそらく日本の戦後外交史上初めてだったのじゃないのか。コイズミ政権でなければこれも不可能だっただろう」
木「日本の戦後外交史上初めての歴史的日本外交の勝利ねえ・・・ 少しおおげさなんじゃないかな？」
ス「日本が戦後国連に復帰してから、日本が提出した決議案、しかも特定の他国を制裁する決議案を採決にまで持ち込んだのは初めてなんだぜ。しかも正統な手続きを踏みながら中国を国際外交上ここまで日本が追い込んだことも初めてだろう」
木「日本が中国に外交史上初めてチェックメイトをしかけたわけね」
ス「日本のメディアにそのような論調がないのが不思議なんだよ（苦笑」
・・・
うーん、いかがでしょうか。
今回の日本が提出した国連北朝鮮制裁決議案ですが、コイズミ政権による日本が中国に戦後国連外交史上初めてチェックメイトをしかけた日本外交の歴史的勝利なのだそうです。
・・・
どうなんでしょうねえ、所詮小泉贔屓のアメリカ大使館筋のこぼれ話なのでしょうが、小泉政権に批判的に対峙してきた不肖・木走としては複雑な想いのこの小泉政権賞賛の分析なのではあります（苦笑
このこぼれ話の正誤の判断・評価は読者におまかせいたしますが、みなさまのこの問題に対する考察の一助になれば幸いであります。
（木走まさみず）
＜関連テキスト＞
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■[朝鮮]将軍様、アメリカ建国記念日を祝しミサイル５連発ス（爆）〜全てをサッパリぶち壊した「暁に向かって打て！！」ミサイル連発ショー
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