木走日記

場末の時事評論

朝鮮半島は北も南も「チキンレース」がお好き〜世界イチ位サン位連合の日米同盟軍に刃向かうのは少し無謀じゃありませんか?

●韓国の盧武鉉ノムヒョン)大統領〜東海(日本海)で突発事態に対応できる程度の戦力を備えよ

 昨日(22日)の毎日新聞記事から・・・

国大統領:EEZめぐる日韓対立に”武力衝突”発言

 【ソウル中島哲夫】韓国の盧武鉉ノムヒョン)大統領は22日、竹島(韓国名・独島)や排他的経済水域EEZ)をめぐる日韓対立に関連して、日本側が「挑発」すれば損害が多いと考える程度の「防護的対応能力」を備えることが重要だと、海上での武力衝突の可能性をにらんだ発言をした。竹島の周辺海域などを警備する海洋警察当局の関係者ら200人を青瓦台(大統領官邸)での昼食会に招き、激励した席で語った。

 青瓦台の発表によると、盧大統領は「日本は我々より優れた戦力を保有しているが、我々は少なくとも日本が挑発できない程度の国防力を持っている」「日本と戦って勝つ戦闘力でなく、東海(日本海)で突発事態に対応できる程度の戦力を備え、それ以上は政治に任せてくれ」とも語った。

毎日新聞 2006年6月22日 21時31分 (最終更新時間 6月22日 21時33分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060623k0000m030118000c.html

 なんだかなあ一国の大統領としてどうなんでしょうか、どうしてこの人は他国が聞けば誤ったシグナルを受けかねない挑発的とも言える軽率な発言を繰り返すのでしょうか。

 竹島の周辺海域などを警備する海洋警察当局の関係者ら200人を青瓦台(大統領官邸)での昼食会に招き、激励した席で語った」そうですが、どのような意図の発言であろうと「東海(日本海)で突発事態に対応できる程度の戦力を備え」よなどという、この種の発言は日本の世論にはマイナスの効果しか与えないだろうことを理解していないのでしょうか。

 いつも冷静な韓国・北朝鮮分析で知られる私の尊敬するジャナーリスト、コリア・レポート編集長の辺真一(ぴょんじんいる)氏は、自身のサイトで次のようなきな臭い情報を開示しています。

5月26日(金)

竹島」(韓国名:独島)の領有権をめぐって対立していた日韓両国は23日の日韓外相会談を機に交渉に向けて歩み始めました。6月12日からは東京で日韓排他的経済水域(EZZ)境界線画定をめぐる交渉も再開されます。話し合いで円満解決が付けば良いのですが、事はそう簡単に運びそうにもありません。むしろ、難航が予想されます。現に韓国では万が一のため「独島防御特殊部隊」の創設が声高に叫ばれています。海・空軍から合同機動部隊を編成し、独島警備隊の場合は海軍の駆逐艦護衛艦、上陸艦で編成し、上陸艦には海兵機動隊が乗務します。こうした声が海軍主催の「艦船討論会」で出ているのが何とも不気味です。

辺真一のコリア・レポート より抜粋
http://www.krp1982.com/

 辺真一氏によれば「韓国では万が一のため「独島防御特殊部隊」の創設が声高に叫ばれて」いるそうでありまして、「海・空軍から合同機動部隊を編成し、独島警備隊の場合は海軍の駆逐艦護衛艦、上陸艦で編成し、上陸艦には海兵機動隊が乗務」といった具体的な編成まで「海軍主催の「艦船討論会」で出ている」そうです。

 まさか本気で日本と一戦交えようと企んでいるわけではないと思いますが、辺真一氏も、上記文章に続けて以下のように、このような挑発的な検討が続くならば「日本もこうした動きに黙ってはいない」だろうと強く韓国側に警告しています。

今号で「日韓もし戦わば」という記事を掲載しましたが、日韓の海軍力は大人と子供ぐらいの差があります。何しろ、日本は世界で第3位の「海軍力」を誇っています。世界11位の韓国では歯が立ちません。それで、海軍力の増強や「独島」の防御に一段と力を入れているわけですが、日本もこうした動きに黙ってはいないでしょう。韓国の出方次第では、再び測量船による海洋調査の再開という「実力行使」も予想されます。韓国の国防長官は日本の防衛庁長官との会談を希望しているようですが、日韓の首脳が会談できない状況にあって軍のトップ同士が膝を交えて会談することの意味は大きいと思います。韓国政府は南北鉄道問題で北朝鮮に対しても国防長官会談を呼びかけていますが、北朝鮮が応じない以上、日本との会談が先かもしれません。

 辺真一氏は、リアルな話として、「日韓の海軍力は大人と子供ぐらいの差があり」、「日本は世界で第3位の「海軍力」を誇ってい」て、「世界11位の韓国では歯が立ちません」と言い切ります。

 辺真一氏は冷静に4月の「竹島」海域をめぐる「日韓のチキンレース」は日本の勝利と判断しています。

4月25日(火)

 「竹島」(独島=韓国名)海域をめぐる「日韓のチキンレース」は、中国のメディアが「日本に有利に終わった」と報じているようにどう見ても日本の勝利に終わりました。「拿捕など実力行使も辞さない」と強気一辺倒だった韓国政府は「6月の国際会議に韓国が海底地形の韓国名称申請を断念しなければ我々としても海洋調査を実施せざるを得ない」との日本の「毅然たる外交」の前にあっさりと「降伏」(ノ・フェチャン韓国民主労働党議員)してしまいました。韓国の野党はこぞって、日韓の妥協を「韓国の完敗」と称し、また日韓合意文については「韓国の実質的降伏宣言に等しい」と盧武鉉政権の対応を激しく批判しています。日本の海洋調査を中止させたことで「韓国が勝利した」と伝える韓国外交通商部のホームページには国民から非難のメールが殺到し、一様に「屈辱外交」「弱腰外交」「売国外国」と罵倒しています。

 (後略)

 普段はプチリベラルを自称する不肖・木走ですが、こと領土問題になるとナショナリストに豹変する悪癖(苦笑)があるのですが、当時私は以下のようなエントリーで「日本は海洋調査を強硬すればよかった」と主張して、保守派の読者からも「どうどう、冷静に」といさめられる始末でした(苦笑)

(前略)

 今回の海洋調査は、日本に取り平和裡に竹島問題を国際世論に訴える絶好の機会だったわけです。

 もし韓国が日本の調査船を「海洋法では政府船舶は領海内でも拿捕(だほ)できない」ことを理由にその調査活動を黙認したならば(これは韓国世論を考えると可能性としては極めて少なかったでしょう)、日本は調査目的を達成でき、一方韓国世論は韓国政府の弱腰外交を強く糾弾したことでしょう。

 もし韓国が日本の調査船を「海洋法」を無視して拿捕を強行したならば、日本は直ちにこの問題を国際海洋法裁判所に持ち込むことが可能であったでありましょう。

 そしてこの竹島問題を国際的にアッピールする絶好の機会を得たことでありましょう。
 つまり、海洋調査をした場合、いずれにしても外交上では日本の得点となり、逆に日本が失うモノは何もなかったことでしょう。

(後略)

■[政治]好機を逃した日本外交〜海洋調査中止は外交的には不戦敗ではないのかより抜粋
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060423

 ・・・

 それにしても、盧武鉉大統領の今回の発言は、辺真一氏言うところの「竹島海域をめぐる日韓のチキンレース」を盧武鉉大統領自身はいまだ続けていることを、日本国民に強く印象づけたわけです。



●金総書記のブッシュ大統領との「テポドンチキンレース

 一方の北の将軍様も「チキンレース」がお好きなようです(苦笑)。

 昨日(22日)の産経新聞記事から・・・

偵察機侵入で「軍事的衝突の危険」と北朝鮮

 北朝鮮朝鮮中央通信は22日、米国の偵察機が最近、北朝鮮日本海側領空への侵入を繰り返していると主張、「軍事的衝突の危険が生じている」と警告する論評を出した。長距離弾道ミサイルテポドン2号」の発射準備とみられる動きには言及しなかったが、朝鮮人民軍の空軍司令部も11日から3回、米偵察機が領空侵犯したとして警告する談話を出している。今回の論評も、発射準備に対する警戒強化へのけん制とみられる。
 北朝鮮メディアは、25日の朝鮮戦争開戦56年を控え、21日から反米報道を集中的に展開しており、この日の論評はこれとも関連している可能性がある。(共同)

(06/22 19:53)
http://www.sankei.co.jp/news/060622/kok086.htm

 自分で勝手に国際協約を一方的に破る形で長距離弾道ミサイルテポドン2号」の発射準備をしているくせに「米国の偵察機」により「軍事的衝突の危険が生じている」とは、朝鮮中央通信らしい身勝手な反米報道なのでありますが、それはさておき、アメリカ国内でも過激な意見も出てきているようです。

北朝鮮への先制攻撃主張 ペリー元国防長官、米紙に寄稿

 ペリー元米国防長官は22日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿し、北朝鮮が長距離弾道ミサイルテポドン2号」の発射準備をさらに進める事態になれば、先制攻撃を加えミサイルを破壊する意思を直ちに表明するようブッシュ政権に求める考えを示した。
 カーター元国防次官補との共同寄稿で、同氏は攻撃方法として、潜水艦からの巡航ミサイルに言及。発火しやすい燃料を満載したテポドンに損傷を与えれば誘爆が起きるとし、被害は発射台周辺に限られると予測した。

 先制攻撃の理由として「外交が失敗した以上、死活的な脅威が進行する事態を座視できない」と説明。発射を見過ごせば北朝鮮に核弾頭やミサイルのさらなる保有を許す結果になるとした。

 テポドンの燃料抜き取りなどを拒否すれば、米国は攻撃意思を同盟国に知らせ、北朝鮮に警告する一方で、攻撃はテポドンに限ると同国側に強調すべきだとした。(共同)

(06/22 20:18)
http://www.sankei.co.jp/news/060622/kok091.htm

 ペリー元米国防長官といえば民主党クリントン政権時の国防長官だったわけですが、いやはや「先制攻撃を加えミサイルを破壊する意思を直ちに表明するようブッシュ政権に求める」とは、保守共和党もびっくりのきな臭い発言であります。

 北朝鮮は本気でテポドンミサイルを発射する気なのでしょうか。

 先にご紹介した朝鮮半島ジャナーリスト辺真一(ぴょんじんいる)氏によれば、4つの理由で、おそらく北朝鮮はミサイル発射実験を強行するのではないかと予測しています。

6月22日(木)

 (前略)

ブッシュ政権北朝鮮の要求を受け入れなければ、このまま見切り発射される可能性は極めて高いと考えられます。その根拠は4つあります。一つは、何の見返りのない中断、延期はありえないということです。金総書記にしてみれば、これはブッシュ大統領とのチキンレースと捉えています。金総書記は東西冷戦下で旧ソ連など共産圏が崩壊した端緒は1962年の「キューバ・ミサイル危機」の際のケネディ米大統領フルシチョフソ連共産党書記長によるチキンレースで、フルシチョフが敗れたことにあると考えています。従って、無条件では絶対に引き下がらないでしょう。二つ目は、核保有に続き、ミサイルまでも手にしてしまえば、もはや米国はイラクに対して行ったような軍事攻撃はできないと考えていることです。周知のように北朝鮮は昨年2月核保有宣言を行いました。核を何発持っていても、その運搬手段がなければ、それも米国に届く長距離ミサイルがなければ、何の意味もありません。核とミサイルはセットになって初めて威力を発し、脅威となります。三つ目は、発射を取りやめたからといって米国の金融制裁や日本の経済的圧力が緩和されるわけではありません。米国はマネーロンダリングや偽札で金融制裁を実施し、また日本も拉致問題で経済的圧力を強めています。また、国際的包囲網を敷こうとしています。ミサイルを発射しようがしなかろうが、日米による経済制裁は強まることはあっても弱まることはないと見て取っていることにあります。四つ目は、仮に、北朝鮮が言うようにミサイルではなく、人工衛星の打ち上げならば、なおさら発射の可能性は大きいと思います。前回のテポドン発射では20kg程度の物体を軌道上に乗せようとしたところ必要な速度に達せず、失敗したと伝えられています。この物体が衛星ならば、再チャレンジしてもおかしくはありません。

 (後略)

 「金総書記にしてみれば、これはブッシュ大統領とのチキンレースと捉えて」いるとはまったく同感なのでありますが、それにしても金総書記は、このようなコトを繰り返す度に、日本の世論がどんどん日本の軍備強化やむなしと軍備増強肯定論になびいてしまうことを理解しているのでしょうか。

 前回のノドンミサイル発射実験のとき、日本海から東北地方をかすめるようにまたいで太平洋側に着弾したミサイルの軌跡が、その後の日米ミサイル防衛の共同参画、いわゆるMD構想に日本の自衛隊をいっきに世論が後押しするきっかけになったことをお忘れなんでしょうか。



●北も南も「チキンレース」がお好き〜世界イチ位サン位連合の日米同盟軍に刃向かうのは少し無謀じゃありませんか

 南の盧武鉉大統領も北の金正日総書記もきな臭い外交「チキンレース」がお好きなようですが、そのような「チキンレース」が結果として極東の軍事パワーバランスを不安定にし、不毛な軍拡競争を招きかねないことは覚悟の上なのでしょうか。

 史上最強世界一位の米海軍とアメリカべったりの世界三位の日本の海上自衛隊ですが、単に規模・戦力が強大な同盟軍というだけでなく、その連携プレイももはやひとつの軍隊並みの完全に統制された一つのシステムで管理されている域にまで達しているのです。

 今日(23日)の産経新聞電子版からタイムリーな速報記事・・・

米、弾頭迎撃実験に成功 海自イージス艦が初参加

 米国防総省ミサイル防衛局は22日、8月に米海軍横須賀基地(神奈川県)へ配備予定のイージス巡洋艦シャイローが参加し、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の迎撃実験をハワイ沖で行い、模擬中距離弾道ミサイルから分離した弾頭を撃ち落とすテストに成功したと発表した。
 日本から海上自衛隊のイージス護衛艦として初めて「きりしま」が迎撃実験に参加、標的となる弾道ミサイルをレーダーで捕捉、追尾する実験を行った。米側は北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射を準備しているとされる問題とは無関係としている。

 実験は米東部時間の同日夕に行われ、ハワイ・カウアイ島から模擬弾道ミサイルを発射、約4分後にシャイローがSM3を発射した。さらに2分後、同島の北西約450キロの太平洋上空で弾頭の迎撃に成功した。

 海上配備型の実験は8回目で、成功は7回目。分離した弾頭の迎撃成功は昨年11月に続き2回目という。

 シャイローは最も進んだ弾道ミサイルの迎撃能力を持つとされ、ブッシュ政権が進めるミサイル防衛の一環で日本配備が予定されている。(共同)

(06/23 12:06)
http://www.sankei.co.jp/news/060623/kok064.htm

 盧武鉉大統領、金正日総書記、見て下さい、この日米海軍の連携の成果を。

 米海軍のイージス巡洋艦「シャイロー」、日本海自衛隊のイージス護衛艦「きりしま」等の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)迎撃実験が完全に「中距離弾道ミサイルから分離した弾頭を撃ち落とすテスト」に成功したそうですよ。

 大統領も総書記もこの成果をどう考えます?

 MDシステム的には自衛隊は完全にアメリカ軍の配下に置かれたです。

 この2艦、今回の演習が終わったらすぐに日本海周辺に配備されるですよ。

 ・・・

 だてに日本はよその国の軍隊の引っ越しに税金を3兆円も払いませんですよ(苦笑)。

 お二人とも「チキンレース」がお好きなのはよく分かりましたが、世界イチ位サン位連合の日米同盟軍に刃向かうのは少し無謀じゃありませんかね。



(木走まさみず)