木走日記

場末の時事評論

マスメディアでは取り上げられていないのが不思議なNHKの大問題〜ワンセグ開始で破綻するNHK受信料制度

kibashiri2006-03-28


 いや3月は例年とても忙しいのですが、今年はちょっと有るメーカーの「ワンセグ」対応機種開発のプロジェクトのお手伝いをしている関係でもう死んでしまいたいぐらい多忙を極めております。
(↑そのわりにはしょっちゅう二日酔いだしブログは更新してるじゃないか?)

 ・・・(汗

 読者のみなさん、4月から始まる地上デジタル放送による携帯端末向け放送の「ワンセグ」サービスって、ご存知ですか?

 携帯電話でもテレビ放送が見れちゃう優れ者なんですよ、このサービスは。

 しかも、受信料は基本的にタダ。

 バッテリーさえ持てば何時間でもタダでテレビ放送が携帯で楽しめちゃう訳です。
 わかります? 通勤電車の中でも会社のデスクに座っていても、「ワンセグ」対応の携帯さえあればテレビが見えちゃう訳です。しかもタダで。

 6月に始まるドイツワールドカップの試合放送も「ワンセグ」対応携帯さえあれば、もう仕事中だろうと出張中だろうと会議中だろうと、気兼ねなく観戦できるのです。

 はい、音量さえ気をつければ仕事さぼり放題です(爆

 すばらしい技術革新ですね。

 え?

 その割には、テレビも新聞もあまり騒いでいないって?

 ・・・

 ふう。

 それはですね、マスメディアを筆頭にいろいろな業界のいろいろな胡散臭い連中が、「ワンセグ」で騒ぎたくない(騒げない)理由がいっぱいあるのでございます。

 まあ騒ぎたくない筆頭は「みなさまのNHK」こと、日本放送協会様なんですよ。

 なぜって・・・



ワンセグが促す通信と放送の融合(3/27)〜力が入った日経社説

 で、「ワンセグ」サービスって何なのかおさらいしておきましょう。

 日経が社説に取り上げていて珍しく(失礼)わかりやすい説明をしていますので、ご紹介しましょう。

 昨日(27日)の力が入った日経社説から・・・

社説 ワンセグが促す通信と放送の融合(3/27)

 4月から地上デジタル放送による携帯端末向け放送の「ワンセグ」が始まる。韓国より4カ月遅れたが、携帯電話や車載器でいつでもどこでも鮮明な映像が見られる。衛星デジタル放送による多チャンネル化以来の大きな技術革新だ。ワンセグ通信と放送の融合を促す1つのきっかけにもなるため、普及に向けて制度や環境を整える必要がある。

 ワンセグ地上デジタル放送波の1セグメント(部分)を使って放送することから、そう名付けられた。映像以外に文字などのデータも配信できるため、携帯電話の情報サイトなどと連動させることも可能だ。

融合へ企業提携が加速

 2008年まではテレビと同じ番組を流すサイマル放送が義務づけられるが、それ以降は携帯向けに独自番組の制作が可能になる。これをにらんで、放送会社も通信事業者との間で様々な提携戦略に乗り出している。TBSは携帯電話に新規参入するイー・アクセスの子会社に出資、テレビ朝日KDDI(au)と携帯連動サービスの共同実験を行う。携帯情報サービス大手のインデックスにも民放大手各社が出資した。

 楽天などによる放送会社株の買収では「インターネットと放送の融合」が話題となった。テレビ番組をネット配信できれば、内容を自由に選べるだけでなく、電子商取引などにも活用できるからだ。ワンセグは「携帯電話と放送の融合」を促すツールとなる。ソフトバンクが英携帯大手ボーダフォンの日本法人を買収した狙いの1つもここにある。

 通信と放送の融合が技術的に可能になった時代に、過去の制度をそのまま放置してはおけないだろう。インターネットが「デジタルデバイド」と呼ばれる情報格差問題を招いたように、従来の環境や制度のままではワンセグも新しいひずみを生む恐れがある。例えば地方と都市との関係だ。ワンセグは防災や緊急放送手段として期待が強いが、利用するには地上デジタル放送の受信環境が要る。ところが地上デジタル放送を受信できる地域は都市部を中心に全世帯の6割程度にとどまっている。

 若い世代と高齢者との間でも端末操作などの面で格差が生じよう。融合により新しい放送サービスが登場するのは結構だ。しかし国民に広くあまねく情報を伝えるという放送の使命を考えると、使い勝手の面などで様々な工夫が必要だろう。

 既存事業者と新規参入業者、放送会社とネット企業との間にも競争条件の不均衡が存在する。インフラ投資がカギを握る放送や通信は既存事業者が有利なことは否めない。その分、様々な法規制を受けるが、逆にネット企業には特段の事業規制がないという問題もある。

 ワンセグで双方向型の番組提供が可能になれば、視聴者の関心や趣味など様々な個人情報を放送会社が簡単に入手することも可能になろう。だとすれば、従来のような放送や通信設備に対する規制よりも、視聴者のプライバシー保護策のほうがより重要になるかもしれない。

 問題はそうした新しい技術革新に対し、行政の対応が十分に追いついていないことである。日本では情報、通信、放送、著作権など各分野の行政管轄が縦割りとなっており、通信や放送局の免許取得手続きにも時間がかかる。また一度取得すると、取り上げられることも少ない。

 米国では独立行政法人連邦通信委員会(FCC)が電波行政を担い、電波干渉など技術的問題がなければ比較的自由に新サービスができる。英国でも通信と放送の規制を「Ofcom」という行政組織に統合、電波の割り当てや新しい融合サービスが円滑に進むように改めた。

公正な競争環境必要に

 日本でも竹中平蔵総務相の「通信・放送の在り方に関する懇談会」で情報通信分野を一体的に監督できる体制が必要だとの声が出てきた。通信と放送の融合については、先行する韓国や中国も強い関心を持っている。08年の北京五輪が新技術の見せ場となるだけに、日本も手をこまぬいてはいられない。

 一方で注意も必要である。通信と放送の融合は娯楽分野では新たなビジネスを生むに違いない。携帯向け放送を受信できる端末は、車載器を含め10年度で約3000万台に達するとの予測もある。しかし放送には報道やジャーナリズムの担い手という公共の役割もある。経済性を追求するあまり、その基盤が損なわれることがあってはならない。

 通信と放送の融合はいわば「通信・放送のビッグバン」といえる。様々な制度改革により、自由で公正な競争環境をまず整え、さらに視聴者や番組制作者の権利も守られるよう安全策を講じる必要がある。ワンセグを単なる商機としてでなく、国民の生活水準の向上と日本の情報通信産業の国際競争力強化に向けた議論のきっかけとすべきである。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20060326MS3M2600426032006.html

 まあこの社説自体は、日経社説特有の面白みのない(失礼)まじめさとかたぐるしさにまみれているのですが、通信と放送の融合はいわば「通信・放送のビッグバン」という認識は正しいでしょう。

 まあ、かつて電話の携帯化が普及したときに日本人のライフスタイルが劇的に変わったわけですが、この「ワンセグ」サービスも、TVの携帯化という「ビッグバン」なのでありまして、少なからず日本人のライフスタイルに影響を与えるのではないかと思えるわけです。

 で、この「ワンセグ」サービスですが、まず民間メディアがあまり浮かれていないのは何故かと言いますと、それは自分たちの既得権益を守れるかどうか、いまひとつこの「ワンセグ」サービスの普及に依って何が起こるのか、見極め切れていないのであります。

 まず視聴率うんぬんで語られていることは、夜7時台から10時台までのいわゆるゴールデンタイムという言葉に代表されるこれまでの視聴動向に劇的変化が起こるのではないかという不安があるわけです。

 今までだったら視聴者の絶対数が少なかった、通勤時間帯や就業時間帯の「ワンセグ」サービス利用者が急増することが予想できるからです。

 視聴率第一主義の民放にしてみれば「ワンセグ」の普及により劇的に変わるであろう視聴動向は歓迎すべき変化というよりも不安感が先にあるのではないでしょうか。

 「ワンセグ」の普及具合によっては、視聴率の調査方法自体を今までとは変える必要が生じるかも知れません。

 つまり民放各社にとって、「ワンセグ」がもたらす将来は、いまだ計算できていないのです。



●メーカーも実は後込み〜実は料金発生しないサービスなんかありがた迷惑?

 今買える「ワンセグ」対応ケータイは3機種だけであります。

 KDDIが先陣を切って2005年12月に「W33SA」(三洋電機製)を発売、2機種目として「W41H」(日立製作所製)を2006年2月に発売しました。

 ちなみに気になるお値段ですが、店頭価格で2万―2万5000円といったところです。

 NTTドコモは「P901iTV」(パナソニックモバイルコミュニケーションズ製)を3月3日に発売しました。

 この機種は約3時間、番組を録画できる高機能付きで店頭価格で4万円前後とちょっと高め。

 ボーダフォンは「ボーダフォン 905SH」(シャープ製)を6月をメドに発売する予定だそうです。 価格は3万円かけるぐらいか。

 で、携帯各社ですが、これ以上TV視聴できる携帯をラインナップ化することには躊躇しているようです。

 カメラに、音楽、電子マネーと多機能化にひた走ってきた携帯電話各社ですが、実はワンセグ機能があらゆる携帯電話に標準装備されるかどうかは今のところ、はっきりしていません。

 なぜなら、携帯電話会社の収益源は通話料とデータ通信料、それにデータ通信で送るコンテンツからの収入なわけです。

 ワンセグは地デジのアンテナから放送波で送られるため、携帯電話会社にはお金が落ちないのです。

 ワンセグ携帯をいくら売っても、みんながテレビ番組ばかり見て、通話や携帯コンテンツの利用が減っては元も子もないのであります。

 ・・・

 なるほど、業界をあげて大騒ぎというわけにはいかないようであります。

 ・・・




ワンセグ開始で矛盾さらけ出すNHK受信料制度〜料金徴収手段が完全に破綻する垂れ流し放送のジレンマ

 で、最も悲惨なのが、我らがNHKであります。(苦笑

 「そっとしておいてよお」という彼等の悲痛な声が聞こえてきそうでありますが、メディアにはとてもうるさい当ブログとしてはここは指摘しておかなければ、全国327人(←うそですスミマセン、根拠無いです(苦笑))の当日記の読者に怒られてしまいます。
 みなさん、ワンセグではもちろん、NHK総合もNHK教育も思う存分見ることが可能なのですよ、もちろんタダで。

 え? 受信料?

 どうぞご安心下さい、そんなものいりませんよ。

 NHK公式サイトより・・・

ワンセグの利用に視聴料はかかるの?

 NHKでは、テレビ放送が受信できる設備をお持ちの方に対し、世帯単位で受信料の契約をお願いしています。このため、ご家庭ですでに受信契約をいただいている場合には、新たにワンセグの受信機を購入されたとしても、改めて受信契約をしていただく必要はありません。

ワンセグの双方向サービスや通信経由のサービスをご利用になる場合は、通信料が発生します。

http://www.nhk.or.jp/digital/oneseg/index.html

 ね。

 さすが「みなさまのNHK」ですね。

 「新たにワンセグの受信機を購入されたとしても、改めて受信契約をしていただく必要はありません。」ですと。

 太っ腹であります。

 みなさん、NHKの英断に拍手を・・・(←英断なのか?

 ・・・

 ふう。

 ・・・

 かわいそうなNHK・・・

 もう、「ワンセグ」が普及したらNHKの受信料制度は崩壊でありますね。

 こんな不平等で矛盾に満ちた受信料制度をどれだけの国民が支持するというのでしょう。

 電話で喩えれば、固定電話(家庭電話)は課金するが、携帯電話は無料でどうぞ、と言っている訳ですよね、日本放送協会は。

 こんな屁理屈が通用すると思っているのでしょうか。

 ・・・

 このNHKの苦渋の決断はとっても営利的打算から結論付けられたモノであり、胡散臭さプンプンなのであります。

 「ワンセグ」サービス開始により、モバイル受信機による放送受信が可能になると、技術的には誰が放送を見ているか管理することは不可能なのであります。

 WOWOWがしているように、スクランブル(暗号化)放送により加入者しか見れないようにするしか手段はないのですが、そのような案をメーカーが受けいるはずがありません。

 スクランブル解除するユニットを付加するだけで価格が跳ね上がってしまいますから。

 では、残された手段としては「ワンセグ」受信機器購入者に全てNHK受信料を払ってもらうしか無かったのですが、当たり前ですが、これは実現不可能なエゴイスティックな提案なのでありました。

 ・・・

 つまり、NHKはえらそうに「新たにワンセグの受信機を購入されたとしても、改めて受信契約をしていただく必要はありません。」と、説明していますが、「改めて受信契約をいただく必要はありません。」ではなくて、本当は「改めて受信契約をいただく方法はありません。」なのです。

 ・・・

 つまり「ワンセグ」が普及したらNHKの受信料制度は崩壊なのであります。

 ・・・

 今日は、マスメディアでは取り上げられていないのが不思議なNHKの大問題について「ワンセグ」サービス開発関係者から一言でした。



(木走まさみず)