木走日記

場末の時事評論

韓国〜実は世界で一番中国を警戒している国

kibashiri2006-02-06




●米メリーランド大:世界に「好影響」は日本1位

 今日(6日)の産経新聞コラム「産経抄」から・・・

小泉純一郎首相が靖国神社参拝をやめないかぎり日本は世界で孤立する、と誰かが言っていた。ばかげたことを…と思ってはいたが、米国の大学などがBBC(英放送協会)の依頼で行った三十三カ国四万人に対する世論調査によると、世界に好影響を与えていると一番に評価された国は日本だった。

 ▼先週末に発表されたこの調査では、三十一の国で日本の影響力について肯定的評価が否定的評価を上回り、うち二十カ国で肯定派が過半数を占めた。回答国全体でも日本肯定派の平均は55%、否定派は18%で、孤立どころか相当な人気である。

 ▼日本否定派が半数を超えた二カ国が中国と韓国だったのはいわずもがなか。留意すべきなのは日本肯定派が一番多かったのがインドネシア(85%)、次いでフィリピン(79%)と、ともに東南アジアの国だったことだろう。

 ▼中国は靖国参拝非難の際に「アジア人民の感情を傷つけた」といった常套(じょうとう)句を使うが、そういうプロパガンダは情報統制下の国内ではともかく国際社会ではもはや通用しないということだ。東南アジアの国々にとっては、目の前にある中国の覇権主義の脅威の方が切実と映る。

 ▼日本への高い評価の背景には、政府開発援助も含んだ経済的貢献度の高さもあろう。だがそれ以上に、巨大市場を背景にした経済的膨張に加え、軍事力増強を進める中国に対抗し、ものをいえる力を備える国はアジアでは日本をおいてない、という期待もあるはずだ。

 ▼友好という建前で大国の横暴に目をつぶることでは、世界の平和と安定は得られない。人気者の座にこだわるわけではないが、せっかくうれしい結果が出たのだから、政府も国民も期待に応えるべく毅然(きぜん)とした姿勢を貫かねばならない。

平成18(2006)年2月6日[月] 産経新聞 産経抄

 ふーん、「米国の大学などがBBC(英放送協会)の依頼で行った三十三カ国四万人に対する世論調査によると、世界に好影響を与えていると一番に評価された国は日本」だったと大喜びの「産経抄」なのであります。

 しかしなあ、産経が相変わらずちょっと我田引水なのは、確かに小泉純一郎首相が靖国神社参拝をやめないかぎり日本は世界で孤立する」わけではない結果なんでしょうが、別に小泉純一郎首相が靖国神社参拝を続けている結果である証明にもなってはいないわけであります。

 なんでもかんでも靖国参拝に結びつけて騒いじゃうのは、朝日と産経の悪い癖だと思います。(苦笑

 ・・・

 まあそれはともかく興味深い記事です。

 で、元ネタとも言える記事から・・・

米メリーランド大:世界に「好影響」は日本1位

 世界に最も「良い影響」を与えている国は日本−。米メリーランド大が世界の約4万人を対象に実施した英BBC放送との共同世論調査で、こんな結果が出た。同大が3日発表した。逆に最も悪影響を与えている国は、核問題が国際社会の反発を招いているイランで、次いで米国だった。

 調査は昨年10〜12月に米州、欧州、中東、アフリカ、アジア各地域の33カ国で行われた。質問の対象となった国は日本、米国、中国、イランなど。

 調査結果によると、日本が世界に「好影響」を与えているとの回答は、33カ国中31カ国で「悪影響」を上回り、平均すると好影響が55%、悪影響が18%だった。具体的に何が判断材料となったかについては触れられていない。

 日本との関係が悪化する中国では16%対71%、韓国では44%対54%で、いずれも日本が悪影響を与えているとの回答が好影響との回答を上回った。半面、好影響との回答が多かったのはインドネシア(85%)やフィリピン(79%)。米国では66%が好影響と答えた。

 一方イランに対しては、悪影響との答えが33カ国中24カ国で好影響を上回った。昨年ワースト1だった米国は、昨年と同じく20カ国で悪影響が多数派。中国は20カ国で好影響が多数だったが、平均すると9ポイント下落した。(ワシントン共同)

毎日新聞 2006年2月4日 17時50分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20060205k0000m030020000c.html

 うーむ、確かに世界33カ国中、31カ国で日本は「好影響」を与えているとの回答が「悪影響」を上回り、下回ったのは「中国では16%対71%、韓国では44%対54%」の2カ国だけだそうであります。

 ・・・

 猛烈に興味深いアンケート結果であります。

 例えば中国など日本以外の国の結果の詳細はどうなんでしょうか。

 例によって、日本の報道では日本の評価中心に記事構成されていて、アンケート結果の全体像を考察できないのでした。

 今回はこのアンケート結果のソースを徹底検証いたしましょう。



●日中両国のアンケート結果を冷静に検証する。

 で、ソース元ですが「East Asia News Watchさんが取り上げてらっしゃいました。

East Asia News Watch
世界に「好影響」日本1位 33ヵ国中31ヶ国で「悪影響」を上回る

http://k-mokuson.at.webry.info/200602/article_4.html

 で、以下のサイトで英語ですがアンケート結果の詳細がわかります。

http://www.globescan.com/news_archives/bbcpoll06-3.html

 おお、これは日本だけではなく主要国の結果の詳細が載っていて興味深いのです。

 どうでもいいけど、世界のアンケート実施した主要33ヶ国に日本がはいっていないんですが、これはどうしてでしょうか?(苦笑)

 ・・・

 まあそれはさておき、ちょっと気になる日本と中国の「好影響」と「悪影響」の結果を、比較しやすいように表にまとめてみました。

国名 日本(好) 日本(悪) 中国(好) 中国(悪)
【北米】
United States 66 18 35 53
Canada 62 18 36 44
【南米】
Brazil 73 15 57 27
Argentina 47 19 41 27
Mexico 29 24 28 26
【ヨーロッパ】
Spain 69 12 45 32
Poland 58 28 34
Russia 58 11 32 33
Finland 57 20 24 54
Great Britain 57 25 40 44
Germany 54 19 31 44
Italy 48 24 22 55
France 47 36 31 53
【中近東】
Iran 57 33 66 25
Iraq 54 14 55 15
Saudi Arabia 42 54
Turkey 42 12 27 31
【アフリカ】
Nigenia 70 68 11
Kenya 68 59
Senegal 61 73
Tanzania 59 13 53 14
Ghana 52 46
Congo 51 11 59 12
South Africa 39 12 34 21
Zimbabwe 31 34 17
【アジア・オセアニア
Indonesia 85 60 23
Philippines 79 13 54 30
Adfghanistan 65 11 58 13
Australia 60 22 43 38
Sri Lanka 50 45
India 48 13 44 15
South Koria 44 54 40 58
China 16 71 −− −−

 うーん、これは興味深いですね。

 特に中国に対する各国の評価は、地域性が出ていると思いました。

【特徴1】北米・ヨーロッパ地域で警戒される中国

 まず、北米・ヨーロッパ地域10ヶ国においては日本が全ての国で「好影響」が「悪影響」を上回っているのに比し、中国に対してはスペインの45%、32%以外は、9ヶ国で「悪影響」が上回っています。特にロシアですら32%、33%とわずか1%ですが、「悪影響」が上回っているのが印象的です。

 やはり先進国では中国が脅威を持って警戒されていることがわかります。

【特徴2】南米・中近東・アフリカ地域で期待される中国

 一方、南米・中近東・アフリカ地域15ヶ国ですが、ここでは逆に、日本が全ての国で「好影響」が「悪影響」を上回っているのはかわりませんが、中国に対してはトルコの27%、31%以外は、14ヶ国で「好影響」が上回っています。

 特にアフリカ諸国では国によっては日本よりも高ポイントなのが目立ちます。自らを発展途上国の代表として米ソ冷戦時代から後進国よりの外交政策を進めてきた中国外交の成果であるとともに、最近の中国の強引な対アフリカ資源外交の結果と考えてみることも可能かも知れません。

【特徴3】実はアジア地域で善戦している中国

 私が実に意外だったのは、アジア・オセアニア地域での中国の評価であります。

 日本はこの地域8ヶ国で、中国・韓国2国から「悪影響」の評価を得てしまっているのですが 、一方の中国も評価は決して悪くないことが見て取れます。

 例えば、産経コラムでも記述されていた、日本が最高評価をえたインドネシア85%、8%ですが、意外にも中国も日本ほどではないですが、60%、23%なのであります。
 アジア地域では、予想以上に中国の外交政策が浸透しつつあり、中国脅威論は少ないことがわかります。

 ・・・

 ん?

 あれ?

 ああ、韓国よ、そうだったのですか・・・(感涙



●韓国〜世界で一番中国を警戒している国

 アジアの国の中で唯一韓国だけが中国を警戒しているであります。

 韓国の中国に対する評価40%、58%なのですが、いやあ、気が付けば実に意外なことなのですが、33ヶ国中中国に対する「悪影響」の最も高い国じゃないですか。

 もちろん、韓国は日本に対しても44%、54%と、世界で2番目(もっとも2ヶ国しか「悪影響」が高い国はありませんが(苦笑))の日本の「悪影響」を警戒している国ではありますが、いや少し驚いたのは、日本に対する54%よりも中国に対する58%のほうが高いことであります。

 ・・・

 うーん、そうか、そうだったのか・・・

 つまり、韓国は世界で2番目に日本を警戒している国なのですが、と同時に世界で一番中国を警戒している国だったのですね。

 日本でアンケート調査したら、「世界で一番中国を警戒している国」を韓国とトップをあらそう結果になっただろうとは思います(苦笑)が、いずれにしても、韓国人の複雑な対日感情、対中感情が、顕れているようで、このアンケート結果はとても考えさせられます。

 私は別に媚中派・媚韓派でもありませんし、嫌中派嫌韓派でもありませんが、しかし、このアンケート結果は私たち日本人にとり、対韓国感情を少し和ませる結果なのかもしれません。

 ・・・

 韓国現政府は中途半端なバランス外交政策を採り、中国の顔色をうかがいながら、アメリカと日本に距離を置くスタンスが目立ってきております。

 しかし、彼らが心から親中派としてふるまってはいないことがよくわかります。

 中国と韓国、同じ反日感情が目立つ隣国ですが、その内面は実はかなり隔たりがあるように感じました。


●<追記> 2005.02.07 11:00

 なんかエントリーした後で知ったのですが、私よりも先にこのソースについて鋭く考察されている素晴らしいブログがありましたので、ご参考までに気付いたサイトをいくつかご紹介しておきます。

404 Blog Not Found
市場調査の大人読み
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50359617.html

 インド向けBBCの内容までチェックされています。

プロテクトX −傍観者たち−
日本は世界(アジア)で孤立している…の?
http://protect-x.seesaa.net/

 するどく中国と日本の比較をし韓国についても触れられています。

愛・蔵太の気ままな日記
■[報道]「世界に最も良い影響与えている国」が日本であるとした、メリーランド大学世論調査ってそもそも何なのか
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060205#p1

 愛さん、相変わらず切れ味鋭いです。そもそも「メリーランド大学世論調査って」香ばしいんだぜって話です。

 みなさん、すごいです。



(木走まさみず)