木走日記

場末の時事評論

「靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢」いてもいいじゃないか〜ホリエモンと乃木大将と日本人と韓国人について少し考える

kibashiri2006-02-03




靖国参拝反発の中韓に同調…首相「理解できない」

 一昨日(1日)の読売新聞記事から・・・

靖国参拝反発の中韓に同調…首相「理解できない」

 小泉首相は1日午後の参院予算委員会で、首相の靖国神社参拝に中韓両国が反発していることに関連し、「靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢いることは理解できない」と述べ、首相の靖国参拝を批判する与野党議員や世論に強い不快感を示した。

(2006年2月1日13時51分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060201i406.htm

 小泉首相はずいぶんいらだっておられるようです。

 靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢いることは理解できない」そうですが、朝日新聞とか一部与野党の政治家達の靖国反対発言が気に入らないようであります。

 中国や韓国からの批判ならばまだしも、同じ日本人から批判されるのは理解できないということであります。

 ・・・

 ふう。

 もちろん中国や韓国にも内政干渉されたくないですし、彼らの理不尽な要求を日本として媚びへつらって呑んでいただきたくもありません。

 しかし、この議論、もう食傷気味なので有ります。

 靖国いくのも日本人だし靖国反対なのも同じ日本人であります。

 少し視野を広めて、日本人、そしてお隣の国のことを考えてみませんか。



六本木ヒルズ日露戦争の英雄・乃木希典(まれすけ)将軍の出生の地

 まあこの国のマスメディアの内包する問題は、事実をしっかり検証しないで記者クラブ経由でのお役所発表の提灯(ちょうちん)持ち記事を垂れ流したり、逆に報道すべき事件を癒着や自己都合でほおかむりしたりするチキン・メディア(臆病報道)体質なのであります。

 しかし言論は幅があっていいとは思います。

 私は朝日新聞にしろ産経新聞にしろ日本のマスメディアの報道には批判的に対峙することを常としていますが、彼らが自己主張すること自体を否定するモノでは断じてありません。

 と言うより逆に自分と考え方が大きく異なる論説に接することは喜びでもあり、いわゆる言論の自由が保証されていることのありがたさを実感することのできる数少ない機会で有るとも考えております。

 ときに意外な視点からのすばらしい記事を目にするとき、読者はその知見を広げてもらえる有益な情報に接するわけでありまして、その瞬間私たちはメディアの多様性の御恵を享受しているのであります。

 その意味では、今日の産経コラム産経抄もなかなか秀逸なのです。

 今日(3日)の産経新聞産経抄 」から・・・

米上院でロッキード事件が明るみに出てから、あす四日で丸三十年になる。この日は、吉良上野介を討ち取った大石内蔵助赤穂義士が、幕府の命により切腹した日でもある。

 ▼四十七士のうち寺坂吉右衛門を除く四十六人はお預けになっていた四つの藩邸でそれぞれ切腹したが、その一つが麻布日ケ窪の長府藩邸だった。それから百数十年後、その藩邸で無人(なきと)という男の子が生まれた。

 ▼藩邸には幕末のこのころでも義士たちが寝起きした部屋や切腹場が残っていた。泣き虫だった無人少年は、母から義士伝を聞き、忠臣蔵にまつわる錦絵や絵本を見るのが何よりの喜びだったという。

 ▼無人少年は長じて乃木希典(まれすけ)となる。といってもピンとこない若い読者がいるかもしれない。日露戦争で旅順攻撃の指揮をとり、子息を含むおびただしい戦死者を出しながらも勝利後は敵の将兵を厚く遇し、世界の称賛を浴びた。明治天皇崩御に際して妻と自刃した「乃木物語」は大多数の教科書から無視され、忘れられようとしている。

 ▼乃木将軍が産声をあげてから百数十年後、長府藩邸は消え、跡地には六本木ヒルズがそびえ立っている。敷地内の毛利庭園と名付けられた小庭園の掲示板には、辛うじて赤穂義士の文字はあったが、ヒルズのどこを探しても乃木の痕跡はない。

 ▼評論家の福田和也氏は「日本には、有能な人間はたくさんいる。ただ、いないのは乃木のような人物だ」と慨嘆する。哲学なき戦後教育がヒルズ族堀江貴文容疑者を生んだ、と短絡的に言うつもりはない。ただ、赤穂義士乃木希典が生きた同じ地で商売をしている「歴史認識」が、ヒルズ族にあるだろうか。戦後教育がこの国の歴史認識を断絶させてしまった罪は万死に値する。

 六本木ヒルズと乃木大将でありますか。

 このような視点は斬新なのであります。

 かたや「お金が全て」とばかり日本の証券市場を翻弄しそして法を犯しお縄を頂戴してしまったホリエモンに対し、かたや明治天皇崩御ともに夫妻で自決した忠君の士、「武士道」的価値観の最後の体現者・継承者としての乃木大将、価値観も生き様も真反対の両者が実は100数十年の時を隔てて同じトチにいたわけですね。

 まさか日露戦争の乃木将軍の生誕の地の跡地に「六本木ヒルズ」が建っていようとは、記事にも有るとおり。「赤穂義士乃木希典が生きた同じ地で商売をしている「歴史認識」が、ヒルズ族にあるだろうか」は、まず知る由もないことでしょう。

 普通の発想では乃木大将とホリエモン、結びつけようもありませんモノ・・・

 全く異質の人物が意外なつながりがあったわけであります。

 いや考えさせられる為になる記事であります。

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 結語の「戦後教育がこの国の歴史認識を断絶させてしまった罪は万死に値する。」は、さすがにオミギな産経しちゃってまして苦笑せざるを得ませんが、今日の「産経抄 」はなかなか秀逸なコラムであり、知見を広める良記事であると思いました。

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 乃木大将とホリエモン、この記事は、一見時代的背景が全く異なる二人の人物が実はともに善し悪し含めて近代日本を象徴する気質を有しているのであり、なおかつそしてその宿命として狭い島国に住む同じ日本人であることを教えてくれているのであります。



●「韓国人の遺伝的特徴、6割は北方系・4割は南方系」

 1月24日付けの朝鮮日報記事から・・・

「韓国人の遺伝的特徴、6割は北方系・4割は南方系」

 現代韓国人の60%は北方系統、40%は南方系統の遺伝的特徴を持っているという分析が出た。また、高句麗(コグリョ)人の遺伝的特徴は中国の漢族ではなく、韓国人と近い可能性が高いことが分かった。

 このような事実は高句麗研究財団の研究双書のうち、20日に発刊された金紣(キム・ウク)壇国(タングク)大学・生物学科教授の論文「ミトコンドリアDNA変異と韓国人の起源」により明らかになった。韓国人の母系の起源を追跡したミトコンドリアDNA分析は今回が初めてのこと。

 金教授はこの論文で、韓国人の集団で高い頻度で現れるミトコンドリアDNAハプログループ(同じミトコンドリア遺伝子の型を持ったグループ)は、北東アジアでよく見られる「D」、「A」、「G」系列で、北方系統のハプログループが60%程度になるとした。

 東南アジア人によく見られる「B」、「F」、「M7」系列など、南方起源の系統も40%程度含まれている。金教授は「この結果は韓国人が北方と南方系統の遺伝子プールが複合的に構成された多起源的集団であるという最近のY染色体DNA研究の結果と一致する」と説明した。

 一方、遺伝的な分化の程度(FST値)により系統を分析した結果、韓国人は中国の朝鮮族満州族、日本人と近いと分析された反面、中国の漢族はベトナムと共にほかの系統が混ざるなど、差があることが分かった。

 金教授は「現在、満州族と中国北東の3つの省に居住している朝鮮族が中国の漢族に比べ韓国人と遺伝的に近いという結果を見た場合、過去に韓半島満州一帯で活動していた高句麗人の遺伝的特徴は中国の漢族集団より韓国人集団とより近いと判断される」と説明した。

 ミトコンドリアは細胞の中での呼吸作用によりエネルギーを生産する機関で、その中には二重らせん構造のDNAが2〜10含まれている。ミトコンドリアDNAは母親から子どもに伝達され、突然変異する確率が高く、交差が起こらないことから、祖先の型の推定と遺伝子鑑識に効果的に活用される。今回の研究は韓国人185人、中国の朝鮮族51人、満州族40人、漢族40人、モンゴル人47人、計445人からミトコンドリアDNAを抽出し分析した結果だ。

記事入力 : 2006/01/24 18:38 朝鮮日報
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/01/24/20060124000062.html

 うーん、この記事も考えさせられます良記事なのであります。

 どうも最近の韓国発の科学的報道は例のウソック教授の論文捏造のこともあり眉唾で読む必要もあるのでしょうが、この記事が主張する「遺伝的な分化の程度(FST値)により系統を分析した結果、韓国人は中国の朝鮮族満州族、日本人と近いと分析」された結果は、概ね信じても良さそうに思えます。

 まあこの記事の主張が良く読むと実はとても愛国的な高句麗(コグリョ)人の遺伝的特徴は中国の漢族ではなく、韓国人と近い可能性が高い」にあることは、ご愛敬なのですが、しかし、考えさせられるのは「韓国人の遺伝的特徴、6割は北方系・4割は南方系」の南方系4割でありまして、どう考えても地政学的に考えると韓国にとっての「南方系」は日本列島を避けては語れないのであります。

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 私は朝日のような媚中派・媚韓派も大嫌いでありますし、一部のウヨ的嫌中派嫌韓派ともはっきり距離を置いている立ち位置のつもりですが、最近の日本国内の反中・反韓的な主張には少なからず危惧を有しておりました。

 そしてそのような危惧というか違和感がどこからくるのかもやもやしていたのですが、この記事はそのような私の「日本人の韓国に対する反感に対する違和感」に対する一つのこたえであると感じました。

 生物学的なDNA的比較に置いて日本人と韓国人は、ともに黄色人種モンゴロイドに属ししかも極めて近い関係の近種であることはおそらく否定しがたい科学的事実なのでありましょう。

 かたや韓国人が「6割は北方系・4割は南方系」の雑種であるならば、かたや日本人も弥生人縄文人の議論を持ち込むまでもなく北方民族と南方民族、そして大陸・半島からの移民の「雑種」なのであります。

 いわば生物学的カテゴリーで「人種」を議論するならば、日本人と韓国人は親戚みたいなモノなのであります。

 その意味で、少なからずの韓国人が日本を忌み嫌ったり、一部日本人が韓国を毛嫌いするのは、いろいろな事情があることは承知していますが、私から言わせれば、まるで自分の兄弟をバカにする純粋でうぶな幼子のような、狭量で幼稚なセンチメンタルな感情なのであります。

 DNA的にはうり二つの近隣の民族を軽蔑する行為は、おそらく近親憎悪にも似た歪んだ感情がベースにあるのであり、感情に支配された罵り合いは双方にとり決して健全なおこないとはいえないでしょう。

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 このようなことを書くとお前は媚韓派かと抗議をいただきそうですが、私は「竹島問題」も日本の領有を主張していますし、韓国の現政権の反米・反日策動政策は、大反対であります。あ、最近寄生虫騒動以来キムチも嫌いになりました(苦笑)

 しかしながら感情的反韓論にはついていけないのです。

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 この記事は、いいも悪いも含めて科学的事実としては、日本人と韓国人が実は極めてDNA的には近種であることを、改めて私たちに教えてくれているのであります。

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●「靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢」いてもいいじゃないか

 乃木大将とホリエモン、日本人と韓国人、ときにメディアの良記事は、私たちに単眼ではなく複眼的幅広い視野で物事を考えてみる必要性を教えてくれているのであります。

 小泉首相靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢いることは理解できない」そうでありますが、私などは日本人全員が「靖国参拝反対」一色になったり「靖国参拝賛成」一色になってしまうほうが、気持ち悪いと思ってしまいます。

 小泉さんもホリエモンも乃木大将も、参拝反対派もそして不肖・木走もみんな同じ日本人なのであります。

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 「靖国参拝がいけないということに同調する日本人が大勢」いてもいいじゃないですか。

 なぜならばこの国が、異論反論を認めあう言論の自由の認められている素晴らしい民主主義国家であることのなによりの証なのでありましょうから。



(木走まさみず)