木走日記

場末の時事評論

「偉大なるイエスマン武部幹事長」と「ゲーデルの不完全性定理」に関する一考察

kibashiri2006-02-17

 「がんばる人がちゃんと幸せになれる国をつくる。それが政治だと思います。」

武部勤WebSite
http://www.takebe.ne.jp/

 なんだか我らが「偉大なるイエスマン武部幹事長がピンチなのであります。



●ガセネタか真実か〜これは興味深いネタですね

 問題のメールはこちら・・・

 シークレット・至急扱いで処理して欲しいんだけど、おそくても31日できれば29日までに△△さん(次男名)宛てに3000万円を振り込むように手配してください(前回、振り込んだ口座と同じでOK)

 項目は、選挙コンサルティング費で処理してね。

 ○○○○、宮内の指示を仰いで。○○には、こちらからも伝えておくので心配しないで。

堀江



2006年02月16日13時31分 朝日新聞記事より引用
http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY200602160197.html

 「△△さん(次男名)」ってとこが、武部幹事長の次男の名前であったということのようですが、本日(17日)の速報記事によれば、武部勤幹事長は17日午前の記者会見で、あらためて疑惑を否定したようです。

武部氏があらためて疑惑否定 自民、民主側に立証求める

 自民党武部勤幹事長は17日午前の記者会見で、ライブドア堀江貴文前社長=証券取引法違反の罪で起訴=が武部氏の次男に3000万円を送金するよう電子メールで指示していたと民主党が指摘したことについて、「次男が自ら進んですべての個人・会社の銀行口座、通帳を明らかにした。これを確認したところ、全く事実無根だった」と疑惑を否定した。さらに「民主党は根拠が不明確なことをしばしば発言しているが、こうしたことは許されない」と語った。

 また、安倍官房長官も会見で「(指摘した)永田(寿康衆院)議員も国会の場で発言した以上、責任は重たい。メールが本当に存在するのか立証しなければいけない」と語った。

 この問題は、ライブドア事件についての集中審議が行われた同日の衆院予算委員会でも取り上げられた。民主党馬淵澄夫氏の質問に対し、谷垣財務相は「資料を出す方に立証責任があるのは当然のことだ」と語り、民主党側に立証を求めた。

 これに対し馬淵氏は、小泉首相が16日夜に「ガセネタをもとに委員会で取り上げるのはおかしい」と記者団に語ったことを取り上げ、「ガセネタと断定したことの説明責任は、そう言った人にある」と反論した。

 質疑に先立つ予算委理事会で自民党は、民主党に対し、どのように銀行口座への振り込みを確認したのか、メールにあった名前だけでどうして武部氏の次男だと確認できたのかについての説明と、実際のメールの存在を示すことを要求。民主党は、武部氏と次男らの参考人招致を重ねて求めた。

2006年02月17日11時04分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0217/002.html

 うーん、これは興味深い事態になってきましたね。

 不肖・木走としては、そもそもメールなどの電子ファイルなどいくらでも改竄(かいざん)できるシロモノなのであってこのメールだけをもって状況証拠となるのかは、はなはだ怪しいのではと思ってしまうのですが・・・

 それはともかく国会の場で公にしてしまったわけですからもしもこのメールがガセネタだとしたら、確かに馬淵澄夫氏ならびに民主党の責任は重いと言えますよね。

 谷垣財務相の言うように「資料を出す方に立証責任があるのは当然のこと」なわけで、民主党には立証責任があると思います。

 ・・・

 もしガセネタであれば民主党にとり手痛い失態となるでしょうし、もし真実だとしたら、これは武部幹事長の立場を極めて悪くすることは必定でありましょう。

 真実はどちらなのか見守っていきたいと思います。

 ・・・

 そもそもしかし、武部幹事長の今までの言動は、大きくぶれて来たのも事実なのではあります。



●「どういう根拠があって言っているのか意味不明」→「1〜2分の電話だった」

 14日日刊スポーツ社会面記事から・・・

武部氏、渡辺氏への電話認める 

 堀江被告が広島カープ買収に動いた際、自民党武部勤幹事長(64)に相談し、武部氏が巨人の渡辺恒雄球団会長(79)に働き掛けていた問題が13日、衆院予算委員会で取り上げられた。民主党原口一博議員が「与党の幹事長(武部氏)が巨人の会長に『今回は(買収に)反対しないでくれ』と言ったと承知している」と指摘した。

 これに対し、武部氏は記者会見で「堀江被告代理人から『渡辺さんを紹介してもらえないか』と言われその通り伝えた」と述べ、渡辺氏に電話したことを認めた。「渡辺氏は堀江君を批判し、会いたくないと言われた。1〜2分の電話だった」と述べた。働き掛けについては「全く言っていない。堀江君からも依頼は受けていない。調べてから質問すべき」と否定した。

 渡辺会長は昨年10月、堀江被告の球団買収の動きに絡み「ホリエモンは乗っ取りに必死。背後にいるのは幹事長、武部だよ」「武部さんもホリエモンの手先のようなことをやっているからだめなんだよ」と指摘。この時、武部氏は「どういう根拠があって言っているのか意味不明」と反論していた。

[2006/2/14/07:32 紙面から]
http://www.nikkansports.com/ns/general/p-so-tp0-060214-0003.html

 ナベツネさんじゃ武部幹事長も相手が悪かったということでしょうか(苦笑)

 最初、電話した事実そのものを否定していた武部幹事長なのですが、渡辺恒雄氏の再三の発言に音を上げてか、あっさり前言を覆し電話した事実を認める発言なのでありました。
 渡辺氏の発言によれば、渡辺氏に断られた武部幹事長は、経団連奥田碩会長へ渡辺氏を説得するように頼んだ事実も判明しております。

(前略)

 読売ジャイアンツ渡邊恒雄会長が武部がライブドアによる広島東洋カープの買収に協力していると発言。その後、渡邊の友人である三宅久之により、武部が先の件で渡邊にライブドアへの協力を要請して来た事と、渡邊に断られて経団連奥田碩会長へ渡邊を説得するように頼んだ事が2006年1月26日放送のTBSテレビ『きょう発プラス』で証言された。

(後略)

武部勤
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より抜粋
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E9%83%A8%E5%8B%A4

 うーん、働き掛けについては「全く言っていない。堀江君からも依頼は受けていない。調べてから質問すべき」と否定した武部幹事長ですが、渡辺氏に電話すること自体、更に付け足せば渡辺氏に断られた後、経団連奥田碩会長へ根回ししている行為自体、誰が考えても、堀江氏を後押ししていたという印象は拭えないのであります。

 ホリエモンは乗っ取りに必死。背後にいるのは幹事長、武部だよ」という当時の渡辺氏の発言もそう的をはずした意見とは言えないでしょう。

 ・・・



●我らが武部幹事長の問題発言・行動・迷言の数々〜『ウィキペディアWikipedia)』より

 だいたい我らが「偉大なるイエスマン」幹事長は少々口が軽いのであって、上記『ウィキペディアWikipedia)』から抜粋すれば過去の問題発言はこんな感じ・・・

2002年:農林水産大臣就任後表面化したBSE問題に「感染源解明は、酪農家にとって、そんなに大きな問題なのか」と発言し、「5年も10年も前の責任を私がとらないといけないわけではない」と辞任を否定したことから、国民から強い批判を受け、国会に問責決議案が提出された。

2004年11月20日靖国参拝について「日本では共産党員も創価学会員も、正月になれば神社に参拝する」と発言。

2005年4月16日:「幹事長となり三カ月持つかと言われ、半年が過ぎたが、郷土の皆さまのお陰。北海道新幹線の着工式が5月22日に行われる。これこそ私たちが公約を実行できるという証。札幌、旭川、網走稚内、釧路へと、新幹線を延ばし大きくいこう。21世紀は北海道の時代。」

2005年8月27日:衆院選自民党公明党ががっちり組んで、政権を守り抜くことができれば、武部勤幹事長は留任だ」と自ら発言し、批判されると「(留任話は)ウソだ。冗談だ」と撤回し、謝罪する。

2005年8月:小泉純一郎の総裁任期が切れたら消費税率を上げる」と発言するが、小泉純一郎内閣総理大臣との会談後、即日撤回する。

2005年9月:郵政民営化法案に反対票を投じた議員は無所属で当選しても復党させない」と言い切るが、小泉純一郎内閣総理大臣に翌日否定される。

2005年9月4日:衆議院議員城内実を評して「たびたび問題があった。一言で言うと二重人格者じゃないかと。私はそう思っておりました」と発言。城内実は「幹事長たる人が、個人を誹謗中傷する発言をしていないと固く信じている。だが、事実だとしたら遺憾だ」とコメントを発表。人権団体や精神疾患医療界からも批判を受ける。また、「北海道は男尊女卑、女性は常に陰の存在」と発言し、自身の選挙区内に波紋を呼ぶ。

2005年9月7日:北海道札幌市で「トヨタ労組が自民党支援を決めた。民間は労使一体で小さな政府を求めている。肥大化した大きな政府と言っているのは官公労だ」と街頭演説。トヨタ自動車労働組合日本労働組合総連合会は「選挙戦最終局面において、あり得ない事実で有権者を欺き、連合の活動を妨害・撹乱する選挙戦術だ」とする抗議文を自由民主党本部に提出し、撤回、謝罪がなされなければ公職選挙法第235条(虚偽事項の公表) 違反で告発する方針。トヨタ自動車経営陣は「会長が支援する旨は伝えたが労組が支援するとは一言もいっていない」とし、困惑している。

2005年10月:6月頃郵政民営化法案に反対していた副幹事長に採決の数日前に通常は7月以降に渡すはずの「政策活動費」を渡していたことが発覚。現金による買収工作疑惑が持ち上がる。本人は政治活動の自由を主張し黙秘している。
読売ジャイアンツ渡邊恒雄会長が武部がライブドアによる広島東洋カープの買収に協力していると発言。その後、渡邊の友人である三宅久之により、武部が先の件で渡邊にライブドアへの協力を要請して来た事と、渡邊に断られて経団連奥田碩会長へ渡邊を説得するように頼んだ事が2006年1月26日放送のTBSテレビ『きょう発プラス』で証言された。武部サイドでは肯定も反論も行っていない。

2005年11月:7月頃郵政民営化法案投票を控えた自民党参議院議員夕張メロンを贈っていたことが大仁田厚の告発によって発覚。ただし、武部を目の敵にしている大仁田の発言なので偽証の可能性も否めない。しかし、本当だった場合は武部が贈賄罪を犯したことになる。

2005年11月26日:耐震データ偽造問題について「悪者捜しに終始するとマンション業界がつぶれる。不動産業界もまいってくる。景気がおかしくなるほどの大問題だ」と述べた。(釧路市での講演)この発言に対し民主党前原誠司代表は「だれの目線で考えているのか」と痛烈に批判、また内外から批判が相次いだことなどから28日の名古屋市での講演で、「(強度偽装の判明は)氷山の一角ではないか。不安が広がっており、(発言は)放置していたら大変だという意味で、業界寄りなど、とんでもない」と釈明、報道のされ方が一面的だとマスコミを批判した。

2005年12月5日:水戸市内で開かれた山口武平・同党茨城県議(党県連会長)のパーティーであいさつし「日本は天皇中心の国。中心がしっかりし、同時にみんなで支える国柄だ」と述べた。一部メディアが森喜朗神の国発言と関連付けて問題視したが、あまり話題にはならなかった。

2005年:2005年に武部勤森喜朗に対し「森派に入会させてほしい」と依頼していたことを、森喜朗本人がテレビにて明らかにした。しかし、武部勤は「依頼した事実はない」と反論している。

2006年1月17日:全国都道府県議会議長会自由民主党三役との懇親会で、皇室典範改正法案に関して、「(皇室典範改正は明仁天皇)陛下のご意思だ」「こんなことを国会で議論すること自体、不敬な話なんだ」「(ある女性皇族は)天皇の側室の子だ」と発言した。宮内庁総務課報道室は「(明仁天皇陛下におかれては、記者会見で、皇位継承制度は法律に基づく制度の問題で、国会で議論されることであり、発言を控えたいとお答えになっています」と全面的に否定しており、『週刊新潮』(新潮社)から「不敬な政治利用」と指摘されている。

2006年1月23日:先回の衆議院選挙で自ら応援した「ホリエモン」こと堀江貴文証券取引法違反で逮捕され、自分には全く責任がないようなことを言っているが、幹事長としてわざわざ選挙区まで足を運んで応援演説に立ち、その際に「彼は我が弟です!! 息子です!! みなさん方の仲間です!!」とまで持ち上げておきながら、逮捕されたら知らん顔とはあまりにも無責任だと言う批判が高まってきている。

 あれ、「森派に入会させてほしい」と依頼していたことを、森喜朗元首相本人がTVでばらしてたんですか、知らなかったです。

 もっとも、例によって幹事長自身は「依頼した事実はない」と反論しているそうでありますが、なんだかなあ(苦笑

 我らが武部幹事長が出身派閥の山崎派山崎拓会長と不仲なのは一部で有名な話なのであります。

 当「木走日記」においても昨年以下のエントリーでこの話を取り上げてみたのですが、読者の関心をひくことはまったくできませんでした(爆)

■[政治]『武部VS山拓』〜どちらが勝っても国民には関係ない悲惨な戦い
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051105/1131172530
■[与太話]政界与太話「愛と熱意と信念のあるところ、必ず道は開かれる」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051108/1131448405

 ま、武部さんが「森派に入会希望」なのかどうかなど、私たち国民にとりどうでもいい話ではあります(苦笑



●「私は嘘は申しません」〜論理学の「自己言及のパラドクス」を思い出す政治家の言い訳

 少し話が脱線いたしますが・・・

 だいたい政治家の会見などをTVなどで見聞きしていると、「私は嘘は申しません」とか「私は正直者」とか、自己言及する政治家がとても多い気がするのですが、このような言い訳を聞くたびに、論理学でいうところの「自己言及のパラドクス」を思い出してしまうのであります。

 「私は正直者である」という自己言及の命題は実は、結局真も偽も成立してしまい何も言っていないに等しいわけです。

 もし「私」が正直者なら「私は正直者である」はたしかに正直に語っているわけです。
 また、もし「私」が嘘つきなら「私は正直者である」はたしかに嘘をついているわけです。

 この「自己言及のパラドクス」は「私は嘘つきである」という命題でも当てはまります。

 もし「私」が正直者なら「私は嘘つきである」と正直に語っているわけですが、そうすると「私は嘘つきである」という内容と矛盾してしまいます。

 また、もし「私」が嘘つきなら「私は嘘つきである」は正直に語ってしまっていてやはり、「私は嘘つきである」という内容と矛盾してしまうわけです。

 ・・・

 つまり「私は嘘は申しません」という発言は、その人が正直者であろうと嘘つきであろうと成立してしまう、それこそ「意味不明」の発言なのであります。

 ・・・



ゲーデル不完全性定理と「偉大なるイエスマン」との関係

 私自身は工学系出身なので専門というほどではないですが、理系数学を修めた方ならよくご承知であろう有名な「ゲーデル不完全性定理」を思い出しました。

ゲーデル不完全性定理( - ふかんぜんせいていり、Gödel's incompleteness theorems、または不完全性定理は、数学基礎論における重要な定理の一つで、クルト・ゲーデルが1931年に発表した。

第1不完全性定理 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する。
第2不完全性定理 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、無矛盾であれば、自身の無矛盾性を証明できない。
なお、第1不完全性定理の拡張として、前提のω無矛盾性を無矛盾性に弱めた定理がジョン・バークリー・ロッサー (1936) によって示された。 また、第2不完全性定理に関して、ロッサーによる証明の定義を用いれば、体系自身の無矛盾性が証明できることが、クライゼル (1960) によって指摘されている。

(後略)

ゲーデル不完全性定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AB%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%AE%8C%E5%85%A8%E6%80%A7%E5%AE%9A%E7%90%86

 なんか今日は『ウィキペディアWikipedia)』ばかり参照しています(苦笑)が、うーん、ちょっとこの説明は専門的で難解すぎるのでありまして、もう少しくだけて説明しているこちらの説明のほうがわかりやすいかも知れません。

1)第1不完全性原理
 「ある矛盾の無い理論体系のなかに、
  肯定も否定もできない証明不可能な命題が、必ず存在する」

2)第2不完全性原理
 「ある理論体系に矛盾が無いとしても、
  その理論体系は自分自身に矛盾が無いことを、
  その理論体系の中で証明できない」

哲学的な何か、あと科学とか
不完全性定理 1930年頃 より引用
http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/doc/fukanzen.html

 本当の数学的証明はとても難解であったと記憶しておりますが、特に第2不完全性原理は、単に数学だけでなく、その後の哲学や人間工学、ロボット工学にも影響を与えた、偉大な定理なのであります。

 「ある理論体系に矛盾が無いとしても、その理論体系は自分自身に矛盾が無いことを、その理論体系の中で証明できない」

 この原理をめぐって神学論争まで発展してしまったりしているのでありますが、それはさておき、人間の限界、そして人間の創った理論の限界を数学的に証明してしまった「ゲーデル不完全性定理」は、数学の専門家ではない私たちにも実に多くのことを考えさせられる原理であります。

 ・・・

 「偉大なるイエスマン」、われらが武部幹事長ですが、今回の疑惑には、国民の前に、積極的に事実関係を明らかにする責任がありましょう。

 口だけで「私は嘘を申さない」と繰り返しても何の意味もないわけです。

 「ある理論体系に矛盾が無いとしても、その理論体系は自分自身に矛盾が無いことを、その理論体系の中で証明できない」のと同様に、「ある武部発言に矛盾が無いとしても、その武部発言は自分自身に矛盾が無いことを、その武部発言の中で証明できない」のも自明なのであります。

 客観的物証だけが真実を証明するのでしょう。



(木走まさみず)